【column】 NSBMとは一体何か? - IV 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - III
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■ 続き

 前回は、NSBMはAbsurdのような異端にして自由な表現を用いていたバンドをパイオニアとしながらも、音楽性としてはAbsurdタイプの他にも、様々なものがあることを語った。今回はコラムの本筋からは少し外れるが、ペイガニズムについて触れることにする。NSBMの歌詞テーマにもなる北欧神話などのペイガン世界を理解し、NSがどう繋がっていくか理解することで、ペイガンブラックとNSBMの曖昧な境界線を少しでも明確にすることが目的である。
その他、ブラックメタルのバックグラウンドにも大きな関係があるのでご容赦の上、ご一読願いたい。

■ ゲルマン人と北欧神話

 現代の感覚では「ゲルマン人=ドイツ」という感覚だが、ゲルマン人とは北ドイツからスカンジナビア南部に至るまで広範に所在した諸部族のことを指す。そのため、実のところ北欧民族として「ゲルマン民族」というような民族共同体は存在しない。しかし「アーリアン学説」においてゲルマン人こそが優等性を保有するとし、アーリア人(高貴な者)と名付けられた。それを利用したナチスドイツによって人種政策として「ゲルマン民族」という概念が創出された。

odin.jpg 古代、ゲルマン人は各地方に点在していたが、やがて気候変動や他民族の圧迫などで移動し始め、他民族との同化などが行われていき、現在のヨーロッパ諸国の形成が行われていった。ドイツもその一つである。それを「ゲルマン人の大移動」という。一方で、大移動に参加せず北欧に残ったゲルマン人はノルマン人と呼ばれた。彼らは中世時代にはスカンジナビア半島にてヴァイキングと呼ばれるようになる。ヴァイキングとは海賊のことではなく、彼らが地勢的観点から航海術が巧みになったためにしばしば武装船団を形成しており、それが現在のイメージに繋がっている。つまりヴァイキングもルーツはゲルマン人ということになる。

 一方で、移動したゲルマン人は各地域の民族と同化し、やがてキリスト教化していくことになるのだが、その前に信仰の対象としていたのが「北欧神話」である。勿論、移動しなかったヴァイキングも北欧神話を信仰の対称にしていた。各地に散ったゲルマン人が「北欧神話」のうちオーディンを信仰の最も重き対象にしたのに対して、ノルマン人(後のヴァイキング)はトールを信仰の対象にしたのは面白い。この辺りに地勢的観点における神話への見る目の違いが現れている。

■ ペイガニズムとは

ペイガン(pagan)とはラテン語の「田舎の」を意味する単語を語源としている。キリスト教化は都会で浸透したため、保守的な田舎の人々には浸透せず、それはしばしば非信仰者としてペイガンと形容された。そのため、当初は侮蔑語として用いられる時代が長く続いたが、現在では(ネオ)ペイガニズムとしてキリスト教以前の自然宗教ないし自然を基盤に持つ精神世界を取り戻す運動の総称になった。これには当然、北欧神話も信仰の対象に含まれている。

Pagan_Symbols_Brushes_5_0_by_DeviantNep.jpg そのため、ナチズムなどに見られる民族優越性に前提としたナショナリズムとは、自分たちのルーツに誇りを持つという点で親和性を持ちつつも、レイシズム的思想は含まれていない。言わば、自分たちのルーツを多文化主義から守っていくという動きであり、他のルーツを持つ者に対する「優越性」を見出すようなものではないということである。

 また、ペイガニズムの類語として、ヒーゼニズムという言葉も存在する。ヒーゼン(heathen)とは「異教の」を意味する単語で、ペイガンとほぼ同じ使われ方をしてきた。これらの現在での使われ方の違いは主に地域によるようだが、基本的には広義のペイガンにヒーゼンも含まれるようだ。ヒーゼンメタルというジャンルはほとんどペイガンメタルと同じものだと思ってよい。

■ ブラックメタルとペイガニズムの関係

 サタニズムとは悪魔崇拝を指しているのではなく、アンチゴッドであるサタンを象徴とした個人主義への回帰である。それには欧米人として当たり前である「神に仕える」という態度とは相反し、当然のごとくアンチキリストとなる。ブラックメタルの始祖とされるVenomはサタニズムについて本気で追求しておらず、あくまで過激な表現としての演出に過ぎなかったようである。

