Interview with Voltaire 666 from DEIPHAGO 

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 拙著「ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック」にて当該ジャンルの再重要バンドの一つとして2ページに渡り取り上げたフィリピン出身(現コスタリカ)のアジアン・ベスチャル・ブラックメタルバンドDEIPHAGO。紹介文末に「今後の来日にも期待される」とダメ元で記述するや否や、来日が決まった。というのも本を出して間もなく、メンバーのVoltaire 666氏より「記事の写真が欲しい」という連絡を受けて以来やり取りが続いていた折、来日の話(相談)を受けたので内心驚いたという顛末である。しかし何より関係各位の方々のご尽力があって「オーディオ拷問絶滅兵器」の来日が実現したわけであり、せめて自分も何かこの来日の成功に僅かなりに貢献して、今後のウォー・ベスチャル・ブラックメタルバンドの来日や日本における当該ジャンルの盛り上がりに繋げていければと思い、氏にインタビューを打診したところ快諾を受けたのでご覧いただこう。



―日本のエクストリームメタルマニアたちはDEIPHAGOのアジアツアーに日本でのショウが追加されると聞いて以来、浮き足立っています。日本に来るのは初めてですか?
 
 お初にお目にかかる!今回が初めての日本だから楽しみだよ!

―日本のイメージについて教えてください。

 サムライたちが切腹する前に行った寺(※1)を見に行くのが楽しみだよ。日本はフィリピンのように武神のいる国だ。伝統と膨大な文化遺産は必見だね。

―まず結成当時のことを振り返ってもらえますか?シンガポールのABHORERIMPIETYのようなブラック・デスメタルバンドは東南アジアのアンダーグラウンドメタルレジェンドとしてよく知られていますが、その頃のフィリピンにもメタルシーンのようなものはあったのでしょうか。

Deiphago-demo 1991 俺たちはSATANASとして1989年にフィリピンにブラック・デスメタル・シーンを作り出したのだ。その後、1990年にDEIFAGOと名前を変えて1991年に1stデモをリリースした。その頃、Occult Grinder Zine (※2) のマコトとコンタクトをよくとっていたものだよ。彼は俺たちに第3号でインタビューをしてくれたんだ。更に1993年と1997年にそれぞれ1本ずつデモをリリースしたんだが、これらはせいぜい身内と同志にしか出回っていないものだよ。ライブは国内でかなり精力的にやっていて、フィリピン国内でローカルなバンドであるKAMBINGEBWAとブラックメタルサークルを結成していたよ。

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―初期DEIPHAGOSARCOFAGOHELLHAMMERのようなサウンドで、徐々にBLAPHEMYBEHERITなどブラック・デス・グラインドの影響を受けたスタイルに変わっていきましたが、丁度その頃、実際フィリピンでそのようなバンドの音源をどうやって手に入れていたのでしょうか。

 その頃はたくさんのバンドとトレードをしていたよ。その頃、自分はWarewolf Zineというファンジンを作っていて、プロモデモも手に入れてたな。実際コンタクトした相手はEuronymous(MAYHEM)、BEHERIT、IMPALED NAZARENE、MARDUKなどだな。彼らがまだフルアルバムを出していなかった頃のことさ。彼らのなかには他のバンドの音源も入っているカセットを送ってくることもあったな。あとBEHERITDawn of Satan’s Milleniumの7インチは初リリースだった当時に直接Turbo Musicから購入したよ。
 
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―一方で1998~2004年に活動を止めてしまいます。コスタリカに移住したことと関係はありますか?

