Re: War Black Worship - vol. 1 

■ 前書き

 本稿ではWar Black Metalについて述べた"End of a Journey Part.2"の掲載コラム"War Black Worship"を手直ししたものである。War Black Metalとは1st-Wave Black Metalの影響直下にある、いわば本流に近いジャンルであるものの、現在のブラックメタルにおいてはサブジャンル、もしくは亜種のように扱われることも多い。そのため本稿はもう一度その成り立ちを振り返って現在の立ち位置を明確にし、さらに「現在進行形のバンドとシーンに目を向ける」ことを目的としたものである。


■ 一章:War Black Metal = Blasphemy

blasphemy_member.jpg  War Black MetalとはカナダのBlasphemyそのものであるといって良いだろう。

 Blasphemyは1984年に結成したが、当時はまだメンバーがティーンエイジャーで、Sodom、Bathory、Hellhammerなどの1st-Wave BMバンドのカバーなどをしていたという。また彼らは上記バンドの他に「Discharge、G.B.H.、Possessedなどが始まりだった」と語っており、やがてそれらをブレンドしたような音楽性にシフトしていき、結果的にグラインドコアナイズなBlack/Deathスタイルを確立するに至った。ブラックメタルの邪悪さ、デスメタルの暴虐性、クラスト/グラインドのショートカットなスピードを兼ねそろえたハイブリットなスタイルである。更に言えばドイツのPoisonやBloodなどのグラインド/ノイズコアとの交流もあったらしく、当時はBlasphemy自体がグラインドコアと紹介されることもあった。

 そして上記のようなハイブリットなスタイルは、記念すべき最初のデモ音源である ”Blood Upon the Altar” にて披露された。リリース年度は1989年。1000本のデモは瞬く間に売り切れて、アンダーグラウンドにて話題となった。ヨーロッパでファンクラブも発足したというのだから、当時はインターネットなどないアナログなやり取りの中で驚異的な出来事だと言えよう。その中に収録されている ”War Command” はたった41秒というショートカットなブラックメタルで、タイトル含めてWar Black Metalのアンセム的な楽曲であろう。彼らの影響を受けたバンドからもよくカバーされている名曲である。

 そのようにしてWarとサタニズムに親和性を見出した彼らは、ガスマスクの装着などのライブパフォーマンスを行っていくなど、音楽性や歌詞のみならずバンド活動をコンセプチュアルにまとめ上げて、やがて彼らの存在自体を”War (Black) Metal”として昇華するに至ったのである。

 つまりWar Black MetalとはBlasphemyの存在そのものである。また、Blasphemyを中心とするサークルであるRoss Bay Cultに参画するバンドはBlasphemyに認められた正しいスタイルの継承者なのである。

 とはいえ、現在のこのジャンルはBlasphemyそのもの以外に、様々な要素が種々混合した形で存在している。


■ 二章:南米発Bestial Metalと東南アジアのつながり

sarcofago.jpg Blasphemyの1st demoがリリースされた1989年から遡って2年前、南米はブラジルにてSarcófago (1985年結成)が1stアルバム "I.N.R.I." をリリースしている。コープスペイントやガンベルトなど、後のブラックメタルの”正装”を初めて提示した作品としても知られているが、やはりその邪悪なサウンドがもたらした影響は大きい。

 彼らもBlasphemyと同様に1st-wave BMの影響を大いに受けたものではあるが、彼らの場合はクラスト寄りではないハードコア的な要素を加えているという点で手法が異なっており、その結果としてデス(ラッシュ)メタルとして評価されていった。Blasphemyがグラインドコアと評価されていたことと、面白いコントラストになっている。そのようなBlack/Deathスタイルは非常に野蛮(Barbarian)、もしくは凶暴(Bestial)なものであったから、後にBestial (Barbaric) Black Metalと呼ばれるようになった。Sarcófago自体というよりは彼らの1stアルバムの流儀を継承したバンドのスタイルに対して称されている。

 その後、SarcófagoCogumelo Records所属としては異例のヨーロッパリリースに至り、その影響をヨーロッパ方面に拡充させていった。MayhemのVo.だったDead氏が影響を受けたのは有名な話で、ヨーロッパでは後の2nd-Wave BMに発展していくわけだが、一方で南米においてはそのようなBestialで原初的なスタイルはその流儀を曲げることなく南米にて定着していった。例えばMystiferや先日奇跡の来日を果たしたImpurity(両バンドとも1989年結成)もその流儀を継承したバンドと言えよう。

abhorer.jpg もしくは南米だけではなく、東南アジアにおいてもその流儀に沿ったバンドが現れた。シンガポールのAbhorer (1987年結成)である。当時のメンバー写真を見ても完全に”I.N.R.I.”そのものでSarcófagoへの大きなリスペクトが感じられる。彼らは日本のSabbatと共に初期アジアンブラックのパイオニア的存在であったが、恐らく地域的な問題もあり80年代末当時の知名度は低かったであろう。しかし南米と東南アジアの治安的なものも含めた空気感の類似性において、このようにBestial Black Metalが定着する土壌があったのだと考えられる。

 これらのバンドはあくまでBestial Black Metalの流れを汲むものであるが、後のWar Black MetalはこのBestial Black Metalの影響を大いに受けたバンドが多数現れたため、現在ではその境界線は曖昧となりWar/Bestial Black Metalと一括りにされることも多い。


■ 三章:ヨーロッパからBlashemyへの回答

beherit_member.jpg さて、Blasphemyの1st demoがリリースされた1989年にフィンランドにて二つの重要なバンド―BeheritとArchgoatが結成している。特にBeheritのNuclear Holocausto Vengeance氏はBlasphemyの影響が一番大きかったことを公言しており、「粗暴なサウンドでサタニズムを掲げるデスメタルバンド」としてバンドをスタートさせている。後に所属レーベルと揉めた原因となったデモ音源集 "The Oath of Black Blood" について当時、Blasphemyのメンバーも「自分たちの音楽性とは異なったロウブラックメタルでオリジナリティがある」と絶賛しており、この作品自体がヨーロッパからのBlasphemyへの回答であった。このアルバムはWar Black Metalそのものではなかったにしろ、後のWar/Bestial Black Metalに多大なる影響を与えた作品である。

 Archgoatは初期の楽曲の多くは1989年に作成しており、Blasphemyの影響をモロに受けたというよりかは1st-wave BMの影響にCarcassなどのグラインドコアをブレンドしたものがベースになっているが、後のWar Black Metalとも親和性の高いサウンドになっている。

 上記二バンドについては各々以前コラムでまとめているので参考にされたい。

 ・ 【column】 Beherit Worship - I (2012年4月執筆)
 ・ 【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - I (2013年2月執筆)

 この頃、ヨーロッパアンダーグラウンドにおいては当時メジャーに躍り出たフロリダ・デスメタルの音楽性を否定するムーブメントが湧き上がっていた。初期Mayhemもフロリダ・デスメタルのアプローチに辟易していたなど、あくまで1st-wave BMの延長線上であるバンドによって形成されていたそのシーンはデスメタルの範疇にもありながらも、かつ脱デスメタルを志向していき、徐々にブラックメタルというジャンルが明確化されていった。Impaled Nazarene、Marduk、Bestial Summoning、もしくはDissectionなどですらその流れにいたバンドであろう。Dissectionはフルレングスしか聞いていない人は目が点になるかもしれないが、1stデモ "The Grief Prophecy" を聞けば言わんとしている事もわかるはずだ。


■ 四章:アメリカにおけるサタニックデスメタル

 ブラックメタル界隈においては独自進化を遂げがちなアメリカだが、初めてブラックメタルをアメリカでプレイしたとされるのがVON(1987年結成)である。Blasphemyのようなクラスト的なショートカットな楽曲とは異なる、ミニマリズムに徹した短い楽曲で構成されており、カルトで呪術・儀式的な雰囲気が満ち満ちている。このような異様さは様々なヨーロッパのブラックメタルバンドに影響を与えたが、War/Bestial Black Metalにも影響を与えた。

necrovore_member.jpg そのVONとほぼ同時期に活動を始めたNecrovore (1986年結成) はたった1つのデモ音源 " Divus de Mortuus" を1987年にリリースされただけだが、後のブラックメタルに影響を与えたと言われる音源であり、ブート音源も大量に作成されている。

 またアメリカといえば”地獄系”デスメタルバンドIncantation(1989年結成)を忘れてはならない。こちらはニューヨークのバンドで、先ほど言及したフロリダ・デスメタルとは異なる潮流の中で、やはり独自進化を遂げたバンドである。初期音源こそAutopsyの影響を大いに受けたようなデスメタルだったが、その後よりダークで重厚なサタニックデスメタルを構築していき、後に暗黒地獄系デスメタルと称されるジャンルのオリジネイターとなった。あくまでベースとなる部分はデスメタルにあるのだが、War/Bestial Black Metalのアプローチと親和性が高く、現在のWar/Bestial Black Metalの主流の中にはIncantationの影響を受けたであろうサウンドをよく聞くことができる。もしくはProfanatica(1990年結成)はIncantationの一部メンバーによるブラックメタルバンドで、Incantationでは使えないブラックメタルアプローチの楽曲をプレイするために発足したものであることから、同じくWar/Bestial Black Metalと親和性が高い。


■ 五章:オセアニアブラックメタルの興り

sadistik_member.jpg オセアニアブラックの初期といえばオーストラリアのSadistik Exekution (1985年結成)がパイオニアだろう。時期的にも他の地域とは異なり、サタニックなスラッシュメタルをプレイする過程で独自発生したスタイルだが、BathoryのQuorthonともペンパルだったらしく、オセアニアとヨーロッパを繋げた重要なバンドである。

 そのような中でCorpse Molestation (1990年結成) はSadistik Exekutionの影響を大いに受けながらよりデスメタルに一歩足を踏み入れることで、BlasphemyのようなWar Black Metalの方面に発展したバンドである。ご存知の方も多いと思うが、このバンドは後のBestial Warlust (1993年結成)であるが、この時点ではまだ若干Sadistik Exekutionのスタイルに近い音を出しているように感じる。


■ まとめ

 War Black Metalとは即ちBlasphemyそのものであり、それは1st-Wave Black Metalの基本路線を踏襲しながらデスメタルやグラインドなどの要素をミックスしたハイブリットなスタイルとして1989年のデモ音源からアンダーグラウンドでWar Black Metalの定義を確立するに至った。また、ほぼ同時期に出てきたSarcófagoの初期スタイルであるBestial Black MetalはWar Black Metalに親和性の高いジャンルであり、現在は同一視されることも多い。

 一方、南米と東南アジアでは地域的な空気感もあってかBestial Black Metalが定着発展したが、ヨーロッパにおいてはそれら二つを内包したようなBeheritのようなRaw Black Metalスタイルが発生したほか、さまざまな形でデスメタルの否定が取り組まれていった。この過程で後に2nd-Wave Black Metalが生まれることになる。

 アメリカにおいては完全独自路線であったが、後にこのジャンルに大きな影響を与えるバンドが多く存在していた。オセアニアはこの当時こそ存在感は大きくなかったものの、後に最重要地域の一つとなるベースができあがりつつあった。

 今回、vol.1においてはこの時代までを振り返って終わることにする。次回は90年代初頭における2nd-Wave Black Metalの出現とWar/Bestial Black Metalの衰退から始め、主流となるヨーロッパでの沈黙と、南米や東南アジアといった地域でのシーンの継続性、そして後の再評価につながる流れを説明していく予定である。

次回→Re: War Black Worship - vol. 2
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「年間ベスト」に関して思うこと 

 今年から「年間ベスト」はやらない。

 ネットが広まる以前、「年間ベスト」という文化は一部の閉鎖的な集まりを除いて、ほぼ評論家だけがやっていたものだろう。しかし、ことメタルのような音楽において、評論家が評論家たらしめる要素である「専門性」の定義は曖昧である。これは恐らく学問としての音楽として成立しないということ(音楽理論で言えばクラシックの域から超えているものはないとか)と、もう一つは売上という絶対的評価が下しにくい点にあると推測する。しかし多分に情緒的な要素が含まれるからこそ、たとえテクニックが未熟でも、録音技術に乏しくても素晴らしいものがになりうるのが面白さでもある。

 しかし、そのような「専門性」の定義の曖昧さによって、誰しもネットというパブリックメディアを通じて評論家になることができるようになった。だが、誰しもが評論家になる必要はない。

 確かにオピニオンリーダーは生まれる。とあるディストロのオーナー曰く「取り上げられればその音源がよく売れる」サイトはある。客観的に見て、聴いている音源の数が非常に多く、かつその体験を消化して言葉に出来ている人である。しかし、一つ言えることは、そもそも一個人で購入できる音源、そしてそれを消化できる音源の数は、経済的、時間的制約が大きい。時間的制約に関して言えば、個人の”消化”能力に依存しており、先述したオピニオンリーダーたるサイトはそれに優れている。恐らく聞いてすぐに「仕分け」できる人だ。私はそれは難しい。(本当は信頼できる国内ディストロに是非「年間ベスト」をやってもらいたいのだが、人間関係や商売の関係で難しいのだろう…)

 となると、この文章を書いた意図は「一部の優れた人以外は年間ベストなぞ書くな」ということでは、勿論ない。それはすなわち「オピニオンリーダーはなるべき人がなるから目指す必要などなく、好きな音楽を好きなように語ればいい、それはすなわち「評論」に陥ってはならない」ということだ。「評論」は見る人がいるからやるのであり、「感想」は思いの丈の吐露である。後者こそ私はガンガン見たい。だってメタルは情緒的なものだと思うから。

 ということを思ったので、今年から「年間ベスト」はやらないことにした。とはいえ、このブログは自分の音源消化と過去音源の振り返りを目的にやっているので、今年を振り返る記事を後で書きます。

 あ、ブログをやっているそこのあなた、あなたの年間ベストは是非見せてくださいね、評論じゃないやつを。
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【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - III 

■ 前回

 【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - II


■ 最近の活動

archgoat8 前回は1stアルバム "Whore of Bethlehem" のリリースと、翌年のBlack Witchryとのツアーについて紹介した。そして2009年には2ndアルバム "The Light-Devouring Darkness" がBlasphemous Undergrond Prod.とMoribund Rec.の共同でリリースされた。

 また珍しいところではカセットテープでIncoffin Prod.からリリースされた。これはタイのレーベルで、この年に1stアルバムもカセットテープでリイシューしている。これらのカセットテープはレア化している。最初はブートリリースなのかと思っていたが、ちゃんとライセンスとっているそうで、350本限定リリースで更に最初の100本はデザインが異なり、パッチもついている。このカセットはまだ現物で見たことがない。恐らく世界中のArchgoatマニアックたちが手に入れていることだろう。

―――"The Light-Devouring Darkness" はどんな作品ですか?

