Interview with Zero Dimensional Records 

zdrlogo.gif

 今回、当ブログ初の試みとして、日本にある数少ないブラックメタルのディストロ兼レーベルである Zero Dimensional Records(以下、ZDR) のオーナー、大石さんへのインタビューを行った。ZDRは2009年に設立され、今年で5年目を迎えており、世界中のUGレーベルを見渡しても、生まれては消えを繰り返す新陳代謝の高い界隈の中で、ブラックメタルシーンへの継続したサポートを行っている優良レーベルの一つである。今回のインタビューはそのようなUGシーンを理解し、その敷居を低くすることを目的としている。



―ZDRの自己紹介と、設立に至る経緯を教えてください。

 Zero Dimensional Recordsです。ゼロ次元で通っていますが、先代にアートワーク集団が居ること(※1)に後で気づきました。

 設立に至る経緯は、ふとレーベルなどでオーダーしている時、1000枚、666枚プレスなどが売り切れている中で「作ったCD全部売っちゃえば単純計算1000枚×1500円で150万円。めちゃくちゃ儲かるやんけ!」と思ったことがきっかけです。とりあえずディストロから始めようと思い、適当に名前付けて(Zero Dimensional Recordsも仮名でしたが、ずるずる今に至ります。なので、特に意味がない名前です)作ったのがZDRというディストロです。

 後日談なのですが、結果は惨敗。特に宣伝もしていない島国のレーベルがポンとリリースしたところでまったく売れるはずもなく、借金して作ったCDは初動3枚とかでした。入荷してもひたすらたまる在庫、仕事の給料を突っ込んでは入荷し、売れない、溜まるを繰り返し、給料日に入荷物に給料を全部突っ込んで、CD1枚売れないと飯が食えない状態が続きました。体重も30kg減りました。

 因みに去年くらいからやっと黒字っぽい兆しが見えてきました。実店舗を構える前あたりです。それまでは借金がありましたが、この辺からちょいちょい返して、最後の追い上げでレーベル休みにして全額完済して今に至ります。今考えると、以前から投資というか、過剰に残っていた在庫が捌けて、ようやく売り上げが帰ってきたのかなと思っています。

―ZDRのレーベルカラーはありますか?

 多分ないです。節操がないと思われるのもこれが原因かと思います。私自身が幅広く好きで優柔不断なので、一本に絞れないというためです。これ自体がカラーになってくれればうれしいのですが(笑)

―レーベル運営におけるポリシー、目的、目標などありましたら各々教えてください

 上記の通り、当初は金儲けしたい!!で始まりましたが、知り合いのある一言がきっかけだった気がします。

「日本ってアクティヴにやってるレーベルほとんどいないから良いところに目をつけたね」

 言われてみれば、国内シーンについて大好きだからこそ盲目になってた部分があります。ディストロを始めた時こそ、ちょうどArkha Svaあたりが出てきたことで盛り上がっていたので、国内シーンも大きいと思っていましたが、実際はすごく小さかったんですよね。

 ならば、もう少し何かできないか。大好きな国産バンドをいっぱいリリースして、ライヴとかできないか。そういうことを考えて日本のバンドをもっと大事にして行こう。ライヴとかをやっていれば、いずれ新人もたくさん出てくるだろう。風がなければ何も動かないので、とりあえず自分が風になって何かを動かせば、反動でまたどこかが動くだろう。そう思うようになりました。今でもがむしゃらです。目標は未だになく、それ以前にまだまだ弱小レーベルだと自覚していますし、しがみついていこうと思っています。