 フィリピンでの生活は他の国より多くの異なる文化に囲まれる。きっと君もバンドで飯を食べていくことはできない。我々は今後の己らの活動をやっていくためにフィリピンを出る必要があったんだ。活動を止めていた理由は自分たちの基準を満たすようなドラマーが見つからなかったからだよ。

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―1stアルバム”Satanic Eon”の再発予定はないのでしょうか。2ndアルバム”Filipino Antichrist”やAbigailらとのスプリットは知られていますが、現在1stアルバムは日本では手に入れにくいのです。

 カナダのVon Frost Records (※3) から6月にテープで再発するよ。100本の限定になる予定だ。ダイハード盤はサタニック鉄十字のペンダントが同梱される。売り切れる前に予約しておくんだね。

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―2ndアルバムはレーベルの紹介で「the ultimate annihilation in audio torture(オーディオ拷問での究極的絶滅(兵器))」と呼ばれていました。私もそう思います。あれはどうやって作ったのでしょう?何を動機やベースに作ったのですか?サタニズム、アンチキリスト、東南アジアのプライド、怒り、憎悪…?

 ”Filipino Antichrist”がリリースされたころを振り返ってみよう。我々を超えるようなハーシュノイズのバンドは居なかったし、今でもなおそうだと思う。あの時、俺たちは未だかつてないカオスなアルバムを出そうと思っていた。そうして最もサタニックで邪悪な音楽がレコードに刻まれ、2ndアルバムとして世に生み出されたというわけだ。あの作品は俺たちの歩みにおいてクラシックなものであり、世界中の多くのバンドに影響を与えたんだ。

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―3rdアルバム”Satan Alpha Omega”と4thアルバム”Into the Eye of Satan”は前作より深いカオスなスタイルになっていますね。私にはSIEGEのようなハードコアのスタイルを取り入れたような感じたのですがどうでしょう?

 2ndアルバムをリリースした時には既にブラックメタルにおけるSIEGEとか呼ばれたこともあったな。3rdや4thアルバムはカオスな狂気を含みながらももっとテクニカルな音源だよ。もし俺たちの音源全てを続けて聞いてみたら1枚ごとに新たな進化を目にすることだろう。誰も俺たちのような音は出していないし、また自分たちも他のバンドのような音は出していない。俺たちは唯一無比のDEIPHAGOなんだ。「オーディオ拷問での究極的絶滅(兵器)」である、ね。

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―日本で最も楽しみにしていることは何ですか?
 ステージでのプレイ、そして冒涜に徹することだ!

―アジアツアーでの目標はありますか?
 アジアの連中に音楽と共鳴した暴力を加えることだ!

―アジアツアーをマテリアルにライブ動画や音源を作る予定はありますか。
 考えてみたい。実際のマテリアル次第だね。

―最後に日本のメタルマニアたちにメッセージをどうぞ。
 黒き炎を燃やし続けろ!俺たちをサポートしてくれる日本のマニアたちすべてに感謝しているよ!

―ありがとうございました。3月、ぜひ日本でお会いしましょう!



注釈
※1:赤穂浪士の葬られた泉岳寺のことを指していると思われる。
※2:日本の90年代初頭に活動していたブラックメタルバンドOHURA-MAZDOのメンバーであるMakoto Takeuchi氏によるファンジン。日本におけるブラックメタルのファンジンとしてはかなりの老舗として知られている。1994年に発行された第四号はウェブ上でアーカイブ化されている。
※3:カナダのアナログ専門リリースレーベルVon Frost Records。筆者は本のリリース時にオーナーと交流を始めてトレードも行ったが、誠実な対応が期待できる良レーベルである。



 改めてまさか日本でDEIPHAGOが見られる時代が来るなんて想像もしていなかった。これは快挙である。同時に文字通り「またとない」機会である。読者の方の中にはこの来日に対する意味を解らない人もいると思うので紹介しておくと、「ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック」で紹介したバンドの中でも特に過激で強烈なサウンドを持つバンドであり、当該ジャンルの第一人者たちであるBLASPHEMYBLACK WITCHERYなどのメンバーからも大絶賛されている。その理由の一つはインタビュー中にも触れたオーディオ拷問兵器と言わしめた2ndアルバムの存在である。