BATHORY hammerheart 一方でBathoryは本気で追求していた。そして1stアルバムでは直情的にキリスト教の欺瞞とサタニズムについて歌っている。しかしその後、アルバム毎に直接的な表現が少なくなる。3rdアルバムは音楽性で見ると後のノルウェイジャンブラックの雛形的傑作であるが、5曲目"Equimanthorn"を見てみると既にOdin(オーディン)という単語が出てきており、既にサタニズムからペイガニズムへの思考の推移が垣間見れるのである。恐らく当初持っていた個人主義にあたる哲学からキリスト教的思考の否定に入り、その後に自分の作品を通じて自分のルーツというものを考えながらサタニズムとは異なる思考体系であるペイガニズムへと移行としたと思われる。4th以降、更なる思考の変化は進み、5thアルバムでは勇壮かつ儚さなメロディをミドルテンポで紡ぐ音楽性も含めて完全にペイガンメタルへと変貌した。5thアルバムの2曲目"Valhalla"とは戦死者の魂(エインヘリャル)が集められているオーディンの館の名称である。すなわちBathoryのペイガニズムへの思考と音楽性のシフトにはズレがあるが、その後のペイガンブラックと呼ばれるものは音楽性も含めてBathoryの5thアルバムをルーツにしているように思われる。

enslaved1.jpg Enslavedはヴァイキングをテーマにした1stアルバムを1994年にリリース。この頃の彼らのサウンドはあくまでプリミティブブラックメタルの音楽性であり、Bathoryの3rd~4thあたりの作風に相当する。彼らは初期ヴァイキングメタルにカテゴライズされているが、音楽性としてはブラックメタルのカテゴリーにあった。この辺りにジャンルが思想と音楽性の両立で区分けされていく中で、その過渡期にあったことが伺えよう。現在ではヴァイキングメタルといえば勇壮かつ土着的メロディに大仰な展開を含めたものをイメージしがちであり、現在のカテゴリーとしてはこの頃のEnslavedは思考体系含めて現在で言うペイガンブラックに相当する。

 ペイガンメタルとカテゴライズされるものはネオペイガニズムをエッセンスとして取り入れて表現したものであるが、時に古来からの楽器などを利用したり民族音楽を取り入れた音楽性のみにおいてのペイガンメタルも存在する。それらはしばしばフォークメタルとも形容される。また、ペイガンブラックメタルはそれをブラックメタル的に表現しているものであるが、それにはしばしば民族優越性の論旨を挿入するバンドもいるためにNSBMとの境界が不鮮明な場合がある。基本的にそのようなバンドはNSBMに該当されることが多いと思われる。

graveland.jpg また、ペイガニズムとNSBMの境界を取り上げる上で外せないバンドはやはりGravelandであろう。一番有名な音源はデモ音源のIn the Glare of Burning Churchesだが、これはインナーサークルに呼応するように作成されたサタニックなテーマのプリミティブブラックメタルである。メンバーのRob Darkenはペイガニズムを重んじた思想の持ち主であるが、当時のメンバーであるKarcharothやCapricornusはサタニズムやNS思想を持っていたためこと、そしてRob Darken自身も自分たちのルーツであり血を重要視すると言う意味で一時期は極右思想にも寄り添ったようだが、現在では完全に一線引いている。彼がよく中世の甲冑を纏っているのも、ペイガニズム思想からくるものだ。彼はNSBMシーンについてかなり現実的な意見を寄せており、頷ける内容も多い(リンク先の記事はRobの核心をついた意見がみられるので、みたことがない人はぜひ見てほしい。というかこれを観れば本稿はほとんど見る価値がないかもしれない)。一方で、RACバンドとスプリットをリリースするなど極右思想との一定の関係は保っているようだ。

■ おわりに

 今回のコラムではペイガニズムの源流であるゲルマン人と北欧神話の関係から紹介し、ペイガニズムの定義について述べ、そこからブラックメタルとペイガニズムとの関係について展開した。ここから解ることはブラックメタルバンドにおけるペイガニズムへの志向は、個人主義とルーツへの回帰に大きな結びつきがあったからであり、また思想、音楽性ともにBathoryの影響が非常に大きかったことが解った。

 次回のコラムではNSBMの話題に戻し、抑えていくべき名盤などを触れていく。またペイガンブラックに関しても同様に紹介していくことにする。
タグ: column  Bathory  Enslaved  Graveland  NSBM 
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De Volta Ao Front : Holocausto (2005) 

[2012秋のスラッシュ祭り!]

