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お知らせ 

色々やってきましたのでよろしくお願いします。

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2018年2月自費出版リリース(SOLD OUT)

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2016年11月 パブリブ社よりリリース
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The best albums of 2019 

 この時期がやってきました。昨年の記事はこちら。昨年はZineを出してディストロを始めて、と色々やっていた一年でしたが、今年はそっち系ではあまり進展がなく。Zineの2号を出そうと動いてはみたものの、まとまった時間が取れないまま頓挫してしまいまして、ディストロも低空飛行で続けるのがやっとこさといった感じでした。家庭と仕事で時間が過ぎ去った一年でした。

 そんなわけで今年は昨年よりは少なく旧譜を合わせて130枚弱聞きました。その中から本年リリースの個人的なベストアルバムを順不同でご紹介いたします。今年はレーベルからの情報の見落としが多かったと思いますが、そんなときにはコメントなどでチェックすべき音源を教えていただけると嬉しく思います。今年も共感/反共感や発見など織り交ぜて楽しんでもらえたら嬉しいです。

■ Beherit - Morbid Rehearsals (Brazilian Ritual Records)
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 このブログならやはりこの音源がトップバッターかな、と。ブート音源で保有している人も多いのとは思いますが、公式での再発はこれが初で、1st demoにあたる"Seventh Blasphemy"に続いての再発で大変めでたい。BRRオーナーと懇意のNuclear Holocausto Vegeance氏がリマスターしたとのことなのですが、正直手持ちのブート音源とそこまで差が…(笑)。でも再発されたという事実、それを手に取ったというだけでBeherit Worshipperには大変な価値がある一枚です。あとThe Lord Diabolus期の“Down There..."がThe Sinister Flame/Dark Descent Recordsから再発されたんですけどそちらは買い逃しました。まだレーベル元にはあるようですので改めて。

■ Demonomancer Poisoner of the New Black Age (Dunkelheit Produktionen)
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 エルサルバドルの独りウォー・ベスチャル・ブラックメタルバンドのDemonomancerのコンピレーション盤です。2017年のテープでリリースされていましたが、こちらは今年Dunkelheitから再発されたものです。楽曲を聞いてすぐにビビッとくるのが確実にBeheritの影響を感じるところではないでしょうか。その最大限なリスペクトを中南米の土壌で醸造させたようなサウンドには、南米ド直球なベスチャルメタルとは異なる趣を感じさせてくれますし、まさに「不浄」というところでありましょう。メンバーはUGカルトなテープリリースに定評のあったBestial Desecration Recordsのオーナーでもありますが、残念ながらこの年末に彼の訃報が飛び込んできました。今後の活動に十二分な期待を寄せていた中、大変残念ですがご冥福をお祈りしています。

■ Blue Hummingbird on the Left - Atl Tlachinolli (Iron Bonehead Productions)
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 アメリカはカルフォルニアのブラック・デスメタルバンド Blue Hummingbird on the Leftの1thアルバムです。活動は2010年からということで9年かけてのフルレングスとなりました。現地ブラックメタルサークルであるthe Black Twilight CircleのリーダーであるVolahn氏も参加しているバンドで、氏が一人で活動しているVolahnはマヤ文明をテーマにしていますが、このバンドの名前はアステカ文明における神の名前を英訳したものだとか。アステカといえば人身御供が日常的に行われていたことで有名ですが、文字通り生きたままでの「生贄」の文化は野蛮ではあるものの神事だったわけで、このアルバムのサウンドでもそのようなベスチャルさと崇高さが交錯しています。近年のリチュアルブームとはまた違う味わいで素晴らしいアルバムだと思いました。

■ Teitanblood - The Baneful Choir (Norma Evangelium Diaboli)
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 スペインのブラック・デスメタルバンド、Teitanbloodの3thフルアルバムです。14年前にProclamationとのsplitでBlasphemyフォロワーとして一躍名を馳せた彼らは、その後、作品を経るごとにスタイルを少しずつシフトしていき瘴気が増し続けてきました。そして当初の冒涜的なスタイルから、冒涜を象徴する存在そのものへと上り詰めた感があります。そのためか近年は長尺の傾向があり前作EPでは2曲26分でした。でも今回のアルバムはそこまで長尺の物はないですね。大作傾向から一歩後退して手堅くまとまったという印象もありますが、スローなスタイルからゴリゴリのブルータルなスタイルまで様々に織り交ぜて一枚の作品としてヴェテランの風格を感じさせてくれます。

■ Human Agony - Putrescence of Calvary  (Invictus Productions)
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 カナダのウォー・ブラックメタルバンド、Human Agonyの待望の1stアルバムです。2018年リリースのEPが佳作でマニアから注目され、Invictusとの契約を勝ち取ってのリリースです。EPより確実にパワーアップしており、Revengeなどが大好物なウォーブラックマニアも大興奮な一枚でしょう。個人的にもEPのときから良いバンドを見つけたと喜んではいたものの、このフルアルバムでの格の上がり方はちょっと予想していなかったですね。圧倒的な暴力性でリスナーを畳みかけてきます。実はこの作品、まだアナログではリリースされていないんですよ。めちゃくちゃレコードで欲しい!

■ Havohej - Table of Uncreation (Hells Headbangers Records)
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 アメリカの奇才Paul Ledneyによる独りブラックメタルバンド、Havohejの3rdアルバムです。今年出したいと思っていたけど断念したZineではカルト・ブラックメタル特集をやりたいと思っていて、このバンドはその筆頭として考えていたのです。2009年の2ndアルバム以来、しばらく音沙汰がなかったのでProfanaticaに専念していたのでしょうが、10年の歳月の中で蓄積されたアイデアが反映されたに違いない作品に仕上がっています。作品の方向性としては2ndアルバムの流れを継いでいてハーシュノイズ塗れのプリミティブでアバンギャルドなブラックメタルというところでしょうが、2ndアルバムと比べて圧倒的に「黒い」です。

■ Slaughtbbath - Alchemical Warfare (Hells Headbangers Records)
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 チリのウォー・ベスチャル・ブラックメタルのSlaughtbbathの2ndアルバムです。Outbreak of Evil Zine #01でもインタビューが掲載されましたが、その後も絶好調で満を持してのHell Headbangersからのフルレングスリリースと相成りました。1stアルバムからだと6年ぶりということもあり、バンドとしての成長を遺憾なく発揮しています。メロディの取り入れなども含めてバリエーションに富んだ全9曲。あっという間に過ぎ去ってしまう体感速度の速さは凄いの一言ですね。そのあたりはブラック・スラッシュ的な特徴も良く出ています。このバンドの最高傑作を塗り替えたと言ってよいでしょう。

