Interview with Ryo from Evil 


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 今回は日本のブラック/スラッシュメタルバンド、EvilのリーダーであるRyo氏にインタビューさせていただいた。Evilはメンバー全員が平成生まれの若手ブラックスラッシュメタルバンドだが、若さを感じさせないツボを押さえたオールドスクールなサウンドで多くの人の心を捉えている。それではさっそくご覧いただこう。



―Evilについて自己紹介してください。

 2011年、都内でGt/Vo-Ryo、Gt-Masaharu、Ba-Kengo、Dr-Mizukiの四人で結成し、翌2012年に13曲入りの1st demoを無料配布。2013年に14曲入りの2nd demoを自主制作でリリース、昨年はLurking FearとのSplitをObliteration Recordsからリリースしました。

 メンバーは中学の同級生で、もう十年目の付き合いになります。大学に入学した2011年春にMasaharuにスラッシュメタルバンドをやらないかと誘われて、結成しました。最初期はMetallicaの1st路線のスラッシュメタルをやろうかって話で、全部クリーントーンで歌っていたのですが、ある日スタジオでダミ声を出してから今のような路線に変わったと記憶してます。

 ちなみに一番最初に出来た曲は”断食”で、その次に”八つ裂き刑”、”火炙り”だったと思います。

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―ストレートなバンド名ですが、何か由来などはありますか。

 特に理由はありませんが、バンド名を決めるときに自分が「Evilはどうか?」と言ったところ、覚えやすくていいね、って感じで決まった覚えがあります。

 当時は同じ名前のバンドがいるってことは全く考えていなかったですね…。後々、あー調べたらたくさんいるじゃん…みたいな。本当に何も考えていなかったです。

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―まず2012年の"1st Demo"について振り返っていただけますか。

 内容は、Evilの音源の中で一番熱い出来だと今でも思っています。前半のライブトラックは初めてライブハウスでライブした時のもので、後半のものはスタジオでドラムを録音し、その後ギターやボーカルを家で重ねました。今では後半の曲は”卒塔婆の剣”くらいしかやらないですね。

―内容の素晴らしさもさることながら、無料配布の潔さに驚きました。

 まずはバンド名を広めることが第一優先事項だと考えていたので、あのように大量の曲を入れて無料配布にしました。

 今って何か付加価値がないと手に取ってもらえないじゃないですか…。それに無名のバンドのデモをお金出して買おうなんて、自分なら思いません。だからあのような形にしました。

―続いて"2nd demo"の方ですが、なぜあれをデモで出したのでしょうか。ボリュームといい、作りといい、もはやフルレングスとして出してもよかったのでは?1000枚プレスもほとんど捌けてしまったようで凄い勢いですね。

 フルレングスで出すほどバンドとして完成していませんし、デモとして発表すれば、後で曲の変更も加えられると思ってデモとしてリリースしました。

 プレスにしたのは、高級感を出すため、ですかね。内容はチープですが…。ちょっとやりすぎた(音をチープにしすぎた)かな、と反省していて(笑)、出来ることならリマスタリングしたいですね。

 1st demoも2nd demoも「曲がある程度できたから作ろう」と衝動的に作ったものなので、音も曲もかなり初期衝動にあふれていると感じます…。ちなみに2nd demoはBathoryの1stの音を意識して作りました。Bathoryの1stのギターの音が最高に好きなんですよね。ラジオから出たような音で、聴いていてとても心地よいです。そのような音を目指しました。

―"2nd demo"のジャケットにはSodomのオマージュがあったり、Lurking Fearとのスプリットでは実際にカバーもプレイしていましたが、やはりSodomなどのオールドスクールスラッシュ/プレブラックメタルの影響が大きいのでしょうか。

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 そうですね、まあ、自分が初期Sodom大好きなのもありまして…あのジャケットを作りました。

 オールドスクールスラッシュ大好きです。初期衝動に塗れている音って、何度聴いても新鮮にかっこいいなって思えるんですよね。例えばSarcofagoとかは聴くたびに「あ、こここうやって弾いてたんだ!こういうめちゃくちゃな展開もあるのか…!!」と新鮮な感動を覚えます。そういった未完成なものに自分は強く惹かれるんですよ。

―強いて言えば"1st demo"の方は若干、ジャパコア的な雰囲気もあり、"2nd demo"の方はむしろSabbat(Jap)の影響も感じましたがいかがでしょう。バンドのバックグラウンドなどがあれば詳しく教えてください。

 ジャパコアの影響はほとんど受けていないですね。当時は狂ったように初期Sodomを聴いてましたし。(まぁ今も毎日のように聴いていますが…笑)

 あくまで自分たちのルーツは初期Sodom、初期Bathory、初期Sepultura、Sarcofago、Hellhammerです。日本語詞がジャパコアの影響感じさせるのでしょうか。

―ちなみに1st demoや2nd demoに対する海外からの反響はありましたでしょうか?

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 1st demoはちらほら海外からの反響はありました。テープでリリースしたいってレーベルもありましたが、話はまとまっておらず、出すのかは不明です。出来ればレコードで出したいところですが…。

 2nd demoはほとんど日本での流通しかしていないので、あまり反響はありませんでしたね。しかし、日本に観光に来たタイ人が偶然タワーレコードで2nd demoを購入して気に入ってくれて、メールを頂きました。その繋がりで、1st demoと2nd demoのカップリングテープのリリースをすることにもなりましたね。
(編注:タイのレーベル、Witchhammer Prod.よりlim.50でリリースされた。既にレーベルソールドアウト済。)

 最近海外に50枚ほど流したので、反響があるといいのですが…!