ブラジルのスラッシュメタルバンド、Holocaustoの5thアルバムを紹介。
Cogumelo Recordsよりリリースされた。

Holocausto3.jpg

1stアルバムでブラックメタルナイズなブラジリアンスラッシュを披露した彼らだが、
その後、趣向を変えて音楽性はどんどん前衛的なものにシフトしていき、
しかしそっち方面の才能が皆無だったからかシーンから消えてしまった。

12年ぶりに新作を出した彼らはジャケットからミリタリー感を出して、
「お、原点に返ってブラックスラッシュかな?」
と思わせたが、こんどはかなりハードコアナイズなスラッシュメタルだった。

しかしばっちり1stと同じようにサウンドプロダクションが非常にロウで、
やっぱり演奏が大したことないってこともあって、
ハードコアよりのブラックっぽさも出ている。

ベテランらしさがあるようなないような捉えどころのないアルバムとも言えるが、
コグメロレコードシンパなら聞いてみても良いのではなかろうか。

Encyclopaedia Metallum - Holocausto
タグ: Holocausto  Brazil  2001-2005 
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IX : Bulldozer (1987) 

[2012秋のスラッシュ祭り!]

イタリアのスラッシュメタルバンド、Bulldozerの3rdアルバムを紹介。
Discomagicよりリリースされ、後にMetal Mind Productionsから再発された。
再発盤は日本でのライブ曲がボーナストラックとして収録されている(未聴)。

Ix: Circle of HellIx: Circle of Hell
(2007/11/20)
Bulldozer

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イギリスのTankに影響を受けてバンド名をつけたというが、
1st、2ndはお下劣系Venomというようなプレブラックメタルだった。

この3rdはもう少しスピードメタル然したストレートなアルバムでカッコいい。
また後のブラックメタルにも大きな影響を与えているサウンドでもある。
A.C. Wildのヴォーカルも何とも言えないカッコよさだ。

しかもアルバムの中で一辺倒にならないのが素晴らしい。
(もちろん一辺倒に畳みかけるアルバムも大好きだが)
好みもあるだろうが、個人的には彼らの活動のハイライトだ。
1980年から活動を開始して今も現役(30年超!)の彼らのこれからも注目してみたい。

Encyclopaedia Metallum - Bulldozer
タグ: Bulldozer  Italy  個人的良盤  1986-1990 
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Unholy Thrash Metal : Return (2011) 

[2012秋のスラッシュ祭り!]

日本のスラッシュメタルバンド、Returnの1stアルバムを紹介。
Break the Connection Recordsよりリリースされた。

UNHOLY THRASH METALUNHOLY THRASH METAL
(2011/10/12)
RETURN

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まだ活動期間が短いながらもデモとライブでいきなりの好評を博しての、
プレブラックメタルなサタニックスラッシュメタル。

この時代にこの作風というのは逆に新しいと思わせる。
はっきり言ってテクニックが巧みなんてことはない。
しかし初期衝動に基づく強烈な表現方法には感服せざるを得ない。

明確に初期Bathoryの影響を感じつつもそれにとどまることはなく、
80年代にあったデス/ブラック/スラッシュ/ハードコアの垣根が曖昧な頃の"アンホーリー"。
見事に現代に再現してくれたようなサウンドではなかろうか。

なお、今回私も参加させてもらったブラックメタルファンジン

End of a Journey Part2
http://g0ing-0n.tumblr.com/post/33424993943/end-of-a-journey-part2


では、Returnのメンバーのインタビューを行ったので、
是非是非お読みいただけると嬉しいです。

Encyclopaedia Metallum - Return
タグ: Return  Bathory  Japan  2011 
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Black Future : Vektor (2009) 

[2012秋のスラッシュ祭り!]

