Mikama Isaro Mada : Arkha Sva (2008) 

日本のブラックメタルバンド、Arkha Svaの初期音源集を紹介。
スウェーデンのTotal Holocaust Recordsよりリリースされ、2013年にThose Opposed Recordから再発された。

arkha_sva.jpg

実はこのバンドをちゃんと知ったのは2011年のことで、
00年代の日本のブラックメタルバンドは当時からっきり知らなかったもので、
つまり当時の秘匿主義(コンタクト先がフランス、メンバー情報出さずなど)も明るみに出てからだった。
今では海外のブラックメタルファンジンのインタビュー対応なんかもしている。

このコンピにもMütiilationとBelkètreのカバーが収録されていたり、
完全にLLNフォロワーなカルトフレンチブラック系列のサウンドで、
その中でもヴォーカルの表現力は噂通り凄い。

恐らく日本のプリミティブブラックメタルの中では最も世界に知られているバンドであろうが、
個人的にはLLNサウンドにそこまで趣味が合わないため、
これ以降の音源は特に追いかけてはいない。

当時の秘匿主義や音源の売り方など若干俗っぽいところもあるが、
「日本らしからぬ」という枕詞を抜いても質の高さが強調できる、
数少ないバンドの一つであることは間違いないと思う。

Encyclopaedia Metallum - Arkha Sva
タグ: Arkha_Sva  Mütiilation  Belkètre  LLN  2006-2010  Japan 
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【column】 Les Legions Noires - III 

■ 前回

 【column】 Les Legions Noires - II


■ 続き

  今回で第三回目となるLLNコラム。実を言うとこんなに長くなるつもりはなく、元々は自分があまりに手元にあるフレンチブラックを持て余し気味だったことから、その本質に触れることで腰を落ち着かせてフレンチブラックを聞き込んでいこうとするためのものであった。しかしVlad Tepesのインタビュー記事などから、トゥルーブラックメタルとは一体何なのだろう、という思案に至ったのが前回までの流れだった。

 今回は話を本筋に戻すべく、LLNというアンダーグラウンドサークルが与えたフレンチブラックシーンの寄与について眺めていく。それをすると前回書いたとおり、Mütiilationの特異性が浮かび上がってきたので、それを中心に本稿をまとめることにする。

■ MütiilationのLLN脱退

 MütiilationはLLNの中でも最も有名なバンドだろう。それはLLNがフェードアウトした後も生き残り続け、そしてフレンチブラックメタルシーンに大きな影響を与えてきたからだ。つまり最もオーバーグラウンドな性質を持ったLLNのバンドがMütiilationということになる。1995年にLLN内で製作されたファンジン"The Black Plague - First Chapter (And Maybe Last One)"はMütiilationのMeyhna'chが作ってインタビュワーなども務めたらしい。

 しかしMeyhna'chは1996年にドラッグの問題でLLNから追い出されている。どうやらかなり重度のジャンキーだったようだ。ドラッグとブラックメタルに纏わる話に関してはそれだけで一つのトピックになりそうだが、ここでは触れない。しかしドラッグが原因で脱退させられたということは、それがLLNという組織においては御法度だったということだろう。もしくは単純にジャンキーだったMeyhna'chが手に負えなくなっただけかもしれないが、いずれにしてもLLNはその後、闇に還り、Mütiilationだけが残った。

 MütiilationもLLN脱退後、しばらく音源をリリースしていなかったが、1999年にDrakkar Prod.からコンピレーションアルバム"Remains of a Ruined, Dead, Cursed Soul"をリリース。それは主に1991~95年の音源のコンピで、一部未公開のものも収録されていた、そしてライナーノーツには「Meyhna'chはブラックメタルシーンのトレンディ化に失望して既に死んでいる」と書かれていたのである。つまりLLNのフェードアウトと同調したように、Mütiilationも闇に還ったのだと思われた。

 しかし2001年に"Black Millenium (Grimly Reborn) "がDrakkar Prod.からリリース。なんと「まだ埋葬されていない」「死んだ身体で音源を作った」などと書かれていて、正直なところかなり俗っぽく感じてしまう。この年にはフランスで2回ほどライブにも出演、肩書きからLLNという枷がとれたからなのか、それともドラッグの後遺症から復活したからなのか、かなり"活発的"に活動しだし、当初のLLNというアンダーグラウンドサークルの理念から完全に逸脱し始めた。そして彼の活動はMütiilation一つに留まらず、様々なフレンチブラックシーンとの交流をし始めた。


■ Mütiilationから広がるフレンチブラック

 このようにLLNの枠組みからはみ出したMeyhna'chの人脈構成図を以下に示す。ご覧の通り、フレンチブラックの現在でも著名なバンドに大きな関連を見出せるだろう。

around_LLN
(クリックで拡大)

 Malicious Secretsはたった3つの音源しか残していないのだが、そのうち"From the Entrails to the Dirt"というフレンチブラックメタルのスプリットはMutiilation、Antaeus、Deathspell Omegaも参加している超豪華音源で、その中でもMalocious Secretsの音源が収録されているだけに価値が高いものになっている。サウンドの方もいわゆる自殺系ブラックメタルとは全く異なったブチ切れ系病みブラックメタルを展開し、まさしくカルトなものになっていて、LLNのカルト性が直接伝承されたと言えるだろう。

 またMalicious SecretsのメンバーであるTNDはフレンチブラックメタルレジェンドであるHirilornのメンバーでもある。更にHirilornが母体となってDeathspell Omegaが結成された。HirilornとDeathspell Omegaについてはいつか取り上げる予定なのでここでは説明を割愛するが、この人脈の繋がりこそがフレンチブラックメタルの本流であるようにも感じる。またその流れでフィンランドのClandestine Blazeも人脈筋となる。

 TND氏と共にCelestia(2012年来日した)を組んでいたNoktuはDrakkar Prod.のオーナーで上記リリースを行っていたこともありMeyhna'chとはかなり縁が深く、CelestiaメンバーもMütiilationのライブサポートも行っていた。確か2001年のライブもサポートで入ったはずである。さらにMeyhna'chとNoktuはGestapo666というバンドも結成している。Gestapo666自体はNoktu以外のメンバーは流動的だったようで、Meyhna'chの参加は初期音源だけのようであるが、こちらもまさにアンダーグラウンドを表現するようなLLN継承サウンドだった。

 そのNoktuはAlcestのNeigeと共にMortiferaもやっていたし、更にその筋で辿っていくと現在のフレンチブラックの最先鋒であるPeste Noireにまで行き着く。ここまで辿り着くとだいぶ"表"に出てきたな、という印象ではあるが、特にPeste Noireのデモを聞けばLLNから伝承されてきたカルトプリミティブブラックというものを感じるだろうし、更に1stでは中世秘密結社的な怪しさがあって、LLNから受け継いだカルトさを彼らなりに展開した結果とも言えるだろう。

