Goat Worship - III 

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■ 様々なGoat Metalの形 - バンド名編 その2

 前回はGoatlord、GoatPenis Goat SemenといずれもGoat界隈においては王道バンドを紹介したが、引き続きバンド名にGoatを冠するバンドを紹介していこう。

 オランダのFuneral Goatはex-Sauronのメンバーによって構成されていて、音楽性はArchgoatに近いロウブラックメタルだが、曲調を落とすとHellhammerっぽさも出てくるのが特徴。歌詞を見てみるとほとんどが単語の羅列でしかなく、ひたすら天に唾棄するだけの音楽だ。"Goat Metal"好きには残念なことに昨年改名してIbex Angel Orderとなった。オカルティズムにフィーチャーしたブラックメタルらしく、新作も完成しつつあるようだ。

 ブラジルのMighty Goat Obscenityは白塗りならぬ赤塗りのペイントを施していることが特徴のバンド。サウンド自体にオリジナリティは全くないが粗暴で南米らしい演奏と北欧ブラックの合わせ技のようなスタイル。とりあえず見た目ありきでかっこいい。

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 チリのGoatoimputiryは完全に初期BeheritフォロワーなサウンドでGoat WorshipというよりかはBeherit Worshipという感じである。ボーカルスタイルなど含めてトレースに近いのだが、それも含めて楽しく聞ける。昨年、新EPを出したがカセットテープでチリの地元アングラレーベルからリリースされており、さすがに手が出なかった。

 カナダのGoatwarは正直、相当にヒドいブラックメタルで、様々なプリミティブブラックの死線を潜り抜けてきた人でも「こいつはヒドイ!」と唸らせるパワーを持った強力なバンドで、活動も完全オブスキュアなバンドである。1996年に結成して二枚フルレングスを出しているが、いつの間にか解散していた。しかし昨年、オーストラリアのTotenwerkというレーベルから突然"Untitled"と題したテープがlim.23 (!?)でリリースされたが新作なのか至って謎である…。

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 他にデンマークのSadogoat、ロシアのBlack Goatあたりは比較的この界隈では有名なバンドだが、私が聞いていないため今回は取り上げていない。

goat11.jpg 未聴といえば最近出てきたGoatバンドで注目しているのはGöät Dëströyër 666というオーストラリアのバンドだ。何しろバンドメンバーの名前が、Goatzilla、Ghoatst、Goatlord、Goatkuというステージネームらしい(笑)。昨年結成の新しいバンドで、今までに二枚のデモをデジタルのみでリリースしてるが、なかなか良いGoat Soundを持っているし、何しろBandcampでNYPなので気になる人は一枚フリーでDLしてみてはいかがだろうか。もし気に入ったら二枚目はお金を落としてあげてほしい。

 なお、Goatといえば有名なGoatmoonGoatwhoreなどもいるが今回はあえて割愛させてもらった。


■ 様々なGoat Metalの形 - アルバムタイトル編

 アルバムタイトルで最もこのテーマにあっているのはNunslaughterの2ndアルバム"Goat"だ。ブラックメタルにも親和性の高いサタニックデスメタルをプレイしている非常にストレートなタイトルで、1987年以来とてつもない量の音源を出している中でもGoat Metalを嗜好する人ならぜひ手に入れておきたい。また1stアルバム"Hell's Unholy Fire"のジャケットも一家に一枚と言っておこう。

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 Goat界隈に多大なる影響を与えてリスペクトを受けているのは先のArchgoatBeherit、そしてもう一つがフィンランドブラックのレジェンドであるImpaled Nazareneだ。初期作品に"Goat Perversion"と"Sadogoat"というEP盤をリリースしており、後に同名バンドが出てくるに至った。また1st、2ndアルバムにもたくさんのGoat関係の曲名、歌詞が残っている。基本的にImpaled Nazareneは非常に下品な表現をわざと使っていることが多く徹底的に冒涜の限りを尽くそうとしている関係で"Sado-Goat"という単語を用いていたようだ。

 さて毛色を変えて次はアメリカのGrand Belial's Keyのデモ"Goat of a Thousand Young"だ。音楽性は今まで紹介したGoat Metalとはかなり異なり、Mercyful Fateの影響を大いに受けつつ独自に完成させたサウンドである。このデモの収録曲もかなりユニーク。その後の1stアルバムに比べてサウンドのヘロヘロ感があるのも初期デモらしく面白い。