■ Diocletian - Amongst The Flames Of A Burning God (Profound Lore Records)
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 ニュージーランドのウォーブラックメタルバンド、Diocletianの5年ぶりの新作4thアルバムです。前作リリース後、活動をしばらく休止していたため、あまり情報収集できていなかったという事もありますが個人的には寝耳に水的にこのリリースを知った次第です。しかもProfound Loreからリリースという事も驚きました。ですが今作は賛否分かれる問題作と言えるでしょう。彼らの従来のスタイルは薄れ、完全にBlack WitcheryRevengeスタイルのウォーブラックメタルになっているのです。今作のヴォーカルがImpurathが参加したという事も影響が大きかったのでしょうか。正直、ベストに挙げるべきかどうか悩んだんですが、実は故Tregendaに捧げたアルバムということで、そうなってくるとこのスタイルも必要だったのかもしれないなんて考えて選ばせてもらいました。

■ Kapala - Termination Apex (Dunkelheit Produktionen)
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 インドはコルカタのウォーブラックノイズバンド、KapalaのEPです。プレスのトラブルでリリースが遅れたことも記憶に新しいところですが、待たせるだけ待たせて高まり続けた期待を裏切らない傑作ノイズメタルに仕上がっていました。他のコルカタのブラックメタルサークルの作品と比べると密教のようなミステリアスさは少なく、ひたすらハーシュノイズなウォーブラックの暴力性に突き抜けた音源であることに大満足な内容でした。弊ディストロではしばらく在庫がありましたが先日ついにSOLD OUTしています。

■ Antichrist Siege Machine - Schism Perpetration (Stygian Black Hand)
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 アメリカはリッチモンドのウォーブラックメタルバンド、A.S.M.の1stアルバムです。2017年にリリースしたミニアルバムが話題になったバンドですが、ついにフルアルバムをリリースしてくれました。ゴリッゴリのウォーブラックスタイルで、それでいてテクニック的にも優れており、00年代に再興したウォーブラックメタルにおいて、10年代にもたくさんの良いバンドが生まれて次世代に繋がっていることがわかる良作ですね。確実に前進しているバンドですので今後も注目です。

■ Aiμα - Tragos (Nuclear War Now!)
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 ギリシャのウォー・ブラックメタルバンド、Aiμα(Aima)の1stアルバムです。WargoatGoat Synagogueのメンバーによるバンドで前から気になっていましたが、ついにNWN!からのリリースという事で一気に脚光を浴びたと言えるでしょう。 スタイルとしてはスラッシュメタル影響下のベスチャルというより、あくまでブラック・デスメタルのアプローチによるウォー・ブラックです。そのため様々な要素を部分部分で感じ取れることができ、そのバランス感覚も優れています。時に人を選ぶようなノイズ塗れのウォー・ブラックに比べて聞きやすい一枚です。

■ Deiphago - I, The Devil (Hells Headbangers Records)
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 来日がまだまだ記憶に新しいフィリピン、現コスタリカを活動の場としているウォー・ブラックメタルバンド、Deiphagoの5thアルバムです。2ndアルバムの強烈さは彼らのマイルストーンではありますが、このバンドの本当の凄さはその後の軌跡ではないでしょうか。作品を経るごとにどんどん凄いことになっていて、もはや他のバンドを引き合いに出すのが難しいほどです。人によっては同じに聞こえるとは思いますが、それは理解の範疇を超えているのでしょう。でも特にこのアルバムで見せた進歩は更に大きいですね。ふと思い返すと来日公演のときの会場におけるオーディエンスの呆気にとられた雰囲気を思い出してしまいます。Deiphagoはどこまでいくんだ!?

■ Goat Semen - Nähdään Helvetissä (Austral Holocaust Productions)
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 ペルーのベスチャル・ブラックメタル番長、Goat Semenのライブ音源です。フィンランドで2015年に行われたものなのですが、予想以上に音質がよく、またバンドのパフォーマンスもグレイトなショウだったのでしょう、熱量含めて絶好調な音源です。彼らのライブ音源(オフィシャル)はこれで3本目ですが、もっとも音質の良い一本と言えるでしょう。まあ音質が良いほど彼らの音を理解できるとは言い切れないバンドですので、どのライブ音源も素晴らしいので、全部抑えちゃいましょう。地獄の襲来もCD化されましたのでそちらもお勧めっ!

■ Drencrom - Permanent Living Death (Deathrash Armageddon)
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 チリのヴァイオレンス・スラッシュメタルバンド、Drancromの1stフルアルバムです。今年一番聞いた音源はもしかしたらこれだったかも、というくらいよく聞きましたね。このバンドに限っては南米ではあってもベスチャルではないです。完全にスラッシュメタル。とにかくウルトラヴァイオレンスなスタイルです。レーベルインフォでも"SchizoやNecrodeathなどのイタリアン・スピード・スラッシュ"と引き合いにだされていますが、このバンドの凄さはそのような影響もあるものの、全てを超えていくような"気概"を感じます。80年代~90年代初頭の「とにかくヤバいものを作り出す=エクストリーム」なノリと言いますか、どのバンドも殻を破る様な、後にジャンル創生とされたような、あの頃の"気概"です。こればっかりは聞いてもらわないと伝わりませんね。

■ V/A ‎– Scorn Coalescence (Cyclopean Eye Productions)
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 インドのCyclopean Eyeから非常によいスプリット盤がリリースされました。Serpents Athirst / Genocide Shrines / Trepanation / Heresiarchの4wayで、Serpents AthirstとGenocide Shrinesは言わずもがなのクオリティを発揮しているのですが、Trepanationはドゥーム・デスメタルのように重いパートと、グラインドコアさながらのヴァイオレンスで速いパートを交互に繰り出し、Heresiarchは爆撃系の重い一撃を繰り出してきていて、一曲ずつの提供ではありますがスプリットとしての存在意義を存分に果たしての盤に仕上がっていますね。

■ V/A - The Far East Black Metal (Zero Dimensional Records)
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 今回のベスト記事の最後を飾るのは日本のZero Dimensional Recordsがフリーでリリースしたコンピレーション盤です。2CDを投げ銭制という豪華かつ大胆な配布方法ということも画期的でしたが、それよりもこの1枚が生まれるまでのストーリー自体が一つの事件だと思いました。ゼロ次元氏がレーベルを興したのは10年前のことですが、その継続的な活動による賜物ですよ。その間、本人にしか当然知らない苦労がとんでもなくあったと思うのですが、そういう様々な事象が複雑怪奇に絡み合って、生まれたのがこのコンピレーション盤だったのではないかと思うのです。収録の中に一曲一曲で気に入る気に入らないはありました。例えばCharlotte the Harlot、Fatal Desolation、Ungodlyの楽曲は素晴らしいと思いました。でもそういう単純な感想を超えて、この一枚の存在自体に心を揺さぶられました。