 このアルバムのコンセプトは「"時"が来ることの予言」で、その時とは「ロウで黒いエネルギーが貧弱で不安定な白き光を覆いつくして、ついには滅ぼす」ときのことだ。カバーワークはアルバムタイトルのシンプルな解釈になっている。

 このオブスキュアな闇の光を表している "The Light-Devouring Darknesss" は音楽的にArchgoatの初期音源のルーツまで辿っているんだ。音源自体はミニマリズムの概念のもと、破壊のために身包み剥がされて装飾のないものにまでなっており、言わば"ライブレコーディング"みたいなものなんだよ。スタジオサウンド抜きでロウかつヘヴィなサウンドを構成したからだ。これは伝統的なやり方なんだが、まさしくArchgoatの真のサウンドなんだ。コンピュータを使って音を弄るようなことはしない。どう聞いてもArchgoatそのものだし、同時に次のリリースへのマイルストーンとしても満足いくようにできたと思う。

―――1stアルバム "Whore of Bethlehem" と比べてどうですか?

 我々のリリースは全て一つ一つ自然な連続性を保有していて、マイナーチェンジはしているものの大きな逸脱はしていない。"Whore of Bethlehem" は我々の作品の中で最も速い作品ではあったが、いつも我々の音源は同じ核を持っていて、特徴の何点かはより強調して仕上げた。

―――評判はいかがですか?

 ダイハードなブラックメタルマニアは、我々のことを「ブラックメタルがトゥルーだった頃」からいつもいい評判をくれるし、レビューもとても好感触なものだ。しかし例えばメロディックブラックメタルなんかを好む人からは相変わらず良い評判を聞かないな。私にとってそういうレビューには何も意味がない。私はシーンがどのように変わっていくか、シーンのトレンドを跳ね返すような意見が出てくるかのみを観察しているんだ。"友"は"刺客"になり、"刺客"は"友"になる・・・こんなゲームには混ざりたくないのさ。我々の創造するArchgoatは不変のものなのだから。


archgoat9 2010年にフランスのDebemur Morti Prod.からコンピレーション盤 "The Aeon Of The Angelslaying Darkness" がリリースされた。このコンピレーションには "Jesus Spawn"、"Angelcunt (Tales Of Desecration)"、"Whore Of Bethlehem"、"The Light-Devouring Darkness" の音源から引用されている他、"Hymns To Darkness" という1993年に録音されたままリリースされていないフルレングスLPの内容も収録されている。更に2005年のポーランドでのライブ、2009年のアメリカはヒューストンのライブ、そして地元ヘルシンキの2007年のライブ音源も収録されているので、今までのアルバムを持っている人でも買って損はない。ボックスセットでは2CD+2LPのものも出ている。

archgoat10 その後、2011年に最新EPである "Heavenly Vulva (Christ's Last Rites)" がDebemur Morti Prod.からリリース、これに際してDebemur Morti Prod.からは1stと2ndアルバムのLP盤も再発された。この "Heavenly Vulva (Christ's Last Rites)" は何とフィンランドのSatanic Tyrant Werwolf (Satanic Warmaster) がゲスト参加、どうやらプロデュース的なことをやったらしい。が、Archgoatの音源として1mmも変化していない、Archgoatでしかありえないサウンドに仕上がっている。Werwolfのインタビューを読んでみると、彼自身はBeheritと初期Impaled Nazareneと並んで、Archgoatをフィニッシュブラックレジェンドとして尊敬しているようで、どういう縁かは解らないが、プロデュースに関わることになったようである。(これは最近知ったので驚いた。私にはWerwolfの音源からはそのようなフィニッシュブラックの影響を感じていなかったからである!)

 他に同年、ギリシャのAltar of the Black Ramから "Angelcunt" のボックスセットがリリースされている。これは100個限定のリリースで、ポスター、ヴァイナルフレーム、バッチ、パッチ、ステッカーのマーチャンダイスが入っているようだ。なんとBOXはゴート革を使用している!さらに初回33コピーのみゴートスカルとボーンの一部が付いている(要るか!?)。

 今年2013年も複数フェスへの出演が決まっているなど今後のますますの活動、そして3rdアルバムのリリースが期待されるArchgoatについて、最後に彼らの不変なスタンスをまとめたインタビューを掲載して終わることにする。

Archgoat

―――Archgoatとして活動を始めたきっかけは何ですか?

 サタニックなメタルを通じて私の感情は炎のように燃え滾っていたし、また蛾のようにそこに引き込まれたとも言える。様々な偉大なメタルを通じて、更にその背後にある闇の門を開けた結果がArchgoatなのだ。

―――曲のタイトルはどうやってつけているのでしょう?

 歌詞を書く上でのアプローチに成熟とか軟化など有り得ない。Archgoatはサタニックブラックメタルオーケストラを作っているのであり、終わりまでそのラインからぶれることなく歩み続ける。我々のコンセプトには2つの異なる歌詞テーマがある。伝統的なサタニズムと、他の冒涜的なアプローチの2つだ。それらは我々の信念であるイデオロギーや経験、我々の人生から来ていて、その考えを反映させているんだ。その考えとは真の自然というものを明らかにしていくことを意味している。奴隷がマスクを外したかのような感覚だ。獣性という真の自然体がか弱き人物像から這い上がってきて、やがてオリジナルの自然に戻るということだよ。

―――誰がカバーアートのメインなんでしょうか。

 Archgoatは我々が全てプランして、了承したことのみ採用する。Chris Moyenは我々の作品を常に好んでくれているし、我々は彼にやってほしいこととして初めからとても細かく厳しいディテールリストを渡しているんだ。彼はそれに従って、作品が完成するまで何枚かスケッチを送ってくれるんだ。カバーアートのコンセプトは作品のテーマに沿って決まる。アートワークは本質的な部分だから、注意深く計画しなければならない。本当のブラックメタルの作品ならばな。

―――Archgoatにとってファンをどのように考えている?

 私のイデオロギーとして、自分の音楽について他人がどう考えているか、気にしないことにしている。しかし、自分の内に秘めた思いを暴露したいと考えているコンポーザーや、音楽の中に"ソウル"と呼ばれるようなものを込める類の人間にとっては、評判を聞きたがるんだろうな。私自身はコメントは聞いても、それによって何かを変えようとは思わない。Archgoatの音楽性は我々のイデオロギーの色付けであり、バンドの背後にある信念そのものだ。私はArchgoatとそのオカルトとサタニズムに全てを捧げている。私の人生の道なのさ。

―――ライブとは?

 ブラックメタルをプレイする感覚はまるでトランスしているかのようで、見たり聞いたりするものでもなく、五感全てで感じるものなのだ。最もポジティブな瞬間はやはりライブをやって、同じイデオロギーを共有できる仲間と出会うことだな。

―――他の何かから影響を受けるようなことはあるか?

 我々はフォロワーではなく創造者であり、トゥルーブラックメタルと理解されている今日希少なバンドの中の一つだ。現代のブラックメタルに散見されるプラスチック造型のイデオロギーは我々には決して到達できない。我々は信奉するのはサタニックデスカルトであり、申し訳ないがマントとマジシャンハットをまとってうろつく森などではない。それこそがイデオロギーだ。

―――あなた方の作風はBlasphemyに近いと思う。最近では言えばRevengeとかConquerorなどだ。それらのバンドとつながりはありますか?

 Revengeは聞いたことが無いが、Conquerorはいいバンドだ。音はBlasphemyに近い。音楽的にはArchgoatとは異なるように思うが、共通点は確かにあると思う。両方ともグラインドコアのスピードを持ったブラックメタルをプレイしていて、歌詞も同じメッセージ性を含んでいるように感じる。それらの主な影響はやはりBlasphemyだろう。

―――ではあなた方の音楽的な影響はなんでしょうか?Blasphemyと同じようにBathoryとかPossessedとか?

 影響をしているものは無いが、勿論Celtic Frost、Possessed、Sarcofago、Venom、Slayerなどは聞きながら育った。また、Blasphemyの"Gods of War"やBeheritの初期音源は私にとって同時期に活動していたものとして特別な作品だ。他にAutopsy、Carcassや初期Deathもここに上げておくべきだろう。

―――Angelslayer と Ritual Butcher は兄弟だが難しくないのか?

 俺たちはいつも同じ興味を共有していた。HellhammerやPossessedの歌詞とか、若かった時はサタニズムと呼んでいた哲学などだ。この哲学を二人で学び始めたんだ。兄弟とやるのは他の人とやるのに比べて難しいとは思わないな。


思想・哲学

―――あなたの人生にインスパイアしてくるものとは何だい?

 私は何の変哲もないものからそうではないものまで、様々なインスピレーションを描いている。野心もまた私の性格の強い部分だ。限界に近づきたいと思う気持ちとそれを更に超えていきたいという気持ちだ。哲学とか技術的なイシューからを学ぶことに対する欲望もある。

―――あなたは肉体的死後の世界の可能性を信じている?

 科学者としてはエネルギー保存が物理の根源的な法則だと思っている。つまり消えたり生まれたりするのではなく、形を変えるだけだということだ。

―――この世界は破滅に向かっているように思う・・世界規模で起こっている悪化だ。堕落が人類の魂に深く染み渡っている。未来への希望があるか教えて欲しい。

 人間の真の自然とは猿が二足歩行しはじめたときから不変だ。そのベーシックな要求や欲求も変わらず、その欲求の優先順位のみが時代と共に変わってきた。今日、人間のヒエラルキーのニーズはとてつもなく簡単に満たされることが示されている。それは彼らが自分のステータスである栄光とかそういった個人的欲求によって容易に駆り立てられるということだ。この手の欲求とは現代人の物理的欲求と同じくらい容易に達成しうるようになったんだ。そしてその欲求は日に日に堕落していく。自分の未来に関しては全く不安に思っていないよ。

―――宇宙についての考えは?広大でミステリアスで暗闇に何があるのだろうか。進化を信じる?

 堕落をやめたもの、進化し続ける種に食べられたもの全ての進化を信じている。人間は今日もっとも進化した。基本的に私はサタニズムとダーウィニズムは両方とも限界に到達し、さらにそれを超えていけるという点において同様に信じている。宇宙は地政学的には未開の地であり、私も思うところはあれど、それは事実ではない。

―――多くの人々はアルマゲドンの可能性についてあまり気を払っていない。無思考でいるんだ。そういう人間をどう思う?

 よく言われることとして「知識は痛みを増加させる」ということがある。ソファにふんぞりかえってメロドラマを見ることは、重い哲学的回答について頭を悩ますよりずっと簡単なことだ。現代人は容易く可能ものしか体験しようとしないのさ。そしてそれはその人間のライフサイクルに反映している。わたしはそういう愚かさ、平凡さを嫌うし、自ら遠ざけている。無価値の海に深く深く沈んでいくようにソファにふんぞりかえっている奴らからな。

―――あなたの宗教に対する考えは?死後について何か考えはある?

 はじめに言っておくと、宗教とは集団に向けられたもので、個人には向けられたものではない。そういった中で"解"に辿り着く訳がなく、あまりに愚かでバカげている。個人の枠組みにおいては…そうだな、モラルとイシューを与えることで明快な思考を得るということだけだろう。宗教とは常に弱く無価値で徒党を作ってしまうような人間をターゲットにしているものだ。弱く不安定な人間は非論理的な思考に容易に陥るのさ。


フィンランドシーン

―――初期フィニッシュブラックシーンを振り返ってみると?

 今より凄く小さくてもっと自分の生涯をささげていたな。しかし私はバンドの在籍している国について深く考えたことなどない。BeheritやImpaled Nazareneとは国が一緒なだけで他に何もない。ArchgoatはArchgoatなのだ。但しスカンディナビアブラックメタルは大概好まない。彼らのほとんどは自分自身をロックスターにしたいというメンタリティでやっているからだ。フィンランドは墓の盗掘や教会への放火なども無かった。ノルウェーやスウェーデンのシーンはそういう"サタニック"な活動で有名になったのさ。

―――私はあなたがBeheritのNHと長い付き合いだと知っているが、彼とコンタクトがとれる?

 我々は90年初頭はそうだったが、Archgoatを一度やめて以来、連絡を取ってないし、彼のことは噂でしか聞かない。噂も確固とした事実ではない。彼はブラックメタルシーンの最もオリジナルな人物だったが、残念ながらメタルをやめてしまった。しかし彼は常に一匹狼だったから、突然ブラックメタルシーンからいなくなってしまっても何の不思議もなかったな(2005年当時)

―――フィンランドのブラックメタルシーンに意見は?