―soundcloudにアップされた新曲の"死に晒せ"は完全にオッサンを殺害しにかかっている最高にオールドスクールな名曲ですね。

 ありがとうございます!あの曲、ちょっとBathoryのReaperっぽくないですか?
ギターを弾いてたらメインのリフが出来て、「あ、サビは死に晒せ!」にしよう、みたいな感じですぐ完成しました。個人的にもかなりよくできたと気に入っています。

視聴 → 死に晒せ by Eviljapan - SoundCloud

―日本語の歌詞であることのこだわりは?

 日本語で歌うバンドって意外と多いと思うのですが、自分たちみたいなBlack/Thrashを日本語で歌っているバンドって、今いないですよね。そこが個性的で面白いと思っています。いまのところ英語詞にする予定は無いです。

 サビで曲名を叫ぶってのはありがちですが、日本語でやったバンドっているんでしょうかね…?

―ハードコアなら沢山思いつきますが、メタルは日本語歌詞を使わないバンドがほとんどですね。

 そうですね、ハードコアならば結構聞きますね。自分たちに影響を受けて日本語歌詩のブラックスラッシュメタルバンドとか出てくれると嬉しいのですが…そういう存在になりたいです。

―歌詞といえば仏教の内容があったり、もしくはライブなどでも卒塔婆をモチーフにしたりしていますね。

 曲と曲名を作るのは主に自分(Ryo)で、歌詞はMasaharuにまかせているんですよね。自分が書いた曲もありますが。Masaharuが大学で仏教系の思想を学んでいたということもあって、仏教色が強くなりましたね。

 海外のブラックメタルはアンチクライストなら、じゃあ日本だったら仏教だろ!って気持ちもあります。そういう世界観も気に入っています。今までにはなかったんじゃないかなって思います。

―仏教観念を持ち込んだバンドといえばハードコアなら思いつきますが、このあたりのアプローチの仕方がジャパコアっぽさを想起させるのかもしれませんね。

 なるほど…そういったハードコアバンドは知らなかったです。意図せずにそういったジャパコア感が出たのですかね。

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―楽曲の作成はどのようにして行っていますか?

 主に自分(Ryo)が曲のプロトタイプを打ち込んで、曲名と一緒にMasaharuに伝えます。そしてMasaharuが歌詞を書いて、自分が歌いやすいように変える部分は変えて、スタジオで合わせて細かい所を詰めていきます。

―そろそろフルアルバムへの待望の声も大きくなってきましたが、どのような作品になりそうですか?

 そうですかね?もう若干飽きられている感はありますが…。

 これまでで一番いい音にしたいですね。いい音っていうのは決して音質がいいだけの音ではなくて、Slayerの1stとか、Whiplashの1stとか、ああいった分かりやすい音にしたいです。今までの作品はどれも音が気に入っていないので、今回はこだわりたいです。

 頭の中ではだいたいもう構成は固まっています。新曲も”死に晒せ”含めて4曲くらい入れようと考えています。

 Evilの作品のなかで最も邪悪で、世界中に衝撃が走るようなアルバムにしたいです。

―世界中に衝撃とは素晴らしい意気込みですね。世界となると単に国内流通のCDリリースだけでなくて、デジタルリリースか、もしくはアナログリリースも考えてらっしゃいますか?

 個人的にアナログリリースはとてもしたいのですが、なかなかレーベルが見つからないので、まずはCDでリリースします。そのあとアナログ再発…となるといいのですが!

―さて話は変わって先日のImpurity Japan Tourへの参加はいかがでしたか。

 関西初遠征でしたが、18切符で移動して、2泊で4000円の地獄の入口のようなホテルに泊まったりして、非常に楽しめました。

 Impurityも皆さんいい人たちで、一緒に食事した時はChakalのメンバーとは全員友達だとか、どんどん凄い話が出てきましたね…。Impurityのライブはもう最高でした。コグメロサウンドをこんなに近くで体験できるなんて、本当に幸せでした。興奮しすぎてあんまり覚えてません!笑

―はじめての大阪でのライブはいかがでしたか?

 まず東京と違って、大阪の人たちはライブが終わったらすぐ帰るな~、と思いました(笑)。ライブの方は、どうだったでしょうか、、、もう満身創痍で、全然お客さんの反応とか見ている余裕なかったです。


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―今回は自分の身の周りでもEvil目当てという人が多かったですよ。幕が開いて卒塔婆が並んでいた時の衝撃もすごかったですね。

 あの日は幕があって助かりました。普段はないライブハウスがほとんどなので、卒塔婆を一生懸命立てるメンバーの姿も見られてしまうという…笑

 あの日はオブリテのナルトシさんが立てるのを手伝ってくれたのもあって、いつもよりいいステージになりました。ナルトシさんには本当に感謝してます。

―またぜひ関西に来てくださいね。

 しばらくは忙しいですが、必ずまたいきたいです!