 というわけで計16枚が今年のベストです。これ選びながら載せるか載せないか迷う音源が山ほどあって僅差で載らなかったものもたくさんあります。次点はリストで載せます。

  • Abort Mastication - Dogmas
  • BEJEL - APEX FILTH 
  • Evil / Siege Column - Evil / Siege Column
  • Galga Falmul - Galga Falmul
  • Genocide Shrines - Ceylonese Terror Attack
  • Holocausto - Exterminio Ao Vivo
  • Imprecation - Damnatio Ad Bestias
  • Imprecation / Black Blood Invocation - Diabolical Flames of the Ascended Plague
  • Infernal Curse / Goat Semen - Infernal Curse / Goat Semen
  • Perverted Ceremony / Witchcraft - Nighermancie / Black Candle Invoker
  • Pig's Blood - A Flock Slaughtered
  • Profane Order - Slave Morality
  • Sadokist - Necrodual Dimension Funeral Storms
  • Tetragrammacide - Third World Esoterrorism
  • V/A - The Goddess Ov Darkness and Sleep…. / 孵 / 海
  • Werewölf - Portal of Doom

 あとは新しいバンドのデモ音源などで気に入ったものを以下に載せます。

  • BANEBLADE - OBLIVION DEATH MARCH
  • BRAHMASTRIKA - Excarnastrial Commencination
  • Goat Terror - Unholy March
  • Goatroach - Demo'2019
  • Goatscorge - Marching Against The Evil One
  • Goatsmegma - Demonic Goat Smegma Eating Ritual 
  • Nexwomb - Exegesis of Nihility
  • Nihilistic Death Cult - Nihilistic Death Cult
  • NTIZKVM - Genocidal Supremacist Kvlt
  • Ruin Lust - Sacrifice
  • Schizoparanoic Plantoon - Warfare: Mass Annihilation
  • Yxxan - Inverterat Korståg 

 最後にまだ手に入れていませんが今年リリースの気になる音源を書いて終わります。RotUGFは完全に買い逃した感が否めません…。

  • Abysmal Lord - Exaltation Of The Infernal Cabal
  • GOATBLOOD - Apparition Of Doomsday
  • NYOGTHAEBLISZ - Abrahamic Godhead Besieged by Adversarial Usurpation
  • Profanatica - Rotting Incarnation of God
  • Reek of the Unzen Gas Fumes - Reek of the Unzen Gas Fumes

 改めて振り返ってみると素晴らしいリリースが沢山ありました。今の生活だと音源に気を向ける時間が限られているので、あまりに濃密な時間過ぎて自分でも良く解らなくなっていたのかもしれません。この年末、この記事を書きながらいろいろな音源を振り返って聞いてみて、新しい発見が沢山ありました。きっともっと聞けばもっと発見がありそうなそんな音源ばかり。でもまた来年は来年できっとたくさんの素晴らしいリリースがあるはずです。そう考えると無間地獄ですね、これは。もう私たちは逃げ出すことは、できないのです。

それでは皆様、よいお年を。
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平成・ウォーブラックメタル vol.3 

■ 平成二十一年(2009年)
Deiphago - Filipino Antichrist
Deiphago - Filipino Antichrist 

 この年はかなりの激戦区です。この頃はBlasphemyの復活後に触発されて出現した第二世代のバンドたちが増えてクオリティの高いバンドが増えた印象です。ただしここでは90年代から活動していたこのDeiphago、もともとはフィリピンのバンドでしたが生活のためにコスタリカに移動して活動を続け、ついには来日も果たしました。彼らの代表作を取り上げたいと思います。彼らのスタイルはただでさえ喧しいウォーブラックメタルスタイルに輪をかけて強烈にした作品で、ウォーブラックメタルの限界を広げた歴史的名盤と言えるでしょう。他にこの年はNuclearhammer - Obliteration Ritual、Teitanblood - Seven Chalices、Diocletian - Doom Cultと、この界隈ではいずれも名盤と称されるものばかりですね。

■ 平成二十二年(2010年)
Unholy Archangel - Obsessed by War
Unholy Archangel - Obsessed by War 

 Goatpenisのメロディック・ウォーメタルの名盤"Biochemterrorism"もこの年のリリースだったのですが、やっぱりUnholy Archangelの1stアルバムを推させてください。カタストロフィック・ウォーブラックメタルといえば、この音源です。古くは初期Sodomから南米ベスチャル・デスコア・メタルなど、演奏の崩壊が構成要素になっているものはウォーブラックメタルの一つのルーツですが、その崩壊さが極まったウォーブラックメタルになっています。初めて聞いたときの衝撃ったら無かったですね。

■ 平成二十三年(2011年)
Zygoatsis - S.K.U.D. (Satanic Kultus - Unholy Desecration)
Zygoatsis - Satanic Kultus - Unholy Desecration 

 この年もAntichrist - Sacrament of BloodやHeresiarch - Hammer of Intransigenceといった強烈なリリースが多かったですが、このZygoatsisのフルアルバムは今までのアジアのウォーブラックメタルの限界値を超えたというような強烈な作品でした。何もかも蹂躙し尽くすという音楽性はBestial Warlustを彷彿とさせていますが、さらに東南アジアのベスチャルブラックメタルの歴史もあわせってバーバリックな作風に仕上がっています。実際、ウォーブラックメタル史上でも指折りの傑作だと思います。

■ 平成二十四年(2012年)
Pseudogod - Deathwomb Catechesis
Pseudogod - Deathwomb Catechesis 

 北の大地、ロシア発のウォーブラックメタルバンド、Pseudogodの1stアルバムは高い評価を得ました。モスクワから更に1400km離れたベルミという都市を拠点にしていて、2004年から地道な活動を続けてMorbosidadなどとの交流を経てついにはHells Headbangersとの契約にまでたどり着いたのは今の時代ほど容易ではなかったと思いますし、それを実現させた彼らの継続した活動には敬意を表したいです。作風はBeheritにBlasphemyとConquerorを混ぜたような、北の大地の凍てつく寒気とウォーブラックメタルの本来持つ熱気が絡み合った名盤です。

■ 平成二十五年(2013年)
Demonomancy - Throne of Demonic Proselytism
Demonomancy - Throne of Demonic Proselytism 