 他にMeyhna'chが直接的に関わったバンドと言えばHell Militiaである。こちらはどうやら2012年に脱退してしまったらしく後任にはBethlehemのメンバーだったRSDなる人物が入ったようだ。Hell Militia関連ではメンバーがTemple of BaalやEpicといったバンドをやっていたこともあり、ここまでいくとフレンチブラックの有名なバンドのかなりを網羅しているような人脈筋である。


■ その後

 Mütiilation自体は復帰後、4枚のフルレングスを含む複数の音源をリリース、先に紹介した"From the Entrails to the Dirt"の他にも、Deathspell Omegaとの有名なスプリット、更にはフィンランドのSatanic Warmaster、オーストラリアのDrowning the Lightとスプリットをリリースした。特に後者のスプリット"Dark Hymns"はLLN活動時には散々こき下ろしていたフィンランドのブラックメタルバンドとスプリットを出したのがトピックであった。しかしSatanic Warmasterは広義にはノルウェイジャンブラックのフォロワーであり、90年代初頭のフィンランドブラックとは全く異質のものであるから、精神面など与し易かったとも言えるだろう(次はArchgoatのインタビュー記事のコラムを書くのでその時にまた書くが、トゥルーフィンランドブラックとは断じてHornaやSatanic Warmasterのようなものを指すのではないといいたい!)

 そして2009年に解散、Mütiilationも闇に還った。今、Meyhna'chはO.D. Sanctusという名前で新しいプロジェクトを進めている。またMeyhna'chはSektemtumというブラックメタルバンドにも昨年加入した。まだ未聴なので言及は避けるが、とどのところ、彼は表現者というよりミュージシャンなのだろう。ゆえに彼はLLNというカルトサークルのサウンドをオーバーグラウンドに引き上げて、そしてそれをフレンチブラックシーンに拡散したのだ。


■ 終わりに

 今回のコラムは終わりが見えないまま書いていた感じになったが、つまりLLNというカルトサークルの思想と神秘主義、コマーシャリズムに侵されたブラックメタルシーンの破壊と、本来あるべき"闇"にそれを戻すというのがLLNの目的であったが、その中で唯一、Meyhna'chのみが逸脱し、その結果としてフレンチブラックシーンに多大なる影響を及ぼして、現代でも活躍するバンドにLLNのエッセンスを継承することができたと言えよう。

 LLNは決して音源に希少価値があったからカルトだったのではない。なるべくしてなった、目的があったからそうなったのであろう。そしてそれは誰しも聞けば解るとおり、サウンドにしっかり反映していたのだ。そして今では主にそのサウンドがMeyhna'chによって各バンドに引き継がれ、各々のバンドの思想哲学を基盤として今も聞くことが出来るのだ。

 今回のコラムでは自分自身、なぜブラックメタルを聞くのか、ということを探求する切っ掛けとなった。さて、皆さんはなぜブラックメタルを聞くのでしょうか?たまにはその表面的な音の配列にのみ関心を寄せるのではなく、じっくり考えてみるのもまた一興かもしれません。
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【column】 Les Legions Noires - II 

■ 前回

 【column】 Les Legions Noires - I

■ 続き

 前回はLLNについて簡単に触れた後、彼らの行動原理などを知るためにVlad Tepesのインタビュー記事を読み解くことで、LLNのアンダーグラウンド・カルト・ブラックメタルとしての所以を理解した。今回はLLNの人脈構成などを見ていきながら、そのようなUGカルトの血脈がどうなっているのかを見ていくことにしよう。またLLNの代表的な人物、Vordbのインタビューも転載(訳)する。

■ LLNの人脈構成

 以下にLLN内の相関図を示す。黒塗りに白文字がバンド名、黒文字が人名となっている。なお、この相関図はLLN全体を示しているのではなく代表的な人物の活動のみピックアップしている。


LLN
(クリックで拡大)

 まず前回、掲載したVlad Tepesのインタビューは主にWladが行っていたが、もう一人のメンバーがVorlokである。Nifleremという人物は彼らの志に合わずにすぐに外されている。また、彼らはVermyapre KommandoとSevissというバンドもやっていた。前者の音源記事は先日このブログでもアップ済であり、詳細は割愛するが、後者の音源はLPブート程度しか一般には出回っていないため当方も未聴である。

 そして彼らと様々なバンドを組んでいたのが、LLNの代表的なバンドであるBelketreとTorgeistのメンバーでもあるVordbである。相関図を見ていただけば解るとおり、VordbはLLNの中でも最も多くのバンドを掛け持ちしていた他、更にMoevotのソロ活動も行っており、いわばLLNというサークルの最重要人物といっても過言ではないだろう。

 またEncycleopaedia MetallumによるとBrenoritvrezorkreもソロでやっていたようだが、一説によるとVolrokとNifleimも関わっていたという話もあり、解らない。このバンドはLLNマニアでなければあまり目にしたこともないと思う。後者もブート音源は存在するし、知っている限り1枚だけブートCDが出ているのだが、それも66枚限定のリリースという超極少数だったためお目にかかった試しがない。但しVlad Tepesが"The Black Legion"(比較的LLN音源の中では手に入りやすい)においてBrenoritvrezorkreのカバーを行っており、その音源によってBrenoritvrezorkreを知った人も多いのではなかろうか。

 さらに注目していきたいのが、LLNにおいてもう一人の重要なメンバーであるMutiilationのMeyhna'chとはVordbのみしかバンド的繋がりがなかったという点だ。この件については後述するとして、まずは最重要人物と目されるVordbのBelketreとしてのインタビューと、もう一つはMoevotのインタビューについて紹介していこう。ちなみに両方ともThe Black PlagueというLLNのオフィシャルファンジンのインタビュー記事から引用した。


■ Interview with Vordb (& Aakon) of Belketre

―――Belketreが行ってきたカオスな革命について教えてくれ
 カオスというだけでなく、未来永劫に、だ。この革命とは我々が示す"闇の契約"のことで、世間の虫けらどもが掲げる革命とは正反対のものだ。私はそれを守り続けることを約束する。

―――ブラックメタルに一切関係なさそうな古きカルトバンドについてどう思いますか?
 そいつらはポッと出ては姿を消す惨めなトレンディーバンドよりさらに酷い。あなたが挙げたバンドらはドアを開けっぴろげにしていて、我々の威厳を目の前にするとすぐにそのドアをピシャリと閉めやがる。そいつらは自身の作品や我々の伝説を否定して破壊するのさ。その態度は全く許されるものではないし、道理に反している。多分、やつらの"犬"はカルトであろうとなかろうと、安堵したかのように死ぬだろうな。