―話は変わって、定番の質問ですがAll-Time-Best 10アルバムを教えてください。

 今までこういった質問はされたこと無いので結構難しいですね…とりあえずぱっと思いつくのはこんな感じです。これらのアルバムは死ぬほど聴き込みました。まだまだ聴きこみが足りないですが…。

Sodom – Obsessed By Cruelty
Sarcofago – I.N.R.I.
Whiplash – Power And Pain
Slayer – Show No Mercy
Hellhammer – Demon Entrails
Bathory – Bathory
Black Sabbath – Paranoid
Metallica – Kill em All
Sepultura – Morbid Visions
Destruction – Sentence of Death

―さすが、すべてオールドスクールですね。逆に、最近注目している/好んでいるバンドなどはありますか?

 そうですね、最近聴いてよかったアルバムは

Ravencult - Morbid Blood
 ギリシャのブラックスラッシュメタルバンド。とにかく完成度が高く、このアルバムはしばらくの間一日中毎日聴いていたくらいハマりました。
ドタバタのブラックスラッシュかと思いきや、展開が非常に巧妙で、どの曲も外れがないです。とにかくドラムが最高です。ジャケットもChris Moyenが描いてて、これも最高です。是非ともアナログで購入していただきたい一枚ですね。

Diabolic Night - Sepultural Magic
 ドイツの一人ブラックスラッシュメタルバンドの1st EPです。これは若干ポンコツ感ありますが、声がとにかく好きです。曲の展開はどれもサビでブラストからスラッシュビートになる といったような、似たようなものばかりですが、ギターリフがかっこいいので全く問題ないです。デストラクションとソドムを彷彿とさせます。

 最近ハマったのはこの二枚くらいですね。声が良くないと好きになれないので、なかなかドハマりするバンドが見つかりません。

―今後の活動について教えてください。

 とりあえずしばらくは1stアルバム制作に力を注ぎたいと思っています。その後はどうなるかは分かりませんが、海外でライブを行いたいですね。まぁまずはアルバム制作ですね。期待にこたえられるよう頑張ります。

―ありがとうございました。1stアルバム、期待しております!



 以上、EvilのRyo氏のインタビューである。Impurityの関西公演を見に行った時の縁が巡り巡ってこのようなインタビューを行うことができた。お忙しい中の対応、真に感謝いたします。おかげで面白い話をお伺いすることができたのではなかろうか。

 インタビューを通して、私の感想だが、「そういえば自分が好きなバンドの音源も、そのバンドが『若手』のときの音源が多いなあ」ということに気付かされた。後々、レジェンドになっていたバンドももちろん『若手』という時代があって、その衝動を体現できているバンドに魅力を感じたものだ。

 その意味でEvilはそれをしっかり体現しているバンドであると思うし、今後、その『若手』という枠を取っ払ったときにどういった姿になっていくのかが非常に楽しみである。さらに言えば自分のような頭の中がオールドスクールなオッサンをいい意味で裏切っていって欲しいと思う。
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Interview with Yuga from Ampulheta 

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 今回は日本のブラックメタルバンド、AmpulhetaのメンバーであるYuga氏にインタビューさせていただいた。今年の2月に自主リリースされた2ndデモに感銘を受けて是非、お話をお伺いしたいとお願いして、この度実現した次第である。それでは早速ご覧頂こう。



―Ampulhetaについて自己紹介をお願いします。

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 Dr.&Vo.のYuga(写真右)、Gu.&Ba.のSoma(写真左)の二人構成です。Somaとは学生時代の2006年から一緒に音楽をやってきた仲です。

 私自身はAmpulhetaを始める前に、2007年にApocalyptic Slaveというバンドにドラムとして加入したことがブラックメタルバンドを始めたきっかけです。Ampulhetaは私が2010年にソロで始めたものでした。しかし、曲作りをして、歌ったりドラムを叩くことこそ出来たのですが、やはり聴ける形にするにはギターがないと難しいなと感じてしまったのですが、私はギターが弾けないので、長く一緒にやってきたSomaなら、イメージやぼんやりしたものもうまく共有できるという信頼感があって、そこでサポートとして加入してもらい、後に正式にメンバーとなって現在のデュオ構成となりました。

―バンド名の由来は?

 "Ampulheta"とは、ポルトガル語で砂時計という意味です。砂時計というバンド名にするということはずっと前から決めていました。なぜポルトガル語にしたかといえば、それが一語だったからです。

 始めに自分が曲を書く上でのコンセプトの一つに、「時間」というテーマがあって…流れていくその"時間"を砂時計の"砂"に置き換えて考えてみようというイメージがぼんやりとあったことがきっかけです。

―バンドサウンドは明らかにフレンチブラックの影響を強く受けているように感じます。このあたりのバックグラウンドについて教えてください。

  私が曲を書く大きなきっかけになった曲が、Mortiferaの1stにある"Le Revenant"でした。Apocalyptic Slaveを辞めた後、バンドをやることに挫折して、ブラックメタルを全く聴かなくなった期間があったのですが、その後あるきっかけでフレンチブラックを聴いたところ、今までのイメージが全部ガラッと変わって。その中でも特に"Le Revenant"については、叙情的で美しく、儚く脆そうなイメージを感じて、まさに心を持って行かれていました。フレンチブラック全体に言えるかはわからないのですが、これが大きいと思います。

―"Le Revenant"はNeige(現Alcest)の作曲だったと記憶していますが、現在のAlcestのような方向性には関心がありますか?