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 近年出たアルバムの中でGoat MetalらしいアルバムといえばNecroholocaustの"Holocaustic Goat Metal"やNihil Dominationの"Sado Perverser Goat Insulter"あたりだろうか。両バンドとも歌詞テーマにGoat Worshipを掲げており、最近のGoat Metalシーンの中では最重要バンドと言って過言ではないだろう。

 Necroholocaustはカナダらしい突進力のあるブラッケンデス/ウォーブラック。最新作をLPとデジタルでリリースしておりCDリリースがないのが残念だが、このアルバムではデンマークのSadogoatの曲をカバーしているなどニヤリとすること請け合いの作品。

 Nihil Dominationはエクアドル産のかなりグラインド色の強いブラッケンデスメタルで、日本のDeathrash Armageddonから国内盤がリリースされているのでご存知の方も多かろう。しかし今回のコラムを書くうえで最近の動向を再確認したらいつの間にか解散していた…。2013年にGoatbaphometという、これまた我々をくすぐるバンドとスプリットをリリースしたのが最後であった。ちなみにGoatbaphomet自体はNihil Dominationのサイドプロジェクトで印象としてはもう少しウォーブラック色が強くなった感じである。いずれにしても彼らの活動の再開を切に願う。

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■ 終わりに

 今回は前回に引き続きバンド名やアルバムタイトルなどで"Goat"を使っているものについて紹介してみた。有名なものから比較的マイナーなものまで取り上げてみた。何かしら琴線に引っかかるものがあればぜひチェックしてみてほしい。

 次回は今回紹介したもの以外で曲のテーマにGoatを採用しているバンドなどを紹介して、では"Goat Metal"とは何か、まとめることで本稿の終わりとしたい。遅筆ですがよろしくお願いします。

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コラムを締める前にGoat Worship特集と題して単独で音源を取り上げる記事を複数本あげます。
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Goat Worship - II 

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■ 90年代におけるChris Moyenの影響

 前回はなぜ山羊が悪魔的象徴とされるようになったかについて記載したのち、VenomBathoryのジャケットアートワークにも山羊が登場しているところまで話した。今回は恐らくこのブログに来るような酔狂な方なら1枚は手元にあると思われるChris Moyenのアートワークについてまず言及する。

 Chris Moyenは90年代初頭より主にデス/ブラックメタルバンドのアートワークを作成しており、テーマはすべてサタニズムである。そのため当然のごとくバフォメットが描かれたアートワークが散見される。1991年のBeheritDeath Yellのスプリット、Incantationの1st EPやGoatlordの1stフル、1993年のArchgoatの1st EP、1995年のImpricationのコンピレーションあたりはバフォメットの描かれた彼の初期作では有名なものであろう。またいずれも現在でも語り継がれている作品ばかりであり、これらは全て"Goat Metal"を印象付ける重要なものになっている。

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 個人的にもこれらの作品やバンドが自分の「Goatジャケ買い」の要因になったのは間違いないし、またいずれもノルウェイジャンブラックメタルとは本質的にモノが異なる1st-wave Black Metalから派生した作品群であることも特筆すべきことであろう。すなわちブラックメタルとデスメタルの境界が曖昧な時代の産物であるということだ。Imprecationのコンピこそ既にノルウェイジャンブラックメタルが覇権を握っていた時期だが、Imprecation自体、Incantationのフォロワーであったことから、いわゆるデスメタルの範疇の中にある地獄系デスメタルであった。

 現在のChris Moyenの作品にもバフォメット/ゴートは多用されており、変わらず"Goat Metal"のイメージ作りに大きな影響を与えている。


■ 様々なGoat Metalの形 - バンド名編 その1

 Chris Moyenによる"Goat Metal"の視覚的に植えつけだけでなく、様々な"Goat"要素の取り込みがある。まずはバンド名について見ていこう。

goatlorddemo.jpg まずは既に名前の出ているArchgoat、Goatlordはレジェンド的な存在であるが、前者は既にコラムで取り扱ったので後者について簡単に触れておくと1985年にアメリカで結成されたバンドで、いわゆるのちのブラックメタルとは全くルーツの異なる性質を持つバンドであり、スラッシュメタルの要素をあまり感じないドゥーミーで邪悪なデスメタルである。音としては現在のウォーブラックメタルとも類似点をいくつか感じる。なお、かのDarkthroneも1996年にGoatlordというタイトルのアルバムをリリースしているが、直接の関係はない。

