Storms of Unholy Black Mass : Abysmal Lord (2014) 

アメリカはニューオリンズのウォー・ベスチャル・ブラックメタルバンド、Abysmal LordのデビューEPを紹介。
アメリカのHells Headbangers Recordsより12"Vinalでリリースされた。

Abysmal Lord_EP 

 ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブックの第四章 P177で紹介したAbysmal Lordのデビュー作。メンバーのほとんどはGrave Ritualというアメリカのデスメタルバンド出身であり、ダークなオールドスクール・デスメタルというスタイルだったが、サウンドを聞いて判断するに恐らくそちらでは使えなかったアイディアを披露するためにこちらのバンドを作ったのではないだろうか。

 すなわちこちらは非常にグラインドコアの成分の強いウォーブラックメタルスタイルである。バンドメンバーの名前からしてBlack Lord of Fire and Nocturnal Damnationとかなので推して知るべしっていうくらいまずBlasphemyを意識しているのは間違いないだろうし、それにさらにグラインドコアの要素を増したような印象だし、またスラッジコアのようなパートも伺える。

 現にレーベルサイドも「よくある"ベスチャル/ゴートメタルサウンドそのものではない」と言い切っている。つまりオールドスクールなスタイルではないと言っており、ウォー・ベスチャルの2010年代における一つの流れを示しているような作風にも感じる。収録は5曲、25分弱。楽曲的な粗削りさ、まだバンドとしての個性が完全にハマりきっていないなどの様子も伺えるが、「期待の新人」としては上々なデビューEPではあるし、翌年のフルレングスにうまくつなげた作品だと言える。

Encyclopaedia Metallum - Abysmal Lord
タグ: Abysmal_Lord  Blasphemy  USA  2014 
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The Essential : Tinner (2008) 

フィンランドのクラスト/ハードコアバンド、Tinnerのコンピレーション盤を紹介。
日本のReset Not Equal Zero RecordsよりCD-Rでリリースされた。

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 この音源の出会いは惜しまれながらも今年閉店された京都のAVISであった。私自身、生まれて初めて身寄りの全くない関西での独り暮らしが始まり、自分の居場所を模索している中でお世話になった店である。そして小さいフロアの真ん中にカゴか何かに入っていたと思うが「よくわからないCD-R」たちがあった。当時の自分は今よりもジャケ買いをしており、興味本位に数枚レジに持っていったのが馴れ初めというやつだ。

 その頃の自分はクラストというものが何か良く解らず、かつ今のようにネットを通して音楽の情報収集をしていなかったので「Motörheadのような感じかな」と勝手にジャンル分けしていたものだ。しかし何故か当時の自分にはこの音が実に心地良く、その理由がいまいち分からなかった。

 今となっては良く解る。演奏が決してうまくないのだ。この整合感のなさは自分の畑で話すなら初期Sodomにも近いように感じる。いや演奏などは初期だけど音楽性はやや中期みたいな感じかな。それが実に自分の性に遭っていたのだと。この頃既にDischargeだのなんだのとクラストの重鎮を聞いていればまた違っていたのだろうけれども、音楽とは出会いであり、自分にとってクラストの初体験はこのTinnerだったので、自分にとってはこの音源は非常に重要で思い出深い一枚なのだ。BeheritBlasphemyの境界を乗り越えたのは間違いなくこの頃の音源履歴に依るものであった。つまり「混沌」の入り口だったということか。

BeheritにドハマリしてもBlasphemyが乗り越えられない時期があったんです)
タグ: Tinner  Motörhead  Discharge  Finland  2006-2010 
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Sparks of Separation : Formless Devotion (2016) 

南アフリカのブラックメタルバンド、Formless Devotionの1stアルバムを紹介。
インドのCyclopean Eye Productionsよりリリースされた。