アメリカのプログレッシブスラッシュメタルバンド、Vektorの1stアルバムを紹介。
Heavy Artillery Recordsよりリリースされたが、当該レーベルはクローズしてしまった関係で、
オリジナル盤はレアになっているようであるが、再発もされている。

Black FutureBlack Future
(2009/11/17)
Vektor

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ジャケットを見るとVoivodの影響を感じるし、
前評判でもプログレスラッシュとしてVoivodDestructionのようだと聞いていた。

しかし聞いてみると確かにテクニカルであれど、
いわゆるプログレスラッシュのような悪く言えば捻くれた様な印象は受けず、
思ったより全然ストレートなスラッシュでしかもそれがハイクオリティ!

アルバムの後半では確かにプログレッシブと言われるような奏で(ちょっとBTBAMっぽい?)。
しかしそれもアルバムとして浮いておらず、
通しで聞いて素晴らしいと言える内容なのだ。

私はオリジナルが手元にあるのだが、何とAmazonで現在\19500が最安値で出て驚愕。
Heavy Artillery RecordsEarache傘下になったので再発は買い易そう。。
このアルバムはスラッシャーなら絶対買うべき、というか持っている人ばかりかな。

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タグ: Vektor  Voivod  Destruction  BTBAM  USA  2006-2010  個人的良盤 
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Seeds Of Revolution : Thrashgrinder (2010) 

[2012秋のスラッシュ祭り!]

フィンランドのクロスオーバースラッシュメタル、Thrashgrinderの1stアルバムを紹介。
メキシコのAmerican Line Productionsからリリースされた。

Thrashgrinder1.jpg

バンド名が示す通り、スラッシュとグラインドのクロスオーバーなサウンド。
クロスオーバースラッシュというと私はCryptic Slaughterがかなり好みな訳であるが、
確かに方向性としては近いように感じる。

但しこのバンドはもう少しThrashよりなサウンドのようにも聞こえる。
しかもかなりオーソドックスなタイプの、だ。

もっとGrindっぽい弾け方をしてくれた方が期待通りだったのだが、
これはこれで美味しく頂ける内容ではある。
純粋にヘッドバンギングできるクロスオーバースラッシュだ。

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タグ: Thrashgrinder  Finland  Cryptic_Slaughter  2006-2010 
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The Outsider : A Transylvanian Funeral (2010) 

アメリカはアリゾナの独りブラックメタルバンド、A Transylvanian Funeralの2ndアルバムを紹介。
メンバーのSleepwalker氏がオーナーのForbidden Recordsからlmd.100(ver違x2)でリリースされた。
自分のナンバリングは23だった。

280624.jpg

どこかのディストロで確か$3とかそんな格安な値段で手に入れた一枚。
バックグラウンドなどは知らないバンドだが、
アメリカのブラックメタルというより北欧ブラックのトレースという印象。

また、アルバム一枚筋が通っているというよりかは
プリブラから少しモダンブラックまでアルバムの中で作風が変わっていき、
様々な影響を受けていると思わせつつ、それらがどれも悪くない。

決してシーンをアンダーグラウンドでひっくり返すような内容ではないが、
安く手にはいることを前提ならば結構お勧めのアルバムである。
フルプライスで買うようなほどでもない気もするが自分は気に入っている。

Encyclopaedia Metallum - A Transylvanian Funeral
タグ: A_Transylvanian_Funeral  USA  2006-2010 
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Weltmacht Over Niedergang : Totenburg (2000) 

ドイツのNSBMバンド、Totenburgの1stアルバムを紹介。
Fog of the Apocalypseよりlmd.200でリリースされたのち、2011年にHammerbund Tonschmiedeで再発された。
再発盤は5曲、ボーナストラックが追加されていて、うち1曲はAbsurdのカバー。

totenburg-weltmacht-oder-niedergang Cover

持っているのが再発盤なのでそちらの方のインプレッションになる。

バンド名はヒトラーが戦勝後に立てるはずだった兵士の慰霊モニュメント名から。
ドイツのNSBMとしては比較的、直接的な表現を使って思想を表現している。

このアルバムではAbsurdBurzumのカバーが収録されており、
両方の思想から色濃く影響されたのだと思うが、
だからといって聞いてみるとそれらのサウンドからはあまり影響を受けていない。

良くも悪くもかなり地味というかフラットな展開の楽曲ばかりで、
カバーもそれらのバンドを想起させず彼らの領域で展開。
逆にこの精神的なフラットさがNS思想と絡み合って妙な迫真感を出しているのが特徴。
こういう精神世界に興味があれば聞く価値はあるだろう。