 更にバンドはこの2ndアルバムに留まらず、1989年から続く長いキャリアの成果として現在、4thアルバムまでリリースして、そのサウンドは深化を続けている。このアジアツアーにおける日本来日はその真価を目の当たりにする絶好の機会である。筆者も両日参加予定である。また来日ツアー記念としてコンピレーション盤"Anthology - E.P. AND SPLITS (2006 - 2012)"がOBLITERATION RECORDSより1000枚限定でリリースされる。2006~2012年の彼らのデモ、EP、スプリットからの編集盤であり貴重な音源が多数収録されている。来日ツアー両日、会場で先行販売されるらしいので是非ゲットしてショウを楽しもう。

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2017/03/25(土)  新大久保EARTHDOM e-plusなど
2017/03/26(日) 新横浜El Puente (当日券のみ)

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Anthology - E.P. AND SPLITS (2006 - 2012)
2017年3月31日発売(会場先行販売有)
タグ: Deiphago 
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Sacrilegious Fornication Masscare... Filthy Desekrators! : V/A (2016) 

日本のブラックメタル・ヤクザ、Abigailと韓国のウォー・ブラックメタルバンド、Nocturnal Damnationのスプリット盤を紹介。
ポーランドのPutrid Cultからlim.500でリリースされた。

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 拙著掲載のインタビューにてNocturnal Damnationのメンバーからリリースすると公言されていたスプリット盤で、双方2曲提供の4曲入りとなっている。夏にリリースされた5thアルバムに対してこのスプリット盤は10月末にリリースされたわけだが、何やら凄いらしいと小耳に挟みつつも国内になかなか入ってこなかったために私自身は今年になってようやく手に入れて目をひん剥いた。

 Abigailサイドの1曲目が今までの彼らの作品のどれよりもブルータルなメタルになっている。用いられているリフやブリッジなどは元々の彼らの路線であるが、ドラムの強烈さもあわせて全体の圧が凄い。ひたすら圧倒される。いわゆるウォー・ベスチャルにも肉薄しているようなカオスさも持ち合わせた傑作だ。2曲目の煽情的なブラック・スピードメタルもまた素晴らしい。何しろタイトルが"We are True Evil"である。これら2曲はスプリットにしか収録されないのだとしたらちょっと勿体ないのでは、と思わせるほど。

 Nocturnal Damnationサイドは彼の新境地とも思わせるオールドスクール・デスメタルを思わせるスタイルに踏み込んでいて、当初のBlasphemy~Conquerorの影響とは異なり、もっとスロウに磨り潰しにかかってくる。ヴォーカルスタイルもより重く低いグロウルに変わっているように感じる。そういえば彼はSadistic Intentの影響を受けていると言っていたが、まさにその辺りを突いてきている一方で、それをもっとへヴィにバスブーストで仕上げたという感じだろうか。

 とにかくAbigailサイドの素晴らしさが際立っている一方で、クラシックなサタニック・デスメタルを選択したNocturnal Damnationの方向性も含めて実に興味深いスプリットである。

Encyclopaedia Metallum - Abigail
Encyclopaedia Metallum - Nocturnal Damnation
タグ: Abigail  Nocturnal_Damnation  Japan  Korea  2016 
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The Final Damnation : Abigail (2016) 

日本のブラックメタル・ヤクザ、Abigailの5thアルバムを紹介。
アメリカのNuclear War Now! Productionsよりリリースされた。

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 漆黒をバックにChris Moyen氏のアートワークという出で立ちでAbigailの新譜が発表されてビビッと来た人は多いだろう。ブラックメタルをプレイするAbigailが戻ってきたのではないかと。1stアルバム"Intercourse & Lust"以前のスタイルは、例えば以前紹介したDrakkar Productionsリリースの”The Early Black Years (1992-1995)”で聞くことができるが、2ndアルバム"Forever Street Metal Bitch"から近年までのイーヴルなスラッシュメタルをベースにしたメタルパンク路線より、その源流となるVenom、Bathory、Bulldozerあたりの1st waveブラックメタルスタイルであった。

