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平成・ウォーブラックメタル vol.3 

■ 平成二十一年(2009年)
Deiphago - Filipino Antichrist
Deiphago - Filipino Antichrist 

 この年はかなりの激戦区です。この頃はBlasphemyの復活後に触発されて出現した第二世代のバンドたちが増えてクオリティの高いバンドが増えた印象です。ただしここでは90年代から活動していたこのDeiphago、もともとはフィリピンのバンドでしたが生活のためにコスタリカに移動して活動を続け、ついには来日も果たしました。彼らの代表作を取り上げたいと思います。彼らのスタイルはただでさえ喧しいウォーブラックメタルスタイルに輪をかけて強烈にした作品で、ウォーブラックメタルの限界を広げた歴史的名盤と言えるでしょう。他にこの年はNuclearhammer - Obliteration Ritual、Teitanblood - Seven Chalices、Diocletian - Doom Cultと、この界隈ではいずれも名盤と称されるものばかりですね。

■ 平成二十二年(2010年)
Unholy Archangel - Obsessed by War
Unholy Archangel - Obsessed by War 

 Goatpenisのメロディック・ウォーメタルの名盤"Biochemterrorism"もこの年のリリースだったのですが、やっぱりUnholy Archangelの1stアルバムを推させてください。カタストロフィック・ウォーブラックメタルといえば、この音源です。古くは初期Sodomから南米ベスチャル・デスコア・メタルなど、演奏の崩壊が構成要素になっているものはウォーブラックメタルの一つのルーツですが、その崩壊さが極まったウォーブラックメタルになっています。初めて聞いたときの衝撃ったら無かったですね。

■ 平成二十三年(2011年)
Zygoatsis - S.K.U.D. (Satanic Kultus - Unholy Desecration)
Zygoatsis - Satanic Kultus - Unholy Desecration 

 この年もAntichrist - Sacrament of BloodやHeresiarch - Hammer of Intransigenceといった強烈なリリースが多かったですが、このZygoatsisのフルアルバムは今までのアジアのウォーブラックメタルの限界値を超えたというような強烈な作品でした。何もかも蹂躙し尽くすという音楽性はBestial Warlustを彷彿とさせていますが、さらに東南アジアのベスチャルブラックメタルの歴史もあわせってバーバリックな作風に仕上がっています。実際、ウォーブラックメタル史上でも指折りの傑作だと思います。

■ 平成二十四年(2012年)
Pseudogod - Deathwomb Catechesis
Pseudogod - Deathwomb Catechesis 

 北の大地、ロシア発のウォーブラックメタルバンド、Pseudogodの1stアルバムは高い評価を得ました。モスクワから更に1400km離れたベルミという都市を拠点にしていて、2004年から地道な活動を続けてMorbosidadなどとの交流を経てついにはHells Headbangersとの契約にまでたどり着いたのは今の時代ほど容易ではなかったと思いますし、それを実現させた彼らの継続した活動には敬意を表したいです。作風はBeheritにBlasphemyとConquerorを混ぜたような、北の大地の凍てつく寒気とウォーブラックメタルの本来持つ熱気が絡み合った名盤です。

■ 平成二十五年(2013年)
Demonomancy - Throne of Demonic Proselytism
Demonomancy - Throne of Demonic Proselytism 

 Blasphemophagherと同じイタリア発のウォーブラックメタルバンドで、あちらと比べると明らかにストイックなアティチュードがある当時は新人バンドの括りでした。またもやNWN!の猛烈なサポートを得ることに成功していましたが、速さ一辺倒で勝負せずにオールドスクール・デスメタルの影響を受けた密度の濃いダイナミックな音に、ズルズルとしたヴォーカルスタイルがしっくりきていて、派手さはなくキャッチーな要素は皆無ではあるものの、オールドスクールなマニアを喜ばせるに十分な作品です。ここらへんのバンドはおよそ第三世代とでもいいましょうか。その筆頭バンドの一つですね。

■ 平成二十六年(2014年)
Necroholocaust - Holocaustic Goat Metal
Necroholocaust - Holocaustic Goat Metal 

 いわゆる第三世代は出てきましたが、00年代初頭に出現した第二世代のバンドたちが今やエース級という時代に、名盤を叩き込んできたのがカナダのNecroholocaustです。もともと2010年でしたかね、Baphomets hornsとのスプリットで、そのタイトルが"Fuck Norway"ですからね。強烈なスピリットとアティチュードを叩き込んできたバンドでありまして、そのバンドの初のフルレングスだったので期待も相当でしたし、実際に聞いてみてのガツン!としたウォーブラックメタルスタイルも素晴らしかったです。