―設立当初と現在では考え方が変わった、と。

 すごく変わりました。一番大きく変わったのは、カルト的な考えはレーベルをやってる時点で捨てようと決心したときでしょうか。

―国内バンドの音源を数多くリリースしていらっしゃいますが、契約基準のようなものはありますか。

 国産バンドとの契約基準は色々ありますが、とにかくカッコよければOKです。私の好みもあり、断ったバンドさんも少なからず居ますが、カッコいいバンドは自ら声をかけていきました。とにかく当初はどのバンドもアクティヴじゃなく、バンドも少なかったのでmyspaceなどで探したり、動きまくりました。現在は色々なバンドがアクティヴになってきていて、CD作るから協力してほしいと、相談をいただくこともあり、調査の方はズボラになってきています。私自身の好みはDarkthroneの初期あたりのプリミティヴでメロウなブラックなので、基準ではないですが、そういうスタイルには弱いですね。

― 一方で昔の日本のUGブラックメタルの初期音源再発なども多数行っていらっしゃいますね。

 先ほど触れたとおり、国産ブラックメタルが好きなわけですが、過去の消えていったバンドの音源がとにかく手に入らなかった。でも探してる人は自分以外にも結構いたんですよ。なので、音源再発に踏み切ったりしていました。完全に自己満足で、最初はGorugothを出しました。出す前はデモテープもダビングしか持っていませんでした。

 結果なんですが、過去に活動していたバンドメンバーさんに火がついた方もいたりして、GorugothもKoozarとしてシーンに戻ってきたり、何らかのアクションがありましたし、昔を懐かしむ声もいただきました。再発の目的は本当に自己満足で始めましたが、結果オーライだったんじゃないかと思いつつ、その無計画さを恥じています。

―国産ブラックメタルの再発で、興味はあるけどコンタクト先が解らないバンドなどあれば教えてください。

 4年前くらいからずっと言っているのは名古屋のInsanity Of Slaughterです。途中の行方まではつかめましたが、最後まで辿りつきませんでした。探偵を雇いたいレベルで再発したいです。これを見てくれたメンバーさん、Zero Dimensional Recordsまでご連絡ください!!

 あとは、Dunkel、Belphegoth。Ohura MazdoはDr.の許可こそ下りましたが、リーダー氏へ連絡が取れず、最後のコンタクトアドレス先まで自転車で家を探しに行きました。が、同姓の家がいっぱい並んでおり断念しました。



―ZDRのサブレーベルについて紹介してください。

Hidden Marly Production: ZDRは当初「日本のバンドしか出さない!」と決めていましたが、フランスのQuintessenceとやり取りしているときにCDの再発を持ちかけられたことがきっかけで、とりあえずでっち上げて、そのままサブレーベルとして残しているものがずるずると来たのがこれです。基本的に海外バンドだけリリースするレーベルとして置いています。

Maa Production: Thränenkindとやり取りしていたら。彼らが日本のシーンに興味があるということでリリースの話が出まして、でもHMPだと毛色が違うし、ならばポストメタルやデプレレーベル作るかともう一個節操なく作ったのがこちらです。

East Chaos Records: これはZDRのサブレーベルと勘違いされている方が多いのですが、元々は愛知県のレーベルで、在庫やKanashimi、Hopelessのリリース権利等を買い取ったものです。

―海外のバンドとも、特に最近は勢力的に契約されているようですが、どのように契約まで至っているのですか。時にかなりのマイナーなバンドを発掘していらっしゃいますね。

 海外バンドとの契約基準については、色々好きなので、本当にレーベルカラーが出せない感じでしたが、最後かっこよかったらいいやということで、気に入ったバンドなら契約しています。最初はmyspaceで探したり、「過去音源が良かったから新譜うちでどう?」みたいな感じで誘っていきました。現在はリリースしたバンドの友人が「うちのバンドも出してよ!いい噂聞いてるよ!」みたいな感じでリリース話を持ってきてくれたりしてくれています。マイナーバンドがたまに居るのは8割型向こうから連絡をくれている場合です。

―そのように海外のバンドの音源をリリースする目的はなんですか。

 1つはもちろんバンドへのサポートですが、ディストリビューションの際、日本のバンドだけだと見向きもしてくれない海外レーベルも少なからずいます。しかし、例えば自分の国のバンドが、Japanとかいう訳のわからない島国のレーベルからリリースされていて、その情報を見たら日本のバンドにも興味を湧いてもらえるのではないか、ということもちょっと狙ったりしています。つまり結構、日本産贔屓な理由で契約していたりします。