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 拙著もシリーズ入りしているパブリブ社「世界過激音楽」のvol.1を飾った『デスメタルアフリカ』によってアフリカのメタルというものが国内でフィーチャーされた。また世界的にはEdward Banchs著『Heavy Metal Africa』が昨年刊行されて話題になっている。この流れはまたネットなどの情報の氾濫による「辺境メタル」の定義のハードルの高まり、アフリカのメタルというミステリアスさなども背景にありそうだ。

 一方で今回紹介するこのバンドは南アフリカのケープタウン出身のバンドで、白人同士のデュオ編成。その楽曲のサウンドはオーソドックスなブラックメタルスタイルで、もはや国名を出さなければヨーロッパのどこかから出たと思わせるような印象を持つ。アルバムの収録時間は7曲33分で、しかもそのうち3曲がインストなのだが、そこまで収録時間の短さやインストの冗長さを感じさせないところにセンスを感じる。

 アトモスフェリックすぎず、リチュアルすぎず、アグレッシブすぎず、メロディックすぎず、綺麗すぎず、どの要素もうまく取り入れながら大仰になることがなくまとまっていて、小さくはまとまっているけれども完成度の高いブラックメタルになっている。但しそのまとまり方に最初に書いたアフリカンメタルへの期待感を裏切ることも間違いない。アフリカのメタルもここまで来ている、とも取れるが、アフリカという情報を取り去った時に特筆すべきアルバムとしてこの先語り継がれていくかどうか?その点では弱い。しかし拙著でもお世話になったCyclopean Eye Productionsからのリリースということで、このセンスについて今後の活動に注目してみたいバンドである。

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タグ: Formless_Devotion  South_Africa  2016 
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Sadomatic Goat Cult : Sadomator (2006) 

デンマークのカルト・ウォー・ベスチャル・ブラックメタルバンド、Sadomatorの1stアルバムを紹介。
ドイツのIron Bonehead Productionsよりlim.550(内50枚はダイハード盤)にてLP盤でリリースされ、2010年にlim.500でピクチャー盤で再発された。その後、2016年にリリースされたbox set「Goat Anthology」にも収録されたことで、だいぶマニアたちにも行き届いたと思われる。

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 実はウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブックの執筆初期にインタビューの依頼をしてOKを貰っていたのがこのバンドであった。ウォー・ベスチャル・ブラックメタルの中でもアナログリリースしかせずにその存在のカルトさを高めていた彼らを掘り下げたかったのだ。しかし残念ながらクエスチョンリストを送った後に全く返信がなくなり、回答を請求しても「そろそろやるよ」の一点張りで残念ながら掲載を見送るしかなかった。(本のリリース後に「忘れてた!今からでもいい?」と連絡がきたがウェブジン掲載でも良いか聞いてみると、やはり返信は無かった)

 閑話休題、そのようにこのバンドは頑固としてCDやMP3といったデジタル音源でのリリースをしてこなかった。昨今のアナログブームならともかく当時は自分もアナログ環境がなく、このバンドの存在を知りながらも聞く手段がなかった。ようやく環境を揃ったときには手に入りにくくなっていて色々探して手に入れたのも感慨深い。そしてその苦労が報われるようなサウンドを持っていた。

 この1stアルバムはSadogoatから改名して一枚目の音源。Sadogoatというバンド名は明らかにImpaled Nazareneの曲名から採ったと思われるが、その後のImpaled Nazareneの音楽スタイルの変化が全く受け入れられないとして(いかにもダイ・ハードな言い分である)、その影響を排除したからこそ改名したのだというのだ。そして残った「影響」はBeherit、VON、Blasphemy、Sarcófago。しかしこの音源のA面の名前は"Goat"、B面の名前は"Vulva"であり、まさにGoat Vulvaの影響が色濃い作風である。

 つまり人を食ったようなブラック・グラインドという感じである。様々なSEやポルノ映画のサンプリングなども混ぜていて、Goat Vulvaっぽい。過去のインタビューでは女性の獣姦モノのポルノ映画を見るのが好きとか答えていただけあるキャラクターの持ち主だけに納得である。しかし根底に先ほど挙げたようなバンドのサウンドがあるだけにウォー・ベスチャルスタイルとしても十分聞かせる内容だ。