 Blasphemophagherと同じイタリア発のウォーブラックメタルバンドで、あちらと比べると明らかにストイックなアティチュードがある当時は新人バンドの括りでした。またもやNWN!の猛烈なサポートを得ることに成功していましたが、速さ一辺倒で勝負せずにオールドスクール・デスメタルの影響を受けた密度の濃いダイナミックな音に、ズルズルとしたヴォーカルスタイルがしっくりきていて、派手さはなくキャッチーな要素は皆無ではあるものの、オールドスクールなマニアを喜ばせるに十分な作品です。ここらへんのバンドはおよそ第三世代とでもいいましょうか。その筆頭バンドの一つですね。

■ 平成二十六年(2014年)
Necroholocaust - Holocaustic Goat Metal
Necroholocaust - Holocaustic Goat Metal 

 いわゆる第三世代は出てきましたが、00年代初頭に出現した第二世代のバンドたちが今やエース級という時代に、名盤を叩き込んできたのがカナダのNecroholocaustです。もともと2010年でしたかね、Baphomets hornsとのスプリットで、そのタイトルが"Fuck Norway"ですからね。強烈なスピリットとアティチュードを叩き込んできたバンドでありまして、そのバンドの初のフルレングスだったので期待も相当でしたし、実際に聞いてみてのガツン!としたウォーブラックメタルスタイルも素晴らしかったです。

■ 平成二十七年(2015年)
Genocide Shrines - Manipura Imperial Deathevokovil: Scriptures of Reversed Puraana Dharmurder
Genocide Shrines - Manipura 

 ウォーブラックメタルの爆心地は時代と共に少しずつシフトしたり拡散したりしていますが、ついに南アジアに到達したのがこのGenocide Shrinesです。1stアルバムはおかげさまで弊ディストロでも入荷のたびに即完売しているので、日本国内でも注目度が高いのは嬉しい限りですし、今やシーンの代表的なバンドの一つになったような気がします。バックグラウンドなどを考えますとこのバンドにインタビューできたのも本当によかったですよ。Revengeがベースになっているスタイルではありますが、そこに彼らのルーツが混ざることで異質感が高まり新たな感触が生まれていて本当に面白いアルバムです。

■ 平成二十八年(2016年)
Caveman Cult - Savage War Is Destiny
Caveman Cult - Savage War Is Destiny 

 第三世代ウォーブラックメタルバンドのうち、エクストリームな方向で進化を遂げているのがこのCaveman Cultでしょう。BandcampでNYPで音源をばらまきつつ、出しているフィジカルはすぐ完売するところあたり、ファンとバンドの意図が凄いフィックスされていて、まさにこのジャンルにおける新時代のアティチュードが内包されているなあと関心しますし、何よりそう思わせるのは前提としてあまりにも苛烈なウォーブラックメタルを繰り出しているからですね。令和以降の活躍も大注目なバンドです。

■ 平成二十九年(2017年)
Tetragrammacide - Primal Incinerators of Moral Matrix
Tetragrammacide - Primal Incinerators of Moral Matrix 

 南アジアまでたどり着いたウォーブラックメタルはインド・コルカタにおいてNyogthaebliszを思わせる強烈なウォー・ノイズバンドが盛んですが、このバンドはそのサークルの筆頭バンドです。密教的な演出と強烈なウォー・ノイズの混ざり方は異様そのもので、まさに何か新しいものが生み出されようとしてる、もしくは将来的にはあれが始まりだった、とでも言われているかもしれない、そんなものに立ち会っているような気分にさせるこの南アジアからの負のエネルギー。令和でも地域全体を注視すべき存在です。

■ 平成三十年(2018年)
Blasphamagoatachrist - Black Metal Warfare
Blasphamagoatachrist - Black Metal Warfare 

 締めの音源はやっぱりこれですかね。今回の趣旨には一番そぐわっているのではないでしょうか。夢のチームが結成的なプロジェクトですけど、UG的には数年前から噂には挙がっていたプロジェクトなんです。まあ立ち消えになったのかな、と思っていたら2018年にリリースされちゃった。この事実だけでごはんが何杯も行けます。続いて、この1回限りで終わっちゃうんじゃないかな、どうせ、的に思っていました、プロジェクトなんてそんなもんじゃないかと。しかしどうやら1stアルバム出るらしいんです。まじっすか。令和元年、超やばいですね。


■ さよなら平成

 本日の夕方くらいに思いついて取り上げるアルバムは30分くらいで決まりましたのですぐに書き終わるかと思った記事ですが、よくよく考えたら30枚も取り上げなくちゃいけなくてかなり焦りましたが、ようやく終わりそうですよ(現在22:20)。途中から明らかに荒々しさが増した気もしますが、目的は平成元年と共に始まったウォーブラックメタルを振り返ることで、それはできたんじゃないかなと。ただ代表音源並べただけで本当はこの裏に後々語り草になるデモ音源などはたくさんあったでしょうね。もしくは令和以降も出てくることでしょう。ウォーブラックメタルの殻を破るような音楽の出現は既に起きているかもしれないしこれから起きるかもしれない。究極のエクストリームメタル!と本では提唱しましたが、それはすでに過去の話かもしれません。我々は今を生きていて、それは変わり続けています。変わらないものを愛し続け、変わっていくものに敏感になり続ける。それは大変難しいことですが、得るものも大きいな、と。それが振り返りによって改めて解ったことです。

 だから令和になってもこの旅は続けていいんだ、とそう確信したところで、ようこそ令和の準備をしてこの稿はおしまいとしましょう。皆さんも良きメタル人生を。

【完】
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平成・ウォーブラックメタル vol.2 

■ 平成十一年(1999年)
Conqueror - War Cult Supremacy
Conqueror - War Cult Supremacy 

 Blasphemyの"Ross Bay ism"の延長線にありながらもウォーブラックメタルのエクストリーム化を追求した中でオカルト性の排除、ひいてはヒューマニズムを撤廃して暴力性を追求していったのがこのアルバムです。グラインドにぎりぎりまで足を踏みいれる寸前のアプローチで完成したウォーブラックメタルは奇跡的なバランスで成り立っているように感じ、Blasphemyの1stアルバムについてある側面で極限進化を遂げたと言えるでしょう。この作品の当時の評価は乏しかったものの、後にウォーブラックメタルの再評価に伴って何度も再発されています。

■ 平成十二年(2000年)
Morbosidad - Morbosidad
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 2018年に新作を出したMorbosidadのの初音源はこの平成十二年にリリースされたものです。結成後、紆余曲折7年かかってようやく出せたこの1stアルバムはBlasphemyへの敬意を前面に出しつつも、彼らのルーツであるラテンアメリカ~スパニッシュの要素を存分に出して、「Blasphemy meets Brujeria」的な作品になっているのがユニークなところです。また彼らのアンチ・レイシズムのスタンスも見逃せません。このジャンルの面白いところは様々なマイノリティが個人主義を主張しているところにあるからです。