 この5thアルバムはそのような原点回帰を図ったという話だったが、いやいや聞いてみるとそんなAbigailたるオリジナリティを捨て去るようなことはしていない。確かにルーツのブラックメタル・スタイルはリフやヴォーカルスタイル、ヘヴィネスさに顕著に現れている。しかしそこに2ndアルバム以降のらしさも失われていない。むしろ築き上げたものは健在である。その結果としてイーヴィルかつヘヴィでありながら軽快さ・煽情さも味わえるアルバムに仕上がっている。#06"No Pain! No Limit!"の日本語歌詞も実に熱い。

 また曲中の展開、アルバム全体のバリエーションなどなど国内外のマニアたちを感服させてきた絶妙なバランスはパワーアップしており、今年結成25周年を迎えたバンドとしての気焔を見せつけてくれた快作と言えよう。感服。

Encyclopaedia Metallum - Abigail
タグ: Abigail  Japan  2016  個人的良盤 
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いいえ、その逆です。 : OLEDICKFOGGY (2011) 

日本のサイコビリー/パンクバンド、Oledickfoggyの4thアルバムを紹介。
日本のDIWPHALANXよりリリースされた。

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 前作 "Rusticが止められない” から二年を空けてのフルアルバムで、個人的にはこのアルバムがある種彼らのハイライトに見えている。ライブでも頻繁に披露する「カーテンは閉じたまま」「チブサガユレル」「blow itself away」「暗転」など多数の名曲が収録されており、一方でこの次以降の作品への布石となるような楽曲も含まれており、バラエティに富んだラスティック・フォーク・パンクが存分に楽しめる。

 が、一方で実はその「次以降の作品」からどうものめり込めない自分がいた。恐らく「(自分が勝手に)期待するOledickfoggy像」からのズレに戸惑っていたのだと思う。この固定観念は非常に邪魔なものではあるのだが拭い去ることはできない。このアルバムは掛け値なしの名曲だと時に興奮、時にしんみりとOledickfoggyにぞっこんになりつつも、同時にのめり込めない楽曲の混在がふと我に返ってしまう要因になっている。

 こんなことを綴ったのも実は今、昨年にリリースされた "グッド・バイ" を聞きながらこのインプレッションを書いているからだ。またいつかそちらの感想は書くこともあるかもしれないが、彼らの作品であることは間違いない。洒脱な歌詞といい、サイコビリー的でパンクな楽曲も健在だ。わかる、わかるんだけど。あのときに聞いた衝撃がない。特に古参のファンでもなく、何も偉そうなことは言えない。自分が好きなそれは彼らの変化、進化を前に老害の嗜好でしかないのかもしれない。老兵は黙って去るべきかもしれない。それでもなお立ち去らせてくれないだけの魅力がある。未練がある。みっともないかもしれないけどそれでも黙って次の新譜を待つしかない。グッド・バイは難しい。
タグ: Oledickfoggy  Japan  2011 
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Existence of Abhorrence : Nuclearhammer (2007)  

カナダのウォーブラックメタル、Nuclearhammerのデモ音源を紹介。
カナダのPoison Mist Propagandaよりlim.80でCD-rフォーマットでリリースされ、後にエクアドルのBlack Goat Terrorist 666よりテープで再発された。

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 1stアルバムがウォーブラックメタルフリークから大絶賛され、一気にブラック・デスメタル・シーンの第一線に登り詰めた一方で、その後のミニアルバム、2ndと予想を斜め上にいくスタイルへの転身を遂げて、しかもそれらの作品も素晴らしかったために、一筋縄ではいかない、スタイルへの安住を良しとしないという印象を持つバンドではある。