  Alcestはリスナーとして好きなのですが、あくまでも影響を受けたのはMortiferaの1stのスタイルなので、バンドとして関心があるかというものであれば少し違いますね。

―楽曲の作成はどのようにして行っていますか?

 私たちは2人同時に作曲作業をすることはほぼなくて、各々でメロディやリフを持ってきて、お互いの担当パートであるその部分を詰めて行く作業をしていますね。

 Ampulhetaに関しては、曲の8割を自分が作曲をしていますが、前述の通りギターが弾けないので、キーボードでリフになるメロディを作りながら楽譜に起こし、それをSomaに渡して詰めて行くという形 で作曲をしています。

―それではまず2011年にZDRからリリースされた1stデモ"Neblina"を振り返ってください。個人的にはLLN系サウンドとMortiferaの1stの作風をミックスしたように感じましたが、それゆえに焦点がぼやけてしまったと感じました。

 本当に、仰る通りです。まさに自分の実力のなさだと思うのですが…。前述したように、Mortiferaの1stからかなり影響を受けていましたし、かつ、LLN系サウンドを混ぜたような音作りにして、そこで削がれた部分があったために、伝えたいことまでもぼやけてしまったように感じます。

―それでは今年の2月に自主リリースされた2ndデモ"Disturbing"に関してもお願いします。

 1stデモの音質や、全体通して聴いたときの質感から、今表現したい部分を明 確にするために色々なものを再構築する、というイメージで制作しました。1stデモに収録されている"Disturbing"を再録し、変化を明確化しようという試みも含んでいます。3曲目のComaは、結成初期からあったインスト曲を改めてレコーディングしました。

―国内、もしくは国外からの反響などはいかがでしたか?

  国内では「前作よりもとても良くなった」「こちらの方が好み」と言って下さる方が多かったです。国外からも、少なからずメッセージを頂いたり、ノルウェーの方から全文手書きのオールドイングリッシュ書体と、日本語で書かれたメッセージをスキャンしてメッセージを送ってきて下さった方がいらっしゃったりして、とても嬉しかったです。国外へトレードで送らせて頂いた分はありま すが、前作よりも流通量は少ないので、1st Fullを期待して下さる声を頂く機会も多いです。

―私は特に#2"Spica"に非常に感銘を受けました。従来のフレンチフォロワーからAmpulhetaとしてのオリジナリティを大きく出すことに成功できた曲ではないかと思っています。的外れかもしれませんが、女性としてのたおやかな力強さを感じる楽曲でした。何か意識されたことなどはありますか?

  "たおやか"と言ってくださるととても嬉しいです…。いつもそうなのですが、曲を作るそのメロディのイメージ・感覚を言葉にするのであれば「ノスタルジー」に近いものなのですが、それが色濃く出たような気がします。

―"Spica"の歌詞はどのような内容ですか?

 大雑把に言うと、目の前で大切な人を失い、そのトラウマに取り憑かれて狂った 人について歌っています。

―今後、ブックレットに歌詞の掲載など行う可能性はありますか?

 歌詞の掲載は、ちょっとわからないです…。ただ、準備しているフルアルバムについてはその曲のイメージや歌詞の一部の言葉を連ねてみようかなと考えています。

―この2ndデモにおいてはブラックメタル以外のバックグラウンドも様々あるのではないかと思いましたが、他ジャンルからの影響などそのあたりはいかがですか?

 普段、ブラックメタルって聴くには聴くのですが、メインでは聴いてはいないんですよね。すごくよく聴く音楽って、ニューウェイヴとかポジティヴパンクだったりします。あとは、もう15年くらいずっと聴いているヴィジュアル系…MALICE MIZERとか。最近はメロディ重視の楽曲…ボーカルのメロディが良いものだったり、クラシックでもメインの楽器のメロディが良い物だったり、そうやって聴いているかもしれません。

 でも曲作りで参考にしているバンドとかジャンルというのはなくて、逆に視覚的に感じたものだったり、その時思った事・衝動とか、そういう部分で浮かんだ気持ちをメロディにするように、極力しています。

 とは言いつつ、潜在的になにか影響を受けているものはあるとは思うのですが、自分でも明確にはわかっていないです。

―女性ドラムヴォーカルによるブラックメタルバンドというものは前例がなく非常にユニークだと思います。今までのバンドではドラム専任だったのに対して、このバンドではヴォ ーカルもやっている理由はありますか?

 本来、ライブをするという前提がなかったので、2人構成という形になったのですが、最初にゼロ次元氏からBlack Sacrificeへライブのお誘いを頂いたとき、ドラムボーカルという考えは毛頭ありませんでした。「ドラムかボーカルかどちらかを優先するとしたらボーカルだ」という決断をして、ドラムをサポートで入れて、私がベースボーカルをやるという構成でやらせていただいていましたし…。その後、諸事情でサポートして頂いた方に頼めなくなってしまって、ライブができない事に悩んでいました。

 ある時Somaと二人でスタジオに入った時に「ドラムボーカルでやってみよう」と合わせてみたら、案外やれるのでは…となって。その後何度か練習して感覚を掴んだとき、「これだ、ここまでギリギリじゃなくちゃ意味が無いや」って思ったんです。

 でも実際、叩きながら叫ぶわけですから、とてもキツイです 、正直。ライブの時の体力とか、色々ギリギリなのですが、その時に出てくる殺気とか自分の限界を、文字通り全身全霊で表現することが、ライブでの私の表現方法なんじゃないかなと思っています。

 勿論視覚的にも珍しいとは思いますし、その上でもっと精度を上げられたらな、と思っています。

―ミュージシャンとして尊敬している人物はいますか?