 1987年にリリースされたデモ"Sodomize the Goat"はタイトルも相当ヒドいが、ごらんのとおり、とんでもなくスカムで冒涜的なジャケットになっている。これは本当にヒドい。あまりにもひどくて近年、再発されたりしている。もちろんテープで。

goatpenisdemo.jpg またブラジルのGoatPenisも前身バンドから考えると1988年に結成された"Goat Metal"のレジェンドであるが、彼らの1stデモ"htaeD no tabbaS"のジャケットもまた最高にスカムである。握るな、おい。またタイトルも逆さ文字を使っていたり。

 さすがに自分もこのカセットテープは持っていないが後に出たコンピ盤で聞くことができるのだけど、このころの彼らのサウンドは非常にオンボロかつ怪しげなデス/ブラックメタルであり、現在の軍事オタク系ソリッドウォーブラックメタルをやっている彼らのサウンドは全く想像できない。

 またBeheritのメンバーの別プロジェクト、Goatvulvaもこのころにある意味大暴れしていて、彼らのグラインドナイズなブラックメタルにさらにポルノノイズなどを混ぜた完全自由型スカムサウンドをやっていた。3thデモが"Baphometal"というタイトルで、これぞまさにという感じである。Beheritほどではないがアンダーグラウンドのごく一部では非常に支持の厚いバンドで、様々なバンドが影響を受けて曲名からバンド名を拝借したりしている。また近年ごく一部で話題になったデンマークのGoatfagoもまたGoatvulvaの直系チルドレンであり、こちらもまた脳みそをかき回すブラッケンドノイズをやっている。

goatsemen.jpg スカムといえばやはりこのバンド、ペルーのGoat Semen。セルフタイトルを銘打った2ndデモは写真に示す通り、これまたヒドい。しかしこのバンド、大好きである。

 実際、このコラムの着想を得たのはこのバンドの新譜が本日リリースになったからであり、我慢できずにBandcampでpre-prderしてしまったのだが、まだDLできないのでウズウズしているのである…というと話が反れたが、バンドの結成は2000年なのだが、新譜はなんと1stフルアルバムなのである。15年もの歳月だ。このバンドとの個人的な出会いは同郷のAnal Vomitとのスプリットで、度胆を抜かれるくらいカッコよかったのだが、そこからフルアルバムを待つこと10年だったわけで、非常にうれしいリリースなわけだ。というわけで皆さんもぜひチェックしてほしい。

 このバンドは当初から今に至るまでベスチャルなブラック/デスで貫き通していて、ウォーブラックともかなり近いというかほぼウォーブラックといってもよいようなサウンドを出している。フルアルバムを出していないのにライブ盤を出したりしているところも面白い。


■ 終わりに

 今回は"Goat Metal"のイメージをジャケットから植えつけたChris Moyenについて言及し、ジャケットと想起されるサウンドを一致させた功績について述べた。そのようにイメージづけられた"Goat Metal"について、まずはバンド名から主張しているバンドを列挙して紹介した。

 次回はその続きとして有名どころからちょっとマイナーどころまで様々に紹介していくとともに、他にバンド名以外についても歌詞テーマに採用しているバンドや、もしくはレーベルなんかも紹介していきたいと考えている。

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Goat Worship - I 

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Goat Worship!!



■ はじめに

be451280.jpg 今回のコラムはメタル(特にブラック)におけるバンド名、タイトル、もしくはジャケットによく用いられている "Goat" にフィーチャーしたものである。個人的には「Goatのつくバンドにハズレなし!」をモットーに、様々なアルバムのジャケ買いをしてきた。はっきり言って失敗したこともあったが、それも含めて楽しんできたし、今までの経験を振り返るとやはり "Goat black metal" というカテゴリーは存在し、"Goat Worship"という旗のもとに、何らかの共通点を持ったサウンドを備えているバンドが多い印象である。