 一方で以前紹介したこのバンドの前年デモ "Immortalized Hatred” は呪詛的なVONの要素とBlasphemyライクのブラック・デスメタルをミックスしながら轟音ブラック・ドゥームのような展開も見せた粗削りスタイルだったが、こちらはより原初的なスタイルを取っており、極めてルーツに忠実な姿勢が見られる。というか、これは北米のBeheritといっても良いのではないか。いや、BeheritBlasphemyをトレースしたら、という方がより正しい気もする。ウィスパーボイスの使い方などBeheritウォーシッパーらしさが伝わってくる一方で、ドラムのドカドカ感などはウォーブラック、というかBlasphemyのそれのように感じる。

 近年におけるウォーブラックメタルの名作であった1stアルバム "Obliteration Ritual" の導線としては最も解りやすい内容を提示しているのがこのデモであり、彼らのマイルストーンというわけだ。さてこのデモは現在フィジカルで入手するのは全く至難の業だが、 "Immortalized Hatred” と同様にレーベルでの無料DLが可能で、筆者もそこでDLした。たぶん今も可能だったと思うが未確認なので興味がある人は確認されたし。

Encyclopaedia Metallum - Nuclearhammer
タグ: Nuclearhammer  Beherit  Blasphemy  Canada  2006-2010 
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Devanation Monumentemples : Genocide Shrines (2012) 

スリランカのウォー/ブラック・デスメタルバンド、Genocide ShrinesのデビューEPを紹介。
インドのCyclopean Eye Productionsよりリリースされ、アナログver.はドイツのIron Bonehead Productionsよりlim.500でリリースされた。

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 ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブックにインタビューが掲載され、また1stアルバムが世界中のブラック・デスメタルフリークから大絶賛されたスリランカのアンチ仏教ブラック・デスメタルバンドのデビューEPである。こちらはこれまたインタビューが掲載されたレーベル、Cyclopean Eye Productionsからリリースされておりそのあたりはぜひ本を読んでください。

 さてインドのDIYレーベルからリリースされたというわけで、当時の日本でこのバンドを知っていた人は少なかったと思うし自分もそうだったわけだけど、この頃から「坊さん皆殺し」を掲げて、こんなにも「地獄」というか「輪廻の否定」を感じさせるサウンドをスリランカから出していたというのは本当に驚きでしかない。

 1stアルバム収録曲に比べると楽曲の展開や曲間のつなぎなどのトータルの仕上がりのところで粗が目立つけれども、目の前の事象に対する「渦巻く感情の発露」と置かれた状況への「冷徹な視線」という相反する感情が両立しているようなサウンドは既に確立していて非凡さを感じる。1stを聞いて彼らのサウンドに惹かれた人なら間違いなく期待を裏切らない。

 さらに個人的には今まさにこれを聞いて当時からとんでもないバンドがスリランカで存在していたんだという事実が広大なエクストリームメタルの裾野、広がり、そして局在を証明しており、今も自分のあずかり知らぬ何処かで強烈なサウンドが生まれているのだろう。そのような未知なるサウンドへの憧憬を信じることができる作品だ。

Encyclopaedia Metallum - Genocide Shrines
Bandcamp - Iron Bonehead Productions
タグ:   Genocide_Shrines  Sri_Lanka  個人的良盤  2012 
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Contos da Empalacao : Kaziklu Bey (2012) 

ブラジルのウォー・ブラックメタルバンド、Kaziklu Beyの4thデモを紹介。
ブラジルのNocturnized Productionsよりテープでリリースされた。

Kaziklu Bey 

 1997年にサンパウロで結成した白塗り系ブラックメタルバンドで、2000年に"Black War
Metal"というデモでデビューした。今回紹介しているデモは通算4枚目にして彼らの"最期"の作品。

 スタイルとしてはノイジーな南米ベスチャルスタイルであり、デビューデモのタイトルから直感的に想像するサウンドとは異なるものの、冒涜的で暴力的という点では近い。但し90年代のブラジリアン・ブラックメタルはヨーロッパからの影響のうち、特にHellhammerに感化されていたのではないかと勘ぐらせるようなミステリアスなメロディを持っており、このバンドも同様にそのあたりの影響を感じさせる。北米ウォーメタルというと現代兵器を用いて皆殺し的なサウンドであり、ドカドカジャカジャカなのにどことなくカルトで怪しいのが南米ウォーメタルというところだろうか。