―海外バンドとの契約について教えてください。個人的にはZavod’の次のリリースが気になっています。

 契約は1作品の権利を保有したり守ったりしています。つまり「他にいいレーベルあったら悔しいけどそっちいってね。大きいレーベルから連絡あれば、そっち行ってうちを踏み台にしていいよ」ということで、バンドさんを束縛するような契約はしていませんね。ただ、うちでリリースしたバンドは大体戻ってきてくれたりします。Zavod'も「次の作品もよろしく」と連絡が来ていましたが、契約自体はしてないのでどうなるかは解りません。

―個人的なコメントですが、Black CiliceのCD再発はとても有り難いものでした。今後のHMP、MAAのリリースについて予定されていることがあれば教えてください。

 ありがとうございます。Black Ciliceのリリースは一部ですがなかなか好評でこちらも嬉しかったです。HMPはフランスのNightが今、結構話題になっている気がします。来年あたりにリリース予定です。他にはJuno BloodlustのドラマーがやっているAdversam、お馴染みHappy DaysのMorbid氏のPreteen Deathfuk のスプリットもリリース予定です。

 一方でMaaの方ですが、As Light Diesのリリースを控えています。未だに不可解なのですが、Code666を蹴ってまで来てくれました。かなりハイクオリティなアヴァンギャルドブラックメタルです。あとは1年以上待っていますが、Coldworldの廃盤EPの 日本Verを再発する予定です。告知はまだしていません。とにかくいつ出るかわかりません…。

―名前が出たフランスのNightですが、今度のブラックメタルファンジン(※2)でインタビューが掲載されるそうですね。なかなか個性的な発言も多いようで楽しみです

 そうみたいですね!個人的にも楽しみです!何の人脈もなくぱっと出てきたバンドを拾ったのですが、アクティヴに活動していて、インタビューも載るみたいなので、ぜひ1stアルバムにご期待ください!!

―As Light Diesは2010年リリースの2ndアルバムを聴きましたが、かなりゴシック要素の強い印象があります。

 今回もゴシックは強めでアヴァンギャルドな感じも強く出ています。どちらかというとUGさはあんまりなくメジャーさが溢れているのでうちで 大丈夫なのか心配になるくらいの出来です!



―次にディストロ運営の件については入荷の基準などはありますか。

 ディストロに関しては、最初はカルトぶったり、自分の気に入った厳選CDだけをただ金儲けのために入荷していました。しかし先ほど触れたとおり考え方の変化もあって、現在は海外のリストを貰えば万遍なく入荷して「日本だったらここはディストリビューションしてくれる!」という海外レーベルからの評判を得られるような品揃えにしています。一部からは節操なく入荷しているように見えるかもしれませんが、一部のコレクションディストロ的な「うちのカラーはこれだ!」っていうのが正直決められないくらい色々好きなので、それだったらいっぱい取り扱えばいいや、っていう感じです。

 海外から見れば、日本の音楽シーン、CDの流通はかなり良いらしく、何とか日本に1枚噛みたい!というレーベルも少なくないです。そのかわりZDRのリリースもそっちの国でディストリビューションしてよ、という交換条件でうまくまわせたらと毎日思っています。海外レーベルとのやり取りは近年増えてきた気がします。

―海外ディストロとのやり取りで困ったことなどありましたら教えてください。

 挙げていくとキリがないのですが、とにかくリップオフじゃないでしょうか。最近はあんまりなくなりましたが、最初のほうは散々舐められまくっていました。そろそろ被害総額30万円を超えそうです。

―海外からのオーダーは多いのでしょうか。

 ほとんどないです。一部の日本バンド好きはオーダーをくれますが、送料の高い島国でわざわざ買おうとは思わないみたいですね。音源クレ、mp3クレ野郎はいっぱい居ます。

―ディストロの方でなかなか注目されていないけど個人的にオススメ!という最近の音源があれば教えてください。

 難しいですが、まずは Hats Barn - A Necessary Dehumanization ですかね。激クサでよかったです。このバンド自体があまり人気のない印象です。