 今日、90年代のシーンに回帰することはとても難しい。現代のフィンランドのブラックメタルは全く違うものになった。まるでノルウェイジャンの平均的なブラックメタルだよ。オリジナリティなんてない。そしてそのシーンは沢山の奴らが群れていやがる。イデオロギーと確かな手法を持ったアンダーグラウンドでタイトだったコミュニティは、いまやアベレージメタルに置き換わってしまったんだ。イデオロギーもオリジナリティもないやつだよ。アンダーグラウンドはオーバーグラウンドになってしまい、ブラックメタルの持つ古き価値は忘れ去られ、なくなってしまい、集団のものになって個人主義を考える余地を失ってしまった。もちろんその群れから抜け出している人もいるし、そんな人とは是非コンタクトを取っていきたいと考えている。もっとも、ブラックメタルを死に追いやったのはDimmu BorgirやCradle of Filthだ。プラスチックブラックメタルとコマーシャリティを混ぜたやつだよ。あいつらは大衆をブラックメタルシーンに容易に入ってこさせた。狼の群れに羊を混入させたようなものだ。


音楽・ブラックメタル

―――あなたの意味するブラックメタルとは何だい?

 音楽を作曲するということは強くイデオロギーに関係しているということをいつも感じていたし、だからこそロウなブラックメタル以外のものを作曲しようなんて思えなかった。ゆえにまずは哲学の探求から入り、その後に音楽を作曲することになる。ブラックメタルはより哲学的で、他のどんな音楽より、音楽性に裏付けられたイデオロギーそのものを体現しているのだ。サタニズムやオカルティズムといったものをね。音楽とは道そのものなんだよ。私がまだ子供だった頃、VenomやHellhammerの歌詞を読み、何を歌っているのか深くその意味を知りたかったなんてことがある。今日もなお、その道を歩んでいるのだ。

―――世界の音楽シーンの方向性についてどう思う?個人的に私としてはどのバンドの価値も失われていっていると思う。人々も戦うことを無関心だ。しかも不幸なことにこれらの人々が利益をシェアしている・・・これについてはどう思う?

 今日、多くのレコード会社があって、価値のないバンドが沢山在れば、多くの価値のないリリースがされて、ブラックメタルとしての本当の必要性が欠乏してしまっている。私はそのような新しいリリースをほとんど聞かない。そこには新しいアイディアやオリジナル性といったものが皆無だからだ。まあ単なる古いバンドの模造品だよ。自分自身の道を切り開くより、誰かの背後を歩く方がずっと簡単だからな。

―――NSイデオロギーなどのバンドについて個人的な意見は?

 ブラックメタルは自分の哲学の観点を表現する方法だと思っているし、政治的な観点を広める道具ではないと思う。サタニズムは"個人宗教(one-man-religion)"であるし、Archgoatの支柱である。そこに宗教や政治はいっさい混入されないし、哲学を政治的イデオロギーが覆い尽くすのは矮小なものがすることだ。

―――Darkthroneのようなバンドについてどう思うか?昔は否定的に捉えていたが?

 あの頃は沢山のデスメタルバンドが急にブラックメタルに転向してきた。彼らもその一つだと思っていた時期もある。しかしそれは間違えていた。私は今、Darkthroneに対して尊敬の念を抱いている。ブラックメタルシーンに大きな仕事をしてきた彼らを。今となってはあれはフィンランドとノルウェーの口げんかだったし、それを反映した発言に過ぎない。

―――20年来のブラックメタルシーンの重要人物として今日のブラックメタルについての考えを聞かせてください。

 (最重要人物だなんて)笑わせてくれるなよ。ありがとう。私にとってブラックメタルとは自分自身の宣伝などではなく、本当の闇を広めるためのものなんだ。80年代末~90年代初頭において比較していくとブラックメタルというものは本当に大きく変わっていった。今日に至っては、とてつもなく多くのバンド、レーベル、ディストロ、プロモーターが存在している。それはトゥルーであり続けること、つまりアンダーグラウンドにあり続けることを難しくしているんだ。私もこのような現代的な傾向を好ましく思っていない。ブラックメタルはコマーシャリティとは無縁であるべきなんだよ。



■ 引用

 今回の記事は

 ・ Arcana Noctis(04/09)
 ・ the Cross Of Black Steel magazine Issue # 2

などから引用した。凡そ年代は2005年~2009年のインタビュー記事で、他に出典不明の記事も一部引用してある。
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【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - II 

■ 前回

 【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - I


■ 雌伏、そして復帰(2004年)

archgoat4 前回は、Archgoatがブラックメタルシーンの形骸化に失望して、1994年に解散してしまったところまでを記した。そして1999年には既述したとおり、Beheritとのスプリットがリリースされたて、更にはこのスプリットは2004年にギリシャのISO666 Releasesから再発されたなど、"Dark War"の時代は既に過ぎて、ダイハードなブラックメタルマニアに知られるフィニッシュブラックレジェンドとなっていた。

 しかし残した音源はあまりに少なかったし、復帰を渇望されているというよりかは知る人ぞ知るバンドであった。そしてその頃、彼らは音楽から足を洗い、各々の生活に戻っていた。

 その頃を彼らは以下の通りに振り返っている。

 我々はいつも自分たちの音楽を信じていたし、我々のイデオロギーはArchgoatの中心にあった。解散後は音楽から離れ、学び、働いていた。フィンランドアンダーグランドの外にいたんだ。90年代中旬には私はギターを全て売ってしまっていたので6年間くらいは何もやってなかった。コピーだらけの腐ったブラックメタルバンドなんかよりずっと素晴らしいArchgoatが再始動できるなんて考えてもいなかったし、またArchgoat以外の他のバンドでプレイしたいとも思わなかったからね。Archgoatは私にとってプロジェクトではなく人生の一部分なのだ。

 しかし我々に潜む炎は決して消えていなかったし、あの頃はいささか退屈だった。時々、再スタートさせたいと思ったが、結局Angelslayerと3年ほどかけて議論してようやく彼を頷かせたんだよ。


 彼らの潜む黒き炎はやがて再度輝き出し、ついに2004年にバンド活動を再開させることになったのだ。再活動に際してレーベルからおよそ20ものコンタクトが届き、最終的にフィンランドのHammer of Hateと契約することになった。そして1993年に制作した未発表曲を用いたMLP "Angelslaying Black Fucking Metal" をリリース。

 復帰についてはこのように振り返っている。

―――長い沈黙の末に、バンドを再開させた理由は何ですか?

 私は昔やっていた手法で聖歌を作りたいと思い始めて、Angelslayerにそのことを話したのが始まりだ。もう一度リハーサルをするまで漕ぎ着けるのに3年はかかったが、ロウで邪悪なエネルギーを感じたよ。我々のオリジナルドラマーは家族の問題で参加できなかったから新しいドラマーを探してLeneth the Unholy Carnagerに参加してもらった。復帰後初のライブは2005年にフィンランドのKouvolaでやったよ。


archgoat5 このMLP "Angelslaying Black Fucking Metal" は現在は比較的レアになっているが、後にリリースされた"The Aeon Of The Angelslaying Darkness"は1993年にリリースしなかったフルレングスLPも含めたコンピレーション盤になっているので、そちらで聞くことが出来る。

 その後、2005年にドラマーにパーマネントメンバーとしてSinister Karppinenが加入し、その年にBehexen、Hell Militiaとヨーロッパツアーを行った。そのツアーで行ったポーランドでInfernal Warもサポートアクトとして参加していたが、そのとき彼らがHell Militiaのメンバーの不遜な態度に腹を立て、何発か殴ったなんて暴力騒ぎがあったが、その事件を経て逆に全員の結束を強くしてライブも成功したなんて話もあったツアーだったという。

 前回、LLNのコラムを書いた訳だが、実際その不遜な態度をしていたHell MilitiaのメンバーがMeyhna'chだったりして、なんて思ったりもするが果たして。


■ 念願のフルレングスリリース(2006年)

archgoat6 翌年、Hammer of Hateから念願のフルレングスである1stアルバム "Whore of Bethlehem" をリリース。このアルバムは他にカセットテープでTerratur Possesionsから、LPでBlasphemous Underground Prod,からも同時リリースされている。

 デジパックバージョンは限定数1500でリリースされ、ボーナスDVD "Live Rituals And Desecrations With Seventeen Years Of The Goat"も同梱されており、2006年にドイツで行われたライブと、1993年にフィンランドで行われたライブが収録されており、この1stアルバムを手に入れるならこの限定盤をお勧めしたい(が、自分はノーマルの方しか持っていない…)

―――長い空白の後、復帰してリリースした"Whore of Bethlehem"について教えてください。

 我々は基本的にサウンドエンジニアから全てレコーディングは自分たちの力でやっているんだ。"Whore of Bethlehem"は我々のリハーサル"ダンジョン"でレコーディングされた。なぜならば我々はロウアンダーグラウンドな音源を作り出していて、それにはレコーディング環境の雰囲気が重要な要素になるからだ。

 "Whore of Bethlehem" は "Angelcunt" の正統な続編だ。2004~06年に楽曲の多くを収録したが、一部はリリースしなかった1993年の時のLPの音源も使ったよ。その出来は大変喜ばしいものであり、望んでいたとおりになったし、カバーからタイトルまで簡単に決めることが出来た。"Whore of Bethlehem" は "Angelcunt" より少しだけ速いものになったが、しかし我々の作品だとすぐにわかるものに仕上がったよ。

―――このリリース後の反応などはいかがでしたか?

 非常に良い評判を受け取ったが、いつも通りとてもネガティブなものもあった。私はこれをいいことだと捉えている。ネガティブやポジティブといった強い感情を作り出した自体が、我々の作り出した音源のインパクトが強いことを意味しているに他ならないからだ。


archgoat7 この1stアルバムのリリース後、2007年にBlack Witchryとドイツ、フィンランド、その他何カ国かのヨーロッパ諸国をツアーで周っている。

 そしてそのツアーの翌年、このライブ音源である "Desecration and Sodomy 2007" がBlasphemous Underground Prod.とOsmose Prod.の共同でリリースされた。メンバーはライブが録音されていることを知らなかったらしいが、Black Witchryのメンバーを通じてその音源を聞いたことで、納得してリリースを決めている。

 このスプリットライブLPは未だCD化されておらず、2013年2月現在、Discogsでは最低価格48ユーロで取引されている。このLPは1000枚限定で出ていて、内100枚は赤色のヴァイナル、残り900枚は黒色のヴァイナルである。もしネットを通じて手に入れるときはどちらが出品されているかも確認するとよい。

■ 終わりに

 今回は復帰後、1stフルレングスのリリースまでを主に語った。空白の期間は長く、その間にはフィンランドの新たなブラックメタルムーブメントが起きていて、HornaやSatanic Warmasterといったメロディーが印象的なブラックメタルが存在感を増していた。しかし彼らはあくまで自分たちのルーツに忠実に、ブラックメタルレジェンドとして、何も姿を変えずに復帰し、その存在を高らかに宣言したのである。

 次回は最近の活動と、そしてArchgoatの変わらぬ哲学をインタビューを通じて紹介していく。

[続] → 【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - III
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【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - I 

■ はじめに

 散々、このブログでも思いの丈をぶちまけている様に、私はBeheritをこよなく好むし、そのため90年代中盤から起きたフィンランドのブラックメタルの言わば"ノルウェイジャン化"について、音楽としては一定の理解は持ちつつ、現在ああいったものがフィニッシュブラックとして代表的になっていることについては甚だ遺憾である。

 何がフィニッシュブラックメタルのオリジナリティーかといえば、それはBeheritであり、初期Impaled Nazareneであり、そして今回取り上げるArchgoatであろうが、Impaled Nazareneはある時期から路線を変えてしまったし、BeheritとArchgoatは挙って90年代中盤に姿を消してしまった。これはノルウェーとフィンランドとの間で起きた抗争 - Dark Warと無縁ではないことが明らかになっているが、これはブラックメタル史におけるもっとも大きい損失であったと思っている。

 以前、Beheritのインタビュー記事を交えたコラムを書いたが、今回はArchgoatについて紹介していこうと思う。特にArchgoat復帰後の活動は活発的であり、リリースしている音源もトゥルーフィニッシュブラックと冠するに充分な、いわばArchgoatはArchgoatのまま不変であることから、今後もブラックメタルシーンの最重要バンドだと位置づけるべきだろうし、敬意を込めてインタビュー記事などバンドの実の声を中心にArchgoatについて紹介していきたいと思う。

archgoat_logo


■ 結成(1989年)

archgoat1
 ArchgoatはフィンランドのTurkuで、1989年にギタリストのRitual ButchererとベースヴォーカルのLord Angelslayerの二人の実兄弟によって結成されたブラックメタルバンドである。そしてドラマーのBlood Desecratorを加えた3ピースのバンドとして始動した。

 バンド名は彼らのサタニズム思想に伴って、Archangel(大天使)の正反対の名前にするべく、サタンの象徴であるGoatと合わせて名づけられた造語である。名付け親はAngelslayerであった。

 結成後しばらくは曲作りの試行錯誤を繰り返し、距離のとり方やアプローチの仕方などを模索していた。彼らは曲のことをhyms(: 聖歌)と呼んでおり、特に1曲目を製作するに試行錯誤を繰り返した末にそれを"Death & Necromancy"と名付けて、その後の楽曲のスタイルであるロウでプリミティブなブラックデスメタルを確立させた。

―――Archgoatのような音楽を始めた理由は何ですか?