 まず単純に大好きで、ドラマーとして尊敬している人は、タリム、フロスト。ドラムを始めた時から、この二人は揺らぎません。ただ、今のスタイルに大きく影響を受けた人・イメージしている人はドラマーではいなくて、ボーカルではとにかくDEADになりたいとずっと思っています。

―先ほど仰っていた「時間」「ノスタルジー 」というテーマを、なぜブラックメタルというスタイルで表現しているのですか?

 ブラックメタルで表現しようとしたきっかけ・バンドを立ち上げる上での基礎となったのは、主に思春期の頃までの家庭環境と宗教が背景にあります。自分にとってそれは暗く辛く、重い血の塊みたいなものが心の奥にあって、これは消えることはありませんし、今でも引き摺っているところがあります。

 血の塊のようなその時間・記憶、傷、葛藤などを含みつつ、自分の手段・基盤となるノスタルジーな感覚(感傷的に近いのかも知れません)で表現をしたいと思いました。その上で自分にとって昇華できるジャンルはブラックメタルであると考えました。

 ただ、今はそうであっても、今後一番適切と思うもの が見つかればブラックメタルにこだわる必要はないとも思っています。

―定番の質問ですがAll-Time-Best 10アルバムを教えてください。

・ Туман (Tuman) - Transilvanian Dreams
・ Mortifera - Vastiia Tenebrd Mortifera
・ Burzum - Filosofem
・ Dissection - The Somberlain
・ Cataplexy - Lunar Eclipse,Chaos To The Ruin
・ Hector Zazou - Lights In The Dark
・ David Sylvian - Brilliant Trees, Gone to Earth
・ The Cure - Disintegration
・ MALICE MIZER - 薔薇の聖堂

 自分にとって音楽のターニングポイントになったものを主にあげてみました。

―先ほど話に出た1stフルアルバムですが、今年中に完成できそうですか?

 はい!現在準備中で、ライブをやりつつも、少しずつ詰めて行っているところです。最低でも年内に出したいです。

―どのような作品になりそうですか?

 1stデモの楽曲も含みつつ、2ndデモの雰囲気を持った…、言葉で表現するのがまた難しいのですが、更にノスタルジックで烈しいイメージの作品に仕上げられたら、と思っています。

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―ライブ活動も精力的に行われていますね。特に今年はBlack SacrificeのSatanic Warmaster来日の11/1(土)東京公演でもプレイされますが、意気込みや注目してほしいところなどはありますか?同日は国内バンドのメンツも目白押しで素晴らしい日になりそうですね。

 はい、本当に楽しみです。次回は1st Fullに収録予定の楽曲も披露する予定でいるので、そこを注目していただきたいです。遂にSatanic Warmasterの来日、ということで楽しみにしていたのですが、共演させていただくということが本当に光栄で。海外の方からも、「本当に羨ましい!」とか、「素晴らしいね!がんばってね!」という声を頂いて、大舞台だなあと今から緊張しているのですが…。日本のバンドの一つとして出演させていただくのですから、自分達のステージを精一杯こなして、ギリギリまで表現する、観て下さっているお客さんにできる限り自分達の音楽を伝える、それだけを意識してやりたいと思います。

―他にライブ活動のご予定は?

 (9月以降では)11/15(土)に西横浜El Puenteでのイベントに参加します。

―それでは最後にファンに向けてのメッセージをお願いします。

 1st Full頑張ります!




 以上、AmpulhetaのYuga氏のインタビューである。個人的に2ndデモに感銘を受けて、その作品の本質を知りたいという動機から今回のインタビューに至ったわけではあるが、作品の内容に留まらず様々な話をお伺いできた。まだ良い意味で若いバンドであり、2作品を経ての変化も大きく体感できる中で今後の活躍が大きく期待されるし、とりあえず11月のSatanic Warmaster来日を迎え撃つという大舞台において、「これがAmpulhetaだ!」という気勢を存分に出していただけたらと思うし、まこと勝手ながら1stフルアルバムリリース後にまたこのようなインタビューを行えたらと思っている。

 なお、当インタビュー公開日が未定だったため言及されていないが、2014/8/30(sat)@西横浜El Puenteのイベント "funeral of cold and beautiful death.8" にも参加されるとのこと(無番地.com)。日取りもよく、Ampulheta以外も素晴らしいバンドが多数参加する、夏の最後を黒く染めるには最適のイベントであり、今回のインタビューをきっかけにAmpulhetaに興味を持った方も含めて、11月のブラサク前にぜひ足を運んでみることをお勧めする。

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Interview with Zero Dimensional Records 

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 今回、当ブログ初の試みとして、日本にある数少ないブラックメタルのディストロ兼レーベルである Zero Dimensional Records(以下、ZDR) のオーナー、大石さんへのインタビューを行った。ZDRは2009年に設立され、今年で5年目を迎えており、世界中のUGレーベルを見渡しても、生まれては消えを繰り返す新陳代謝の高い界隈の中で、ブラックメタルシーンへの継続したサポートを行っている優良レーベルの一つである。今回のインタビューはそのようなUGシーンを理解し、その敷居を低くすることを目的としている。