 あとはちょっと古くなりますが、Fortid - Pagan Prophecies、あと解散してしまいましたがZwartplaagのフルアルバムと特にスプリット音源も。これは結構古いですね。

 探せばまだまだありますが、在庫が多すぎて思い当たりません・・・・

―ちなみに実店舗として黒屋も共同運営(※3)されていますね。外から見た雰囲気はラーメン屋でしたが圧巻の商品量で驚きました。実店舗ならではの取り組みなどはありますか。

 ありがとうございます。ラーメン屋っぽいと言われたいがためにがんばりました。うれしいです。実店舗ならではの取り組みは…まったくないです。どうしてもCDを手に取りたい!という方のために始めましたが、レーベルを兼用しているので、お客さんが連日わいわい来られるとレーベル業務ができなくなります。だから、たまにちらほら来てもらうくらいで大丈夫かなと思っています。毎週来てくださる方とかもいらっしゃいますが、ここまで立地悪いと気軽においでくださいとも言えませんし、めっちゃ申し訳ないです。

 でも、いらしたら満足いただけるように、ちょっとずつレイアウトを変えてみたり、商品に一言コメント入れてみたり、PCのスピーカーをハイレゾで聴けるようにDAC組んだりしています。あともうちょっと資金とか作れたらレコードプレイヤーとかも設置したいと思っています。ブラックメタルが当時のパラパラくらいブームが着たら心斎橋あたりに2号店オープンさせたいです。



―またそれらの運営とともにブラックメタルのイベント、Black Sacrificeを開催されていますね。こちらはどういったポリシーで行われているのですか。

 以前はあったブラックメタルのイベントですが、近年めっきりなくなってしまい、たしかFenrisulfだったかが「ライヴがなかなかできない」という話をしていて、それならば企画してみようかと始めたのがきっかけだったと思います。Fenrisulfはメンバーがあまり表に出ない感じで、ライヴもしにくかったとかだった気がします。

 ポリシーですが、表面上の理由としては「自分が見たいバンドを出す」ということでやっています。で、そんなときにちょくちょく海外からジャパンツアーの話があって、海外バンドも呼んでみようかと思うようになり、今に至ります。現在は知名度のある海外バンドを呼びつつ、なるべく日本のバンドを招待して、海外バンドにしか興味がないお客さんにも日本のバンドを知ってもらおうと思っています。「日本のバンドのときはバーで飲めば良いわー」みたいな事を言われたこともありますが、やるかやらないか、0より1だったら1のほうが確率はあるわけで、何とかやっていきたいと考えています。

―今までのイベントで何かこぼれ話などありましたら教えてください。

 とにかく最初は呪われていた企画でした。1発目から東日本大震災で延期、延期後はメインのCataplexyが事故でキャンセル、2回目はNegură Bungetが飛行機のストライキで来日できない。次に何か起こったらやめようと思っていました。

20140619_7c85f4.jpg

―そして次回のBlack SacrificeではあのSatanic Warmasterが来日しますね。先にコンピレーションのリリースも行われましたがどのような経緯で契約に至ったのですか。

 話題性を出したいということもあって「ツアーするならうちでCD出してみないか?」と軽くオファーをしたら「日本語で帯とか作ってくれるならいいよ!」ということで軽く決定したのが確か2年前くらいだったと思います。正直ツアーだけで完全黒字を出すのはCelestiaのときの80万円の赤字(※4)で無理だとわかったので、CDだけでもなんとか利益+広告になってくれないかという思いもありました。次に大赤字を出すと日雇いのアルバイトか、最悪今度こそ店を畳むハメになるのでなんとかクリアしたいところでもあったので、リリースできてよかったです。