 一方で「悪魔の象徴=山羊」は恐らくメタルを聞く人なら共通認識だと思うが、ではなぜそのようなモチーフとして用いられてきたのか曖昧なところもある人も多いと思う。そのため今回は"Goat"がなぜ悪魔的モチーフに用いられているのか、そしてそのようなモチーフを積極的に取り入れたバンドについて紹介していきたいと思う。


■ 山羊の歴史と古代神話

 山羊は家畜の歴史では犬に次ぐ。というのも耐環境性に非常に優れているからであり、また肉、乳、毛などすべて利用価値がある。その結果として山岳部や乾燥地帯などの厳しい自然環境下では特に貴重な家畜として用いられてきたし、紀元前のような"大昔"の時代においては特にその価値は高かったと思われる。逆に言えば歴史とともに遊牧から農耕に主軸が置かれるとともに、家畜としての価値は牛や馬などにスライドしていったのだが。

 一方で神話―特にギリシア神話もまたそのような紀元前に口承形式にて伝え広まったとされる。文章において体系的にまとめられるまでは民間伝承であり、そこには自然への畏怖、自然哲学の擬人化などが含まれていた。そのため自然の象徴の一つでもあった動物もモチーフにしたのも当然といえるし、さらに動物と人間が混在した半獣というイメージは超自然的なアニミズム信仰であったし、その中で動物の毛皮を着用しての儀式などもシャーマン信仰として存在していたようである。

goat1.jpg そこで生まれたのがパーンという神である(写真右)。羊飼いと羊の群れを監視する半獣の姿をした神だ。神話上においても起源は諸説あるが、いずれにしても山羊による農耕の象徴として民間で崇められてきたアニミズム信仰の具現化が大元だと思われる。さらに言えば山羊はしばしば性的なモチーフとしても用いられてきた。日本にも一部、古くからの文化として男性器を崇める神社があるなど、農耕文化と性的モチーフは切っても切れない関係にあるのは知っての通りだが、山羊にもそのようなイメージが古来からあったとされる。実際、後にキリスト教によってこのような民間伝承によるペイガニズムの迫害はそのような性的イメージを利用して悪魔的な印象を深めている。

 一方でエジプト神話におけるアメン神は牡羊の姿をしており、民間伝承をベースとして同じような創造要因だったと考えることができるし、さらに言えば後々の古代神の悪魔化においてアモンという名の語源になったことも付け加えておく。


■ 異教徒(ペイガン)の迫害と古代神の悪魔化

 紀元後、つまりイエス・キリストが生誕した後のことだが、彼はユダヤ教の中に新たな宗派を作るに至り、当時ローマ帝国においては多神教国家であったため当時、新興宗教としての宗教家であったイエス・キリストは迫害され、十字架に磔にされたわけである。その後、彼の弟子を中心に宗教活動は継続していくものの、ユダヤ教との決定的な理念の違いが弾圧を生み、やがてキリスト教として分離していくようになった。

 その後もキリスト教はローマ帝国からの迫害・弾圧を受け続けてきたが、それでも教義は広がり続けたことでついにローマ帝国より国教として認定され、さらにその約10年後には何と古代神などの多神教の崇拝が禁止をされるに至ったのである。というのも、どうやらこのころ、ローマ帝国は国内の求心力を失いつつあり、キリスト教勢力の影響を利用することが目的だったようだ。

 そのようにしてキリスト教は権力化していき、やがて他文化をキリスト教化していくに至った。それは「消去」というより「上書き保存」という方が適切な表現であっただろう。古代神信仰が盛んだった地域において教会を設立するときは、その古代神信仰の建造物を利用したという。たとえばエジプト神話のイシス像をそのまま聖母マリア像として流用したなんていうこともあったようだ。

