【column】 NSBMとは一体何か? - III 

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【column】 NSBMとは一体何か? - II
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■ 続き

 前回のコラムでは音楽とネオナチ思想のリンクについてOi!PunkやRACといったジャンルから述べ、その系譜として生まれた異形にしてNSBMのパイオニアとされるAbsurdについて紹介した。今回は純プリミティブブラックメタルの界隈におけるネオナチ思想の発芽について述べ、現在の近年のNSBMの潮流についてまとめる。また、それらとペイガンメタルの違いについても言及する。

■ ブラックメタルにおけるNS的思考の導入

 Absurdの結成は1992年だが、その以前から従来のブラックメタルにおいてもネオナチ思想は散見されている。例えばBurzumのVarg Vikernesはネオナチ思想を持っていたとされる。1992年のファンジンのインタビュー記事では彼はとあるネオナチ組織について言及しており、また彼自身も他のものではあるが組織に参加していたという記述がある。彼の作品自体には直接思想を反映したものこそなかったが、ご存知の通り、当時はインナーサークルを中心にあたかも競技のように犯罪行為が相次いでおり、その中でネオナチ思想表現も邪悪なものとして導入されていった節がある。

darkthrone.jpg 例えば有名どころで言えば、Darkthroneの"Transylvanian Hunger"はVargが歌詞を5~8曲目まで書いているが、そのライナーノートには”True Norwegian Black Metal and Norsk Arisk Black Metal (Norwegian Aryan Black Metal)”という記載がある。しかも御覧の通り、Vargが作詞したことをかなり強調して表記してあるのがお分かりになるだろう。なお、この表記は後に取り外され、また次の作品でナチバンドでも政治的なバンドでもないことを表明している。また、Mardukの"Panzer Division Marduk"においてはジャケットにWWIIのドイツ軍の戦車を使用しており、これもNS思想ではないかという指摘があったが、バンド側はWWIIのテーマに則っただけで政治的なものではないと否定している。これら著名なバンドですら、このような事例が存在する。

 Campo_de_Exterminio.jpgちなみにこのような話はもっと昔から存在し、1987年にリリースされたブラジルのHolocaustoのCampo de Exterminioのジャケットやインナーにはヒットラーのコラージュなどナチス関連のものが多く使われており、彼らもまたネオナチの疑いがかけられた。勿論、彼らはすぐ否定したのだが、このようにサタニズムなどの邪悪性に取って代わるものとしてネオナチ的要素を組み込むことはAbsurd以前からなされていた。これらの事象は邪悪の表現として記号的に用いただけだから取り下げたのか、ネオナチ思想をアピールすることが今後の活動に障害になると判断して否定したのか、どちらなのかはバンドによって様々だろう。しかしVargがそうであったように、本気のネオナチ思想を持つ者も存在するのは確かであり、ネオナチ思想はブラックメタルの一部に侵食していった。この流れに順ずるNSBMはいわゆるプリミティブなブラックメタルスタイルや古くからのブラッケンスラッシュに歌詞やジャケットなどでネオナチ的エッセンスを組み込んだ作風になっている。

NOM.jpg 例えばオーストラリアのSpear of Longinus(1993年結成)。バンド名はロンギヌスの槍―イエスのわき腹を突いた槍であり、ヒトラーがウィーンの博物館で「啓示」を受けたとされている曰くつきのものだ。1st demo "Nazi Occult Metal"というタイトルからしてまんまなのであるが、彼らは昔ながらのブラッケンスラッシュをプレイしている。他にフランスのKristallnacht(1996年結成)。改名前のFuneralも含めれば1994年から。こちらは既に当ブログ内で解説したが、やはりナチス関連のバンド名である。このバンドはメロウなスタイルのフランスらしいフレンチプリミティブブラックをプレイしているが、特にそのメロウさは格別で未だに語り草のバンドであり、日本のInfernal Necromancyもかなり影響を受けたと聞いている。また、Absurdのカバーをしていることも特筆すべきであろう。これらのバンドはいわば既存のプリミティブブラックメタルにNS思想を乗せたものだと言える。

branikald.jpg ロシアではやや独自な形でNSBMが広がっていった感がある。ロシアのNSBMといえば、のBlazeBirth Hall(:BBH)の代表バンド、Branikald(1993年結成)はImmortalなどのブリザードブラックとは異なった寒気の伴うブリザードブラックで、アトモスフェリックが同居した幽玄的なサウンドが特徴のNSBMである。NS思想としては関連バンドのForestやNitbergの方は直接的なNSBMの姿勢を発しているのだが、やはりBranikaldは外せない。彼らのサウンドはかなり「自然」を感じる訳だが、それは自分たちのルーツに回帰していく中で、例えばIldjarnUlverなどと同様に自然信仰のような動きとも呼応しているように感じる。この辺りのブラックメタルのテーマにおいて自然崇拝的な動きとして現在ではカスカディアンブラックメタルとして現存している気がするが、ここは推論も多分に含まれる。

 また、ポーランドのFullmoon(1993年結成)。こちらはポーランドのNSBMを語る上で特に欠かせないバンドで、こちらは上記のバンドのスタイルとは異なり、ネオナチ的エッセンスそのものではなくアーリア人の優越性を表現しているといった方が適切だろう。そのためなのか、民族風メロディを使用していたりする側面も有って、音質も兼ねあって凶悪なプリミティブブラックを展開していながら、どこかに勇壮さやメロウな印象を持つ作品に仕上がっている。ウクライナのNokturnal Mortum(1994年結成)はシンフォニックでアグレッシブなブラックに民族的な旋律を導入したことで独特なサウンドを作り出すことに成功したバンドだし、表現方法こそ異なっていても同じような志向性だと解る。これはコラムのIで記述した通り、アーリア人の拡大解釈に伴うスラブ人の優越性からくるものであり、このようなムーブメントにおいてはスラブ民族の民族調メロディを盛り込んだブラックメタルに仕上がっているケースが多い。ちなみにこの流れからあくまでNSBMとしての側面を引っ張るバンドと、ペイガニズムを強調してNSBMから一線を引くバンドに分かれていくが、それはペイガンメタルを説明する際に語ろう。

■ おわりに

 以上、このようにエッセンスとして何らかしらのネオナチ思想を持ち込むことで、NSBMと言われていったバンドも多く、このことからNSBM自体が音楽性を定義するものではない比較的自由な表現方法になっていったと言える。またそんな中でAbsurdは当時、最も異端にして自由な表現を用いていたとも言え、それもまた彼らがNSBMの顔となっていった理由の一つでもあるだろう。

 故にこのジャンルの創出においては以下の通りである

 ・ Absurdタイプ(何でもアリ、RACやOi!Punkの影響を受けている)
 ・ 従来のブラックメタルを踏襲している
 ・ 民族優越性を強調した民族調ブラックメタル
 ・ ルーツ崇拝の末に自然回帰型

 次回のコラムではこれらのジャンルに対して、今回あげた以外のバンドやそのアルバムについても触れていきながら、NSBMの抑えておくべき名作を紹介していく。多分、ペイガニズムについて触れられるのはその次のコラムになると思われる。
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