■ 平成二十七年(2015年)
Genocide Shrines - Manipura Imperial Deathevokovil: Scriptures of Reversed Puraana Dharmurder
Genocide Shrines - Manipura 

 ウォーブラックメタルの爆心地は時代と共に少しずつシフトしたり拡散したりしていますが、ついに南アジアに到達したのがこのGenocide Shrinesです。1stアルバムはおかげさまで弊ディストロでも入荷のたびに即完売しているので、日本国内でも注目度が高いのは嬉しい限りですし、今やシーンの代表的なバンドの一つになったような気がします。バックグラウンドなどを考えますとこのバンドにインタビューできたのも本当によかったですよ。Revengeがベースになっているスタイルではありますが、そこに彼らのルーツが混ざることで異質感が高まり新たな感触が生まれていて本当に面白いアルバムです。

■ 平成二十八年(2016年)
Caveman Cult - Savage War Is Destiny
Caveman Cult - Savage War Is Destiny 

 第三世代ウォーブラックメタルバンドのうち、エクストリームな方向で進化を遂げているのがこのCaveman Cultでしょう。BandcampでNYPで音源をばらまきつつ、出しているフィジカルはすぐ完売するところあたり、ファンとバンドの意図が凄いフィックスされていて、まさにこのジャンルにおける新時代のアティチュードが内包されているなあと関心しますし、何よりそう思わせるのは前提としてあまりにも苛烈なウォーブラックメタルを繰り出しているからですね。令和以降の活躍も大注目なバンドです。

■ 平成二十九年(2017年)
Tetragrammacide - Primal Incinerators of Moral Matrix
Tetragrammacide - Primal Incinerators of Moral Matrix 

 南アジアまでたどり着いたウォーブラックメタルはインド・コルカタにおいてNyogthaebliszを思わせる強烈なウォー・ノイズバンドが盛んですが、このバンドはそのサークルの筆頭バンドです。密教的な演出と強烈なウォー・ノイズの混ざり方は異様そのもので、まさに何か新しいものが生み出されようとしてる、もしくは将来的にはあれが始まりだった、とでも言われているかもしれない、そんなものに立ち会っているような気分にさせるこの南アジアからの負のエネルギー。令和でも地域全体を注視すべき存在です。

■ 平成三十年(2018年)
Blasphamagoatachrist - Black Metal Warfare
Blasphamagoatachrist - Black Metal Warfare 

 締めの音源はやっぱりこれですかね。今回の趣旨には一番そぐわっているのではないでしょうか。夢のチームが結成的なプロジェクトですけど、UG的には数年前から噂には挙がっていたプロジェクトなんです。まあ立ち消えになったのかな、と思っていたら2018年にリリースされちゃった。この事実だけでごはんが何杯も行けます。続いて、この1回限りで終わっちゃうんじゃないかな、どうせ、的に思っていました、プロジェクトなんてそんなもんじゃないかと。しかしどうやら1stアルバム出るらしいんです。まじっすか。令和元年、超やばいですね。


■ さよなら平成

 本日の夕方くらいに思いついて取り上げるアルバムは30分くらいで決まりましたのですぐに書き終わるかと思った記事ですが、よくよく考えたら30枚も取り上げなくちゃいけなくてかなり焦りましたが、ようやく終わりそうですよ(現在22:20)。途中から明らかに荒々しさが増した気もしますが、目的は平成元年と共に始まったウォーブラックメタルを振り返ることで、それはできたんじゃないかなと。ただ代表音源並べただけで本当はこの裏に後々語り草になるデモ音源などはたくさんあったでしょうね。もしくは令和以降も出てくることでしょう。ウォーブラックメタルの殻を破るような音楽の出現は既に起きているかもしれないしこれから起きるかもしれない。究極のエクストリームメタル!と本では提唱しましたが、それはすでに過去の話かもしれません。我々は今を生きていて、それは変わり続けています。変わらないものを愛し続け、変わっていくものに敏感になり続ける。それは大変難しいことですが、得るものも大きいな、と。それが振り返りによって改めて解ったことです。