 ここは想像だが、キリスト教にとって有用なイメージは有用に利用し、そうでないものは異教のシンボルとして弾圧の道具とするようになっていったのではなかろうか。つまりパン神のような半獣の様相は異教のシンボルとして利用しやすかった、そして文化の発展によって山羊という家畜の価値が相対的に下がった、さらに性の象徴:肉欲としての悪のイメージなどがやがて山羊を悪魔的象徴にさせてしまったのだと考えられる。

goat2.png そこで創造されたのがバフォメットである。画像に示すものはエリファス・レヴィが描いた世界で最も有名なバフォメットの画像であり、これは19世紀のものなわけだが、最初にバフォメットは11世紀あたりにラテン語文献にて登場したとされている。この時点ではキリスト教にとっての異教の神を指していた言葉だとされている。その後、徐々に悪魔的なイメージをすえつけられ、後に有名なテンプル騎士団が崇拝していたと言いがかりをつけられたのもこのバフォメット像だとされる。これは当時のフランス王朝が貧困にあえでいたときに、テンプル騎士団の潤沢な資金源をスポイルするために壊滅に追いやるための方策であったことが現在の主論になっている。このときの拷問によるバフォメット像の偶像崇拝の是非については、実際様々な発言があったとされ、拷問に耐え切れずに様々な悪魔的イメージを据え付けるに至った。

 このあたりでバフォメットに付きまとう悪魔的イメージを決定づけられたとされ、たとえば姦淫に関しては先ほどのパン神における記載の通りであるが、さらに男色(Sodomy)の内容も付け加えるため、両性具有のイメージが取り付けられている。

 その後、異端審問は主に民間による私刑によって広まりながら、そのイメージを拡散させていったとされる。たとえば魔女とその宴であるサバトもまたそのイメージの流布によるものである。異端審問官や学者が流布させたとみる向きもあるが、最近の学説では国家による異端審問は従来言われているほど苛烈ではなかったとされており、むしろ民間での恐怖、不遇、など様々なネガティブイメージがそうさせていったのではないかと思われる。その中でも魔女が山羊の背中に乗って飛来しているイメージや、バフォメットがサバトに参加して参加者と性交しているイメージも付いたとされている。

 以上が山羊の悪魔的象徴化の経緯である(一部、推論が含まれる)。そしてやがてキリスト教的解釈による悪魔を象徴とすることで個人主義哲学をうたったのがサタニズムというわけである。


■ ブラックメタルにおける山羊モチーフの始まり

 さて、ようやくここでブラックメタルにおける山羊モチーフの話に移るわけだが、まず先に書いておくと筆者は悪魔思想的(ユーモア含む)な音楽全般について詳しいわけではなく、特にへヴィメタル以前のものについては全く疎いし、恐らくそういったものは昔からあったのではないかと推測している。もしそのあたりに詳しい方がいたらぜひTwitterやコメント欄などで教えてもらいたいし、さらに言えば寄稿してくれたら存外な喜びである。

 閑話休題、ことブラックメタルにおいて山羊モチーフとして思い浮かべるのは、まずは何はともあれVenomであろう。有名な1stや2ndアルバムはもちろんのことであるが、あえて取り上げるのは1stデモテープのジャケットである。

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 五芒星(ペンタグラム)をさかさまにしたものにバフォメットを重ね合わせたようなイメージになっている。元々オカルト分野においてペンタグラムはオカルト的に古来から用いられてきた記号であるが、逆向きにして悪魔的なイメージを持たせたのは20世紀に入ってから悪魔主義者によるものだという。つまり、Venomはサタニズムのイメージで用いていることになる。もっとも彼らに「その気」はなく、イメージ戦略のようなものだったようだ。

Bathory_album.jpg 一方で、それを本気で解釈したのがBathoryだといえる。1stアルバムは何度見ても惚れ惚れするジャケットだ。ただ単に山羊の絵(というよりもバフォメットだろうが)がかいてあるだけで、こんなにもイーヴィルな雰囲気が出ている。クォーソン氏が「Venomなんて聞いたことがない」といえばそれを信じるのが信者ってもんだろう。でもバフォメットの顔だけジャケにしたのはまあパクりといわれてもしょうがな…、、、

 ともあれ、このアルバムジャケットは1981年に発行されたErica Jongなる作家のWitchesという書籍に使われたもので、Joseph Smith,という人物が描いたものだという。クォーソン氏は初めは白ではなく金色の配色をしようとしたが、プリントコストがかかるために黄色で配色したが、後により悪魔的印象を持たすために白黒に切り替えた。初期リリースのみ、黄色のGoat仕様になっているため、今でも"The Yellow Goat"と呼ばれてコレクターズアイテムになっている。