―ちなみにあのコンピレーションをHMPではなくZDRでリリースしたのは何故ですか。

 最初は非常に迷いました。最近はZDRで一本化したいと考えつつ、HMPもそこそこ大きくなってきた気がするので捨てる勇気も出ず、バンドさんにも申し訳ないので最近だとHMPはマイナーなバンドを支えていこうと継続しようと。だから今回のリリースがZDRからだったのは、ほぼZDRの売名行為だと思ってくれていいです。「Satanic Warmasterの新譜でたの?どこ?日本のレーベル!?へぇ、日本もバンドいっぱいいるじゃん」という海外へのアピールが狙いでした。

―そして来日公演の方はどのようなショウにしたいですか。

 お客さん、出演者が楽しんでくれればいいなと思います。Satanic Warmasterサイドは「ジャパンツアー行ってきたよ。ゼロ次元すごくよくやってくれたよ」と思ってもらえれば、フィンランドのシーンで名前が広まり、フィンランドのバンドが呼びやすくなりますし、国内バンドさんの方も楽しかったらまた出たいと思ってくれるかもしれない。お客さんも楽しかったらまた来てくれるかもしれないし、とにかく次へ繋げたいです。今回は海外からもSatanic Warmasterを見に来るという猛者も数人いるそうなので、日本のバンドさんには是非ともがんばってほしい!

all-eng.jpg
フライヤー(クリックで拡大)




―さて、少し大石さん自身への質問をさせてください。今までのお話をまとめると、大石さんのレーベル運営は全て「日本のブラックメタルシーンのサポート」に帰結しています。そのモチベーションである日本のブラックメタルシーンへの愛着について 大石さん自身のバックグラウンドを教えてください。

 たしかきっかけはCataplexyのEPだったはずです。ふと日本にもブラックメタルバンドがいるのかな、と思って探していたら某バンドが引っ掛かりましたが、全然好みじゃなかった。しかし、さらに掘り下げると、CataplexyやFuneral Elegy(現Hakuja)などを見つけて、聴いて、まだ1リスナーであるときにコンタクトをとったり、ライヴに行ったりしていました。正直、当初はそんなに国内のメタルシーンに良い印象はありませんでしたが、ブラックメタルやデスメタルに関しては日本人のセンスはずば抜けているとこの頃から思っていました。

 ZDRを始める頃には既に国産バンドが好きでしたが、国産バンドのサポートを思うようになったのは、レーベルを開始して2年くらい経ってからでしょうか。好きな国産バンドがあまりにも注目されていなかったり、「日本人がやるメタルは偽者」なんて言ってる人にも会ったりで、とても複雑な思いでした。個人的な感想ではありますが、多方面で絶賛されてる”海外”のバンドより、日本のバンドをヨーロッパ方面で産地偽造してアピールしたらサウンドだけでは負けないと思っています。


―私の意見としては外国人は日本産というものに異国情緒を求めがちだと思います。国産バンドが国産バンドであることを明らかにしつつ、世界的に認められるためにはそのような異国情緒を汲みこむ必要があるかもしれないと思います。それが良いことかどうかは別にして。

 そうですね。実際、凶音やMortes SaltantesはUGなら海外で大好評です。個人的にはInfernal Necromancyの国産ならではのメロディーを紡ぐサウンドはもっと評価されてほしいところですが「わかる人にはわかるけど、外人にはわかんないだろうなぁ」と思います。

 でも、こういうバンド達にインスパイアされて出てくる後続バンドが、後に「日本らしさ」を作っていくかもしれません。「○○のパクリだー」「オリジナリティーがー」とかグダグダいう人も居ますが、自分の持っている音楽のボキャブラリーを掘って曲を作れば、日本人らしさが自然に出てくるとおもいます。正直、何がきっかけで有名になるかわからないのがこのシーンです。手っ取り早いのは海外にツアー行ってライヴすることですが、自分らしさをもっていればいいかなと思います。


―ちなみに海外に日本のバンドをプロモーションしていくにあたって、例えば今すでに使われているBandcampの更なる有効利用としてDL販売などは考えてらっしゃいますでしょうか?過去の音源でもデジタルDLできるようになれば海外へのアピールにもなるかもしれません。

 Bandcampのリリースは悩みつつも未だ結論は出ていないです。私はコレクターで現物ないと気がすまないパターンなので今はまだ考えられないなぁ…と思っていますが、今後検討していこうとは思います。電子書籍なんかも、会社が潰れて再DLできませんとかありましたが、こっちもあったりするんでしょうか…不安です。

―逆にアナログリリースに対するお考えは?