■ 平成十三年(2001年)
Blasphemy - Live Ritual – Friday the 13th
Blasphemy - Live Ritual – Friday the 13th 

 Blasphemyの作品のうち、最も重要なものはどれかという問いに対しては様々な意見が出ることでしょうが、この作品はウォーブラックメタルの再興を促す決定的な一打になったという意味では最重要盤だと言えます。この作品が出たこと自体、再結成によるライブが実施されていたわけで、既にマニアたちの間で再評価の機運が高まっていたのですが、今のようにライブ動画がネットですぐに見れるわけでもない時代に、このライブ盤はBlasphemyがBlasphemyたる所以を全世界に知らしめる傑作でした。この

■ 平成十四年(2002年)
候補なし

 これぞ!という作品が一枚もありませんでした。嵐の前の…というやつです。

■ 平成十五年(2003年)
Revenge - Triumph.Genocide.Antichrist
Revenge - TriumphGenocideAntichrist 

 Next Blasphemyの決定的な存在といえばこのRevengeでしょう!現在最もメジャーなウォーブラックメタルといっても過言ではありませんが、彼らの1stアルバムはこの時に誕生しています。Blasphemyの再評価の機運の中で彼らのスタイルが重要視されるようになったのは当然のことです。Conquerorの流れを汲みながらもさらに緩急をつけるテクニックも備わり、ミュージシャンとしての立ち位置もより明確になりました。このジャンルの音楽性においてはテクニックが必要でない場面もありますが、彼らのスタイルはそれがあったからこそ現在の立ち位置が確立されたと言えます。

■ 平成十六年(2004年)
Goatpenis - Inhumanization
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 もともとは90年代にショートカットなノイズグラインドをプレイしていたGoatpenisが長年の沈黙の後、メタリックなウォーブラックメタルスタイルへと変貌を遂げた一作です。変貌というと語弊があって、実際は彼らの蓄積が少しずつ自分たちの表現へと還元されていったのでしょう。そして本作から歌詞に兵器や戦場、そして戦争状態における狂気をテーマとするに至り、シリアスで人間味のある作品が出来上がっています。人間味というのは人肌とでも申しましょうか、戦争っていうのは人間がするものですから。彼らの音楽は映画で言うミリタリーモノなんですね。

■ 平成十七年(2005年
Black Witchery - Upheaval of Satanic Might
Black Witchery - Upheaval of Satanic Might 

 この年だとBlack Witcheryの2ndアルバムが一番でしょうか。Chris Moyenのカバーアートに、Ryan Fosterが曲作りに参加するなど、ウォーブラックメタルにおけるビッグネームの仲間入りをした作品ですね。Conquerorとのスプリット、1stアルバムと地続きにBlasphemyフォロワーとしての確実な歩みを遂げてきた彼らですが、この音源こそが彼らの地位を固めるに至った作品でしょう。またBlasphemyフォロワーでありながら古き良きUSBMの不穏さも取り込んでいるところも素晴らしいです。

■ 平成十八年(2006年)
Proclamation - Advent of the Black Omen
Proclamation - Advent of the Black Omen 

 Archgoatの復帰作"Whore of Bethlehem"も捨てがたいですが、やはりこの年はこの音源しかないでしょう!Blasphemy以降、最大級のフォロワーと断言してしまってもいいでしょう。他にもチルドレンはいますがこの音源はもっと魂的なところまで踏み込んだ作品です。ベスチャルブラックメタルで言えばSarcofagoに対するGoat Semenの存在と対比できるようなバンドであり作品でしょう。何というかどこまでウォーブラックメタル=Blasphemyに忠実にできるか、という問いかけのように感じますしオマージュとかそういうレベルのものでは断じてございません!


■ 平成十九年(2007年)
Damaar - Triumph Through Spears of Sacrilege
Damaar - Triumph Through Spears of Sacrilege 

 最初はTruppensturm - Fields of Devastationを選ぼうかと思っていましたが、これも平成十九年でした。一枚選ぶなら断然この音源ですね。今見たらDiscogsでこの音源高騰し始めてますね。NWN!にはそろそろ再発してもらわないとです。個人的にもCDは持っていますが12インチ盤も欲しいので再発希望です。このバンドがどういうバンドかはガイドブックをご覧いただくとして、とにかく衝動が大爆発しているウォーブラックメタルです。初期衝動とかではなくて過酷なシチュエーションの中で生み出された奇跡とも言える一枚でしょう。

■ 平成二十年(2008年)
Blasphemophagher - Nuclear Empire of Apocalypse
Blasphemophagher - Nuclear Empire of Apocalypse 

 BlasphemyとSarcofagoへのリスペクトとしてBlasphemo + phago(her)という命名にしたとされるイタリアのウォーベスチャルブラックメタルバンドです。このあたりからいわゆるウォーブラックメタルとベスチャルブラックメタルをミックスした作風が増えてきた印象で、その先駆けともいえるバンドでしょう。NWN!は一時期「コグメロ系バンドの再来!」みたいに騒いでいたと記憶しています。また彼らの立ち位置は今までのある意味ストイックなバンドが多かった界隈の中では、アティチュードの側面が薄いのが面白いですね。

⇒ 平成・ウォーブラックメタル vol.3
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平成・ウォーブラックメタル vol.1 

 本日が平成最後の日です。様々なメディアで溢れかえるほどの平成という時代の振り返り記事を目にしましたが、弊ブログウェブジンではウォーブラックメタル(a.k.a. War Metal)に注目して振り返ってみます。ベスチャルブラックメタルは昭和発のものでしたが、ウォーブラックメタルはちょうど平成という時代に確立したジャンルでしたので、今回はウォーブラックメタルに限定して一年に一枚ずつピックアップしながら振り返っていきましょう。基本的には1バンドにつき取り上げる音源は1枚としておきます。この最終日に思い立って書き始めたものですから、ちょっと記事のクオリティとしては低いかもしれませんが、そこは何卒お目こぼしをよろしくお願いいたします。

■ 平成元年(1989年)
Blasphemy - Blood Upon the Altar
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 平成元年はウォーブラックメタル元年でもあったと言えるのが、ウォーブラックメタルというジャンルのパイオニアであり、かつ権化ともいえるBlasphemyのデビューデモテープの存在です(画像は2018年再発盤より)。このデモ音源はこの時点ではまだ彼らのルーツであるBathoryなどの影響が色濃く反映されつつ、かつハードコアパンクの要素も多く含まれたことで、荒々しくもマッシヴでヴァイオレンスな迫力が備わっています。