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Into The Goat Vulva : Bestial Holocaust (2012) 

ボリビアのベスチャル・ブラックメタルバンド、Bestial Holocaustの3rdアルバムを紹介。
アメリカのMetalhitよりCD盤でリリースされ、Iron Bonehead ProductionsからLP盤がリリースされた。

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 1stアルバム2ndアルバムも絶賛してきた本バンドの3rdアルバムは実はずっと手に入れそびれていたもので、今Discogsで見てきたのだけどやっぱりCD盤は弾数が少ないのかネットでもあまり流通していない印象があった本作。リリース当時はLP再生環境がなかったものでCDで欲しかったんだよね…。

 さてリリースから数年経って手に入れた時には既にバンドも解散していて。本作リリース翌年に解散したのだとか。そういうことを知ってから聞いているから先入観甚だしい訳だけど、やっぱりこう不協和音みたいなものを微かに感じ取れて、特に一曲目はいつものBestial Holocaust節ではないんだ。キレがないというか、更にディープな作品に挑戦したのか。但しそれがこのバンドの良さを下げている。

 アルバム収録の中にはこのバンドらしさが良く出ている曲ももちろん収録されていてそれはかっこいいんだけど、うーん、やっぱり1stや2ndアルバムの方が切れ味があるかな、という物足りなさも含む。アルバム全体で畳みかけてくるような感じでないのと、Sonia Sepulcralのヒステリックなヴォーカルスタイルにも陰りが見られ(グロウルとかで今までにないスタイルは披露しているものの)、音源一枚としてはパワー不足なんだな。

 どうだろう、先入観がなければもっと楽しめる作品だったのかもしれない。ただやはりこの作品含めて解散劇の惜しさ、悲しさが募ってしまう。なおSonia Sepulcralは一時期一線から引いていたようだが、今年ドイツのウォー・ベスチャルブラックメタルバンド、Sacrilegious Riteの1stアルバムにゲスト参加しており、これからまた復活してくれるか楽しみである。

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タグ: Bestial_Holocaust  Bolivia  2012  Sacrilegious_Rite   
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Der Teufelsbund : Charnel Winds (2011) 

フィンランドのブラックメタルバンド、Charnel Windsの1stアルバムを紹介。
フィンランドのWerewolf Recordsよりリリースされた。

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 メンバーはAzazel、Blood Red Fog、Vergeといったフィンランドのブラックメタルバンドの人脈で構成されており、いわゆるフィニッシュブラックメタルを想定して聞いてみると、解りやすいメロディや疾走感といったキーワードとは無縁なブラックメタルサウンドで驚かせる。オカルティックな雰囲気を蔓延させつつもプログレッシブに聞かせるパートまで飛び出すなど、かなりテクニカルで奥深いサウンドを披露している。

 当初、フィニッシュブラックメタルの流れを想定して聞いてしまうと、そのメロディの地味さによるギャップが大きいため、この奥深さを見誤りそうな作品ではある。若干そのあたりが勿体ない。(といってもメンバーに何の非もなく、単なる先入観である)

 エキゾチックなパートは若干Orphaned Landの名盤1stのようにも聞こえるなど、彼らの引き出しはかなりのモノがあるように感じる。クリーンボイスもこの作風なら問題なく受け入れられる有効な使い方をしている。オーソドックスなブラックメタルとして聞くというより、もっとプログレッシブな作風を好む人に受けそうな作品だし、また繰り返し聞くことでそのディテールも楽しむことができるアルバムだ。

 これを聞きながらバンドの最新情報を追っていたら、何と今年の6月に6年ぶりにして2ndフルアルバム"Verschränkung"がフィンランドのFeuer Publicationsよりリリースされていた。視聴してみる限り、1stアルバムの方向性を保っているようであり、1stアルバムが気に入った人なら2ndアルバムも要チェックである。

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タグ: Charnel_Winds  Azazel  Finland  2011 
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