 だから令和になってもこの旅は続けていいんだ、とそう確信したところで、ようこそ令和の準備をしてこの稿はおしまいとしましょう。皆さんも良きメタル人生を。

【完】
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平成・ウォーブラックメタル vol.2 

■ 平成十一年(1999年)
Conqueror - War Cult Supremacy
Conqueror - War Cult Supremacy 

 Blasphemyの"Ross Bay ism"の延長線にありながらもウォーブラックメタルのエクストリーム化を追求した中でオカルト性の排除、ひいてはヒューマニズムを撤廃して暴力性を追求していったのがこのアルバムです。グラインドにぎりぎりまで足を踏みいれる寸前のアプローチで完成したウォーブラックメタルは奇跡的なバランスで成り立っているように感じ、Blasphemyの1stアルバムについてある側面で極限進化を遂げたと言えるでしょう。この作品の当時の評価は乏しかったものの、後にウォーブラックメタルの再評価に伴って何度も再発されています。

■ 平成十二年(2000年)
Morbosidad - Morbosidad
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 2018年に新作を出したMorbosidadのの初音源はこの平成十二年にリリースされたものです。結成後、紆余曲折7年かかってようやく出せたこの1stアルバムはBlasphemyへの敬意を前面に出しつつも、彼らのルーツであるラテンアメリカ~スパニッシュの要素を存分に出して、「Blasphemy meets Brujeria」的な作品になっているのがユニークなところです。また彼らのアンチ・レイシズムのスタンスも見逃せません。このジャンルの面白いところは様々なマイノリティが個人主義を主張しているところにあるからです。

■ 平成十三年(2001年)
Blasphemy - Live Ritual – Friday the 13th
Blasphemy - Live Ritual – Friday the 13th 

 Blasphemyの作品のうち、最も重要なものはどれかという問いに対しては様々な意見が出ることでしょうが、この作品はウォーブラックメタルの再興を促す決定的な一打になったという意味では最重要盤だと言えます。この作品が出たこと自体、再結成によるライブが実施されていたわけで、既にマニアたちの間で再評価の機運が高まっていたのですが、今のようにライブ動画がネットですぐに見れるわけでもない時代に、このライブ盤はBlasphemyがBlasphemyたる所以を全世界に知らしめる傑作でした。この

■ 平成十四年(2002年)
候補なし

 これぞ!という作品が一枚もありませんでした。嵐の前の…というやつです。

■ 平成十五年(2003年)
Revenge - Triumph.Genocide.Antichrist
Revenge - TriumphGenocideAntichrist 

 Next Blasphemyの決定的な存在といえばこのRevengeでしょう!現在最もメジャーなウォーブラックメタルといっても過言ではありませんが、彼らの1stアルバムはこの時に誕生しています。Blasphemyの再評価の機運の中で彼らのスタイルが重要視されるようになったのは当然のことです。Conquerorの流れを汲みながらもさらに緩急をつけるテクニックも備わり、ミュージシャンとしての立ち位置もより明確になりました。このジャンルの音楽性においてはテクニックが必要でない場面もありますが、彼らのスタイルはそれがあったからこそ現在の立ち位置が確立されたと言えます。

■ 平成十六年(2004年)
Goatpenis - Inhumanization
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 もともとは90年代にショートカットなノイズグラインドをプレイしていたGoatpenisが長年の沈黙の後、メタリックなウォーブラックメタルスタイルへと変貌を遂げた一作です。変貌というと語弊があって、実際は彼らの蓄積が少しずつ自分たちの表現へと還元されていったのでしょう。そして本作から歌詞に兵器や戦場、そして戦争状態における狂気をテーマとするに至り、シリアスで人間味のある作品が出来上がっています。人間味というのは人肌とでも申しましょうか、戦争っていうのは人間がするものですから。彼らの音楽は映画で言うミリタリーモノなんですね。

■ 平成十七年(2005年
Black Witchery - Upheaval of Satanic Might
Black Witchery - Upheaval of Satanic Might 

 この年だとBlack Witcheryの2ndアルバムが一番でしょうか。Chris Moyenのカバーアートに、Ryan Fosterが曲作りに参加するなど、ウォーブラックメタルにおけるビッグネームの仲間入りをした作品ですね。Conquerorとのスプリット、1stアルバムと地続きにBlasphemyフォロワーとしての確実な歩みを遂げてきた彼らですが、この音源こそが彼らの地位を固めるに至った作品でしょう。またBlasphemyフォロワーでありながら古き良きUSBMの不穏さも取り込んでいるところも素晴らしいです。

■ 平成十八年(2006年)
Proclamation - Advent of the Black Omen
Proclamation - Advent of the Black Omen 

 Archgoatの復帰作"Whore of Bethlehem"も捨てがたいですが、やはりこの年はこの音源しかないでしょう!Blasphemy以降、最大級のフォロワーと断言してしまってもいいでしょう。他にもチルドレンはいますがこの音源はもっと魂的なところまで踏み込んだ作品です。ベスチャルブラックメタルで言えばSarcofagoに対するGoat Semenの存在と対比できるようなバンドであり作品でしょう。何というかどこまでウォーブラックメタル=Blasphemyに忠実にできるか、という問いかけのように感じますしオマージュとかそういうレベルのものでは断じてございません!