―ZDRの自己紹介と、設立に至る経緯を教えてください。

 Zero Dimensional Recordsです。ゼロ次元で通っていますが、先代にアートワーク集団が居ること(※1)に後で気づきました。

 設立に至る経緯は、ふとレーベルなどでオーダーしている時、1000枚、666枚プレスなどが売り切れている中で「作ったCD全部売っちゃえば単純計算1000枚×1500円で150万円。めちゃくちゃ儲かるやんけ!」と思ったことがきっかけです。とりあえずディストロから始めようと思い、適当に名前付けて(Zero Dimensional Recordsも仮名でしたが、ずるずる今に至ります。なので、特に意味がない名前です)作ったのがZDRというディストロです。

 後日談なのですが、結果は惨敗。特に宣伝もしていない島国のレーベルがポンとリリースしたところでまったく売れるはずもなく、借金して作ったCDは初動3枚とかでした。入荷してもひたすらたまる在庫、仕事の給料を突っ込んでは入荷し、売れない、溜まるを繰り返し、給料日に入荷物に給料を全部突っ込んで、CD1枚売れないと飯が食えない状態が続きました。体重も30kg減りました。

 因みに去年くらいからやっと黒字っぽい兆しが見えてきました。実店舗を構える前あたりです。それまでは借金がありましたが、この辺からちょいちょい返して、最後の追い上げでレーベル休みにして全額完済して今に至ります。今考えると、以前から投資というか、過剰に残っていた在庫が捌けて、ようやく売り上げが帰ってきたのかなと思っています。

―ZDRのレーベルカラーはありますか?

 多分ないです。節操がないと思われるのもこれが原因かと思います。私自身が幅広く好きで優柔不断なので、一本に絞れないというためです。これ自体がカラーになってくれればうれしいのですが(笑)

―レーベル運営におけるポリシー、目的、目標などありましたら各々教えてください

 上記の通り、当初は金儲けしたい!!で始まりましたが、知り合いのある一言がきっかけだった気がします。

「日本ってアクティヴにやってるレーベルほとんどいないから良いところに目をつけたね」

 言われてみれば、国内シーンについて大好きだからこそ盲目になってた部分があります。ディストロを始めた時こそ、ちょうどArkha Svaあたりが出てきたことで盛り上がっていたので、国内シーンも大きいと思っていましたが、実際はすごく小さかったんですよね。

 ならば、もう少し何かできないか。大好きな国産バンドをいっぱいリリースして、ライヴとかできないか。そういうことを考えて日本のバンドをもっと大事にして行こう。ライヴとかをやっていれば、いずれ新人もたくさん出てくるだろう。風がなければ何も動かないので、とりあえず自分が風になって何かを動かせば、反動でまたどこかが動くだろう。そう思うようになりました。今でもがむしゃらです。目標は未だになく、それ以前にまだまだ弱小レーベルだと自覚していますし、しがみついていこうと思っています。

―設立当初と現在では考え方が変わった、と。

 すごく変わりました。一番大きく変わったのは、カルト的な考えはレーベルをやってる時点で捨てようと決心したときでしょうか。

―国内バンドの音源を数多くリリースしていらっしゃいますが、契約基準のようなものはありますか。

 国産バンドとの契約基準は色々ありますが、とにかくカッコよければOKです。私の好みもあり、断ったバンドさんも少なからず居ますが、カッコいいバンドは自ら声をかけていきました。とにかく当初はどのバンドもアクティヴじゃなく、バンドも少なかったのでmyspaceなどで探したり、動きまくりました。現在は色々なバンドがアクティヴになってきていて、CD作るから協力してほしいと、相談をいただくこともあり、調査の方はズボラになってきています。私自身の好みはDarkthroneの初期あたりのプリミティヴでメロウなブラックなので、基準ではないですが、そういうスタイルには弱いですね。

― 一方で昔の日本のUGブラックメタルの初期音源再発なども多数行っていらっしゃいますね。

 先ほど触れたとおり、国産ブラックメタルが好きなわけですが、過去の消えていったバンドの音源がとにかく手に入らなかった。でも探してる人は自分以外にも結構いたんですよ。なので、音源再発に踏み切ったりしていました。完全に自己満足で、最初はGorugothを出しました。出す前はデモテープもダビングしか持っていませんでした。

 結果なんですが、過去に活動していたバンドメンバーさんに火がついた方もいたりして、GorugothもKoozarとしてシーンに戻ってきたり、何らかのアクションがありましたし、昔を懐かしむ声もいただきました。再発の目的は本当に自己満足で始めましたが、結果オーライだったんじゃないかと思いつつ、その無計画さを恥じています。

―国産ブラックメタルの再発で、興味はあるけどコンタクト先が解らないバンドなどあれば教えてください。

 4年前くらいからずっと言っているのは名古屋のInsanity Of Slaughterです。途中の行方まではつかめましたが、最後まで辿りつきませんでした。探偵を雇いたいレベルで再発したいです。これを見てくれたメンバーさん、Zero Dimensional Recordsまでご連絡ください!!