―――あなた方のイメージしている世界とは一体何なのですか?
 それは"No World"だよ。"世界"の抹消は人々の抹殺そのものなのだ。我々のイメージにある世界においてはいかなる手段も"Chaos"になるのだ…。

―――Vlad TepesとのスプリットCDについて教えてください
 私から言えるのは、ウジ虫どもがそれを手に入れたとしたら、クソみたいなブラックメタルシーンにおける虫けらどものほとんどが萎縮しきった魂を粉々に打ち砕かれたかのように感じることだろう。このVlad Tepesとの黒き音源はブラックメタルそのものであり、そうでなければならず、永劫そうなり続けるだろう。ブラックメタルかそうではない他の何かかを区別するためのものなのだ。ブラックメタルを語る贋物を明らかにできるだろうが、そもそもそいつらが代表的になってしまうシーンこそが、ブラックメタルではないことの証明になっている。そいつらはブラックメタルからは僻遠な存在だ。彼らがどう思おうとな。

Aakon: この作品はレーベルから出す最初で最後の作品になるだろう。この後、我々は更に暴力的で荒いエクストリームな音源をデモのみで出すことになる。

―――あなた方の仰る革命はこれからも続くと?そのためのポイントとは何ですか?
 時間が経つにつれて我々は更に暗闇の深みに誘われ、どんな影響も受けなくなる。決してその終わりはないだろう。限度のある"暗黒"なんて、シーンを荒らしている"サタニストと直面してしまった人間"においての限界に過ぎない。奴らはイメージ上で "暗黒" を創り出しているのだが、それは惨めなスピリチュアルによる制限に苛まれている。奴らにとっては黒き旅路はすでに終わっているのだ。さも始まってもいなかったかのようにな。

―――自分の過去を思い出すことはありますか?それを否定しますか?
 もちろん、その過去とやらは我々が人間性を否定し抗った後のことだけだ。私は過去を否定しない。なぜならば過去は、神や神の僕が植えつけようとしてきた欺瞞を破壊する時に用いてきたこの力と容赦ない決心のシンボルだからだ。自己否定なんて純粋なクリスチャンがすることであり、サタニストがやることではない。

―――BelketreはこのスプリットCD以降も何か発表するつもりはあるのですか?
 ただサタンのみぞ知っている。私としては少なくとも、永劫、最悪な方法で革命運動を行い、我々の力で下等な奴らを破壊し続けることを示したいと願っているよ。

―――人生をエンジョイしようとしている弱き人間どもに言うことはありますか?
 奴らは自殺すべきだ。もしくは我々はそれを助ける強大な歓喜を携えている。つまりだな、もし我々の手で奴らが死ぬとしたら、それはより長く苦痛を与えることが出来るということだ…。


 以上がVordbのインタビューである。既存のブラックメタルシーンに対する怒り、そして自分たちの守るべきブラックメタルは決して日の目を当たる必要がないこと、更に敢えて出ていく目的が既存のブラックメタルシーンを破壊するためであることが述べられている。趣旨としてはVlad Tepesのものと変わらないことからLLNという狭きサークルが如何に一つの意思でまとめられているかがわかる。続いてMoevotとしてのインタビューについても紹介しておこう。こちらはMoevotが活動を停止してからのものとなっている。恐らくこちらもVordbが回答していると思うが、インタビュー上はあくまでMoevotとしてVordbの代弁を行っている形になっているようだが、途中からゴチャゴチャになっていてちょっと微笑ましい。

■ Interview with Moevot

―――Moevotの"死"において一体、何が起きたのですか?
 いかにも、Moevotは永遠の死を迎えた。VordbはMoevotを神の手に陥らせないよう、人間性から隔離するために、最も深い暗闇に戻すために"殺した"のだ。Moevotとは人間の造形物としての音楽に反した犯罪なのだ。神や人間性に反する犯罪―Moevotは創作ではなく破壊なのだ。Moevotが出てきて以降、あまりに多くの似たアンビエントプロジェクトたちが日の目を浴びることとなった。別にそれら全てが贋作だとは思わない。しかしそれら全てはまもなくに虚しさに陥るはずだ。the Black Legionsにおけるプロジェクトを除いては、な。私はそういった要因の全てや、愚かな人間の法から解放されるためにMoevotを殺したのだ。今、私の仕事は全てのくびきから解放されたのだよ。Moevotを"闇夜"に戻したことによってね。在るべき姿、在るべき所であるカオティックでボーダーレスな次元に統合されたのだ。Moevotはこの世からは死んだが、長く生き続ける。何も無くともそこには "Chaos" がある。それこそ私の本質であり、私の王国なのだよ。

―――あなたの仕事にどのような欲求があるか?
 カオスだ。それ以外何もない。もう一度言うが、創作とは純粋に人のやることで、それゆえに紛れも無く幻なのだ。しかし破壊、それだけはサタニックでエターナルなのだ。私は創作者ではなくて破壊者だ。私の仕事とはこの世界の未来を消すことだ。それらはカオスの中でこそ永遠の存在になる。

―――"Ritual Music"のような"new musics"についてどう思いますか?
 ブラックメタルトレンドの後の新しいトレンドだ。ブラックメタルは堕ちた。ブラックメタルシーンを操作して、その意味を失わせた偽りの者たちは今度はその新たなトレンドをブラックメタルの欠けた穴埋めに使うだろう。既に敷かれたレールの上ではしゃぎ回っている、みすぼらしくて、小さくて、臭いウジ虫どもだ!不幸なことに我々が手を差し伸ばしたとしても奴らはそのレールから脱線してしまう。

―――今後も"破壊という役割"を追求できますか?
 もちろんだ。ただの人間どもは限界を許容できてしまう。恐らく奴らはスピリチュアルな偏狭さに溺れて死ぬだろう。毎日のように、自分のプロジェクトの限界が遠ざかっていき、燃やされ、破壊されていくのを見ている。私はそのような限界の類を受け入れるために生まれたのではない。それゆえに私は人間性の破壊に確固たる信念を持っているのだ。

―――あなたの流離は終わりを迎えるのですか?
 唯一のこの世界の全ての存在を否定するものとは言うに充分弱く、彼らの流離が終わることを受け入れるための全てのほとんどだ。私の "Darkness" は如何なる限界も知らず、そして私の流離は永遠と邂逅した。その終わりとは人間にのみ課せられたものだ。私は奴らに奴らの財産を許諾する。それは全く羨ましくもない。

―――Moevotはどこで生まれたのでしょうか?
 Moevotはカオスから生まれ、神とその僕の人間に苦しみを与えるために地球に送られた。そしてこの破壊が終わった後、カオスに戻るのだ。