■ 平成十九年(2007年)
Damaar - Triumph Through Spears of Sacrilege
Damaar - Triumph Through Spears of Sacrilege 

 最初はTruppensturm - Fields of Devastationを選ぼうかと思っていましたが、これも平成十九年でした。一枚選ぶなら断然この音源ですね。今見たらDiscogsでこの音源高騰し始めてますね。NWN!にはそろそろ再発してもらわないとです。個人的にもCDは持っていますが12インチ盤も欲しいので再発希望です。このバンドがどういうバンドかはガイドブックをご覧いただくとして、とにかく衝動が大爆発しているウォーブラックメタルです。初期衝動とかではなくて過酷なシチュエーションの中で生み出された奇跡とも言える一枚でしょう。

■ 平成二十年(2008年)
Blasphemophagher - Nuclear Empire of Apocalypse
Blasphemophagher - Nuclear Empire of Apocalypse 

 BlasphemyとSarcofagoへのリスペクトとしてBlasphemo + phago(her)という命名にしたとされるイタリアのウォーベスチャルブラックメタルバンドです。このあたりからいわゆるウォーブラックメタルとベスチャルブラックメタルをミックスした作風が増えてきた印象で、その先駆けともいえるバンドでしょう。NWN!は一時期「コグメロ系バンドの再来!」みたいに騒いでいたと記憶しています。また彼らの立ち位置は今までのある意味ストイックなバンドが多かった界隈の中では、アティチュードの側面が薄いのが面白いですね。

⇒ 平成・ウォーブラックメタル vol.3
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平成・ウォーブラックメタル vol.1 

 本日が平成最後の日です。様々なメディアで溢れかえるほどの平成という時代の振り返り記事を目にしましたが、弊ブログウェブジンではウォーブラックメタル(a.k.a. War Metal)に注目して振り返ってみます。ベスチャルブラックメタルは昭和発のものでしたが、ウォーブラックメタルはちょうど平成という時代に確立したジャンルでしたので、今回はウォーブラックメタルに限定して一年に一枚ずつピックアップしながら振り返っていきましょう。基本的には1バンドにつき取り上げる音源は1枚としておきます。この最終日に思い立って書き始めたものですから、ちょっと記事のクオリティとしては低いかもしれませんが、そこは何卒お目こぼしをよろしくお願いいたします。

■ 平成元年(1989年)
Blasphemy - Blood Upon the Altar
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 平成元年はウォーブラックメタル元年でもあったと言えるのが、ウォーブラックメタルというジャンルのパイオニアであり、かつ権化ともいえるBlasphemyのデビューデモテープの存在です(画像は2018年再発盤より)。このデモ音源はこの時点ではまだ彼らのルーツであるBathoryなどの影響が色濃く反映されつつ、かつハードコアパンクの要素も多く含まれたことで、荒々しくもマッシヴでヴァイオレンスな迫力が備わっています。

■ 平成二年(1990年)
Blasphemy - Fallen Angel of Doom
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 早速、一バンド一枚のルールを逸脱してしまいましたが、個人的にはデモ音源よりこちらの作品こそがウォーブラックメタルの決定的な作品の一枚だと思います。というのも前作に対してグラインドコアの要素が入ったことで、別物というと言い過ぎですが、連続性を崩すようなカオスな異質感が作品に備わりました。音楽には必ずルーツや影響というものが作用であろうと反作用であろうと関わってくるものですが、そのような要素が認められるにもかかわらず非連続的なフィーリングを禁じ得ない瞬間、「これは違う…!?」という違和感が発生しますが、まさしくこの1stアルバムこそが狼煙だったと思うのです。