■ 平成二年(1990年)
Blasphemy - Fallen Angel of Doom
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 早速、一バンド一枚のルールを逸脱してしまいましたが、個人的にはデモ音源よりこちらの作品こそがウォーブラックメタルの決定的な作品の一枚だと思います。というのも前作に対してグラインドコアの要素が入ったことで、別物というと言い過ぎですが、連続性を崩すようなカオスな異質感が作品に備わりました。音楽には必ずルーツや影響というものが作用であろうと反作用であろうと関わってくるものですが、そのような要素が認められるにもかかわらず非連続的なフィーリングを禁じ得ない瞬間、「これは違う…!?」という違和感が発生しますが、まさしくこの1stアルバムこそが狼煙だったと思うのです。

■ 平成三年(1991年)
Beherit - The Oath of Black Blood 
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 この年はBeheritのEPである"Dawn Of Satan's Millenium"の方が大事かな、とも思ったのですがリリースのエピソードなどシーンを彩るプロットとしてもやはりこの曰く付きコンピレーション盤の方かな、と。今考えるとブート盤みたいな作品じゃないですか、この編集盤は。メンバーに無断でデモ音源をそのままコンパイルしているだけなので。自分としても初Beheritはこのアルバムでした。最初の意味不明なイントロからMetal of Deathと連呼するだけの楽曲が始まり…、本当にこの衝撃はこの後、今の今まで一度も味わえていませんね。

■ 平成四年(1992年)
Order from Chaos - Stillbirth Machine
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 ここで少し変化球ですが、このアルバムはオールドスクール・デスメタルの名盤としてもピックアップされがちですが、Black/Deathを跨いだ作品としても有名ですし、Pete Helmkampの初バンドですから当然ウォーブラックメタルの歴史においても重大なアルバムだと言えるでしょう。この時点ではウォーブラックメタルなんていうジャンル名はなかったわけですが、彼らの作風はニヒリスティックな視点で戦争を語っており、後身に大いに影響を与えた傑作ですよね。もちろんこれはジャンルとしてはデスメタルだと思いますけどね。

■ 平成五年(1993年)
Archgoat - Angelcunt (Tales of Desecration)
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 この年はBlasphemy - Gods of War、Beherit - Drawing Down the Moonもリリースされた年でした。特に後者の作品はBeheritが更に高次の領域に足を踏み込んだような作品でしたが、同時にフィジカルなウォーブラックメタルから更にオカルティックな精神世界へ突入していったというイメージでした。一方、同じフィンランドのArchgoat、こちらのEPはまたウォーブラックメタルのグラインド成分について、よりCarcassにフィーチャーしたようなスタイルが組み込まれており、恐らくですがCarcass好きなグラインダーが最も気に入るウォーブラックメタルではないでしょうか。

■ 平成六年(1994年)
Bestial Warlust - Vengeance War 'till Death
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 1994年というとMayhemやEmperorの1stアルバムがリリースされるなどノルウェイジャン・ブラックメタルの隆盛(というかある意味ピーク)を迎えた頃ですが、オーストラリアからそのトレンドに真っ向から対抗するどころか、ジャケットアートのように蹂躙したのがこのBestial Warlustでした。フロリダ・デスメタルの要素も取り入れたウォーブラックメタルスタイルなので、グラインドコアの要素が苦手な人にも受け入れられやすかったと推測しています。フロリダ・デスメタルなんて当時はブラックメタルから最も対極に位置していたものです。そういう潮流の破壊者こそが音楽には重要なのかもしれません。

■ 平成七年(1995年)
Naked Whipper - Painstreaks
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 こちらはウォーブラックメタルそのものではなく、元来グラインド畑からのサディスティックでサタニックなアプローチによってBlasphemyの作風に近づいた名盤です。メンバーは当時のインタビューで「Blasphemyの方がバリエーションが豊かなことをやっている」と語っていますが、まさしくメタル畑からのアプローチと、グラインド畑からのアプローチによるディテールの違いを言及していたのでしょう。この辺りのクロスオーバーな感じがウォーブラックメタルのハイブリットな出で立ちを雄弁に語っているような気がします。

■ 平成八年(1996年)
Impiety - Asateerul Awaleen
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 実はこの1996年、私のコレクションでは特に目ぼしい作品が出てこず、最もこのジャンルに近いもので選ぶとImpietyの記念すべき1stアルバムになりました。スカスカな音質で、どちらかというとプリミティブ・ブラックメタルに近いと思います。私としては3年後にリリースされた"Skullfucking Armageddon"の方を推したいところでしたが、1999年にはとんでもないアルバムが控えておりますので…。

■ 平成九年(1997年)
Deströyer 666 - Unchain the Wolves
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 この年も目ぼしい作品はリリースされておらず、それよりもこのアルバムをあえてピックアップします。Bestial Warlustの分家的なバンドの一つですが、その中では最も有名でしょう。しかし作風はBestial Warlustのそれを受け継いでいるとは言えず、デスメタル成分を濾過してスラッシュ成分を組み込んだような作品と申しますか、ジャケット自体「白い狼」って全く暑苦しくないですよね。この年の不作さや、このアルバムの存在自体、いかに当時、ウォーブラックメタルないしブラック・デスメタルが斜陽にあったかを物語っているような気がします。

■ 平成十年(1998年)
Angelcorpse - Exterminate
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 Pete HelmkampがOrder from Chaosの活動に飽き足らず更にブラック・デスメタルのアプローチを追求したのがこのAngelcorpseですね。確か当時はブラックメタルナイズされたMorbid Angelだなんて言われていた記憶がありますが、まさに彼がOrder from ChaosとRevengeの活動のちょうど間にこのバンドの活動があったのだから、当時リアルタイムで聞いていた人はそう思うでしょうし、やっぱりこのバンドもまたカテゴリーとしてはデスメタルなんですよね。今だからこそウォーブラックメタルの文脈で聞くとまたとても面白い傑作だと思います。

⇒ 平成・ウォーブラックメタル vol.2
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気になるリリース 

■ Devouror - Slay For Satan
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 昨年11月に結成が発表されたシンガポールのベスチャルなメンツによるバンドの初リリース。ImpietyのShyaithanとDizazter、Infernal ExecratorのKommando Antichristoによるトリオバンドというだけで大変興味深いところだと思います。まだ聞いてないんですけど大変楽しみです。マレーシアのMetal Zone Recordsより1/14リリース。

 Bandcamp The Metal Archives

■ Demonomancer - Poisoner Of The New Black Age
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 エルサルバドルの独りウォー・ベスチャルブラックメタルの編集盤です。名前はたまに見かけていたものの、なかなか音源を手にすることがありませんでした。こちらは2017年にMetaltifus Productionsというボリビアのレーベルからテープでリリースされていましたがやはり入手が難しく、今年ついにドイツのDunkelheit Produktionenからの再発リリースです。