 以上がMoevotのインタビューだ。恐らくこれはVordbによるものだと思うが、もしかしたら一説によるとMoevotに関わったらしいAäkonのものかもしれない。それはさておきMoevotは1994年のデモの後は音源の製作も無く、トレンドに犯されたブラックメタル、もしくはダークアンビエントのシーンを憂いながら、自分たちこそが"本物"であることを返す返すも主張しているように思える。

 そしてVlad Tepesも、Belkertreも、Torgeistも、そしてMoevotも、LLNを形成するバンドのほぼ全てが闇へと還ってしまった―バッタリと活動の形跡が失われたのである。もはやトレンド塗れ、商業主義が色濃くなり、その表現方法としての限界が証明されてしまったブラックメタルに愛想を尽かしたかのように…。

 ただ、Mutiilationを残して。

■ 結び

 今回はVlad Tepes以外のLLNの重要人物としてVordbを挙げ、彼の言説をインタビューを通じて見ていった。その結果としては前回のVlad Tepesのインタビューと同じ思想に基づいていることが伺えた。つまり現在のブラックメタルシーンへの怒りであり、自分たちこそがシーンにトゥルーブラックメタルを示すことができること、そしてそれを示した暁には続いて世の中に音源を出すことなく、姿を消すのだと。

 更にはそのようなやり方でも"救いのない"シーンを憂い、既にトレンドというものがブラックメタルを巣くってしまったため、彼らは活動への意味を意味出せなくなってしまった―そのように見ることもできよう。それが今日に渡り、LLNの音源がほぼブートでしか出回らず、未だにカルトUGブラックメタルとしての神話を構成しているのではないだろうか。

 しかしそんな折、このコラムを書いていて驚きのニュースが飛び込んできた。先日、来日を果たしたCelestiaのリーダーであるNoktu(彼もLLNのマニアなのだが)の運営するDrakkar Prod.から以下の発表があった。

 2013年2月5日 リリース
 ・VLAD TEPES(Fra) "Morte Lune" Official CD/ 12"LP
 ・VLAD TEPES(Fra) "War Funeral March" Official CD/ 12"LP - incl. A5 8 page booklet.
 ・VLAD TEPES/ BELKETRE(Fra) "March to the Black Holocaust" Official Split CD/ Gatefold 2x12"LP


 元々、MutiilationのMeyna'chとも親しく、LLNの音源を当時リリースしたこともあるDrakkar Prod.(Noktu)だが、長い年月を経てこれらブートでしか出回っていない作品について、オフィシャル再発を実現させたというのである。

 このコラムは1月から少しずつ書いていたため「寝耳に水」といったところだが、コラムの趣旨から考えると間逆の姿勢といわざるを得ない。どうやらオフィシャル再発ということでVlad TepesやBelketreのメンバーから同意を得ているのだとは思うが、一体どういう話で再発が実現したのか興味深いし、同時にMutiilationのMeyna'chの存在がもう一度浮かび上がってくる。

 彼がLLNの中でも「浮いた」存在であることはこのコラムの始めで軽く触れたが、LLNの内、唯一存在を残していたMutiilation、そして今でもMeyna'chとして活動する彼がどのようにフレンチブラックに影響を与えたかについて次回のコラムで紹介していくことにする。
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Vérmyapre Kommando : Vérmyapre Kommando (1996) 

フランスのカルト・ブラックメタルバンド、Vérmyapre Kommandoのデモを紹介。
ブラジルのレーベルからLPでブートリリースされた後、
今回紹介するのはCDリリースのものでリリース元が不明瞭。

Vermyapre_Kommando

前の記事に引き続き、今度はVlad Tepesのメンバーのもう一つのバンド。
このバンドでは2つのデモしかリリースしていないが、
もう一つのタイトルに比べてこのアルバムは今でもCDブートでよく出回っている。

Vlad Tepesに比べて非常にスラッシーな楽曲が多く、
フレンチブラックらしくないっちゃらしくない気がする作風。

LLNのブート音源らしく、やっぱり何しろ音質がめちゃくちゃ悪いため、
この楽曲でこの音質だと南米~東南アジアのポンコツスラッシュとためをはる。
しかも非常にカルトな音の使い回しでマニアにはたまらない内容だろう。

Encyclopaedia Metallum - Vérmyapre Kommando
タグ: Vérmyapre_Kommando  France  LLN  1996-2000 
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War Funeral March : Vlad Tepes (2004) 

フランスのカルト・ブラックメタルバンド、Vlad Tepesのデモを紹介。
1994年にFull Moon Productionsからテープリリースされた後、
翌年にEmbassy ProductionsからCDリリースされ、
オーストラリアのTragic Empire Recordsからブートリリースされた。

War_Funeral_March

一つ前の記事で紹介した "La Morte Lune" とは異なり、
ブート対象がCD化されていたからなのか音質的には断然上がり、
ようやくまともな"音質の悪い"プリミティブブラックになったと言える。

Vlad TepesがLLNの内側から外に出た初めての音源だけあって、
フレンチアンダーグラウンドブラックとしてのクオリティは高く、
メランコリックかつノイジーという一見矛盾しそうな二律背反な要素を、
カオスに両立させていて美しくも醜い音源に仕上がっている。

マニアに言わせれば逆に音質が向上しすぎているらしいが、
マニアでない自分にはこちらの方が良作に感じる。
いずれにしても素晴らしいサタニックアートだ。

Encyclopaedia Metallum - Vlad Tepes
タグ: Vlad_Tepes    LLN  France  2001-2005 
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La Morte Lune : Vlad Tepes (2005) 

フランスのカルト・ブラックメタルバンド、Vlad Tepesのデモを紹介。
1997年に"Morte... lune"というタイトルで自主リリースされた後、
オーストラリアのTragic Empire Recordsからこのタイトルでブートリリースされた。

la_morte_lune

現在、当ブログでコラムを連載中のLLNの最重要バンドのデモ音源ブート。
どのくらいTxExRxが刷ったのか知らないが今でも比較的手に入りやすい。
欲しい人は「La Morte Lune Vlad Tepes distro」で検索してみよう。

カセット音源のブートだけあって音質は相当酷い。
結構南米の酷い音源とかも聞いてきたけど輪をかけて酷い。
特にギターが単なるノイズ発生源でジャージャー。

楽曲的にもメランコリックというよりパンキッシュなノリが強く、
後のフレンチブラックに影響を与えた彼らの作品とは一味異なる。
音楽作品としてどうというより資料的価値が高い音源のように感じる。

Encyclopaedia Metallum - Vlad Tepes
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【column】 Les Legions Noires - I 