 正直、今すぐにでもやりたいです。ただ、膨大な資金がかかりますし、そのわりにはディストロのLPの売れなさや、輸出入のコストなどを考えるとなかなか難しいですね。テープも当時は主流にしていこうと思っていましたが、Ampulhetaのデモテープを出したときに「プレイヤーがないので買わなくていいや」みたいな声を聞いたり、実際売切れるまで時間がかかりました。その後は、テープでリリースする意味があるのかちょっと考えてしまってなかなか次へ行くことができません。

―大石さんご自身はブラックメタルやそのシーンに対してとてもリベラルな精神をお持ちだと思いますが、よく言及される「精神性」、「神秘性」、「哲学性」のような抽象的な側面に対してはどのように考えてらっしゃいますか?

 正直よくわからないです。ブラックメタルを好きになったのもサウンドが好みだっただけで「教会燃やしてすげー!人殺ししてすげー!」で聞いたことはありません。神秘性=話題づくりじゃないかなと最近は思っています。もちろんその観点は、現在に至ってそれを実行する事に対して、哲学が無いものだと思っています。過去から一貫してシーンに出てこない、顔を出さないバンドやアーティストさんには哲学を感じますし、敬意を持っています。そのように哲学的なものは好きです。歌詞なども良いですね。そんなにじっくり歌詞翻訳とかしたことないですが…。また、私個人としては「Anti religion」ですが、音楽性については特にどうも思いません。黄色人種死ねブラックだったらさすがにサポートしたくないですが。

―実際、日本のブラックメタルシーンについてどう思われていますか。成熟されてきたのでしょうか。

 多分、まだ成熟していないと思います。レーベルだけでなくバンドが少ないですし、そもそもお客さんも絶対数では非常に少ない部類です。ディストロも出てきては消え、出てきては消えとしていますね。ディストロをやるにしてもお客さんの絶対数が少ない中、客の取り合いになるのは目に見えているので、ハードコアシーンみたいに「やってやるぜ!」って馬鹿な事を考えて始めるのは私くらいでしょう。

 レーベルが増えるとしても、小さいレーベルについてはありだと思いますが、どっかでやめてしまうくらいならやらないでほしいと思います。リリースした音源の権利を持ったまま潰れて音源が再発できず、バンドが改名したり、やめていったり、ディストリビューション力がなく、在庫に埃を被せているだけのパターンも散見されます。たかがCD、LP1枚ですが、最後まできちっと面倒を見ることができる人がやるべきだと私は考えます。そんなことをやっているレーベルがカルト的な雰囲気や希少さでレア価値を生むのが最近どうも歯がゆいです。

― 一方でアンダーグラウンドである以上、やはりリスナー側のサポートも大事だと思いますが。

 レーベルの立場として「サポート頼む!サポート頼む!」と連呼するのは嫌いで、「CD買ってクレー」とは言ったこともないです。ただ個人的に望むのは「良かったら、気に入ったらお金使ってね」ってことで、それが結果としてサポートにつながります。過剰なサポート意識はうれしい反面、リスナーの負担にもなりますし、ボランティアみたいで、こちらとしても心苦しいところもあります。 すごく、すごくうれしいのですけどね!