■ 平成三年(1991年)
Beherit - The Oath of Black Blood 
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 この年はBeheritのEPである"Dawn Of Satan's Millenium"の方が大事かな、とも思ったのですがリリースのエピソードなどシーンを彩るプロットとしてもやはりこの曰く付きコンピレーション盤の方かな、と。今考えるとブート盤みたいな作品じゃないですか、この編集盤は。メンバーに無断でデモ音源をそのままコンパイルしているだけなので。自分としても初Beheritはこのアルバムでした。最初の意味不明なイントロからMetal of Deathと連呼するだけの楽曲が始まり…、本当にこの衝撃はこの後、今の今まで一度も味わえていませんね。

■ 平成四年(1992年)
Order from Chaos - Stillbirth Machine
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 ここで少し変化球ですが、このアルバムはオールドスクール・デスメタルの名盤としてもピックアップされがちですが、Black/Deathを跨いだ作品としても有名ですし、Pete Helmkampの初バンドですから当然ウォーブラックメタルの歴史においても重大なアルバムだと言えるでしょう。この時点ではウォーブラックメタルなんていうジャンル名はなかったわけですが、彼らの作風はニヒリスティックな視点で戦争を語っており、後身に大いに影響を与えた傑作ですよね。もちろんこれはジャンルとしてはデスメタルだと思いますけどね。

■ 平成五年(1993年)
Archgoat - Angelcunt (Tales of Desecration)
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 この年はBlasphemy - Gods of War、Beherit - Drawing Down the Moonもリリースされた年でした。特に後者の作品はBeheritが更に高次の領域に足を踏み込んだような作品でしたが、同時にフィジカルなウォーブラックメタルから更にオカルティックな精神世界へ突入していったというイメージでした。一方、同じフィンランドのArchgoat、こちらのEPはまたウォーブラックメタルのグラインド成分について、よりCarcassにフィーチャーしたようなスタイルが組み込まれており、恐らくですがCarcass好きなグラインダーが最も気に入るウォーブラックメタルではないでしょうか。

■ 平成六年(1994年)
Bestial Warlust - Vengeance War 'till Death
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 1994年というとMayhemやEmperorの1stアルバムがリリースされるなどノルウェイジャン・ブラックメタルの隆盛(というかある意味ピーク)を迎えた頃ですが、オーストラリアからそのトレンドに真っ向から対抗するどころか、ジャケットアートのように蹂躙したのがこのBestial Warlustでした。フロリダ・デスメタルの要素も取り入れたウォーブラックメタルスタイルなので、グラインドコアの要素が苦手な人にも受け入れられやすかったと推測しています。フロリダ・デスメタルなんて当時はブラックメタルから最も対極に位置していたものです。そういう潮流の破壊者こそが音楽には重要なのかもしれません。

■ 平成七年(1995年)
Naked Whipper - Painstreaks
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 こちらはウォーブラックメタルそのものではなく、元来グラインド畑からのサディスティックでサタニックなアプローチによってBlasphemyの作風に近づいた名盤です。メンバーは当時のインタビューで「Blasphemyの方がバリエーションが豊かなことをやっている」と語っていますが、まさしくメタル畑からのアプローチと、グラインド畑からのアプローチによるディテールの違いを言及していたのでしょう。この辺りのクロスオーバーな感じがウォーブラックメタルのハイブリットな出で立ちを雄弁に語っているような気がします。

■ 平成八年(1996年)
Impiety - Asateerul Awaleen
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 実はこの1996年、私のコレクションでは特に目ぼしい作品が出てこず、最もこのジャンルに近いもので選ぶとImpietyの記念すべき1stアルバムになりました。スカスカな音質で、どちらかというとプリミティブ・ブラックメタルに近いと思います。私としては3年後にリリースされた"Skullfucking Armageddon"の方を推したいところでしたが、1999年にはとんでもないアルバムが控えておりますので…。

■ 平成九年(1997年)
Deströyer 666 - Unchain the Wolves
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 この年も目ぼしい作品はリリースされておらず、それよりもこのアルバムをあえてピックアップします。Bestial Warlustの分家的なバンドの一つですが、その中では最も有名でしょう。しかし作風はBestial Warlustのそれを受け継いでいるとは言えず、デスメタル成分を濾過してスラッシュ成分を組み込んだような作品と申しますか、ジャケット自体「白い狼」って全く暑苦しくないですよね。この年の不作さや、このアルバムの存在自体、いかに当時、ウォーブラックメタルないしブラック・デスメタルが斜陽にあったかを物語っているような気がします。