■ まとめ

 まず山羊がなぜ民間で重宝され、そして神話に登場するに至ったか、そしてキリスト教の勃興から権力化によって、その神話が異端のモチーフになっていったことに説明し、さらにそのような異端モチーフはやがて迫害の象徴として悪魔化していくとともに、近代~現代においては悪魔主義や反キリスト教主義の象徴になったことを説明した。

 そのような中で悪魔主義をイメージ戦略として用いたVenom、そしてそれを真に受けたBathoryというブラックメタルのルーツである二大巨頭が各々ジャケットに山羊を使用した影響はその後のブラックメタルに対して間違いなく大きく、その後のブラックメタルにおいても重要なモチーフとなっていった。

 長くなったので今回はここまでにして次回は具体的に90年代~現在に至るまでの"Goat Black Metal"について紐解いていくことにしよう。

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Buried in the Frozen Silence : Crucem (2014) 

日本のブラックメタルバンド、Crucemの1st EPを紹介。
日本のDoraidのメンバーが運営している拷問装置よりプロテープにてリリースされた。

crucemep.jpg

ダイハードなリリースに拘る拷問装置からのリリースということで、
アナログ難民には厳しいと思われたが拷問装置には珍しくDLコードが付随していて、
そのコードをBandcampで入力することでMP3をDLすることができる。
(まだテープでは自分は再生していないです。。。)

まずこのジャケット、まさに北欧ブラックジャケの巨匠Necrolord氏の作品っぽくて、
何というか前作の1st demoと比べるとかなりメジャーな香りも漂ってくるのだが、
サウンド面においても前作より叙情的なメロディを大々的に取り入れていて、
前作ほどのカルト的なノリは減退したものの内容自体は素直にグレードアップ。

出だしのメロディは「快活」とまで言えるほどのものであっけにとられるも、
前作で特徴的だったシンセワークはそのままにしつつ、
前作ほど前面に押し出していないサウンドプロダクションになっているだけで、
やはりベースとなるところでは前作と変わっていないこともわかる。

昨年はついに自主企画にてメインアクトを大分のKnaveと共同で行うなど、
精力的な活動はさらに勢いを増していていよいよ1stフルが期待されるところだ。
できればCDでリリースしてもらえるとうれしいのだが。。。

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Demo : Crucem (2013) 

日本のブラックメタルバンド、Crucemの1stデモを紹介。
CD-Rによる自主リリース。

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この1,2年あたりで最も勢いよく出てきた日本のブラックメタルバンドの一つで、
来日バンドのオープニングアクトを早々に任されたり、
またASPIRINのメンバーも参加している関係の人脈筋もあってか。
ブラックメタルイベントに留まらず意欲的に活動の幅を広げている。

このデモに於いてもっとも印象的なのはやはりシンセワークで、
初期Gehenna(Nor)を思わせるチャーチオルガン風で、
とても不穏なサウンドを形成しつつGehennaとは違う突進力が魅力。

インナーに記載があるように国内ブラックの神秘性重視に対するアンチテーゼが痛快で、
雄弁に語ることなく音のみで示すことの意義を叩きつけている。

たった4曲とデモなので当然ながらあっという間に終わってしまい、
もっと聞きたいと素直に思わせてくれる素晴らしいデモだった。

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Ewigkeit I : V/A (2008) 

ドイツのEternity Recordsのレーベルコンピレーション盤を紹介。

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一応、サンプラー的な立ち位置だと思われるコンピレーションで、
Horna、Raate、Svartnar、Kältetodなど計9バンドが参加しており、
ジャーマンブラックなコンピレーションというわけでもない。

参加バンドの提供曲は自分が知っている限りだと、
彼ら個別のアルバムに収録されていないためこのコンピでしか聞けない。
(もしかしたらHornaの曲は膨大なリリースの中でどっかに入っているかもしれないが)

それにしては結構粒ぞろいな楽曲が収録されているので、
上記バンドファンかつ安く手に入ることができればおすすめなコンピ。
またKältetodの収録曲は個人的にかなり好きなのにここでしか聞けない。
ちなみにDiscogsでは現在271円
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Under The Sign Of The D-Beat Mark : Dishammer (2010) 

スペインのブラッケンドD-beatクラストバンド、DishammerのEP盤を紹介。
アメリカのParasitic RecordsからLPで、日本のArmageddonからCDでリリースされた。

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アルバムタイトルが完全にBathoryのそれであざとさすら感じるほど。
以前紹介した1stアルバムと同時期に収録されていたとのことで、
作風もほとんど同じようになっていて特別Bathory成分が多めでもない。

当時はブラックメタル界隈でも相当話題沸騰で日本盤が出ちゃうほどだったが、
一つにはクラストパンクとブラックメタルの融合という方法論を、
メタルサイドにうまく表現するバンド名とアルバムタイトルだったと考えることができよう。
むしろクラストサイドには目新しさのない内容だったのではあるまいか?