 あとは、Dunkel、Belphegoth。Ohura MazdoはDr.の許可こそ下りましたが、リーダー氏へ連絡が取れず、最後のコンタクトアドレス先まで自転車で家を探しに行きました。が、同姓の家がいっぱい並んでおり断念しました。



―ZDRのサブレーベルについて紹介してください。

Hidden Marly Production: ZDRは当初「日本のバンドしか出さない!」と決めていましたが、フランスのQuintessenceとやり取りしているときにCDの再発を持ちかけられたことがきっかけで、とりあえずでっち上げて、そのままサブレーベルとして残しているものがずるずると来たのがこれです。基本的に海外バンドだけリリースするレーベルとして置いています。

Maa Production: Thränenkindとやり取りしていたら。彼らが日本のシーンに興味があるということでリリースの話が出まして、でもHMPだと毛色が違うし、ならばポストメタルやデプレレーベル作るかともう一個節操なく作ったのがこちらです。

East Chaos Records: これはZDRのサブレーベルと勘違いされている方が多いのですが、元々は愛知県のレーベルで、在庫やKanashimi、Hopelessのリリース権利等を買い取ったものです。

―海外のバンドとも、特に最近は勢力的に契約されているようですが、どのように契約まで至っているのですか。時にかなりのマイナーなバンドを発掘していらっしゃいますね。

 海外バンドとの契約基準については、色々好きなので、本当にレーベルカラーが出せない感じでしたが、最後かっこよかったらいいやということで、気に入ったバンドなら契約しています。最初はmyspaceで探したり、「過去音源が良かったから新譜うちでどう?」みたいな感じで誘っていきました。現在はリリースしたバンドの友人が「うちのバンドも出してよ!いい噂聞いてるよ!」みたいな感じでリリース話を持ってきてくれたりしてくれています。マイナーバンドがたまに居るのは8割型向こうから連絡をくれている場合です。

―そのように海外のバンドの音源をリリースする目的はなんですか。

 1つはもちろんバンドへのサポートですが、ディストリビューションの際、日本のバンドだけだと見向きもしてくれない海外レーベルも少なからずいます。しかし、例えば自分の国のバンドが、Japanとかいう訳のわからない島国のレーベルからリリースされていて、その情報を見たら日本のバンドにも興味を湧いてもらえるのではないか、ということもちょっと狙ったりしています。つまり結構、日本産贔屓な理由で契約していたりします。

―海外バンドとの契約について教えてください。個人的にはZavod’の次のリリースが気になっています。

 契約は1作品の権利を保有したり守ったりしています。つまり「他にいいレーベルあったら悔しいけどそっちいってね。大きいレーベルから連絡あれば、そっち行ってうちを踏み台にしていいよ」ということで、バンドさんを束縛するような契約はしていませんね。ただ、うちでリリースしたバンドは大体戻ってきてくれたりします。Zavod'も「次の作品もよろしく」と連絡が来ていましたが、契約自体はしてないのでどうなるかは解りません。

―個人的なコメントですが、Black CiliceのCD再発はとても有り難いものでした。今後のHMP、MAAのリリースについて予定されていることがあれば教えてください。

 ありがとうございます。Black Ciliceのリリースは一部ですがなかなか好評でこちらも嬉しかったです。HMPはフランスのNightが今、結構話題になっている気がします。来年あたりにリリース予定です。他にはJuno BloodlustのドラマーがやっているAdversam、お馴染みHappy DaysのMorbid氏のPreteen Deathfuk のスプリットもリリース予定です。

 一方でMaaの方ですが、As Light Diesのリリースを控えています。未だに不可解なのですが、Code666を蹴ってまで来てくれました。かなりハイクオリティなアヴァンギャルドブラックメタルです。あとは1年以上待っていますが、Coldworldの廃盤EPの 日本Verを再発する予定です。告知はまだしていません。とにかくいつ出るかわかりません…。

―名前が出たフランスのNightですが、今度のブラックメタルファンジン(※2)でインタビューが掲載されるそうですね。なかなか個性的な発言も多いようで楽しみです

 そうみたいですね!個人的にも楽しみです!何の人脈もなくぱっと出てきたバンドを拾ったのですが、アクティヴに活動していて、インタビューも載るみたいなので、ぜひ1stアルバムにご期待ください!!

―As Light Diesは2010年リリースの2ndアルバムを聴きましたが、かなりゴシック要素の強い印象があります。

 今回もゴシックは強めでアヴァンギャルドな感じも強く出ています。どちらかというとUGさはあんまりなくメジャーさが溢れているのでうちで 大丈夫なのか心配になるくらいの出来です!



―次にディストロ運営の件については入荷の基準などはありますか。

 ディストロに関しては、最初はカルトぶったり、自分の気に入った厳選CDだけをただ金儲けのために入荷していました。しかし先ほど触れたとおり考え方の変化もあって、現在は海外のリストを貰えば万遍なく入荷して「日本だったらここはディストリビューションしてくれる!」という海外レーベルからの評判を得られるような品揃えにしています。一部からは節操なく入荷しているように見えるかもしれませんが、一部のコレクションディストロ的な「うちのカラーはこれだ!」っていうのが正直決められないくらい色々好きなので、それだったらいっぱい取り扱えばいいや、っていう感じです。

 海外から見れば、日本の音楽シーン、CDの流通はかなり良いらしく、何とか日本に1枚噛みたい!というレーベルも少なくないです。そのかわりZDRのリリースもそっちの国でディストリビューションしてよ、という交換条件でうまくまわせたらと毎日思っています。海外レーベルとのやり取りは近年増えてきた気がします。