 だから、「良かったら、気に入ったら買う、ライヴに行く」ってだけで、少し気を使ってくれるだけで、本当にサポートになっています。少し心がけてくれれば全員サポーターです。身内です。内輪のり結構じゃないですか。こういう点に気づいてくれるか否かでかなりシーンも変わってきます。海外のシーンとか行くと「俺ライブに行ってるしサポーターだぜ!ファンだぜ!」ってアピールする連中がたくさん居ます。UGシーンはメジャーと比べてアーティストさんとの距離も近いし、Satanic Warmasterの来日ライヴも恐らくメンバーもライヴハウスの中をうろうろしてますし、みなさんガンガン来てください。

―長いインタビューになりましたが、丁寧に回答くださりありがとうございました。

 こちらこそありがとうございました。若輩レーベルがえらそうなこと、キレイごと並べてすみませんでした。うちのような若輩レーベルが生き残るには、シーンに密接に関わって、信頼などを得られないとダメだとおもって必死でやっている毎日です。

 もともとは欲の塊みたいなものでしたが、シーンを盛り上げたいというか「日本のバンドかっこいいよ」って言うのを知ってほしいと切に願っていますし、またブラックメタルリスナーの人口はそこまで少なくないはずなので、深くまで入ってきてくれるリスナーが増えるといいなーと思っています。ブラックメタル好きという方に何人も会ってきましたが、「一番マイナーでDark Funeralかな」なんて言われたりしたこともありますが、ちょっとでも入り口なんかを広げたりできればいいなと思います。

 それではZero Dimensional Records、ZDRもしくはゼロ次元、今後ともよろしくお願いいたします。

Link to:
Zero Dimensional Records
Zero Dimensional Records Online Shop
Black Sacrifice
黒屋 -KUROYA-



(注釈)
※1 1960年代から1970年代初頭にかけて活動していた前衛パフォーマンスアート集団。
※2 ギリシャのブラックメタルバンド、The Shadow Orderの名曲タイトルから引用されたEnd Of Journeyというブラックメタルファンジン。ネットによる有志集団で執筆されており、私もvol.2で参加した。Vol.4が目下製作中とのことで、そこにNightのインタビューも掲載されるとのこと。
※3 Amputated Vein Recordsとの共同経営。なので黒屋にはブルータルデスメタルの品ぞろえも強い。
※4 Black Sacrifice Vol.5としてCelestiaの東名阪ツアーが行われたが、フライトチケットなどの出費が著しく、大石氏に多大なリスクを負わせてしまった事件。あのときのツアーTシャツ、私はちゃんと買いました。



 以上、ZDRの大石氏へのインタビューである。興味深い話も多く、この手のインタビュー記事の中ではかなり分量の多いものになったが、本文からもうかがえる通り、レーベルの設立時のエピソードから今に至るまで、ポーズをとることのない純粋な姿勢が垣間見れるとともに、日本のUGシーンへの真摯な想いとサポートへの責任感を強く感じさせるものであった。

 我々1リスナーは飽きたら聴くのを辞めればいいというノーリスクの立場ではあるが、このように人生を賭けてサポートを行っている人がいるからこそ(ZDRだけでなく)、素晴らしい作品が我々の元に届くし、またライブを堪能することができることについて無視してはいけないということを改めて感じている。

 そのために我々ができることというのは大石氏も仰っているように「少し心がけること」であり、それによってUGシーンに対する距離感がより身近なものになるということも必要なのではなかろうか。サポートをするということ自体はとても敷居の低いものなのだから。

 なお、万が一でもInsanity Of Slaughterのメンバーさんや関係者の方がこのインタビュー記事に気付いたとしたら、是非ともZDRまでコンタクトして頂きたく思います。宜しくお願いいたします。

 また、今回のようなインタビューは継続して行っていく予定で、今後は国内外のバンドにもインタビューの御依頼をオファーしていくつもりです。逆オファーも承っておりますので、今回のインタビューをお読みいただいて興味がわいたバンドさんは是非是非、お声がけいただきたく思います。御覧の通り、零細ブログですので宣伝効果とは無縁のものですが、真摯に対応させていただきます。
タグ: Interview  Column  Label 
Interview  /  tb: 0  /  cm: 0  /  △top