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タグ: Totenburg  Germany  Absurd  Burzum  NSBM  1996-2000 
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Ще Позволим Ли Да Погребат Родината Ни? / Return To The Battleland : Aryan Art / Furor (2008) 

ブルガリアのNSBM/ペイガンブラックメタルバンド、Aryan Artと、アルゼンチンのNSBMバンド、Furorのスプリット盤を紹介。
FurorNarokがオーナーであるDark Hidden Productionよりlmd.1000でリリースされた。

aryan_art2.jpg

どうやらAryan Artとしては2ndアルバムとしてクレジットされているらしいスプリット。
Aryan Artサイドはまさしく近年の彼らのサウンド通りの、
淡々としたリズムに霞がかったサウンドプロダクションで、
メランコリックな曲調にAlexanderの絶叫ヴォーカルが乗るもの。

メランコリックになったBlazeBirth Hall作品とでも形容できなくもないが
テーマとしてブルガリアの歴史とプライド、そして怒りを表しているといい、
憂いに満ちていて他のNSBMとは一線をひいているようなサウンドである。

Furorも路線としてはBBH系統に近い気がするが、
あれらほど幽玄なサウンドではなくあくまで人間味のあるもの。
特別秀でた楽曲ではないがこの手の路線が好きなら楽しめるのではないか。

Encyclopaedia Metallum - Aryan Art
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タグ: Aryan_Art  Bulgarija  Furor  Argentina  2006-2010 
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【column】 NSBMとは一体何か? - III 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - II
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■ 続き

 前回のコラムでは音楽とネオナチ思想のリンクについてOi!PunkやRACといったジャンルから述べ、その系譜として生まれた異形にしてNSBMのパイオニアとされるAbsurdについて紹介した。今回は純プリミティブブラックメタルの界隈におけるネオナチ思想の発芽について述べ、現在の近年のNSBMの潮流についてまとめる。また、それらとペイガンメタルの違いについても言及する。

■ ブラックメタルにおけるNS的思考の導入

 Absurdの結成は1992年だが、その以前から従来のブラックメタルにおいてもネオナチ思想は散見されている。例えばBurzumのVarg Vikernesはネオナチ思想を持っていたとされる。1992年のファンジンのインタビュー記事では彼はとあるネオナチ組織について言及しており、また彼自身も他のものではあるが組織に参加していたという記述がある。彼の作品自体には直接思想を反映したものこそなかったが、ご存知の通り、当時はインナーサークルを中心にあたかも競技のように犯罪行為が相次いでおり、その中でネオナチ思想表現も邪悪なものとして導入されていった節がある。

darkthrone.jpg 例えば有名どころで言えば、Darkthroneの"Transylvanian Hunger"はVargが歌詞を5~8曲目まで書いているが、そのライナーノートには”True Norwegian Black Metal and Norsk Arisk Black Metal (Norwegian Aryan Black Metal)”という記載がある。しかも御覧の通り、Vargが作詞したことをかなり強調して表記してあるのがお分かりになるだろう。なお、この表記は後に取り外され、また次の作品でナチバンドでも政治的なバンドでもないことを表明している。また、Mardukの"Panzer Division Marduk"においてはジャケットにWWIIのドイツ軍の戦車を使用しており、これもNS思想ではないかという指摘があったが、バンド側はWWIIのテーマに則っただけで政治的なものではないと否定している。これら著名なバンドですら、このような事例が存在する。

 Campo_de_Exterminio.jpgちなみにこのような話はもっと昔から存在し、1987年にリリースされたブラジルのHolocaustoのCampo de Exterminioのジャケットやインナーにはヒットラーのコラージュなどナチス関連のものが多く使われており、彼らもまたネオナチの疑いがかけられた。勿論、彼らはすぐ否定したのだが、このようにサタニズムなどの邪悪性に取って代わるものとしてネオナチ的要素を組み込むことはAbsurd以前からなされていた。これらの事象は邪悪の表現として記号的に用いただけだから取り下げたのか、ネオナチ思想をアピールすることが今後の活動に障害になると判断して否定したのか、どちらなのかはバンドによって様々だろう。しかしVargがそうであったように、本気のネオナチ思想を持つ者も存在するのは確かであり、ネオナチ思想はブラックメタルの一部に侵食していった。この流れに順ずるNSBMはいわゆるプリミティブなブラックメタルスタイルや古くからのブラッケンスラッシュに歌詞やジャケットなどでネオナチ的エッセンスを組み込んだ作風になっている。