やはりモータークラスティーなサウンドは単純にノレるし悪いアルバムではないが、
今考えるとこのバンドは一芸的なものであったと振り返ることができる。
既に2011年に解散しておりメンバーの一人は違うバンドでメタルクラストをやっている。

あ、いい忘れるところだったが、
相変わらず良いおっぱいのネ~ちゃんを起用していてグッド。

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S.I.D.A. (Sédition. Isolement. Déliquescence. Autarcie) : Autarcie (2009) 

フランスのブラックメタルバンド、Autarcieの1stアルバムを紹介。
フランスのDernier Bastionよりリリースされた。

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いわゆるPeste Noireフォロワーのフレンチブラックだが、
あのバンド特有のカビ臭さやキチガイさをフレンチな叙情的メロディに置換していて、
聞きやすさという点で個人的にはPeste Noireより好きだったりする。

逆に言えばPeste Noireのそれを期待して聞くと、
思ったより普通やんけ!と裏切られた気持ちになるかもしれないが、
そういう曲も一部収録されているので安心。
急にパンキッシュなメロディを導入して来たり自由な気風も同様。

最近の作品はアナログでしか出してなかったりして
アナログ導入を控えている身からしたら残念な限り。

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Reh 333 : Grimorium Verum (2011) 

エクアドルのブラックスラッシュメタルバンド、Grimorium Verumのデモ音源集を紹介。
エクアドルのTanatofobia Productionsよりテープでリリースされ、2014年にlim.500で同レーベルよりCDで再発された。

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去年、ロックスタックのアンポンタンセールにふらりと行ったときに購入。
アルバムから漂うカルト/ポンコツ臭に妙に惹かれてのジャケ買いだが、
同梱されていた大判ポスターがまた誰得感を醸し出している。

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バンド結成は1993年と実はかなりベテランなのだが、
このコンピはその結成時から10年間の音源のまとめらしく、
確かにその作風もかなりバラつきがある…が根本は筋が通っていてポンコツ。

カントリーロックみたいな出だしから比較的ストレートなスラッシュ、
もしくはブラッケンスラッシュまで様々な引き出しを披露するも、
よく言えば「上級者向き」というやつで内容はビミョーといったところ。

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8tracks ミックス紹介 3 

8tracks ミックス紹介 2

久しぶりに8tracksに3つほどミックスをアップしました。
今回は"冬"をテーマに楽曲を絞ったのですが、
プリミティブからデプレまで幅があったので分類して3つ作成しました。

Winter BM Mix type-A

Winter BM Mix type-B

Winter BM Mix -type C

あなたはどのコンピが一番冬を感じますか?
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Satan Jugend : Goat Holocaust (2006) 

ベルギーのブラックメタルバンド、Goat Holocaustの1stアルバムを紹介。
オランダのInfernus Rexよりリリースされた。

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ex-Crux Dissimulata、LügerのLord Genocide氏が中心のバンド。
音的にはGoat Worship的なベスチャルブラックと、
フランスらしいプリミティブなブラックメタルの旋律が合わさったようなサウンド。
名前にSSという文字列を忍ばせたりしているが歌詞は特にNSBMなところはない。

時期的にはCrux Dissimulataとほぼ同時期に並行していたが、
作風としてはペイガンナイズなところを排除しており、
あちらで使えないベスチャルなアイディアを具現化したと思われる。

個人的にはなかなか好きなアルバムなのだがこの1stの後に解散。
Lord Genocide氏自体は今も精力的に活動しているらしく、
一人でやっているVociferianも復活させて昨年アルバムを出したそうだ。

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En Vivo En Lima Hell : Goat Semen (2007) 