 我々は自分たちで聞きたいものを作りたかったし、その過程でバンドの基盤となるイデオロギーを確立させたのさ。80年代終わりにはブラックメタルのバンドなんてほとんどいなかったし、だから俺たちはフィニッシュブラックというものを作り出したんだ。

―――影響を受けたバンドは?

 Carcass、Possessed、Celtic Frost、Sarcofago, Bathory, Slayer, Venomといったバンドからはインスピレーションを受けた。それらのバンドは自分たちのオリジナルをプレイしている。勿論、我々も彼らのコピーをしているわけではない。


archgoat2 そして1991年に1stデモ"Jesus Spawn"を発表した。このデモはブランクテープ+1ドルを郵送すると録音するというという非常にプリミティブな音源の配布方法だった。示している画像はその"Jesus Spawn"のものであるが、確かに前述の記載が見られる(画像クリックで拡大)。このような配布方法であっても非常に高い評判を得ることができたため、1992年にアメリカのレーベルであるNecropolis Rec.と契約することができたのである。

 なお、1993年には地元で行ったライブの音源 "Penis Perversor" を1stデモと同様の方法で配布している。メンバーはこの音質を「未だかつてなくラフで音量すら定まらないものだったが、逆に目的にはあっていた」と振り返っている。ちなみにこの音源のEncyclopaedia Metallumのレビューが現在1件だけついているが、「俺はこのバンドが大好きなんだが、このライブデモは全く持ってダメだ。Archgoatのファンは90年初期の音源の方が好きだと思うし、それが収録されているんだけどレコーディング状態が超ヤバい。まじでノイズの公害だよ。他の音源は是非聞いてほしいけど、このデモだけは避けるべきだ!」と書いてある(意訳)。まさにバンドの目的に合っていたという感想だろう。

■ 解散(1994年)

archgoat3 Necropolis Rec.と契約して初のオフィシャルな音源は、1993年リリースの "Angelcunt" である。収録されている5つのトラックはバンド活動を始めた1989年に書いたもので、Archgoatのルーツそのものであると言っても良い音源である。

 この音源の3曲目に収録されている "Death and Necromancy" 、これは彼らがその後の方向性を確立したとされる記念すべき"聖歌"であった。他にもこのMLPに収録されている楽曲はいずれもArchgoatの礎になったものばかりで、驚くべきはこの作品を1989年には製作していたということである。同ジャンルのレジェンドであるBlasphemyはデビューデモ "Blood upon the Altar" を1989年にリリースしており、全く同じ時期である。BeheritがBlasphemyの影響を公言しているのに対して、Archgoatは恐らくBlasphemyと同じようにゼロからロウブラックを作り出したということは特筆すべきことであろう。

 ブラックメタルシーンとそれを取り巻く全てのものは、より高みを目指そうと進化しているのではなく、変化しようとバイブレーションしているだけだ。しかし我々は活動内外問わずArchgoatとともに常に歩み、そして如何なることが起きようとも変化することなく、ルーツに対して忠実になることを決めた。ゆえに "Angelcunt" の楽曲は常にライブのセットリストに入るだろう。


 このMLPも好評を博したことから、彼らはすぐにフルレングスの制作に取り掛かり、レコーディングも終えていた。しかしそれを発表することなく、なんと1994年にバンドは解散してしまったのである。また、遅れて1999年にはNecropolis Rec.からBeheritとのスプリットがリリースされたが、それも "Angelcunt" の音源が収録されていただけのものであった。

 後にインタビューにて当時のことを以下の通り振り返っている。

―――Beheritとのスプリットは1995年リリースだったのに何故、新曲ではなかったのでしょう?

 我々はNecropolis Rec.にフルレングスLPのリリースを提案して、既にスタジオレコーディングも済んでいたんだ。しかし "Angelcunt" のロイヤリティをレーベル(Necropolis Rec.)からリップオフされた。だからもう一緒に仕事をしたくないと判断して、その新曲は使わなかった。あいつらはブラックメタルのためじゃなくて、金のためにレーベルをやっていたんだ。他にも90年代には中小規模のレーベルが契約を望んできたが、それらとは契約しなかった。

 あとNecropolisとはBarathrumとのスプリットリリースの話もあったんだが、NecropolisサイドがBarathrumの音源を聞いてリリースしたくなくなったとかで、代わりにBeheritになったのさ。そのカバーアートは我々サイドからは一切口出ししていないし、そのスプリットのリリース経緯は実に気に食わなかったよ。

―――どうして解散したんですか?

 1993年から1994年にかけて、ブラックメタル自体がコマーシャリズムに侵されてアンダーグラウンドからオーバーグラウンド化していくのを目の当たりにしていた。我々はそんな間口が広くて誰でも出入りが可能なブラックメタルシーンにうんざりしたのさ。真のサタニックデスカルトの精神はメロディック、メランコリック、ポリティカル、宗教とかそんなものに取って代わられるようになってしまっていた。我々はそのようなシーンの一部にいようなんて思わなかった。

 更には金や個人的な栄光のためにブラックメタルをプレイしはじめたメタルクソ野郎どもが跋扈し、我々を攻撃しだしたのさ。我々はそういうアホどもにArchgoatについて言及すらして欲しくなかったし、最も最善な決断が「Archgoatを抹殺(解散)する」ことだったんだ。だから1994年に活動をやめたのさ。そのときシーンはすでにクソみたいなコピーバンドで埋め尽くされていたよ。


 恐らくここで言う「攻撃」とはフィンランドとノルウェーの間で起きた "Dark War" によるものだと思われる。以前のコラムでも書いたとおり、Beheritはこの頃、様々な脅迫を受けていたし、またフランスのVlad Tepesのメンバーは逆にフィンランドのブラックメタルバンドに脅迫状などを送っていた。

 様々なインタビューを見る限り、Archgoatのメンバーは聡明であり(どうやら物理学を専攻していたっぽいところもある)、ブラックメタルとしてのバンドの位置づけや活動指針なども明確であったが故、ブラックメタルシーンに寄り添うことなく孤高の道を歩んでいたから、そのようなバンド同士のイザコザに巻き込まれるなどして、シーンが形骸化していったことに失望してバンドを解散することを決めたようだ。またBeheritもほぼ同時期にブラックメタルとして活動を止めている。

 その結果、シーンはDarkthroneやBurzumといったノルウェイジャンブラックの未曾有のコピーバンドで満ち溢れ、フィニッシュブラックは息絶えた。今、このような状態を振り返ると、ブラックメタルシーンとしては大きい損失だった。それはフィニッシュブラックという1シーンが死んでしまったということより、むしろ「群れることなく個々が各々存立する」という個人主義精神の損失、そしてブラックメタルという音楽が、精神的なものから「音楽形態」として成立するようになってしまったという事態に対してである。

 勿論、ブラックメタルという音楽が崇高なものであったかというとそうではないだろう。むしろ、いかに青い思想であっても「どうしてそういう音楽をプレイするか」という"目的と哲学"を持っているバンドが形成していたシーンがあった。しかし「音楽とスタイルをコピーする」バンドが満ち溢れるようになった状態をArchgoatは "オーバーグラウンド化" したと表現しており、その状態に失望したのだろう。

■ 終わりに

 前回、前々回のシリーズはNSBMとLLNという、実際自分が前から触れているものというよりかは、自分の中でまだまだ不鮮明なものを理解するために書いたもので、かなり手探りなものであったが、今回は久しぶりに自分の好きなものを推す形でコラムを執筆できることはとても楽しく思う。

 続いて次回は解散後、Archgoatのメンバーがどうしていたか、また再結成後の活動などに触れていきながらArchgoatというブラックメタルレジェンドの本当の姿に近づいていく。

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【column】 Les Legions Noires - III 

■ 前回

 【column】 Les Legions Noires - II


■ 続き

  今回で第三回目となるLLNコラム。実を言うとこんなに長くなるつもりはなく、元々は自分があまりに手元にあるフレンチブラックを持て余し気味だったことから、その本質に触れることで腰を落ち着かせてフレンチブラックを聞き込んでいこうとするためのものであった。しかしVlad Tepesのインタビュー記事などから、トゥルーブラックメタルとは一体何なのだろう、という思案に至ったのが前回までの流れだった。

 今回は話を本筋に戻すべく、LLNというアンダーグラウンドサークルが与えたフレンチブラックシーンの寄与について眺めていく。それをすると前回書いたとおり、Mütiilationの特異性が浮かび上がってきたので、それを中心に本稿をまとめることにする。

■ MütiilationのLLN脱退

 MütiilationはLLNの中でも最も有名なバンドだろう。それはLLNがフェードアウトした後も生き残り続け、そしてフレンチブラックメタルシーンに大きな影響を与えてきたからだ。つまり最もオーバーグラウンドな性質を持ったLLNのバンドがMütiilationということになる。1995年にLLN内で製作されたファンジン"The Black Plague - First Chapter (And Maybe Last One)"はMütiilationのMeyhna'chが作ってインタビュワーなども務めたらしい。

 しかしMeyhna'chは1996年にドラッグの問題でLLNから追い出されている。どうやらかなり重度のジャンキーだったようだ。ドラッグとブラックメタルに纏わる話に関してはそれだけで一つのトピックになりそうだが、ここでは触れない。しかしドラッグが原因で脱退させられたということは、それがLLNという組織においては御法度だったということだろう。もしくは単純にジャンキーだったMeyhna'chが手に負えなくなっただけかもしれないが、いずれにしてもLLNはその後、闇に還り、Mütiilationだけが残った。

 MütiilationもLLN脱退後、しばらく音源をリリースしていなかったが、1999年にDrakkar Prod.からコンピレーションアルバム"Remains of a Ruined, Dead, Cursed Soul"をリリース。それは主に1991~95年の音源のコンピで、一部未公開のものも収録されていた、そしてライナーノーツには「Meyhna'chはブラックメタルシーンのトレンディ化に失望して既に死んでいる」と書かれていたのである。つまりLLNのフェードアウトと同調したように、Mütiilationも闇に還ったのだと思われた。

 しかし2001年に"Black Millenium (Grimly Reborn) "がDrakkar Prod.からリリース。なんと「まだ埋葬されていない」「死んだ身体で音源を作った」などと書かれていて、正直なところかなり俗っぽく感じてしまう。この年にはフランスで2回ほどライブにも出演、肩書きからLLNという枷がとれたからなのか、それともドラッグの後遺症から復活したからなのか、かなり"活発的"に活動しだし、当初のLLNというアンダーグラウンドサークルの理念から完全に逸脱し始めた。そして彼の活動はMütiilation一つに留まらず、様々なフレンチブラックシーンとの交流をし始めた。


■ Mütiilationから広がるフレンチブラック

 このようにLLNの枠組みからはみ出したMeyhna'chの人脈構成図を以下に示す。ご覧の通り、フレンチブラックの現在でも著名なバンドに大きな関連を見出せるだろう。

around_LLN
(クリックで拡大)

 Malicious Secretsはたった3つの音源しか残していないのだが、そのうち"From the Entrails to the Dirt"というフレンチブラックメタルのスプリットはMutiilation、Antaeus、Deathspell Omegaも参加している超豪華音源で、その中でもMalocious Secretsの音源が収録されているだけに価値が高いものになっている。サウンドの方もいわゆる自殺系ブラックメタルとは全く異なったブチ切れ系病みブラックメタルを展開し、まさしくカルトなものになっていて、LLNのカルト性が直接伝承されたと言えるだろう。

 またMalicious SecretsのメンバーであるTNDはフレンチブラックメタルレジェンドであるHirilornのメンバーでもある。更にHirilornが母体となってDeathspell Omegaが結成された。HirilornとDeathspell Omegaについてはいつか取り上げる予定なのでここでは説明を割愛するが、この人脈の繋がりこそがフレンチブラックメタルの本流であるようにも感じる。またその流れでフィンランドのClandestine Blazeも人脈筋となる。

 TND氏と共にCelestia(2012年来日した)を組んでいたNoktuはDrakkar Prod.のオーナーで上記リリースを行っていたこともありMeyhna'chとはかなり縁が深く、CelestiaメンバーもMütiilationのライブサポートも行っていた。確か2001年のライブもサポートで入ったはずである。さらにMeyhna'chとNoktuはGestapo666というバンドも結成している。Gestapo666自体はNoktu以外のメンバーは流動的だったようで、Meyhna'chの参加は初期音源だけのようであるが、こちらもまさにアンダーグラウンドを表現するようなLLN継承サウンドだった。

 そのNoktuはAlcestのNeigeと共にMortiferaもやっていたし、更にその筋で辿っていくと現在のフレンチブラックの最先鋒であるPeste Noireにまで行き着く。ここまで辿り着くとだいぶ"表"に出てきたな、という印象ではあるが、特にPeste Noireのデモを聞けばLLNから伝承されてきたカルトプリミティブブラックというものを感じるだろうし、更に1stでは中世秘密結社的な怪しさがあって、LLNから受け継いだカルトさを彼らなりに展開した結果とも言えるだろう。

 他にMeyhna'chが直接的に関わったバンドと言えばHell Militiaである。こちらはどうやら2012年に脱退してしまったらしく後任にはBethlehemのメンバーだったRSDなる人物が入ったようだ。Hell Militia関連ではメンバーがTemple of BaalやEpicといったバンドをやっていたこともあり、ここまでいくとフレンチブラックの有名なバンドのかなりを網羅しているような人脈筋である。


■ その後

 Mütiilation自体は復帰後、4枚のフルレングスを含む複数の音源をリリース、先に紹介した"From the Entrails to the Dirt"の他にも、Deathspell Omegaとの有名なスプリット、更にはフィンランドのSatanic Warmaster、オーストラリアのDrowning the Lightとスプリットをリリースした。特に後者のスプリット"Dark Hymns"はLLN活動時には散々こき下ろしていたフィンランドのブラックメタルバンドとスプリットを出したのがトピックであった。しかしSatanic Warmasterは広義にはノルウェイジャンブラックのフォロワーであり、90年代初頭のフィンランドブラックとは全く異質のものであるから、精神面など与し易かったとも言えるだろう(次はArchgoatのインタビュー記事のコラムを書くのでその時にまた書くが、トゥルーフィンランドブラックとは断じてHornaやSatanic Warmasterのようなものを指すのではないといいたい!)