■ はじめに

 今回のコラムはフランスのUGブラックメタルシーンの側面である Les Legions Noires についてフォーカスしていく。元々、私は元来フレンチブラックにあまり興味を持ったことがなく、手元にある音源すら満足に聞き込めていない。そこでフレンチブラックの原点であるLes Legions Noiresというアンダーグラウンドなブラックメタルの組織について、当時のインタビュー記事から掘り起こしていき、カルトブラックメタルの本質を理解することが当コラムの目的である。

■ Les Legions Noires とは?

france フランスは西部、ブルターニュ半島西端の港湾都市ブレスト。パリからは距離があり、更に言えば民族が異なる。ブルターニュは元々ケルト民族がルーツであり、今でもその名残が多数見られる。例えばケルト語派の言語であるブレイス語は文化的特質を持つものとして近年復活し始めており、それに伴い民間伝承などの活動も行われている。また長らくキリスト教民主主義の地域であったため、カトリックが非常に強い地域でもある。ここが本題、"Les Legions Noires" の舞台である。その地域性を考えると、若者たちが自分たちのルーツと向き合い、そしてキリスト教に対して反感を覚えるという構図が『NSBMとはいったい何か?』で触れたものに類似している。

 そのブレストを中心に、1987年に通称"LLN"は発足した。とはいえノルウェーで起きた、かの有名な"Inner Circle"に影響されて結成したとも言われており、"Black Metal Inner Circle"は90年初頭に発足しているから、80年代後半にBathoryなどの影響を受けて形成されたフランス西部の極小規模なブラックメタルシーンが"Inner Circle"の影響を受けて、"Les Legions Noires"と名乗りだしたのではないかと推測している。実際、LLNのメンバーが初めてのレコーディングを行ったのは1990年初頭である。なお、"Les Legions Noires"は英名では"The Black Legions"という。

black_legion LLNのうち、よく知られているブラックメタルバンドとしてはMutiilation、Vlad Tepes、Belketre、Torgeistなど、そしてダークアンビエントプロジェクトとしてMoevotなど、他にも多くのバンドが存在する。しかしその実、バンドの掛け持ちがいたるところで行われており、構成しているメンバーの人数は非常に少なく、閉ざされた小さなグループであった(この辺りは後述する)。またその特性は活動に関しても同様であり、音源もグループ内でのみ配布する程度に作るに留まり、もしくはせいぜい極少数のディストリビューションしか行っていなかった。これらもまたLLNをカルト・アンダーグラウンドとして神秘化させている一因であろう。現在流通している音源もほとんどがブート音源で、オリジナル音源の希少価値は非常に高い。

 そのような中で公に姿を見せた回数は非常に少ないが、Vlad Tepesのメンバーは何度かファンジンのインタビューに応えている。それらの一部を転載(訳)することで、LLNについてより詳しく見ていこう。なお、今回、紹介する2つのインタビューは別々のzineに掲載されたもので、1つ目のインタビューはFull Moon Production(: FMP)のオーナーのファンジン "Petrified magazine (No.3 1994)" に収録されたものである。これはVlad TepesがFMPからデモ音源をリリースする折に行われたものだ。しかしその後、ブラックメタルに対するスタンスの違いから両者の関係性は破綻している。そして、もう1つのインタビューは"Kill Yourself Zine (#2/1995)"に収録されたもので、こちらはその破綻劇についても触れられている。この二つのインタビューを続けて紹介することで、LLNのブラックメタルに対するスタンスはより鮮明になると考えている。インタビューにおいては一部内容が重複しているが、そのままにしてある。

■ Interview with Vlad Tepes

in Petrified magazine (No.3 1994)
Vlad Tepes c/o WLAD

―――Vlad Tepesについて教えてください。

 私とVorlokはケルト民族系のクランからの"兄弟"で、このバンドも二人でやっている。目的は"世界"を背教に導くことだ。

―――ラフデモの出来は?

 既に何人かには聞かせたが、評判など無用だ。何しろ我々はこのデモを広めるつもりなどない。なぜならば我々はトレンドや金のためにブラックメタルをプレイしているわけではないのだからな。

―――フランスでのブラックメタルシーンについて教えてください。

 トゥルーなブラックメタルバンドといえばMutiilation、Belketre、Vlad Tepes、Torgeistだ。他にDark Occult Project BlackというプロジェクトでMoevot、Satanicum Tenebraeといったバンドがいる。そう、我々こそが "The Black Legion"だ。

―――そのサークルについて教えてください。

 "The Black Legion"とは、キリスト教もしくは宗教そのもの、更には愚民どもを断固拒絶するサークルのメンバーたちのことだ。我々は外部からの影響やデスメタルのようなトレンドからブラックメタルを守るために、そして崇高な暗黒時代と来るべき穢れた聖戦のために戦っているトゥルーなサークルだ。我々は"世界"にThe Dark Warをもたらす。我々は暗黒の"兄弟"であり、偉大なサタンの眺望に辿り付く志を共有できる少人数のメンバーのみで構成されている。

―――あなたは他のトゥルーなバンドとコンタクトをとっていますか?
 "The Black Legion"のバンドは全てトゥルーだ。本当のブラックメタル、本当のブラックアートだ。我々は他のバンドとはほとんど連絡を取らない。それでもメキシコのMasthema Sancia(訳者注: Hiborymのドラマー)、そしてポーランドのGravelandとは連絡を取っている。彼らはトゥルーだ。ノルウェーの連中も凄い。

―――逆にぶっ壊すべきバンドはありますか?
 それは面白い質問だな。トレンドのはびこるBlack/Deathのバンドはそうだろう。

―――フランスではサタニストが引き起こす事件の類は起きていますか?
 教会が燃えることなど起きちゃいない。それをやるには時期尚早なんだ。ノルウェーを見てみろ。やった奴は刑務所行きだ。現に警察は俺たちを監視している。しかし崇高な暗黒時代はもうすぐそこまで来ている。そのとき我々は全ての教会を焼き払い、弱き神を追放する。永遠にだ。

―――アントン・ラヴェイについて思うところはありますか?
 あいつはクソ野郎だ。悪魔教会なんていうクソと一緒に燃やしてやる!あのうじ虫は堕落者に寄生しているだけだ。サタンは教会など持たない。我々がサタンそのものなのだから。

―――あなたから貰った手紙にナチス関連の記号が描かれていることに気付きましたが、あなたはナチですか?もしくは何らかのナチ組織に影響されていたりしますか?
 そうだな…、ヒトラーが誰よりも早くこの腐敗しきった"世界"を浄化する必要性を理解していたことぐらいは知るべきだろう。だが、我々の憎悪は、黒人かどうとかそういう対象にではなく、"人々"全員に向けられていることだけは理解してほしい。ヒトラーはペイガニズムとアーリアン文化を発展させたが、我々はもう一度この"世界"を支配するだろうヴァイキング、ケルト民族、そしてバーバリアンの復活のために戦っている。ゆえに、なぜ私がそのような記号を手紙に書いたかといえば、それがペイガンのシンボルだからであり、私は政治的思想の意味でナチではない。我々はもっとその上にいるのだ。