■ Vermin Scourge - Absolute Poisoning
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 ジャケットから見て明らかにRevengeフォロワーじゃないですか。そしてさらに言うと何とスウェーデンのウォー・ブラックメタルっていうのが珍しくていいじゃないですねー。ちなみにこのリリースは2018年のものですが、今年の1月19日付けでDeathcampからEP"Triumphant Savagery"がリリースされているのでそちらも気になります。

 Bandcamp① Bandcamp②

■ Esoteric Order Of The Red Goat - s/t, War And Bloodshed Forever
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 最後に取り上げたバンドはイタリアのゴートメタルバンドの新星です。セルフタイトルは今年リリースで、後者は昨年11月のリリースのようです。両タイトルともBandcampでNYPなので、どちらか一枚をまず聞いてみようかと思っています。まだレーベルと契約してフィジカルリリースが決まったりはしていないようです。

 Bandcamp
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Outbreak of Evil Distroをオープンしました 

Zine "Outbreak of Evil" の活動をベースにディストロをオープンしました。
主に自分の著作物などを海外のレーベルやバンドとトレードして入荷させたものを扱っています。

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ご利用お待ちしております!
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2017年の注目リリース ※ 発売済を含みます 

 拙著「ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック」はもうお読みいただけましたでしょうか。「掲載されている音源を漁っています」という声を度々聴かせていただき大変ありがたく思っているところですが、そろそろ本に掲載されていない現在進行形の音源についてもフォローしなくてはいけないと思っておりました。

 そんな折、先日大阪にあるS.A.MUSICさんに遊びに行かせていただき、まだ面陳で店内に置いていただけていることに痛く感動いたしまして、思わず「写真を撮って良いですか」とお声がけする過程で著者であることを述べまして、発売から約10ヶ月にしてようやく御礼を申し上げることができました。そこで店長から「今年はHades Archerの新譜が出ますね」とお声がけいただき、「そうなんです。今年は他にも豊作なんですよ」とお答えするも、その音源が思い出せない事態に。

 そのため一念発起して2017年の私的注目リリースリストを作成しました。2時間でまとめたものなので抜け漏れなどもあるかと思いますがコメントやSNSなどでお伝えいただければ幸いです。筆頭株はやはりHades ArcherとGoatpenisでしょうか。NWN!からリリースされる日本のEvilの音源も注目ですね。CDは日本のObliterationからのリリースです。11月の浅草エクストリームは彼らのレコ発として開催されるそうで、そちらも楽しみですね。

Band Title Label Date
KAPALA Infest Cesspool Dunkelheit 16-Nov
Impiety Salve the Goat NWN! Productions 15-Nov
Tetragrammacide Primal Incinerators of Moral Matrix Iron Bonehead 3-Nov
Abhorer Oblation II: Abyssic Demonolatries NWN! Productions 15-Oct
Goatpenis Anesthetic Vapors NWN! Productions 15-Oct
Demonomancy Burnt Vitriol - A Relics Compendium NWN! Productions 15-Oct
V/A Wrathprayer / Force of Darkness NWN! Productions 15-Oct
Hades Archer Temple Of The Impure Hells Headbangars 13-Oct
Goatblood Gasmask Devastation Terror Dunkelheit 18-Sep
Slaughtbbath Contempt, War and Damnation Hells Headbangars 8-Sep
Death Yell Descent Into Hell Hells Headbangars 15-Aug
Evil 邪悪を讃えよ NWN! Productions 15-Aug
Satanize Death Mass Execution Larval 7-Aug
Exterminator Total Extermination Greyhaze 5-Aug
Nexul Paradigm of Chaos Hells Headbangars 28-Jul
Heresiarch Death Ordinance Dark Descent 7-Jul
Black Blood Invocation s/t Deathrune 16-Jun
Cemetery Urn s/t Hells Headbangars 9-Jun
Deiphago Satanik Eon Von Frost 25-May
Weregoat Pestilential Rites of Infernal Fornication Vault of Dried Bones 5-May
Wrok De onheilsbode Heidens Hart 15-Apr
Abatuar Perversiones De Muerte Putrefacta Dunkelheit 1-Apr
Holocausto War Metal Massacre NWN! Productions 1-Apr
Diabolical Messiah Demonic Weapons Against the Sacred Dark Descent 31-Mar
Necroblood Collapse of the Human Race Iron Bonehead 31-Mar
Deiphago Anthology Obliteration 26-Mar
Goatchrist Death Prayer Darkness Attack 24-Mar
Venenum Trance Of Death Sepulchral Voice 17-Mar
Hammergoat Ebola Hemorrhagic Fever Hammer of Damnation 15-Mar
Harvest Gulgaltha  Altars Of Devotion NWN! Productions 15-Mar
Perverted Ceremony Sabbat of Behezaël NWN! Productions 19-Feb
Haxxan Loch Ness Rising Hells Headbangars 17-Feb
Crurifragium Beasts of the Temple of Satan Invictus 30-Jan

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2017年上半期購入音源リスト 

 気付いたらもう7月になっていました。2017年も半分が既に過ぎ去っていました。最近、時間の流れが恐ろしいほど速く感じますが、これが年を取ったということなのかも。今年の上半期、購入した音源(トレード含む)を振り返ってみると計38枚。枚数としてはマニアの人から言わせれば少ないと思いますが、正直言うとそれらの半数以上はまだまともに聞き込めていなかったり…。そう考えれば自分の身の丈からいうとこれでも多いという状況でしょうか。良い意味で下半期は音楽に耳を傾ける時間を作りたいものです。

 以下、購入音源リストです。

【新譜:2017年】 10枚
Détruire - Goatvermin 
ABC Butchers Co. Ltd. - Butcher ABC レビュー済
Anthology - Deiphago
Detritivorous Kamigami - Reek of the Unzen Gas Fumes
Magnus Cruelty - Vomit of Doom
In... Requiescat in Pace - Gladiador
Master Satan's Witchery - Bestial Raids
Extermination Mass - Death Worship
War Metal Massacre - Holocausto
Sabbat of Behezaël - Perverted Ceremony

【旧譜:2016年】 12枚
Traitors to the Gallows - Blood Division
Blackground - Kalterit レビュー済
Ritual Goat Command 2003-2013 - Necroholocaust
Veneration of Armageddon - Goatblood
In Rebellion with Him by Nature - Maledictvs
Procession of Doom - Goatslave
S/T - Eucharist
Der Stürmer / Reek Of The Unzen Gas Fumes / Command / Fogged By Fleshflies - V/A
11a 666 - Sadistic Noise
Dusthall Desecrators Live Penang 2015 - Impiety / Infernal Execrator
Apocalypse War - Goatpenis
Utter The Tongue Of The Dead - Void Meditation Cult