 そして2009年に解散、Mütiilationも闇に還った。今、Meyhna'chはO.D. Sanctusという名前で新しいプロジェクトを進めている。またMeyhna'chはSektemtumというブラックメタルバンドにも昨年加入した。まだ未聴なので言及は避けるが、とどのところ、彼は表現者というよりミュージシャンなのだろう。ゆえに彼はLLNというカルトサークルのサウンドをオーバーグラウンドに引き上げて、そしてそれをフレンチブラックシーンに拡散したのだ。


■ 終わりに

 今回のコラムは終わりが見えないまま書いていた感じになったが、つまりLLNというカルトサークルの思想と神秘主義、コマーシャリズムに侵されたブラックメタルシーンの破壊と、本来あるべき"闇"にそれを戻すというのがLLNの目的であったが、その中で唯一、Meyhna'chのみが逸脱し、その結果としてフレンチブラックシーンに多大なる影響を及ぼして、現代でも活躍するバンドにLLNのエッセンスを継承することができたと言えよう。

 LLNは決して音源に希少価値があったからカルトだったのではない。なるべくしてなった、目的があったからそうなったのであろう。そしてそれは誰しも聞けば解るとおり、サウンドにしっかり反映していたのだ。そして今では主にそのサウンドがMeyhna'chによって各バンドに引き継がれ、各々のバンドの思想哲学を基盤として今も聞くことが出来るのだ。

 今回のコラムでは自分自身、なぜブラックメタルを聞くのか、ということを探求する切っ掛けとなった。さて、皆さんはなぜブラックメタルを聞くのでしょうか?たまにはその表面的な音の配列にのみ関心を寄せるのではなく、じっくり考えてみるのもまた一興かもしれません。
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【column】 Les Legions Noires - II 

■ 前回

 【column】 Les Legions Noires - I

■ 続き

 前回はLLNについて簡単に触れた後、彼らの行動原理などを知るためにVlad Tepesのインタビュー記事を読み解くことで、LLNのアンダーグラウンド・カルト・ブラックメタルとしての所以を理解した。今回はLLNの人脈構成などを見ていきながら、そのようなUGカルトの血脈がどうなっているのかを見ていくことにしよう。またLLNの代表的な人物、Vordbのインタビューも転載(訳)する。

■ LLNの人脈構成

 以下にLLN内の相関図を示す。黒塗りに白文字がバンド名、黒文字が人名となっている。なお、この相関図はLLN全体を示しているのではなく代表的な人物の活動のみピックアップしている。


LLN
(クリックで拡大)

 まず前回、掲載したVlad Tepesのインタビューは主にWladが行っていたが、もう一人のメンバーがVorlokである。Nifleremという人物は彼らの志に合わずにすぐに外されている。また、彼らはVermyapre KommandoとSevissというバンドもやっていた。前者の音源記事は先日このブログでもアップ済であり、詳細は割愛するが、後者の音源はLPブート程度しか一般には出回っていないため当方も未聴である。

 そして彼らと様々なバンドを組んでいたのが、LLNの代表的なバンドであるBelketreとTorgeistのメンバーでもあるVordbである。相関図を見ていただけば解るとおり、VordbはLLNの中でも最も多くのバンドを掛け持ちしていた他、更にMoevotのソロ活動も行っており、いわばLLNというサークルの最重要人物といっても過言ではないだろう。

 またEncycleopaedia MetallumによるとBrenoritvrezorkreもソロでやっていたようだが、一説によるとVolrokとNifleimも関わっていたという話もあり、解らない。このバンドはLLNマニアでなければあまり目にしたこともないと思う。後者もブート音源は存在するし、知っている限り1枚だけブートCDが出ているのだが、それも66枚限定のリリースという超極少数だったためお目にかかった試しがない。但しVlad Tepesが"The Black Legion"(比較的LLN音源の中では手に入りやすい)においてBrenoritvrezorkreのカバーを行っており、その音源によってBrenoritvrezorkreを知った人も多いのではなかろうか。

 さらに注目していきたいのが、LLNにおいてもう一人の重要なメンバーであるMutiilationのMeyhna'chとはVordbのみしかバンド的繋がりがなかったという点だ。この件については後述するとして、まずは最重要人物と目されるVordbのBelketreとしてのインタビューと、もう一つはMoevotのインタビューについて紹介していこう。ちなみに両方ともThe Black PlagueというLLNのオフィシャルファンジンのインタビュー記事から引用した。


■ Interview with Vordb (& Aakon) of Belketre

―――Belketreが行ってきたカオスな革命について教えてくれ
 カオスというだけでなく、未来永劫に、だ。この革命とは我々が示す"闇の契約"のことで、世間の虫けらどもが掲げる革命とは正反対のものだ。私はそれを守り続けることを約束する。

―――ブラックメタルに一切関係なさそうな古きカルトバンドについてどう思いますか?
 そいつらはポッと出ては姿を消す惨めなトレンディーバンドよりさらに酷い。あなたが挙げたバンドらはドアを開けっぴろげにしていて、我々の威厳を目の前にするとすぐにそのドアをピシャリと閉めやがる。そいつらは自身の作品や我々の伝説を否定して破壊するのさ。その態度は全く許されるものではないし、道理に反している。多分、やつらの"犬"はカルトであろうとなかろうと、安堵したかのように死ぬだろうな。

―――あなた方のイメージしている世界とは一体何なのですか?
 それは"No World"だよ。"世界"の抹消は人々の抹殺そのものなのだ。我々のイメージにある世界においてはいかなる手段も"Chaos"になるのだ…。

―――Vlad TepesとのスプリットCDについて教えてください
 私から言えるのは、ウジ虫どもがそれを手に入れたとしたら、クソみたいなブラックメタルシーンにおける虫けらどものほとんどが萎縮しきった魂を粉々に打ち砕かれたかのように感じることだろう。このVlad Tepesとの黒き音源はブラックメタルそのものであり、そうでなければならず、永劫そうなり続けるだろう。ブラックメタルかそうではない他の何かかを区別するためのものなのだ。ブラックメタルを語る贋物を明らかにできるだろうが、そもそもそいつらが代表的になってしまうシーンこそが、ブラックメタルではないことの証明になっている。そいつらはブラックメタルからは僻遠な存在だ。彼らがどう思おうとな。

Aakon: この作品はレーベルから出す最初で最後の作品になるだろう。この後、我々は更に暴力的で荒いエクストリームな音源をデモのみで出すことになる。

―――あなた方の仰る革命はこれからも続くと?そのためのポイントとは何ですか?
 時間が経つにつれて我々は更に暗闇の深みに誘われ、どんな影響も受けなくなる。決してその終わりはないだろう。限度のある"暗黒"なんて、シーンを荒らしている"サタニストと直面してしまった人間"においての限界に過ぎない。奴らはイメージ上で "暗黒" を創り出しているのだが、それは惨めなスピリチュアルによる制限に苛まれている。奴らにとっては黒き旅路はすでに終わっているのだ。さも始まってもいなかったかのようにな。

―――自分の過去を思い出すことはありますか?それを否定しますか?
 もちろん、その過去とやらは我々が人間性を否定し抗った後のことだけだ。私は過去を否定しない。なぜならば過去は、神や神の僕が植えつけようとしてきた欺瞞を破壊する時に用いてきたこの力と容赦ない決心のシンボルだからだ。自己否定なんて純粋なクリスチャンがすることであり、サタニストがやることではない。

―――BelketreはこのスプリットCD以降も何か発表するつもりはあるのですか?
 ただサタンのみぞ知っている。私としては少なくとも、永劫、最悪な方法で革命運動を行い、我々の力で下等な奴らを破壊し続けることを示したいと願っているよ。

―――人生をエンジョイしようとしている弱き人間どもに言うことはありますか?
 奴らは自殺すべきだ。もしくは我々はそれを助ける強大な歓喜を携えている。つまりだな、もし我々の手で奴らが死ぬとしたら、それはより長く苦痛を与えることが出来るということだ…。


 以上がVordbのインタビューである。既存のブラックメタルシーンに対する怒り、そして自分たちの守るべきブラックメタルは決して日の目を当たる必要がないこと、更に敢えて出ていく目的が既存のブラックメタルシーンを破壊するためであることが述べられている。趣旨としてはVlad Tepesのものと変わらないことからLLNという狭きサークルが如何に一つの意思でまとめられているかがわかる。続いてMoevotとしてのインタビューについても紹介しておこう。こちらはMoevotが活動を停止してからのものとなっている。恐らくこちらもVordbが回答していると思うが、インタビュー上はあくまでMoevotとしてVordbの代弁を行っている形になっているようだが、途中からゴチャゴチャになっていてちょっと微笑ましい。

■ Interview with Moevot

―――Moevotの"死"において一体、何が起きたのですか?
 いかにも、Moevotは永遠の死を迎えた。VordbはMoevotを神の手に陥らせないよう、人間性から隔離するために、最も深い暗闇に戻すために"殺した"のだ。Moevotとは人間の造形物としての音楽に反した犯罪なのだ。神や人間性に反する犯罪―Moevotは創作ではなく破壊なのだ。Moevotが出てきて以降、あまりに多くの似たアンビエントプロジェクトたちが日の目を浴びることとなった。別にそれら全てが贋作だとは思わない。しかしそれら全てはまもなくに虚しさに陥るはずだ。the Black Legionsにおけるプロジェクトを除いては、な。私はそういった要因の全てや、愚かな人間の法から解放されるためにMoevotを殺したのだ。今、私の仕事は全てのくびきから解放されたのだよ。Moevotを"闇夜"に戻したことによってね。在るべき姿、在るべき所であるカオティックでボーダーレスな次元に統合されたのだ。Moevotはこの世からは死んだが、長く生き続ける。何も無くともそこには "Chaos" がある。それこそ私の本質であり、私の王国なのだよ。

―――あなたの仕事にどのような欲求があるか?
 カオスだ。それ以外何もない。もう一度言うが、創作とは純粋に人のやることで、それゆえに紛れも無く幻なのだ。しかし破壊、それだけはサタニックでエターナルなのだ。私は創作者ではなくて破壊者だ。私の仕事とはこの世界の未来を消すことだ。それらはカオスの中でこそ永遠の存在になる。

―――"Ritual Music"のような"new musics"についてどう思いますか?
 ブラックメタルトレンドの後の新しいトレンドだ。ブラックメタルは堕ちた。ブラックメタルシーンを操作して、その意味を失わせた偽りの者たちは今度はその新たなトレンドをブラックメタルの欠けた穴埋めに使うだろう。既に敷かれたレールの上ではしゃぎ回っている、みすぼらしくて、小さくて、臭いウジ虫どもだ!不幸なことに我々が手を差し伸ばしたとしても奴らはそのレールから脱線してしまう。

―――今後も"破壊という役割"を追求できますか?
 もちろんだ。ただの人間どもは限界を許容できてしまう。恐らく奴らはスピリチュアルな偏狭さに溺れて死ぬだろう。毎日のように、自分のプロジェクトの限界が遠ざかっていき、燃やされ、破壊されていくのを見ている。私はそのような限界の類を受け入れるために生まれたのではない。それゆえに私は人間性の破壊に確固たる信念を持っているのだ。

―――あなたの流離は終わりを迎えるのですか?
 唯一のこの世界の全ての存在を否定するものとは言うに充分弱く、彼らの流離が終わることを受け入れるための全てのほとんどだ。私の "Darkness" は如何なる限界も知らず、そして私の流離は永遠と邂逅した。その終わりとは人間にのみ課せられたものだ。私は奴らに奴らの財産を許諾する。それは全く羨ましくもない。

―――Moevotはどこで生まれたのでしょうか?
 Moevotはカオスから生まれ、神とその僕の人間に苦しみを与えるために地球に送られた。そしてこの破壊が終わった後、カオスに戻るのだ。


 以上がMoevotのインタビューだ。恐らくこれはVordbによるものだと思うが、もしかしたら一説によるとMoevotに関わったらしいAäkonのものかもしれない。それはさておきMoevotは1994年のデモの後は音源の製作も無く、トレンドに犯されたブラックメタル、もしくはダークアンビエントのシーンを憂いながら、自分たちこそが"本物"であることを返す返すも主張しているように思える。

 そしてVlad Tepesも、Belkertreも、Torgeistも、そしてMoevotも、LLNを形成するバンドのほぼ全てが闇へと還ってしまった―バッタリと活動の形跡が失われたのである。もはやトレンド塗れ、商業主義が色濃くなり、その表現方法としての限界が証明されてしまったブラックメタルに愛想を尽かしたかのように…。

 ただ、Mutiilationを残して。

■ 結び

 今回はVlad Tepes以外のLLNの重要人物としてVordbを挙げ、彼の言説をインタビューを通じて見ていった。その結果としては前回のVlad Tepesのインタビューと同じ思想に基づいていることが伺えた。つまり現在のブラックメタルシーンへの怒りであり、自分たちこそがシーンにトゥルーブラックメタルを示すことができること、そしてそれを示した暁には続いて世の中に音源を出すことなく、姿を消すのだと。