―――好きなバンドを挙げてください。
 Belketre、Mutiilation、Abigail、Behemoth、Denial of God、Graveland、Torgeist、Vlad Tepes、Alastis、Burzum、Emperor、Hades、Iron Maiden、Possessed、Unholy、Ancient、Carpathian Forest、Enslaved、Ildjarn、Isengard、Rotting Christ、Venom、Bathory(初期)、Master's Hammer、Samerl、Destruction、Gorgoroth、Infernum、the true Mayhem、Satyricon、Sigh、Taranis、Strid、Thou Shalt Sufferなどだな。それから我々のブラックアートプロジェクトであるMoevot、Satanicum Tenebraeも好きだ。

―――あなたたちにとってブラックメタルとは何ですか?
 自然の中でサタンと共に歩む黒き旅路において感じるものを表現する手段だ。サタンとは自然そのものであり、ポジティブなもの、ネガティブなもの、全てを内包している。そして我々自身もまたサタンであり、愚民どもから"地球"を浄化する。我々は死を崇拝し、啓蒙する。それこそがアルマゲドンの到来なのだ。

―――今後の活動においてスタイルを変えるつもりはありますか?
 なぜスタイルを変えなければならないんだ?我々はブラックメタルをプレイしているのであり、それは不変だ。全てのブラックメタルの連中は古き良き頃のBathoryのようなサウンドを志向すべきだ。ノルウェイジャンマフィア(=""Inner Circle"")はこの世界において多くの"罪"を犯した。ユーロニモウスの死と共にMayhemは事実上死んでしまったし、その結果としてブラックメタルが闇に還るのは好ましいことだ。死人に対しては何か言うつもりもないし、Burzumのヴァーグについても何の意見もない。我々は自分自身の意見を持っているし、彼だってそれがあるだろうからな。我々は"Black Legions of Satan"であり、"the immortal warriors of Black imperial blood"であり、キリスト教のうじ虫どもを背教に導くために存在している。そして奴らは"Black Holocaust"に直面するだろう。近いうちにな!


 このインタビュー後、FMPは彼らのデモ "War Funeral March"(カセット)をリリース。カセットは1000本も作られ、販売額も10ドルと強気に設定。そのせいで3年間で売り上げは約280本に留まる有様だった。更にFMPはファンジン上でVlad Tepesのコンタクトアドレスまで掲載してしまい、Vlad Tepesを激怒させてしまった。そのようなやり取りの過程で、Vlad TepesはFMPを「ブラックメタルを商売に使おうとしている」と判断、両者の関係性は決裂した。次に紹介するインタビューはその翌年に出版されたファンジンで行われたものであり、その考えについても書かれている。なお、FMP側もインタビューに応じてそのトラブルについて述べているが、要は商売のためにやっているわけではない、と言っているだけなのでここでは割愛した。


in Kill Yourself Zine #2/1995
copyright 1995 Anus Company. All rights reserved.

―――始めにデビューデモ "War Funeral March" について教えてくれ。
 1994年8月にレコーディングした5曲のデモだ。私が言えるのはそれがブラックメタルであるということだけだ。私はVlad Tepesでブラックメタルをプレイしている。それは永遠に不変だ。デモの反応については私は全く気にしていない。FMPはそのデモテープを売ることついて問題を抱えているようだが、彼はやりたいようにやればいい。

―――正直に言うと、FMPが抱えている問題は当然だよ。だって10ドルなんてデモテープとしては高すぎる!君はこの値段設定についてどう考えているんだ?そもそも、なぜこのレーベルを選んだんだ?利益のためなのか、音楽的な理由か、サタニズムのためなのか・・・
 FMPは我々の1993年のラフ音源を気に入って、我々にカセットテープを要求してきたのさ。彼は我々に声をかけてきた初めての男だよ。しかしながらこのレーベルのブラックメタルにおけるコンセプトは我々のものとは全くかけ離れている。向こうはビッグマーケットに向かっているし、私はそれに嫌悪しているからな!

―――Vlad Tepesや、その他のフランスのブラックメタルバンドがBlack Legionsと呼ばれる組織を形成しているようだが、それについて教えてほしい。その目的は何だ?どのバンドがメンバーなんだ?後は地元警察とのトラブルなどあれば教えてほしい。
 Black Legionsだと?違う。我々は"Black Legion of Satan"であり、"The Immortal Warriors of Black Imperial Blood"だ。
 我々はキリスト教のウジ虫どもを粛清し、彼らを"Black Holocaust"に直面させるのが目的なのだ。そしてそれは"組織"ではない。魂の"サークル"だ。誰も我々をジャッジできない。なぜなら我々は"人道"というものに属していないからだ。我々はそれらを遠ざけているから、彼らからしたら我々が何者か絶対に理解できないし、恐れを抱くだろうな。なぜならば彼らが灰と虚無に還るとき、我々は彼ら自身の死に直面しているからだ。
 属しているバンドはMutiilation、Belketre、Vlad Tepesだ。よく覚えておけ。我々が警察と何かあったとしても我々を止めるものは何もない。奴らには我々を止められはしない。

―――Vlad TepesがImpaled NazareneやSigillum Diaboliなどのバンドメンバーに殺害の脅迫状を送りつけたとか、Osmose Prod.にも脅迫状を送りつけたなんていう噂があるが、それは本当か?
 それは噂などではない。Impaled NazareneとかSigillum Diaboliのようなバンドはサタニストやブラックメタルバンドにクレームしているが、奴らがどんなものかは君も知っているだろう。奴らはサタンを嘲笑しているだけだ。娼婦、ヒッピーと結婚したMika(訳者注: Impaled Nazareneのメンバー)を見てみろ。彼は単なる普通の人間だが、サタニストにクレームしているんだ。他の奴らもグラインドをやっているだけでブラックメタルではない。その代償は支払われなければならないし、復讐されるだろう。奴らは我々の力を知らないのさ。我々のカルトは絶対に破壊されない。ブラックメタルは我々と共に闇に還るだろう。ここにThe Dark Warを宣言する!
 Osmose Prod.はブラックメタルで商売をするという大きな間違いを犯している。いずれにしてもだ、これらの豚どもは決して我々を見ることすら叶わず、ただサタンの存在を感じるだけだろう。決して我々は冗談で脅迫状を送っていない。奴らが私の家に来たり、殺しにくることもできるが、そんなことは逆効果だ。準備万端だからな。