ペルーのブラッケンドデスメタルの至宝、Goat Semenのライブ音源を紹介。
オランダのFrom Beyond Productionsよりリリースされた。

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2000年に結成して15年、ようやく今月に1stフルを発売する彼ら。
今までほとんど単独音源をリリースしていなくて(スプリットばかり)、
数少ない単独リリースの一枚がこのライブ音源である。

ライブテイク自体は2003年にペルー国内で行われたものらしい。
南米、しかもペルーで、しかもこの音楽性でとても恐ろしい音源である。
当然ながら音質は結構ロウだけどそこそこ聞ける程度には維持。
さすがにブートではないだけある。

なお同時期にDEATHRASH ARMAGEDDONから異なるライブ音源も出ている。
テープ関係は国内に入ってきてもダイハード過ぎて瞬殺だが
そちらはまだ在庫があるようなのぜひ手に入れるべきです!

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Wargame Fairytales - 宇宙的重金属硬核 : V/A (2011) 

スウェーデンのD-Beatハードコアバンド、Disposeと、
日本とフィンランドの混成メタルコアバンド、Häväistysのスプリットを紹介。
日本のReset Not Equal Zero RecordsよりLPとCD-rでリリースされた。

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当時、京都のアビスに寄る機会がちょくちょくあり、
あのお店にはこういうメタリックハードコアのCD-rが店の中央に置いてあって、
値段も安いから面白半分でちょくちょく買っていたものである。

Disposeサイドは収録7曲(うちライブ音源1曲)。
その名の通りでDischargeウォーシップな内容で、
ウォーシップというよりほぼパク・・・オマージュといった感じ。

Häväistysサイドはフィンコアとジャパコアの合いの子的な、
いわゆるメタリックなハードコアという意味でのメタルコア。
かなーりロウな音質の録音で良い感じ。

特にこのスプリットを聞いて広がりが芽生えたわけでもないが、
たまにはこういう畑違いのCDをジャケ買いするのもいいものである。
最近やってないなあとも思う。
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Passion : Anaal Nathrakh (2011) 

イギリスのブラックメタルバンド、Anaal Nathrakhの6thアルバムを紹介。
イギリスのCandlelight Recordsよりリリースされた。


PassionPassion
(2011/05/23)
Anaal Nathrakh

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スリーブケースをとってジャケ写をよくよく見てみると
逆さに吊るされた男の股を鋸で裂いていてヒッ…、
解りにくい絵でパッと見よくわからなくてよかったよかった。

ジャケットがそんな感じとはいえやっていることはいつもと同じで、
さすがにゴアグラインドナイズな内容ではないにしろ、
いつもと同じということはやっぱり烈しくもメロディもしっかり。

5thでこのスタイルを極めた感じもあり、
進歩性に於いては若干物足りなさもあるわけだが、
彼らのスタイルを好む人からしたら絶品の内容だと思われる。
自分はそこまで肌に合わないためこのアルバムを最後に追いかけるのをやめました。
クオリティは認めているだけに後腐れなく。

Encyclopaedia Metallum - Anaal Nathrakh
タグ: Anaal_Nathrakh    UK  2011 
Black  /  tb: 0  /  cm: 0  /  △top

Under The Sign Of The Black Mark : Bathory (1987) 

ブラックメタルの始祖、Bathoryの3rdアルバムを紹介。
アメリカのNew Renaissance RecordsとイギリスのUnder One Flagで共同リリースされた。


Under the Sign of the Black MarkUnder the Sign of the Black Mark
(2010/09/14)
Bathory

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個人的には4thアルバムが初めてBathoryを体験したものだったので
思い入れ含めて贔屓度は4thの方が上なのだが、
このアルバムがブラックメタルの明確な定義を形成したことは間違いない。

1st、2ndと形を変えながらもこのアルバムにおいては
その線形変化を飛び越すような異形な代物で、
サウンドプロダクションなど鑑みても、
当人ですら予測できず生み出されたのではあるまいか。
(現にクオーソンはこの作品はあまり気に入ってなかったみたいな話もある)

ダーティーでありながら低俗でない空気感はお見事というしかない。
ルーツ云々を前に一つの完成形として、
今でも現在進行形で聞くことができる稀有な作品。

Encyclopaedia Metallum - Bathory
タグ: Bathory  Sweden  1986-1990 
Thrash  /  tb: 0  /  cm: 0  /  △top