 更にはそのようなやり方でも"救いのない"シーンを憂い、既にトレンドというものがブラックメタルを巣くってしまったため、彼らは活動への意味を意味出せなくなってしまった―そのように見ることもできよう。それが今日に渡り、LLNの音源がほぼブートでしか出回らず、未だにカルトUGブラックメタルとしての神話を構成しているのではないだろうか。

 しかしそんな折、このコラムを書いていて驚きのニュースが飛び込んできた。先日、来日を果たしたCelestiaのリーダーであるNoktu(彼もLLNのマニアなのだが)の運営するDrakkar Prod.から以下の発表があった。

 2013年2月5日 リリース
 ・VLAD TEPES(Fra) "Morte Lune" Official CD/ 12"LP
 ・VLAD TEPES(Fra) "War Funeral March" Official CD/ 12"LP - incl. A5 8 page booklet.
 ・VLAD TEPES/ BELKETRE(Fra) "March to the Black Holocaust" Official Split CD/ Gatefold 2x12"LP


 元々、MutiilationのMeyna'chとも親しく、LLNの音源を当時リリースしたこともあるDrakkar Prod.(Noktu)だが、長い年月を経てこれらブートでしか出回っていない作品について、オフィシャル再発を実現させたというのである。

 このコラムは1月から少しずつ書いていたため「寝耳に水」といったところだが、コラムの趣旨から考えると間逆の姿勢といわざるを得ない。どうやらオフィシャル再発ということでVlad TepesやBelketreのメンバーから同意を得ているのだとは思うが、一体どういう話で再発が実現したのか興味深いし、同時にMutiilationのMeyna'chの存在がもう一度浮かび上がってくる。

 彼がLLNの中でも「浮いた」存在であることはこのコラムの始めで軽く触れたが、LLNの内、唯一存在を残していたMutiilation、そして今でもMeyna'chとして活動する彼がどのようにフレンチブラックに影響を与えたかについて次回のコラムで紹介していくことにする。
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【column】 Les Legions Noires - I 

■ はじめに

 今回のコラムはフランスのUGブラックメタルシーンの側面である Les Legions Noires についてフォーカスしていく。元々、私は元来フレンチブラックにあまり興味を持ったことがなく、手元にある音源すら満足に聞き込めていない。そこでフレンチブラックの原点であるLes Legions Noiresというアンダーグラウンドなブラックメタルの組織について、当時のインタビュー記事から掘り起こしていき、カルトブラックメタルの本質を理解することが当コラムの目的である。

■ Les Legions Noires とは?

france フランスは西部、ブルターニュ半島西端の港湾都市ブレスト。パリからは距離があり、更に言えば民族が異なる。ブルターニュは元々ケルト民族がルーツであり、今でもその名残が多数見られる。例えばケルト語派の言語であるブレイス語は文化的特質を持つものとして近年復活し始めており、それに伴い民間伝承などの活動も行われている。また長らくキリスト教民主主義の地域であったため、カトリックが非常に強い地域でもある。ここが本題、"Les Legions Noires" の舞台である。その地域性を考えると、若者たちが自分たちのルーツと向き合い、そしてキリスト教に対して反感を覚えるという構図が『NSBMとはいったい何か?』で触れたものに類似している。

 そのブレストを中心に、1987年に通称"LLN"は発足した。とはいえノルウェーで起きた、かの有名な"Inner Circle"に影響されて結成したとも言われており、"Black Metal Inner Circle"は90年初頭に発足しているから、80年代後半にBathoryなどの影響を受けて形成されたフランス西部の極小規模なブラックメタルシーンが"Inner Circle"の影響を受けて、"Les Legions Noires"と名乗りだしたのではないかと推測している。実際、LLNのメンバーが初めてのレコーディングを行ったのは1990年初頭である。なお、"Les Legions Noires"は英名では"The Black Legions"という。

black_legion LLNのうち、よく知られているブラックメタルバンドとしてはMutiilation、Vlad Tepes、Belketre、Torgeistなど、そしてダークアンビエントプロジェクトとしてMoevotなど、他にも多くのバンドが存在する。しかしその実、バンドの掛け持ちがいたるところで行われており、構成しているメンバーの人数は非常に少なく、閉ざされた小さなグループであった(この辺りは後述する)。またその特性は活動に関しても同様であり、音源もグループ内でのみ配布する程度に作るに留まり、もしくはせいぜい極少数のディストリビューションしか行っていなかった。これらもまたLLNをカルト・アンダーグラウンドとして神秘化させている一因であろう。現在流通している音源もほとんどがブート音源で、オリジナル音源の希少価値は非常に高い。

 そのような中で公に姿を見せた回数は非常に少ないが、Vlad Tepesのメンバーは何度かファンジンのインタビューに応えている。それらの一部を転載(訳)することで、LLNについてより詳しく見ていこう。なお、今回、紹介する2つのインタビューは別々のzineに掲載されたもので、1つ目のインタビューはFull Moon Production(: FMP)のオーナーのファンジン "Petrified magazine (No.3 1994)" に収録されたものである。これはVlad TepesがFMPからデモ音源をリリースする折に行われたものだ。しかしその後、ブラックメタルに対するスタンスの違いから両者の関係性は破綻している。そして、もう1つのインタビューは"Kill Yourself Zine (#2/1995)"に収録されたもので、こちらはその破綻劇についても触れられている。この二つのインタビューを続けて紹介することで、LLNのブラックメタルに対するスタンスはより鮮明になると考えている。インタビューにおいては一部内容が重複しているが、そのままにしてある。

■ Interview with Vlad Tepes

in Petrified magazine (No.3 1994)
Vlad Tepes c/o WLAD

―――Vlad Tepesについて教えてください。

 私とVorlokはケルト民族系のクランからの"兄弟"で、このバンドも二人でやっている。目的は"世界"を背教に導くことだ。

―――ラフデモの出来は?

 既に何人かには聞かせたが、評判など無用だ。何しろ我々はこのデモを広めるつもりなどない。なぜならば我々はトレンドや金のためにブラックメタルをプレイしているわけではないのだからな。

―――フランスでのブラックメタルシーンについて教えてください。

 トゥルーなブラックメタルバンドといえばMutiilation、Belketre、Vlad Tepes、Torgeistだ。他にDark Occult Project BlackというプロジェクトでMoevot、Satanicum Tenebraeといったバンドがいる。そう、我々こそが "The Black Legion"だ。

―――そのサークルについて教えてください。

 "The Black Legion"とは、キリスト教もしくは宗教そのもの、更には愚民どもを断固拒絶するサークルのメンバーたちのことだ。我々は外部からの影響やデスメタルのようなトレンドからブラックメタルを守るために、そして崇高な暗黒時代と来るべき穢れた聖戦のために戦っているトゥルーなサークルだ。我々は"世界"にThe Dark Warをもたらす。我々は暗黒の"兄弟"であり、偉大なサタンの眺望に辿り付く志を共有できる少人数のメンバーのみで構成されている。

―――あなたは他のトゥルーなバンドとコンタクトをとっていますか?
 "The Black Legion"のバンドは全てトゥルーだ。本当のブラックメタル、本当のブラックアートだ。我々は他のバンドとはほとんど連絡を取らない。それでもメキシコのMasthema Sancia(訳者注: Hiborymのドラマー)、そしてポーランドのGravelandとは連絡を取っている。彼らはトゥルーだ。ノルウェーの連中も凄い。

―――逆にぶっ壊すべきバンドはありますか?
 それは面白い質問だな。トレンドのはびこるBlack/Deathのバンドはそうだろう。

―――フランスではサタニストが引き起こす事件の類は起きていますか?
 教会が燃えることなど起きちゃいない。それをやるには時期尚早なんだ。ノルウェーを見てみろ。やった奴は刑務所行きだ。現に警察は俺たちを監視している。しかし崇高な暗黒時代はもうすぐそこまで来ている。そのとき我々は全ての教会を焼き払い、弱き神を追放する。永遠にだ。

―――アントン・ラヴェイについて思うところはありますか?
 あいつはクソ野郎だ。悪魔教会なんていうクソと一緒に燃やしてやる!あのうじ虫は堕落者に寄生しているだけだ。サタンは教会など持たない。我々がサタンそのものなのだから。

―――あなたから貰った手紙にナチス関連の記号が描かれていることに気付きましたが、あなたはナチですか?もしくは何らかのナチ組織に影響されていたりしますか?
 そうだな…、ヒトラーが誰よりも早くこの腐敗しきった"世界"を浄化する必要性を理解していたことぐらいは知るべきだろう。だが、我々の憎悪は、黒人かどうとかそういう対象にではなく、"人々"全員に向けられていることだけは理解してほしい。ヒトラーはペイガニズムとアーリアン文化を発展させたが、我々はもう一度この"世界"を支配するだろうヴァイキング、ケルト民族、そしてバーバリアンの復活のために戦っている。ゆえに、なぜ私がそのような記号を手紙に書いたかといえば、それがペイガンのシンボルだからであり、私は政治的思想の意味でナチではない。我々はもっとその上にいるのだ。

―――好きなバンドを挙げてください。
 Belketre、Mutiilation、Abigail、Behemoth、Denial of God、Graveland、Torgeist、Vlad Tepes、Alastis、Burzum、Emperor、Hades、Iron Maiden、Possessed、Unholy、Ancient、Carpathian Forest、Enslaved、Ildjarn、Isengard、Rotting Christ、Venom、Bathory(初期)、Master's Hammer、Samerl、Destruction、Gorgoroth、Infernum、the true Mayhem、Satyricon、Sigh、Taranis、Strid、Thou Shalt Sufferなどだな。それから我々のブラックアートプロジェクトであるMoevot、Satanicum Tenebraeも好きだ。

―――あなたたちにとってブラックメタルとは何ですか?
 自然の中でサタンと共に歩む黒き旅路において感じるものを表現する手段だ。サタンとは自然そのものであり、ポジティブなもの、ネガティブなもの、全てを内包している。そして我々自身もまたサタンであり、愚民どもから"地球"を浄化する。我々は死を崇拝し、啓蒙する。それこそがアルマゲドンの到来なのだ。

―――今後の活動においてスタイルを変えるつもりはありますか?
 なぜスタイルを変えなければならないんだ?我々はブラックメタルをプレイしているのであり、それは不変だ。全てのブラックメタルの連中は古き良き頃のBathoryのようなサウンドを志向すべきだ。ノルウェイジャンマフィア(=""Inner Circle"")はこの世界において多くの"罪"を犯した。ユーロニモウスの死と共にMayhemは事実上死んでしまったし、その結果としてブラックメタルが闇に還るのは好ましいことだ。死人に対しては何か言うつもりもないし、Burzumのヴァーグについても何の意見もない。我々は自分自身の意見を持っているし、彼だってそれがあるだろうからな。我々は"Black Legions of Satan"であり、"the immortal warriors of Black imperial blood"であり、キリスト教のうじ虫どもを背教に導くために存在している。そして奴らは"Black Holocaust"に直面するだろう。近いうちにな!


 このインタビュー後、FMPは彼らのデモ "War Funeral March"(カセット)をリリース。カセットは1000本も作られ、販売額も10ドルと強気に設定。そのせいで3年間で売り上げは約280本に留まる有様だった。更にFMPはファンジン上でVlad Tepesのコンタクトアドレスまで掲載してしまい、Vlad Tepesを激怒させてしまった。そのようなやり取りの過程で、Vlad TepesはFMPを「ブラックメタルを商売に使おうとしている」と判断、両者の関係性は決裂した。次に紹介するインタビューはその翌年に出版されたファンジンで行われたものであり、その考えについても書かれている。なお、FMP側もインタビューに応じてそのトラブルについて述べているが、要は商売のためにやっているわけではない、と言っているだけなのでここでは割愛した。


in Kill Yourself Zine #2/1995
copyright 1995 Anus Company. All rights reserved.

―――始めにデビューデモ "War Funeral March" について教えてくれ。
 1994年8月にレコーディングした5曲のデモだ。私が言えるのはそれがブラックメタルであるということだけだ。私はVlad Tepesでブラックメタルをプレイしている。それは永遠に不変だ。デモの反応については私は全く気にしていない。FMPはそのデモテープを売ることついて問題を抱えているようだが、彼はやりたいようにやればいい。

―――正直に言うと、FMPが抱えている問題は当然だよ。だって10ドルなんてデモテープとしては高すぎる!君はこの値段設定についてどう考えているんだ?そもそも、なぜこのレーベルを選んだんだ?利益のためなのか、音楽的な理由か、サタニズムのためなのか・・・
 FMPは我々の1993年のラフ音源を気に入って、我々にカセットテープを要求してきたのさ。彼は我々に声をかけてきた初めての男だよ。しかしながらこのレーベルのブラックメタルにおけるコンセプトは我々のものとは全くかけ離れている。向こうはビッグマーケットに向かっているし、私はそれに嫌悪しているからな!