 この怪しさというのは人によっては単なる「虚仮威し」に過ぎないだろうし、ImpurityMystifierクラスまで上り詰めないと、人に推薦できるファクターにはなりえないわけだけど、この内容を「珍味」として好む人は絶対いるわけで、それもやはり南米ベスチャルブラックメタルの一つの楽しみ方なのではないだろうか。なお先ほど"最期"と書いたのは、2013年にパーマネントメンバーが仕事中に事故で亡くなり、同年バンドはヘルプを招聘して「解散」ライブを行ってR.I.P.としたからである。合掌。

Encyclopaedia Metallum - Kaziklu Bey

Deathrash Armageddonにて購入可能です。
タグ: Kaziklu  Bey  Brazil  2012 
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Confusion... : Esperanzaviva (2012) 

日本・大阪のレイジングハードコアバンド、Esperanzavivaの1st EP(7")を紹介。
名古屋のKarasu Killer Recordsよりリリースされた。

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 当時からよく名前を耳にしてライブが凄まじくカッコいいと聞いていたものの、残念ながらタイミングなどが合わず見に行くことはできなかった。その心残りがシコリとなっていたため某大手中古CDショップにて見つけた時は即決購入。

 勢い一辺倒というと軽んじた評価に聞こえるかもしれないが、小細工なし、装飾なし、従来の日本のハードコア・パンクの流れを踏襲しつつ、スラッシュメタルに通じるメタリックなリフを組み込んでメタルファンも虜にする『一本調子』は実際只者ではないし、収録曲5曲、計11分はあっという間に過ぎていく清涼感がある。

 またその『一本調子』についても#05に関してはまた幾分異なった側面も示すことで、溢れんばかりの若さだけではないところも見せつけてくれ、いよいよ生で見てみたいし、フルレングスにも期待した…かったのだが、いまさら2015年11月にラストライブだったとのこと。こういう後悔があるから若い人は気になるライブにはどんどん参加してほしいとオジさんは思うのだよ。
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ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは何か - III - 

⇒ 「ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは何か - II -

■ Sarcófago以降のブラジリアン・ベスチャル・ブラックメタル

 アンダーグラウンドにおいて大きな衝撃を与えた1986年リリースの4-wayスプリット "Warfare Noise I" 、そして特にその収録バンドの中でもSarcófago(1985年結成)はメタルのエクストリーム化という観点において当時の極大値とも言える存在となり、サタニックな作品コンセプトと、アーティスト写真など多大なる影響をブラジル内外に与えた。海外への影響は後述するとして、まずブラジル国内の同時期にデビューしていたバンドについて注目してみよう。

 ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブックにて紹介した、Necrófago(1986年結成)、Sextrash(1987年結成)の紹介は割愛するとして、ここでは未紹介であったバンドについて触れておきたい(なぜ未紹介であったかというと筆者が音源を所持していなかったため)。まずはSextrashとメンバーが大いに被っていたInsulter(1986年結成)だ。あまりにもメンバーが重複していたため後年、Sextrashの前身という噂も出たがあくまで別バンド。2ndデモ"Black Church"にはSarcófagoの1stアルバム"I.N.R.I."で壮絶なドラミングを披露して名作と呼ばれる一因となったD.D. Crazyも参加している。Sarcófagoの流れをしっかり汲んだベスチャル・ブラックメタルだ。