NOM.jpg 例えばオーストラリアのSpear of Longinus(1993年結成)。バンド名はロンギヌスの槍―イエスのわき腹を突いた槍であり、ヒトラーがウィーンの博物館で「啓示」を受けたとされている曰くつきのものだ。1st demo "Nazi Occult Metal"というタイトルからしてまんまなのであるが、彼らは昔ながらのブラッケンスラッシュをプレイしている。他にフランスのKristallnacht(1996年結成)。改名前のFuneralも含めれば1994年から。こちらは既に当ブログ内で解説したが、やはりナチス関連のバンド名である。このバンドはメロウなスタイルのフランスらしいフレンチプリミティブブラックをプレイしているが、特にそのメロウさは格別で未だに語り草のバンドであり、日本のInfernal Necromancyもかなり影響を受けたと聞いている。また、Absurdのカバーをしていることも特筆すべきであろう。これらのバンドはいわば既存のプリミティブブラックメタルにNS思想を乗せたものだと言える。

branikald.jpg ロシアではやや独自な形でNSBMが広がっていった感がある。ロシアのNSBMといえば、のBlazeBirth Hall(:BBH)の代表バンド、Branikald(1993年結成)はImmortalなどのブリザードブラックとは異なった寒気の伴うブリザードブラックで、アトモスフェリックが同居した幽玄的なサウンドが特徴のNSBMである。NS思想としては関連バンドのForestやNitbergの方は直接的なNSBMの姿勢を発しているのだが、やはりBranikaldは外せない。彼らのサウンドはかなり「自然」を感じる訳だが、それは自分たちのルーツに回帰していく中で、例えばIldjarnUlverなどと同様に自然信仰のような動きとも呼応しているように感じる。この辺りのブラックメタルのテーマにおいて自然崇拝的な動きとして現在ではカスカディアンブラックメタルとして現存している気がするが、ここは推論も多分に含まれる。

 また、ポーランドのFullmoon(1993年結成)。こちらはポーランドのNSBMを語る上で特に欠かせないバンドで、こちらは上記のバンドのスタイルとは異なり、ネオナチ的エッセンスそのものではなくアーリア人の優越性を表現しているといった方が適切だろう。そのためなのか、民族風メロディを使用していたりする側面も有って、音質も兼ねあって凶悪なプリミティブブラックを展開していながら、どこかに勇壮さやメロウな印象を持つ作品に仕上がっている。ウクライナのNokturnal Mortum(1994年結成)はシンフォニックでアグレッシブなブラックに民族的な旋律を導入したことで独特なサウンドを作り出すことに成功したバンドだし、表現方法こそ異なっていても同じような志向性だと解る。これはコラムのIで記述した通り、アーリア人の拡大解釈に伴うスラブ人の優越性からくるものであり、このようなムーブメントにおいてはスラブ民族の民族調メロディを盛り込んだブラックメタルに仕上がっているケースが多い。ちなみにこの流れからあくまでNSBMとしての側面を引っ張るバンドと、ペイガニズムを強調してNSBMから一線を引くバンドに分かれていくが、それはペイガンメタルを説明する際に語ろう。

■ おわりに

 以上、このようにエッセンスとして何らかしらのネオナチ思想を持ち込むことで、NSBMと言われていったバンドも多く、このことからNSBM自体が音楽性を定義するものではない比較的自由な表現方法になっていったと言える。またそんな中でAbsurdは当時、最も異端にして自由な表現を用いていたとも言え、それもまた彼らがNSBMの顔となっていった理由の一つでもあるだろう。

 故にこのジャンルの創出においては以下の通りである

 ・ Absurdタイプ(何でもアリ、RACやOi!Punkの影響を受けている)
 ・ 従来のブラックメタルを踏襲している
 ・ 民族優越性を強調した民族調ブラックメタル
 ・ ルーツ崇拝の末に自然回帰型