―――次に私が聞きたいのは、他の組織、例えばノルウェーのブラックメタルマフィアについてどう考えているのかということだ。殺し、墓の盗掘など彼らの犯罪についてどう考えているんだ?それからユーロニモウスの殺害についても教えてくれ。
 まず私の知る限り、我々と同じ種のサークルなどこの世界には存在していない。ノルウェーのマフィアは多くの悪行をこの世界にもたらした。不幸なことに今日、彼らが実際にどういった類のものであったのか知られている。私の思う限り、彼らは若かったんだろうな。勿論、例外もあっただろうがそれはとても少ない。
 また、ユーロニモウスの死についてだが、これはMayhemが死んだということだ。それはブラックメタルが闇に還るという意味で好ましい。私はユーロニモウスがサタニストだろうがコミュニストだろうが、はたまたペドフィリアだろうが彼の死について気に止める事などないと言いたい。今、彼の魂は安らかでなければならないし、ゆえに私も彼について何も言うつもりはない。それにヴァーグについても特に意見はない。我々が自分たちの意見をもっているように彼もまたそうだろうからな。

―――今でこそVlad Tepesがトゥルーなブラックメタルだと認識されているが、それ以前に既にサタニストであったと思う。その信条について教えてほしい。また、ラヴェイ・サタニズムについてもコメントしてくれ。
 ブラックメタルはサタニストとしての感情の産物だ。だからブラックメタルは私のサタニストとしての結果そのものなのだ。我々は自分自身で崇拝する"何か"を持っている。"primitive devil worshipping"とはキリスト教から自分たちのルーツを取り戻すことだと考えている。
 私の最終的な目的は"Black Holocaust"だ。キリスト教とは畏服の対象である。"人間"とは矮小で、それはそれら宗教の存在が証明しているんだ。我々はそういった矮小な弱者を破壊しつくす。それが"Black Holocaust"だ!
 ラヴェイのサタニズムは単にクソみたいな人間論だ。金を稼ぐためのな。

―――次に愛と呼ばれる感情について教えてください。あなたは脳なしのクリスチャンどもによって作られた弱い感情だと言っていたよね。
 正確に言えば、全ての人間の"概念"から浄化された真の魂を私は愛している。この真の魂こそが人の生死のコンセプトだということを広めたい。少女が周りから愛される"愛"、これは"兄弟"からも感じた経験があるだろう。しかし不幸なことに、この俗世間ではそのような"愛"は実現し得ないからこそ、ただ"死"のみが在る。私にとって、俗世間的な愛という概念はただ"弱い"ということを意味することでしかないのだ。
 私の両親は"人間"で、彼らは私を育ててくれたが、しかし私は彼らをその実、愛してなどいない。またガールフレンドも作らない。女性が以前持っていた真にピュアな魂は破壊されてしまい、ただ犯され、拷問を受け、殺されるだけになってしまった。それは私を落胆させる。愛と憎悪は表裏一体だ。愛が既に欺瞞しか導けなくなってしまったので、それは憎悪そのものになってしまった。その欺瞞は増殖し続けており、ゆえに憎悪も拡大し続けているのだ。

―――Vlad Tepesもトラディショナルなブラックメタルの姿―コープスペイントや武器などを身に施している。それはなぜなんだ?もっとクールに見せる必要はないのか?
 私が言えるのはコープスペイントが我々の精神を表現するためのものということだ。我々は獣であり、俗世間的な人間像を壊しつくすことを欲している。ただそれだけだ!

―――あなたたちにとって"Money"という言葉の意味は何だい?ブラックメタルバンドが音楽で金を稼ぐことは問題ないと思うか?ブラックメタルバンドはメジャーレーベルと契約するべきなのだろうか?
 金とはまさしく人間の造りし概念だよ。ブラックメタルはサタニストの音楽という本質を考えたら、金稼ぎなど真に言語道断だ。

―――しかしデモ音源が10ドルと高いじゃないか。ほぼ相場の2倍だ。もし君たちが金稼ぎを否定するならなんでこんな商売をしているんだ?そもそもブラックメタルが意味するところは何だ?なぜこういう類の音楽を選んだ?
 我々は本質的にサタニストなのだ。我々は強き存在として自身の芸術を作り出している。"神の"創造物が我々に与えし嫌悪全てによって、我々の芸術が"罪深き"物に変わることは普通だと考えている。その嫌悪という感情について話すと、hate、sorrow、depression…それらは人というウジ虫を壊しつくす!ブラックメタルという音楽はこれらの偉大な芸術の一つだ。ブラックメタルと結合した宗教などない。宗教と結合した音楽などあれば、それは矮小な感情だ。

―――ブラックメタルの産地としてはノルウェー、スウェーデン、フィンランドとあるように思うが、これについてどう思う?またそれらとフランスのシーンは何が違うんだろうか。
 我々とその三つに共通点などない!さらにいえば、ノルウェーのバンドは偉大な芸術をいくつか作り上げたが、不幸なことに彼ら自身が信じているほどの高みには位置していない。スウェーデンはノルウェーの単なるフォロワーに過ぎないだろう。サタニストはいるだろうが、とても少ないだろうな。しかし申し訳ないが、フィンランドにはトゥルーなブラックメタルなど一つも存在していない。実際、気にも止めたことがないし、そもそもそれらがどんなものすら知らない。

―――フィンランドにトゥルーなブラックメタルバンドがいないだって?私にはこの"トゥルー"の定義がわからないが、音楽的にはDarkwoods My Betrorhed、Nattvindens Gratt、そしてAzazelのようなバンドはチェックすべきだと思うが。まあ、それはともかくとして、次はあなた方の作詞について聞きたい。作詞にはどのくらい気をつかっているんだ?そしてどこから影響を受けているんだ?選んだ3曲の作詞のコンセプトを聞かせてくれ。
 トランシルヴァニア、ヴァンパイア、城のある闇深き森といったクラシックなテーマを通じて、我々の目的に関することを描いている。クラシックだがダークだ。詳しくは読み解いて自分自身でイメージしてみてほしいが、その3曲についてシンプルに語ろう。

"Under the Carpathian Toke": 我々が邪悪であり、自然であり、サタンであり、世界を支配していること
"In Holocaust to Natural Darkness": サタンに血をささげるための我々の自殺について
"Massacre Song From The Devastated Land": この世界を混乱に導いたキリスト教による人間性の破壊について

―――君は世界情勢を気にしているかい?公害とか人口爆発、戦争、暴力、疫病の広がり…
 世界は堕落している。"Black Holocaust"は近い。私はウジ虫ども全てが悪戯に地球を守ろうとしているのを目の当たりにしている。愚か者たちだ。既に世界は堕落しているし、終わりは近い。それは素晴らしいことだ。

―――Vlad Tepesはどういった相手に向けて音楽を作っているのか?キッズがレコードを買っているとしたら?ブラックメタルはメインストリームに広がるべきか?
 我々はトゥルーなブラックメタルが死んでないことを示すためにデモを出した。その次としては、我々がどのようなものかを示すための作品をリリースするつもりだ。多くの人々は自分自身が何者なのか自覚していない。しかし彼らはそのとき理解するだろう。偽物、トレンドという俗物として自覚をな!
 その時、トゥルーブラックメタルは闇に還るだろう。我々は自分たちのためにしか音楽はやらないし、人々には誰にも聞けなくする。ブラックメタルは死ぬべきなのだよ!