 当時、ブラジルはある種の時代遅れなスラッシュメタルバンドが次々と現れ、それが逆に他の国からすれば貴重なカルト・スラッシュメタルバンドの産出国に見えていたわけで、その中でこのようなスタイルのバンドも同時に流出されたのだから聞く人によっては「聞くに堪えない」メタルだっただろう。Insulterも近年まで決して注目されてはいなかったが、00年代以降のベスチャル・ブラックメタルスタイルの再評価の機運が高まった結果、2012年に再結成を果たさせた。そして2015年には彼らの残していた4枚のデモをまとめたコンピレーション盤"Blood Spits, Violences and Insults"がNuclear War Now! Productionsからリリースされ、当時の偉大なレジェンドの一つにまで見直されたわけである。

 そのように当時はスラッシュメタルからの逸脱によって評価されない側面もあった中で、もう二つのバンドも紹介しておきたい。Exterminator(1986年結成)とNecrobutcher(1988年結成)だ。ExterminatorSextrashの中心人物Freddy Krueger氏が在籍していたバンドで、たった1枚のフルアルバム"Total Extermination"しか残していない。このアルバムはブートを除いて公式な再発盤が出ていないのだ。オリジナル盤はlim. 900しか出ておらず、これを持っている人は相当なコレクターであろう。まずジャケットにハーケンクロイツがある。Holocaustoはもちろんのこと、MutilatorやマイナーなところではEscola Alemãなども挙ってナチスをテーマにして過激化を追求していた時代のことだ。この辺りは当時のファンジンを読み漁ると内外から色々な見解が出てきて面白いが、ほとんどの場合はショック用法のような使い方をしていたようだし、その安易な姿勢に呆れているバンドもいたようだ。さてはて中身の方はというといわゆるブラック・デスメタルになっていて時代を先取りしている。南米におけるカルトメタルの枠から更に這い出ようとする姿勢が実に興味深い。



 Necrobutcherは他のバンドが大抵、ベロ・オリゾンテ出身だったのに対して西海岸のフロリアノーポリス出身のバンドであるということに面白さがある。ベロ・オリゾンテから1000km以上で、日本で例えると東京から九州内陸部程度までの距離である。フロリアノーポリスはメタルが全く盛んではなく、Encyclopaedia Metallumで検索してみてもブラックメタルどころかメタルバンド自体が歴代数えるほどしか存在していない。その中でこのバンドは明らかにSarcófagoの影響を受けたルックスであることが面白い。更に楽曲はグラインドコア並みのスピードと楽曲の短さ、そしてもちろんSarcófagoを思わせるイーヴィルなサウンドが面白い。



 このように当時のメタルシーンは地域性によって物理的距離による障壁から成り立っており、その中で逸脱するバンドの面白さがベスチャル・ブラックメタルを生んだ。更にその物理的距離の障壁を超えたところに波及した時、その新たな地域における化学反応が異なるサウンドを生んでいたと考えられるわけだ。ちなみにウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブックでインタビューが掲載されたImpurityGoatpenisはまさにその二つを体現したバンドで、Impurity(1989年結成)はベロ・オリゾンテの生き証人であり、Goatpenis(前身1988年結成)はNecrobutcherと同様のサンタカタリーナ州のブルメナウ出身であるのが実に面白い。スタイルもまさに前者はトラディショナルなベスチャル・ブラックメタルを基盤とし、Goatpenisはグラインドコアを基盤としながら南米ベスチャルスタイルとの混和で新しいウォー・メタルスタイルを提示したわけだ。他にブラジルの北東部に位置するサルバドール出身のMystifierSarcófagoからまた一歩先のスタイルを持っていたわけだが、この辺りは本でも網羅してあるので是非読んでいただきたい。

 さて今回はブラジリアン・ベスチャルブラックメタルのバンドを音を交えて紹介することで、そのローカライズされたメタルスタイルとエクストリーム化による逸脱によって、新たなスタイルとしてブラジリアン・ベスチャルブラックメタル・スタイルが出来上がったことについて説明してきた。となると当然次に話すべきなのは同じ南米という地域性は同じにして、かつ異なるシーンを形成した他の南米諸国…特にコロンビアやペルーについて言及しなくてはなるまい。それはまた次回。

⇒ 「ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは何か - IV」
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