 次回のコラムではこれらのジャンルに対して、今回あげた以外のバンドやそのアルバムについても触れていきながら、NSBMの抑えておくべき名作を紹介していく。多分、ペイガニズムについて触れられるのはその次のコラムになると思われる。
タグ: column  Darkthrone  Murduk  Holocausto  Kristallnacht  Fullmoon  Nokturna_  Mortum  Absurd  NSBM 
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Kembatinan Premaster : Havohej (2009) 

アメリカはニューヨークのカルトブラックメタルバンド、Havohejの2ndアルバムを紹介。
Hells Headbangers Recordsよりリリースされた。

Kembatinan PremasterKembatinan Premaster
(2009/10/20)
Havohej

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USBMレジェンド、ProfanaticaのメンバーでもあるPaul Ledneyの一人バンド。
Jehovah(エホバ)のバックワードになっている。
1stアルバムから16年越しのアルバムとなった。

1stアルバムは実はProfanaticaの曲ばかりでセルフカバー状態だったが、
こちらは多分、オリジナル作品なんじゃなかろうか。多分。

お得意のエコーききまくりのところにエクスペリメンタルノイズばりのアンビエントと、
ミニマルリズムがミドルテンポで刻まれ続け、
そこに悪魔のようなヴォーカルが狂気を呼び込む。
Beheritがアンビエント化したときにブラックメタルも続けてたらこんな感じだったのでは。

非常にカルトなブラックノイズ!

Encyclopaedia Metallum - Havohej
タグ: Havohej  Profanatica  USA  2006-2010 
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[Live] いいにおいのするALCEST JAPAN TOUR 2012 @ 心斎橋CONPASS (9/29) 

フランスのシューゲイザー/ポストブラックメタルのAlcestの来日公演に行ってきました。

直前にはTimebomb Recordsでインストアライブも堪能し、
気分を最高潮に高めながら会場入り。
何しろ待望の来日ということで大入りで、
最初に最前列を確保してそこから動けませんでした(トイレ終始行きたかった)

1. ネッシー

正体不明だったが主催のVampilliaのメンバーの一人が登場。
ステージど真ん中にあるコンピュータを用いたブルータルエレクトロニカとでも表現すればいいか。
一人で音楽操作からデスヴォーカルまで忙しくこなしていた。

この手のジャンルは詳しくないが、実験的で前衛的とでも言えば良いだろうか。
UMAらしさが存分に出ていたステージングだった。

2. Vampillia

本公演の主催にして影のメインアクト。
巷ではブルータルオーケストラと言われているようだが、
今回の公演では確かヴァイオリンを含む8人がプレイ。
元々はツインドラムで9人でやっているらしい。

未聴で当日臨んだのだが度肝抜かれたとはこのこと。
静と動が入り混じったまさに音が生き物のように襲い掛かってくる。
会場が圧倒されてしまったのか、
それとも客層が違ったのか解らないけど盛り上がりに欠けたのが信じられない。
(何かしゃべり声とか聞こえてそこはイラッとした。
 「何がしたいんだよ」じゃねーよ。
 おめーこそ何しに来たんだよ、と寸前まで出かかったよ)

当然、公演後にCD買いましたね。

3. Alcest

お待ちかねメインアクトは確か1時間くらい。
会場が優しく儚いオーラに包まれ、何曲やったとかは覚えていないが、
自分は当時未聴だった3rdも含めて結構プレイしてくれた気がする。

1stからは
・ Printemps Emeraude
・ Souvenirs d'un Autre Monde(アンコール)

2ndからは
・ Écailles De Lune
・ Percées De Lumière

あたりをやっていた。他にもやっていたかもしれない。
とにかく会場の雰囲気もメンバーの演奏も何もかも一つの次元に放り込まれて、
これが感動体験か、という感情に浸ったライブだった。

実は僕は1stが一番好きで、その反動で2ndは期待外れだった。
だから3rdは聞いてなかったくらいなのだ。
しかし会場で聞いた2ndからの曲は素晴らしく聞こえ、
家に帰って聞いてみるとライブの感動が呼び戻る。
2ndの評価もグッと上がった。

単細胞過ぎやしないか。
でもそうするだけの力場があそこにはあったのだ。
タグ: ネッシー  Vampillia  Alcest  いいにおい 
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