―――Vlad Tepesや、その他のフランスのブラックメタルバンドがBlack Legionsと呼ばれる組織を形成しているようだが、それについて教えてほしい。その目的は何だ?どのバンドがメンバーなんだ?後は地元警察とのトラブルなどあれば教えてほしい。
 Black Legionsだと?違う。我々は"Black Legion of Satan"であり、"The Immortal Warriors of Black Imperial Blood"だ。
 我々はキリスト教のウジ虫どもを粛清し、彼らを"Black Holocaust"に直面させるのが目的なのだ。そしてそれは"組織"ではない。魂の"サークル"だ。誰も我々をジャッジできない。なぜなら我々は"人道"というものに属していないからだ。我々はそれらを遠ざけているから、彼らからしたら我々が何者か絶対に理解できないし、恐れを抱くだろうな。なぜならば彼らが灰と虚無に還るとき、我々は彼ら自身の死に直面しているからだ。
 属しているバンドはMutiilation、Belketre、Vlad Tepesだ。よく覚えておけ。我々が警察と何かあったとしても我々を止めるものは何もない。奴らには我々を止められはしない。

―――Vlad TepesがImpaled NazareneやSigillum Diaboliなどのバンドメンバーに殺害の脅迫状を送りつけたとか、Osmose Prod.にも脅迫状を送りつけたなんていう噂があるが、それは本当か?
 それは噂などではない。Impaled NazareneとかSigillum Diaboliのようなバンドはサタニストやブラックメタルバンドにクレームしているが、奴らがどんなものかは君も知っているだろう。奴らはサタンを嘲笑しているだけだ。娼婦、ヒッピーと結婚したMika(訳者注: Impaled Nazareneのメンバー)を見てみろ。彼は単なる普通の人間だが、サタニストにクレームしているんだ。他の奴らもグラインドをやっているだけでブラックメタルではない。その代償は支払われなければならないし、復讐されるだろう。奴らは我々の力を知らないのさ。我々のカルトは絶対に破壊されない。ブラックメタルは我々と共に闇に還るだろう。ここにThe Dark Warを宣言する!
 Osmose Prod.はブラックメタルで商売をするという大きな間違いを犯している。いずれにしてもだ、これらの豚どもは決して我々を見ることすら叶わず、ただサタンの存在を感じるだけだろう。決して我々は冗談で脅迫状を送っていない。奴らが私の家に来たり、殺しにくることもできるが、そんなことは逆効果だ。準備万端だからな。

―――次に私が聞きたいのは、他の組織、例えばノルウェーのブラックメタルマフィアについてどう考えているのかということだ。殺し、墓の盗掘など彼らの犯罪についてどう考えているんだ?それからユーロニモウスの殺害についても教えてくれ。
 まず私の知る限り、我々と同じ種のサークルなどこの世界には存在していない。ノルウェーのマフィアは多くの悪行をこの世界にもたらした。不幸なことに今日、彼らが実際にどういった類のものであったのか知られている。私の思う限り、彼らは若かったんだろうな。勿論、例外もあっただろうがそれはとても少ない。
 また、ユーロニモウスの死についてだが、これはMayhemが死んだということだ。それはブラックメタルが闇に還るという意味で好ましい。私はユーロニモウスがサタニストだろうがコミュニストだろうが、はたまたペドフィリアだろうが彼の死について気に止める事などないと言いたい。今、彼の魂は安らかでなければならないし、ゆえに私も彼について何も言うつもりはない。それにヴァーグについても特に意見はない。我々が自分たちの意見をもっているように彼もまたそうだろうからな。

―――今でこそVlad Tepesがトゥルーなブラックメタルだと認識されているが、それ以前に既にサタニストであったと思う。その信条について教えてほしい。また、ラヴェイ・サタニズムについてもコメントしてくれ。
 ブラックメタルはサタニストとしての感情の産物だ。だからブラックメタルは私のサタニストとしての結果そのものなのだ。我々は自分自身で崇拝する"何か"を持っている。"primitive devil worshipping"とはキリスト教から自分たちのルーツを取り戻すことだと考えている。
 私の最終的な目的は"Black Holocaust"だ。キリスト教とは畏服の対象である。"人間"とは矮小で、それはそれら宗教の存在が証明しているんだ。我々はそういった矮小な弱者を破壊しつくす。それが"Black Holocaust"だ!
 ラヴェイのサタニズムは単にクソみたいな人間論だ。金を稼ぐためのな。

―――次に愛と呼ばれる感情について教えてください。あなたは脳なしのクリスチャンどもによって作られた弱い感情だと言っていたよね。
 正確に言えば、全ての人間の"概念"から浄化された真の魂を私は愛している。この真の魂こそが人の生死のコンセプトだということを広めたい。少女が周りから愛される"愛"、これは"兄弟"からも感じた経験があるだろう。しかし不幸なことに、この俗世間ではそのような"愛"は実現し得ないからこそ、ただ"死"のみが在る。私にとって、俗世間的な愛という概念はただ"弱い"ということを意味することでしかないのだ。
 私の両親は"人間"で、彼らは私を育ててくれたが、しかし私は彼らをその実、愛してなどいない。またガールフレンドも作らない。女性が以前持っていた真にピュアな魂は破壊されてしまい、ただ犯され、拷問を受け、殺されるだけになってしまった。それは私を落胆させる。愛と憎悪は表裏一体だ。愛が既に欺瞞しか導けなくなってしまったので、それは憎悪そのものになってしまった。その欺瞞は増殖し続けており、ゆえに憎悪も拡大し続けているのだ。

―――Vlad Tepesもトラディショナルなブラックメタルの姿―コープスペイントや武器などを身に施している。それはなぜなんだ?もっとクールに見せる必要はないのか?
 私が言えるのはコープスペイントが我々の精神を表現するためのものということだ。我々は獣であり、俗世間的な人間像を壊しつくすことを欲している。ただそれだけだ!

―――あなたたちにとって"Money"という言葉の意味は何だい?ブラックメタルバンドが音楽で金を稼ぐことは問題ないと思うか?ブラックメタルバンドはメジャーレーベルと契約するべきなのだろうか?
 金とはまさしく人間の造りし概念だよ。ブラックメタルはサタニストの音楽という本質を考えたら、金稼ぎなど真に言語道断だ。

―――しかしデモ音源が10ドルと高いじゃないか。ほぼ相場の2倍だ。もし君たちが金稼ぎを否定するならなんでこんな商売をしているんだ?そもそもブラックメタルが意味するところは何だ?なぜこういう類の音楽を選んだ?
 我々は本質的にサタニストなのだ。我々は強き存在として自身の芸術を作り出している。"神の"創造物が我々に与えし嫌悪全てによって、我々の芸術が"罪深き"物に変わることは普通だと考えている。その嫌悪という感情について話すと、hate、sorrow、depression…それらは人というウジ虫を壊しつくす!ブラックメタルという音楽はこれらの偉大な芸術の一つだ。ブラックメタルと結合した宗教などない。宗教と結合した音楽などあれば、それは矮小な感情だ。

―――ブラックメタルの産地としてはノルウェー、スウェーデン、フィンランドとあるように思うが、これについてどう思う?またそれらとフランスのシーンは何が違うんだろうか。
 我々とその三つに共通点などない!さらにいえば、ノルウェーのバンドは偉大な芸術をいくつか作り上げたが、不幸なことに彼ら自身が信じているほどの高みには位置していない。スウェーデンはノルウェーの単なるフォロワーに過ぎないだろう。サタニストはいるだろうが、とても少ないだろうな。しかし申し訳ないが、フィンランドにはトゥルーなブラックメタルなど一つも存在していない。実際、気にも止めたことがないし、そもそもそれらがどんなものすら知らない。

―――フィンランドにトゥルーなブラックメタルバンドがいないだって?私にはこの"トゥルー"の定義がわからないが、音楽的にはDarkwoods My Betrorhed、Nattvindens Gratt、そしてAzazelのようなバンドはチェックすべきだと思うが。まあ、それはともかくとして、次はあなた方の作詞について聞きたい。作詞にはどのくらい気をつかっているんだ?そしてどこから影響を受けているんだ?選んだ3曲の作詞のコンセプトを聞かせてくれ。
 トランシルヴァニア、ヴァンパイア、城のある闇深き森といったクラシックなテーマを通じて、我々の目的に関することを描いている。クラシックだがダークだ。詳しくは読み解いて自分自身でイメージしてみてほしいが、その3曲についてシンプルに語ろう。

"Under the Carpathian Toke": 我々が邪悪であり、自然であり、サタンであり、世界を支配していること
"In Holocaust to Natural Darkness": サタンに血をささげるための我々の自殺について
"Massacre Song From The Devastated Land": この世界を混乱に導いたキリスト教による人間性の破壊について

―――君は世界情勢を気にしているかい?公害とか人口爆発、戦争、暴力、疫病の広がり…
 世界は堕落している。"Black Holocaust"は近い。私はウジ虫ども全てが悪戯に地球を守ろうとしているのを目の当たりにしている。愚か者たちだ。既に世界は堕落しているし、終わりは近い。それは素晴らしいことだ。

―――Vlad Tepesはどういった相手に向けて音楽を作っているのか?キッズがレコードを買っているとしたら?ブラックメタルはメインストリームに広がるべきか?
 我々はトゥルーなブラックメタルが死んでないことを示すためにデモを出した。その次としては、我々がどのようなものかを示すための作品をリリースするつもりだ。多くの人々は自分自身が何者なのか自覚していない。しかし彼らはそのとき理解するだろう。偽物、トレンドという俗物として自覚をな!
 その時、トゥルーブラックメタルは闇に還るだろう。我々は自分たちのためにしか音楽はやらないし、人々には誰にも聞けなくする。ブラックメタルは死ぬべきなのだよ!

―――ライブの予定は?
 ブラックメタルはライブなどやらない。我々と彼らウジ虫どもをつなぐコネクションなど存在しない。能無しのメタルオーディエンスの前で決してライブは今後もやらないだろう。我々は王なのだ。


lln これがVlad Tepesの残したインタビューである。他にもごく一部、インタビューとして彼らの意見が述べられたものがあるが、それはほぼ今回の内容のトレースである。以上の内容を見ると、彼らのもっとも目立つ意見は「ブラックメタルはサタニストの産物」「ブラックメタルは闇に還るべき」というものである。特に前者の発言は今までのブラックメタルバンドのインタビュー記事でもよく目にするものであるが、ではサタニストとは何なのだろうか。単なる「幼稚」で「低俗」な悪魔主義と彼らを分かつ思考とは何なのだろうか。

 そしてなぜ「ブラックメタルは闇に還るべき」=「閉じられたシーンに秘めるべき」なのだろうか?この辺りに日本のブラックメタルシーンの一部に存在する「神秘」を「売り物」にしたバンドとの対比も見えてきそうだ。

■ 考察

 音楽とは『音のもつ様々な性質を利用して感情や思想を表現したもの』(Wikipediaより)という。

 既に当ブログではBeheritのコラムを通じて、ブラックメタルに根ざしたサタニズムが必ずしも「単なる幼稚な"悪魔主義"」とは限らず、バンドや個人によって程度の違いこそあれ個人主義に基づく哲学思想がベースになっていることを知った。更にNSBMのコラムを通じて、そのような個人主義をベースにして自分たちのルーツを探求していくようなペイガニズム思想に向かうことも知ったし、同時に様々な内的環境から"レイシズム"に陥ること、そしてそれもまたブラックメタルの一面であることが解った。

 今回のVlad Tepesのインタビューを通じて、"LLN"というアンダーグラウンドなブラックメタルサークルがどういったものを表現しているのかについて考えてみると、このようなブラックメタルを通じた哲学思想に基づく表現活動とは、"サタン"というシンボルを掲げながら、ミサントロピックな表現によって人間性の徹底的な破壊を行い、勿論そこには金銭といった人間の作った概念を全て否定することで、そこに彼らが求める「自分たちは何者なのか」というルーツを追い求めていくというものであろう。

 インタビューを見ている限り、彼らに大きな"知性"を感じる訳ではなく、その哲学思想というものが成熟しているとも思えない。しかしそれ故に"プリミティブ"であり、まるでそれは1980年代前半に起きた真のハードコアパンクスのような精神にも見える。そして、そのような初期衝動がサウンドに反映して現れているのであれば、そこに楽曲そのものだけでなく、音質(録音)、演奏スタイル、もしくは歌詞など全てに意味が現れてくるだろうし、そして「単なる音の配列のみでしかブラックメタルを語ることが出来ない」聞き方からの脱却が図れるだろう。何がブラックメタルをブラックメタルたらしめるのか各々自身の答えが得られるはずだ。

 もっとも、はっきり言って凡そのブラックメタルバンドは『「表現したいもの」を音で表現する』というアーティストとしての本分より、むしろ『自分たちが感化された音そのものに対する表現』として音源を作っている場合がほとんどだろうし、そのような活動もあってしかるべきだ。また、そのようなものに対して今回のような考察を行うことは、「簡単なことを難しく考える」という愚かな行為であろう。

 しかし、シーンの成熟という観点においては、当初シーンが保有していた思想や哲学、姿勢が、まるで「伝言ゲーム」のように希釈化されていき、次第には完全に通俗化してしまうことを危惧すべきだ。アンダーグラウンドから這い出たものが、オーバーグラウンドにおいて性質を変えて、本質を失ってしまったらそれは同じものであると言えるだろうか。

 これを見るに音楽と絵画は等価である。テーマにそって描かれたものを我々が見るときに、その"色"単体の好みでもってして、その絵画の評価を下したらどうだろう。もちろん色や構図に最も重要なプロットが秘められた絵画も存在する。要はそれが何であるか?ということではないだろうか。

 またLLNの保有していた『神秘』とは、インタビューからも読み取れる通り、「主張をプロパガンダするつもりはなく、同じ思想を持つ【同志】の中で共有することを求めていた」からであり、そもそも「広く聞かれる必要もなかった」ためであろう。その【同志】の探究か、或いは「ブラックメタルをポピュラーにする愚かな人々」を陥れて、もう一度ブラックメタルをマイノリティの中で共有するために、そのような形をとったことが伺えるし、それは今でもブート音源がなんとか流通する程度になっているという現状からも解る。LLNの中でも有名なバンドを除くと、音源を手に入れることは極めて困難である。しかしその状態こそ彼らのブラックメタルが「闇に還った」ことの証明でもある。それでは日本のブラックメタルシーンにおいても、明らかに"LLN"の影響を受け、その『神秘性』をも踏襲したバンドがいくつかあった。では、それは果たしてどうだろうか?