■ 平成十年(1998年)
Angelcorpse - Exterminate
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 Pete HelmkampがOrder from Chaosの活動に飽き足らず更にブラック・デスメタルのアプローチを追求したのがこのAngelcorpseですね。確か当時はブラックメタルナイズされたMorbid Angelだなんて言われていた記憶がありますが、まさに彼がOrder from ChaosとRevengeの活動のちょうど間にこのバンドの活動があったのだから、当時リアルタイムで聞いていた人はそう思うでしょうし、やっぱりこのバンドもまたカテゴリーとしてはデスメタルなんですよね。今だからこそウォーブラックメタルの文脈で聞くとまたとても面白い傑作だと思います。

⇒ 平成・ウォーブラックメタル vol.2
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Lust : Apocalyptic Torment (2001) 

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 カナダの独りブラックメタルバンド、LUSTによるミニアルバム(ピクチャーLP)で、オーストラリアのDecius Productionsから限定300枚でリリースされたものです。私はこのLustというバンドはあの有名?な血まみれち〇こ丸出し1stアルバム "Annihilation...Resurrection" (知らない人は調べてみてください)の存在は知っていたものの、まともに聞いたことがないバンドでした。ギリシャのUnholy ArcangelがフランスのKULT(フューネラルドゥームのWorshipの元メンバーだったMad Max氏のもう一つのバンド)と、このLUSTと3way splitを出していたことを知って、初めて脳裏に焼き付いたものの、入手が中々難しいために聞く機会が得られませんでした。

 なので中古レコードショップでこのピクチャーLPを発見した時は大変嬉しかったです。このEPはその3way splitのLUSTサイドのみが収録されたものだったのです。ずっと探していたものを中古で偶然見つけた時の喜びって本当にすごいですよね。探していたものが再発された時も嬉しいものですが、こうやっぱり偶発的なサプライズは刺さります。なのでここ最近では最も思い入れの強い発掘物の一つです。

 内容からは脱線してしまいましたが、まあ例の1stアルバムのジャケットからも想像していた通り、"向こうの人の世界"という感触のある異常性の高いブラックメタルです。「ヒエアー」的な裏返った悲鳴と、「ウゴゲゲゲ」的なグロウルを織り交ぜたヴォーカルスタイルで、かきむしったようなギターサウンドとリズムが取れているのかとれていないのか良く解らなくなってくるドラムが乗ってくるブラック・デスメタルスタイルですけど、実生活でもたまにあると思いますが「あいつ何するか解らない」的な緊張感に支配されています。やたらめたらとカルト・ブラックメタルと評してしまうのは問題かもしれませんが、このバンドには適切な冠名でしょう。

 2005年に2ndアルバムをリリースして以降、バンドの活動は既に停止しており、この数年間は他のバンドでもプレイしていないようですが、レコーディングやミキシングなどでたまにカナディアン・ブラックメタルのバンドに関わっているようです。
タグ: 2001-2005  Canada  Lust 
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Freezing Blood - Baal (2017) 

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 ポーランドのブラック・デスメタルバンド、Freezing Bloodのミニアルバムを紹介。地元ポーランドのブラック・デスメタルレーベルで時折優れた作品を放つOld Templeよりリリースされました。バンド自体は2012年に結成、有名なバンドの経験者こそいないもののローカルなデスメタルバンドなどでプレイしていたメンバーで構成されています。

 メンバー名が"Battery Commander of Hell and Filthy Goat Worshiper of Gomorrah"だったり、この名前の長さときたら間違いなくBlasphemyの影響ですよね。サウンドの方も間違いなく北米ウォーメタルの影響を受けたものになっています。ヴォーカルの迫力もなかなかのもので出だしからグッとくる楽曲ですね。ドラマーのテクニックも目を見張るものがあります。どことなくリチュアルさのあるデスメタルの要素もくみ取れますが、しつくない程度に収まっているから、最後までテンション高く聞き通すことができますし、一方でミドルテンポに落とした時の緩急も味わい深いです。Freezing Bloodということで凍てつくようなブリザードな楽曲かと思いきや、予想外の内容で個人的にはかなりグッドな内容でした。4曲13分弱の収録時間という尺にこそ物足りなさはあれど、続くフルアルバムを期待したいところです。

 …と、締めたいところでしたが、実際調べてみると昨年解散してしまっていた模様です。どうやらドラマーが脱退したことに伴って空中分解したようなのですが正直勿体ない!ポーランドのブラック・デスメタルシーンは興味深いバンドも多いですが、このバンドもその一つだっただけに…。
タグ: Poland  2017 
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