【旧譜:その他】 16枚
Sparks of Separation - Formless Devotion
Devanation Monumentemples - Genocide Shrines レビュー済
Cult Of The Horns / Goatvermin - Cult Of The Horns / Goatvermin
Annihilation of the Kingdom of God - Necroholocaust / Zygoatsis 
Begräbnis / Estrangement - Begräbnis / Estrangement レビュー済
Wanderer of the Abyssal Plains - Indesiderium
Wrath of War - Thornspawn
Sacrilegious Unification Spawn of Abominable Darkness & Hate - Thornspawn / Istidraj
Gnosis Stained Khadga (Live in Kuala Lumpur) - Orator
Ritual de Obediencia a Lucifer - Goat Messiah
Superlative Darkness - Nigrummagia
Force Of Darkness - Force Of Darkness
United in Hell's Fire (Tribute to Goat Destroyer and Judas Isaksson) - Thornspawn / Kill
Live In Venray - Bestial Summoning
Culto de los Venenos - Anal Vomit / Ordo Caper 
Schizophrenic Noisy Torment - Necrobutcher

 下半期も良い音源に出会えますように。
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ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは何か - III - 

⇒ 「ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは何か - II -

■ Sarcófago以降のブラジリアン・ベスチャル・ブラックメタル

 アンダーグラウンドにおいて大きな衝撃を与えた1986年リリースの4-wayスプリット "Warfare Noise I" 、そして特にその収録バンドの中でもSarcófago(1985年結成)はメタルのエクストリーム化という観点において当時の極大値とも言える存在となり、サタニックな作品コンセプトと、アーティスト写真など多大なる影響をブラジル内外に与えた。海外への影響は後述するとして、まずブラジル国内の同時期にデビューしていたバンドについて注目してみよう。

 ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブックにて紹介した、Necrófago(1986年結成)、Sextrash(1987年結成)の紹介は割愛するとして、ここでは未紹介であったバンドについて触れておきたい(なぜ未紹介であったかというと筆者が音源を所持していなかったため)。まずはSextrashとメンバーが大いに被っていたInsulter(1986年結成)だ。あまりにもメンバーが重複していたため後年、Sextrashの前身という噂も出たがあくまで別バンド。2ndデモ"Black Church"にはSarcófagoの1stアルバム"I.N.R.I."で壮絶なドラミングを披露して名作と呼ばれる一因となったD.D. Crazyも参加している。Sarcófagoの流れをしっかり汲んだベスチャル・ブラックメタルだ。



 当時、ブラジルはある種の時代遅れなスラッシュメタルバンドが次々と現れ、それが逆に他の国からすれば貴重なカルト・スラッシュメタルバンドの産出国に見えていたわけで、その中でこのようなスタイルのバンドも同時に流出されたのだから聞く人によっては「聞くに堪えない」メタルだっただろう。Insulterも近年まで決して注目されてはいなかったが、00年代以降のベスチャル・ブラックメタルスタイルの再評価の機運が高まった結果、2012年に再結成を果たさせた。そして2015年には彼らの残していた4枚のデモをまとめたコンピレーション盤"Blood Spits, Violences and Insults"がNuclear War Now! Productionsからリリースされ、当時の偉大なレジェンドの一つにまで見直されたわけである。

 そのように当時はスラッシュメタルからの逸脱によって評価されない側面もあった中で、もう二つのバンドも紹介しておきたい。Exterminator(1986年結成)とNecrobutcher(1988年結成)だ。ExterminatorSextrashの中心人物Freddy Krueger氏が在籍していたバンドで、たった1枚のフルアルバム"Total Extermination"しか残していない。このアルバムはブートを除いて公式な再発盤が出ていないのだ。オリジナル盤はlim. 900しか出ておらず、これを持っている人は相当なコレクターであろう。まずジャケットにハーケンクロイツがある。Holocaustoはもちろんのこと、MutilatorやマイナーなところではEscola Alemãなども挙ってナチスをテーマにして過激化を追求していた時代のことだ。この辺りは当時のファンジンを読み漁ると内外から色々な見解が出てきて面白いが、ほとんどの場合はショック用法のような使い方をしていたようだし、その安易な姿勢に呆れているバンドもいたようだ。さてはて中身の方はというといわゆるブラック・デスメタルになっていて時代を先取りしている。南米におけるカルトメタルの枠から更に這い出ようとする姿勢が実に興味深い。



 Necrobutcherは他のバンドが大抵、ベロ・オリゾンテ出身だったのに対して西海岸のフロリアノーポリス出身のバンドであるということに面白さがある。ベロ・オリゾンテから1000km以上で、日本で例えると東京から九州内陸部程度までの距離である。フロリアノーポリスはメタルが全く盛んではなく、Encyclopaedia Metallumで検索してみてもブラックメタルどころかメタルバンド自体が歴代数えるほどしか存在していない。その中でこのバンドは明らかにSarcófagoの影響を受けたルックスであることが面白い。更に楽曲はグラインドコア並みのスピードと楽曲の短さ、そしてもちろんSarcófagoを思わせるイーヴィルなサウンドが面白い。



 このように当時のメタルシーンは地域性によって物理的距離による障壁から成り立っており、その中で逸脱するバンドの面白さがベスチャル・ブラックメタルを生んだ。更にその物理的距離の障壁を超えたところに波及した時、その新たな地域における化学反応が異なるサウンドを生んでいたと考えられるわけだ。ちなみにウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブックでインタビューが掲載されたImpurityGoatpenisはまさにその二つを体現したバンドで、Impurity(1989年結成)はベロ・オリゾンテの生き証人であり、Goatpenis(前身1988年結成)はNecrobutcherと同様のサンタカタリーナ州のブルメナウ出身であるのが実に面白い。スタイルもまさに前者はトラディショナルなベスチャル・ブラックメタルを基盤とし、Goatpenisはグラインドコアを基盤としながら南米ベスチャルスタイルとの混和で新しいウォー・メタルスタイルを提示したわけだ。他にブラジルの北東部に位置するサルバドール出身のMystifierSarcófagoからまた一歩先のスタイルを持っていたわけだが、この辺りは本でも網羅してあるので是非読んでいただきたい。

 さて今回はブラジリアン・ベスチャルブラックメタルのバンドを音を交えて紹介することで、そのローカライズされたメタルスタイルとエクストリーム化による逸脱によって、新たなスタイルとしてブラジリアン・ベスチャルブラックメタル・スタイルが出来上がったことについて説明してきた。となると当然次に話すべきなのは同じ南米という地域性は同じにして、かつ異なるシーンを形成した他の南米諸国…特にコロンビアやペルーについて言及しなくてはなるまい。それはまた次回。

⇒ 「ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは何か - IV」
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