 ・ 今、あなたが見ている2つ以上のブラックメタルバンドは果たして "同じ" ものか?
 ・ 自分が "何を" 聞いているか解っているか?
 ・ 表面のプロットのみを搾取して「理解した」気分になっていないだろうか?


 これらは全て自戒の言葉であり、リスナーへの言葉であり、そしてバンドへの言葉でもある。

■ 終わりに

 当初の"LLN"についての探求から、随分遠いところまで脱線してしまった感は否めないが、次回は路線を元に戻し、"LLN"の代表的な構成の紹介、そしてその構成から見出せるMutiilationの特異性、さらにMutiilationと現在のフレンチブラックメタルシーンとの繋ぎ目を見出し、現代においてどのようなバンドに"LLN"の黒き旅路が継承されているのかについて紹介していくことにする。

 非常に1ページが長くなってしまって申し訳ございません。後日、ページを分ける可能性があります。
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海外ディストロ紹介 

たまには気軽に読めるコラムとして海外ディストロの紹介をしてみます。
円安が進んでいるので海外オーダーは今のうちにしておくといいかもしれません。

私は海外ディストロで2年くらいCDを中心に買い物しています。
日本のディストロも同じくらいの頻度で使っていますが、
おもに海外ディストロではまとめ買いで一気に購入します。

少しの度胸と、中学レベルの英語、
そして何かトラブルがあったときに諦めを持つこと、
そしてクレジットカード+Paypalのアカウント

これらがあれば誰でも海外ディストロでお買い物ができます。
(paypalに関してはググってください)

それでは私がまとめ買いで利用しているディストロを紹介しましょう。
なお値段、送料などは参考までに載せていますが、
先方にしっかり連絡を取ってご確認ください。

Onion Music (韓国)
 日本語が堪能なオーナーが運営されており、日本円でも対応してもらえるし、初心者には非常にありがたいディストロです。ジャンルもブラックメタルからポストロックまで多岐に渡っています。ケースレスならば送料込みで5000円で7枚、10000円で16枚と解りやすい値段設定なのもありがたいです。

Regimental Records (アメリカ)
 ここ2年でも数回オーダーして自分自身は喰いつくした感がありますが、何しろCDは5ドル、MCDなら4ドルという値段設定がありがたいです。しかもメンバー登録しているとシークレットセールのお知らせも届きます。参考までに19枚音源購入の上、セール時は119.05ドルでした(内、送料は48.55ドル。アナログも入っているので送料は高いです)。1ドル80円のときは送料込みで1枚500円だったということですね。

Bubonic Production (ポルトガル)
 現在(13'01/31)はオンラインストアのリニューアル中ということですが、とりあえずここは品ぞろえが素晴らしく、またどの音源を選んでも値段は一定、さらにまとめ買いでめちゃくちゃ割り引いてくれるし、送料も安いです。参考までにCD13枚、カセット6本で108.8ユーロでした(内、送料は15.8ユーロ)。とにかくここはまとめ買いのお得感が素晴らしいです。

Paragon Records (アメリカ)
 ここはRegimental Recordsと同じような感覚で使えますが、セールCDが更に3ドルなどとても安く、更に日本にも送料8ドル(!)で送ってくれました。ここまでいくと慈善活動でレーベル運営しているのかと心配になります。なんと19本音源を購入し、送料込みで93ドル!そういえば最近のぞいてないから久しぶりに使ってみようかな。

DESCENDING TOWARDS DAMNATION (フィンランド)
 今回紹介している中では一番、よく使っているのがこのディストロです。なぜかといえばオーナーが色々親切で、気持ちよく買い物ができるし、フィンランドは郵便がしっかりしていて、比較的すぐ届くから安心です。また品ぞろえが痒いところに手の届くラインナップで、更に非常に安い音源からメジャーな作品まであって素晴らしいです。値段もばらつきがあって1枚3ユーロからあります。前は5枚CDオーダーして送料7.6ユーロ(重さ依存)でしたが、フィンランドは去年送料が上がって、それ以来購入していないので解りません。

以上、比較的よく使っているディストロについて紹介しました。
実はここ数カ月は海外ディストロは使っていません。
ちょっと一時期買いすぎたこともあって少し落ち着いている状況です。

なので、いろいろ上記サイトの対応も変わっている可能性があるので、
今回の内容に関しては参考程度に宜しくお願いします。

海外通販は国内通販と違って、すぐに荷物は届かないし、
しかも税関に引っ掛かったりするとかなり到着が遅れることもあります。
送料の関係でケースなしでオーダーする必要があり、
運が悪いと非常に悪い状態で送られてくることもあります。

しかしそういうことも含めて楽しむのが海外通販かもしれません。
今後、どんどん円安になる前に未経験で興味がある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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【column】 NSBMとは一体何か? - V 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - IV
http://staymetal.blog8.fc2.com/blog-entry-559.html

■ 続き

 前々回までにNSBMのバックグラウンドとシーンの形成について言及し、前回は箸休めとしてペイガニズムとペイガンブラックについて説明した。今回はNSBMの重要なバンドについてタイプ別や国別に紹介していくことにする。

■ Absurdタイプ

 Absurdフォロワーやそれに準ずるバンドとしては、ブラジルのCommand、ギリシャのGauntlet's Sword、スイスのEisenwinterといったバンドが思いつく。これらのバンドはAbsurdの影響を受けたであろう思想重視の音楽で、ある意味なんでもありの表現方法(ナチス関係のSEなどを挿入)で、もしくはOi!PunkやRACなどに大きな影響を受けたであろうサウンドになっている。


 Command (ブラジル/1996-2004??)

command1 Absurdから思想面「のみ」を抽出したようなバンドで、ある意味で最もAbsurdフォロワーらしいフォロワーと言えなくもない。唯一のフルレングスアルバム"Sturmangriff"では当然の如くAbsurdの"The Gates of Heaven"をカバーしており、他の曲もバリバリにナチ関係のSEを入れまくりで、どことなくナチスオタク的なところすら感じる。Absurdがコーヒー豆だとしたら、Commandはコーヒーである。しかしそのコーヒーは酷く苦い。音楽的に聞くべきところがあるというより、むしろ作品全体に介在する危険思想を体感するためのもので、ある意味パンクだ。なぜブラジルでNSBMかというと、南米はドイツ系移民が多いためであり、そのような移民の中でナチ運動が展開されていたこともあって、今の時代でも潜在的に根強いことが理由のようである。ちなみにCommandの関連バンドのEvilもこの手では有名だが、そちらはいわゆるプリミティブブラック。"Sturmangriff"はNSBMでは有名なTotenkopf Propagandaリリース。


 Gauntlet's Sword (ギリシャ/1997-)

gauntlets_sword1 RACの影響を強く感じ、ブラックメタルあるまじき明朗快活な音を出すバンドでなかなか面白い。しかもそこまで人気が無いからか一部のアルバムはかなりの安価で扱われていることも多く手に入りやすいため、『Absurdの次』という位置づけではこのバンドのアルバムから聞いてみるのも結構お勧めだと思う。一方でこの音楽性まで行くとむしろRACを掘り下げた方がいいという思いも少なからずあるが、あくまでブラックメタルという領域の中にあって、かつこういう自由闊達なバンドの存在は多様性を感じて面白く感じる。歌詞としては「アーリア人の血に"毒"が混ざってしまうことが恐ろしい」とか典型的な思考体系の様だ。後で紹介するThe Shadow OrderやDer Sturmerとも人脈的関係があったが、途中からPain氏独りになってしまった。彼があまりに自由すぎたのだろうか。


 Eisenwinter (スイス/1994-)

eisenwinter Absurdの1stをある意味超えているような、青春パンク丸出しのような旋律に「部屋に尋ねてくるネオナチの友達なんて要らない」「ただ古いDarkthroneでも聞いていたいんだ」「俺様をNSBMと呼べ!」なんて歌詞を叫んでおり、シニカルなのか単なるユーモアなのか言語圏などの問題で理解できない範疇であり、ジャケットもなんだかよく解らない。この辺りの自由でエキセントリックな表現には、逆に倒錯めいて歪んだ初期衝動を感じ、そこに妙な魅力を見出す人も多く、このジャンルにおいて人気は高い。結成自体は1994年と早めだが、フルレングスをリリースしたのは2007年で、今年には3rdアルバムを出すなどベテランバンドながら現在進行形のバンドだ。またドイツのHolocaustusとはスプリットを出したりライブのヘルプをしたり友好関係にあるが、Holocaustusのクオリティは低いので注意されたし。


 Aryan Blood (ドイツ/1998-)

AryanBlood 同郷のAbsurdの影響をひしひしと感じる。結成は1998年だが、地下潜伏期間が長くフルレングスは一枚も出しておらず、有名NSBMバンドとスプリットを多数リリース。先のEisenwinterともスプリットを出している。そしてようやく2010年にリリースされたコンピレーションはそれらの音源(1998年~2003年)から構成されており、Totenkopf Propagandaリリースということもあって広く知られるようになった。その中身としては前述Absurdの影響を感じると同時に、スプリット相手だったSatanic Warmasterにも近いようなメロウな旋律も導入されており、単なるAbsurdタイプという括りではなく、ハイブリットな方向性を示している。また、歌詞がナチス賛美とレイシズムの塊で出来ていて、どうやってドイツ国内で活動しているのか不思議になる。これは地下潜伏せざるを得ない。


 Wolfnacht (ギリシャ/1998-)

wolfnacht 通称ウルナハ。初期作品はAbsurdの影響を大きく感じるパンキッシュなブラックメタル(ドイツ国歌を挿入するなど共通点も多い)だった。1stデモではヒトラーの顔写真をジャケットにしていたり、2002年にリリースされた1st "Night of the Werewolf"では、もはや通過儀礼的にAbsurdの"Eternal Winter"をカバーしている。しかし作品リリースと共に、後述するギリシャのNSBMムーブメントの流れも踏んで、メロウな要素が増えていった。例えば3rd "Toten fur W.O.T.A.N."(W.O.T.A.N.とは "Will of the Aryan Nation"の略語)と5th "Zeit der Cherusker"を聞き比べると解りやすい変化を窺うことが出来る。一方でヴォーカルにも大きな特徴が有り、聞けばWolfnachtとすぐ分かる。活動にしてもアルバムを定期的にリリースし、いまやNSBMというジャンルを包括するに至った、NSBMシーンを代表するバンドの一つだと思われる。初期作品をリリースしていたのはスペインのNSBM・ペイガンレーベルのBattlefield(closed)から。


 88 (ブルガリア/2006-)

88c 今までデモやスプリットのみのリリースでかなり神秘性が高まっており、ようやく2010年にリリースされたコンピレーション"Ultimate Aryan Warfront"で日の目を見た。このバンドもやはりハイブリットなタイプで、いわゆる何でもアリなAbsurdタイプと、同郷のAryan Artに代表されたブルガリアンBMの融合が図られているように感じるが、他のハイブリットなスタイルのバンドと比べてその融合が中途半端なせいか楽曲のクオリティは落ちる。しかしその際立った思想面と初期衝動には特筆すべきものがある。ちなみにネオナチ界隈でよく目にする「88」とは、アルファベットの8番目が「H」で「HH」がHail Hitlerの略語だからである。"88"をバンド名の一部とするバンドもいるが、ここまでストレートなバンド名に彼らのアティチュードが垣間見れるというものだ。


 その他、RACやOi!Punkなど

TheBlood Sokyra PerunaはNocturnal Mortumの元メンバーが在籍していたバンドであり、比較的なじみの深いバンドであろうが、サウンドはもはやRACそのものであり、Absurdタイプ云々というものではないが、その手のものと親和性は高く、メタルよりのRACという意味でこのバンドも面白いだろう。またGravelandとスプリットを出したHonorもRACバンドであり、Absurdタイプを追うならばOi!PunkやRACにシフトしてみるのも面白い。例えば私が好きな海外のOi!Punkバンドを一つ挙げておくと(というにはほとんどバンドを知らないのだが)、イギリスのThe Bloodは素晴らしい。メタリックなリフも織り交ぜながら、楽曲もシンプルで覚えやすいのに、同時に曲展開も面白くて非常にかっこいい。決して完成度の高さではなく演奏もうまくなく、ヴォーカルもヘタウマな感じで、やっぱりAbsurd好きにもおすすめしたいバンドだ。近年、再発もされていて見つけやすいだろう。

雷矢 また、日本のOi!Punk、スキンズ、RACシーンは実に強力なバンドが揃っている。例えば今でも比較的手に入りやすい雷矢の音源は素晴らしいスキンズパンクであり、AbsurdのようなNSBMが好きならお勧めだろう。このような音楽性において歌詞が母国語であるということは大きいアドバンテージであるのだ。筆者自身、日本のOi!シーンはまだまだ勉強不足なのだが、思想面による拡販のされなさによって日の目を見ることは無いシーンでもあり、未聴の強烈な音源が無数に存在しているようでワクワクしている。日本のアンダーグラウンドシーンは本当に凄く、本当に深い。

■ まとめ

 今回はAbsurdフォロワーだと個人的に判断したバンドを紹介した。恐らくNSBMというジャンルにおいて一つの主流を決めるとしたら今回のようなバンドたちの音楽性を指すのだと思う。つまり自由なブラックメタルだということだ。一方で従来のプリミティブブラックメタルの流れを汲むNSBMバンドも多数存在する。次回はそれらのバンドのうち代表的なバンドを今回と同様に紹介していきたい。
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