―――ライブの予定は?
 ブラックメタルはライブなどやらない。我々と彼らウジ虫どもをつなぐコネクションなど存在しない。能無しのメタルオーディエンスの前で決してライブは今後もやらないだろう。我々は王なのだ。


lln これがVlad Tepesの残したインタビューである。他にもごく一部、インタビューとして彼らの意見が述べられたものがあるが、それはほぼ今回の内容のトレースである。以上の内容を見ると、彼らのもっとも目立つ意見は「ブラックメタルはサタニストの産物」「ブラックメタルは闇に還るべき」というものである。特に前者の発言は今までのブラックメタルバンドのインタビュー記事でもよく目にするものであるが、ではサタニストとは何なのだろうか。単なる「幼稚」で「低俗」な悪魔主義と彼らを分かつ思考とは何なのだろうか。

 そしてなぜ「ブラックメタルは闇に還るべき」=「閉じられたシーンに秘めるべき」なのだろうか?この辺りに日本のブラックメタルシーンの一部に存在する「神秘」を「売り物」にしたバンドとの対比も見えてきそうだ。

■ 考察

 音楽とは『音のもつ様々な性質を利用して感情や思想を表現したもの』(Wikipediaより)という。

 既に当ブログではBeheritのコラムを通じて、ブラックメタルに根ざしたサタニズムが必ずしも「単なる幼稚な"悪魔主義"」とは限らず、バンドや個人によって程度の違いこそあれ個人主義に基づく哲学思想がベースになっていることを知った。更にNSBMのコラムを通じて、そのような個人主義をベースにして自分たちのルーツを探求していくようなペイガニズム思想に向かうことも知ったし、同時に様々な内的環境から"レイシズム"に陥ること、そしてそれもまたブラックメタルの一面であることが解った。

 今回のVlad Tepesのインタビューを通じて、"LLN"というアンダーグラウンドなブラックメタルサークルがどういったものを表現しているのかについて考えてみると、このようなブラックメタルを通じた哲学思想に基づく表現活動とは、"サタン"というシンボルを掲げながら、ミサントロピックな表現によって人間性の徹底的な破壊を行い、勿論そこには金銭といった人間の作った概念を全て否定することで、そこに彼らが求める「自分たちは何者なのか」というルーツを追い求めていくというものであろう。

 インタビューを見ている限り、彼らに大きな"知性"を感じる訳ではなく、その哲学思想というものが成熟しているとも思えない。しかしそれ故に"プリミティブ"であり、まるでそれは1980年代前半に起きた真のハードコアパンクスのような精神にも見える。そして、そのような初期衝動がサウンドに反映して現れているのであれば、そこに楽曲そのものだけでなく、音質(録音)、演奏スタイル、もしくは歌詞など全てに意味が現れてくるだろうし、そして「単なる音の配列のみでしかブラックメタルを語ることが出来ない」聞き方からの脱却が図れるだろう。何がブラックメタルをブラックメタルたらしめるのか各々自身の答えが得られるはずだ。

 もっとも、はっきり言って凡そのブラックメタルバンドは『「表現したいもの」を音で表現する』というアーティストとしての本分より、むしろ『自分たちが感化された音そのものに対する表現』として音源を作っている場合がほとんどだろうし、そのような活動もあってしかるべきだ。また、そのようなものに対して今回のような考察を行うことは、「簡単なことを難しく考える」という愚かな行為であろう。

 しかし、シーンの成熟という観点においては、当初シーンが保有していた思想や哲学、姿勢が、まるで「伝言ゲーム」のように希釈化されていき、次第には完全に通俗化してしまうことを危惧すべきだ。アンダーグラウンドから這い出たものが、オーバーグラウンドにおいて性質を変えて、本質を失ってしまったらそれは同じものであると言えるだろうか。

 これを見るに音楽と絵画は等価である。テーマにそって描かれたものを我々が見るときに、その"色"単体の好みでもってして、その絵画の評価を下したらどうだろう。もちろん色や構図に最も重要なプロットが秘められた絵画も存在する。要はそれが何であるか?ということではないだろうか。

 またLLNの保有していた『神秘』とは、インタビューからも読み取れる通り、「主張をプロパガンダするつもりはなく、同じ思想を持つ【同志】の中で共有することを求めていた」からであり、そもそも「広く聞かれる必要もなかった」ためであろう。その【同志】の探究か、或いは「ブラックメタルをポピュラーにする愚かな人々」を陥れて、もう一度ブラックメタルをマイノリティの中で共有するために、そのような形をとったことが伺えるし、それは今でもブート音源がなんとか流通する程度になっているという現状からも解る。LLNの中でも有名なバンドを除くと、音源を手に入れることは極めて困難である。しかしその状態こそ彼らのブラックメタルが「闇に還った」ことの証明でもある。それでは日本のブラックメタルシーンにおいても、明らかに"LLN"の影響を受け、その『神秘性』をも踏襲したバンドがいくつかあった。では、それは果たしてどうだろうか?

 ・ 今、あなたが見ている2つ以上のブラックメタルバンドは果たして "同じ" ものか?
 ・ 自分が "何を" 聞いているか解っているか?
 ・ 表面のプロットのみを搾取して「理解した」気分になっていないだろうか?


 これらは全て自戒の言葉であり、リスナーへの言葉であり、そしてバンドへの言葉でもある。

■ 終わりに

 当初の"LLN"についての探求から、随分遠いところまで脱線してしまった感は否めないが、次回は路線を元に戻し、"LLN"の代表的な構成の紹介、そしてその構成から見出せるMutiilationの特異性、さらにMutiilationと現在のフレンチブラックメタルシーンとの繋ぎ目を見出し、現代においてどのようなバンドに"LLN"の黒き旅路が継承されているのかについて紹介していくことにする。

 非常に1ページが長くなってしまって申し訳ございません。後日、ページを分ける可能性があります。
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