―海外ディストロとのやり取りで困ったことなどありましたら教えてください。

 挙げていくとキリがないのですが、とにかくリップオフじゃないでしょうか。最近はあんまりなくなりましたが、最初のほうは散々舐められまくっていました。そろそろ被害総額30万円を超えそうです。

―海外からのオーダーは多いのでしょうか。

 ほとんどないです。一部の日本バンド好きはオーダーをくれますが、送料の高い島国でわざわざ買おうとは思わないみたいですね。音源クレ、mp3クレ野郎はいっぱい居ます。

―ディストロの方でなかなか注目されていないけど個人的にオススメ!という最近の音源があれば教えてください。

 難しいですが、まずは Hats Barn - A Necessary Dehumanization ですかね。激クサでよかったです。このバンド自体があまり人気のない印象です。

 あとはちょっと古くなりますが、Fortid - Pagan Prophecies、あと解散してしまいましたがZwartplaagのフルアルバムと特にスプリット音源も。これは結構古いですね。

 探せばまだまだありますが、在庫が多すぎて思い当たりません・・・・

―ちなみに実店舗として黒屋も共同運営(※3)されていますね。外から見た雰囲気はラーメン屋でしたが圧巻の商品量で驚きました。実店舗ならではの取り組みなどはありますか。

 ありがとうございます。ラーメン屋っぽいと言われたいがためにがんばりました。うれしいです。実店舗ならではの取り組みは…まったくないです。どうしてもCDを手に取りたい!という方のために始めましたが、レーベルを兼用しているので、お客さんが連日わいわい来られるとレーベル業務ができなくなります。だから、たまにちらほら来てもらうくらいで大丈夫かなと思っています。毎週来てくださる方とかもいらっしゃいますが、ここまで立地悪いと気軽においでくださいとも言えませんし、めっちゃ申し訳ないです。

 でも、いらしたら満足いただけるように、ちょっとずつレイアウトを変えてみたり、商品に一言コメント入れてみたり、PCのスピーカーをハイレゾで聴けるようにDAC組んだりしています。あともうちょっと資金とか作れたらレコードプレイヤーとかも設置したいと思っています。ブラックメタルが当時のパラパラくらいブームが着たら心斎橋あたりに2号店オープンさせたいです。



―またそれらの運営とともにブラックメタルのイベント、Black Sacrificeを開催されていますね。こちらはどういったポリシーで行われているのですか。

 以前はあったブラックメタルのイベントですが、近年めっきりなくなってしまい、たしかFenrisulfだったかが「ライヴがなかなかできない」という話をしていて、それならば企画してみようかと始めたのがきっかけだったと思います。Fenrisulfはメンバーがあまり表に出ない感じで、ライヴもしにくかったとかだった気がします。

 ポリシーですが、表面上の理由としては「自分が見たいバンドを出す」ということでやっています。で、そんなときにちょくちょく海外からジャパンツアーの話があって、海外バンドも呼んでみようかと思うようになり、今に至ります。現在は知名度のある海外バンドを呼びつつ、なるべく日本のバンドを招待して、海外バンドにしか興味がないお客さんにも日本のバンドを知ってもらおうと思っています。「日本のバンドのときはバーで飲めば良いわー」みたいな事を言われたこともありますが、やるかやらないか、0より1だったら1のほうが確率はあるわけで、何とかやっていきたいと考えています。

―今までのイベントで何かこぼれ話などありましたら教えてください。

 とにかく最初は呪われていた企画でした。1発目から東日本大震災で延期、延期後はメインのCataplexyが事故でキャンセル、2回目はNegură Bungetが飛行機のストライキで来日できない。次に何か起こったらやめようと思っていました。

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―そして次回のBlack SacrificeではあのSatanic Warmasterが来日しますね。先にコンピレーションのリリースも行われましたがどのような経緯で契約に至ったのですか。

 話題性を出したいということもあって「ツアーするならうちでCD出してみないか?」と軽くオファーをしたら「日本語で帯とか作ってくれるならいいよ!」ということで軽く決定したのが確か2年前くらいだったと思います。正直ツアーだけで完全黒字を出すのはCelestiaのときの80万円の赤字(※4)で無理だとわかったので、CDだけでもなんとか利益+広告になってくれないかという思いもありました。次に大赤字を出すと日雇いのアルバイトか、最悪今度こそ店を畳むハメになるのでなんとかクリアしたいところでもあったので、リリースできてよかったです。

―ちなみにあのコンピレーションをHMPではなくZDRでリリースしたのは何故ですか。

 最初は非常に迷いました。最近はZDRで一本化したいと考えつつ、HMPもそこそこ大きくなってきた気がするので捨てる勇気も出ず、バンドさんにも申し訳ないので最近だとHMPはマイナーなバンドを支えていこうと継続しようと。だから今回のリリースがZDRからだったのは、ほぼZDRの売名行為だと思ってくれていいです。「Satanic Warmasterの新譜でたの?どこ?日本のレーベル!?へぇ、日本もバンドいっぱいいるじゃん」という海外へのアピールが狙いでした。

―そして来日公演の方はどのようなショウにしたいですか。

 お客さん、出演者が楽しんでくれればいいなと思います。Satanic Warmasterサイドは「ジャパンツアー行ってきたよ。ゼロ次元すごくよくやってくれたよ」と思ってもらえれば、フィンランドのシーンで名前が広まり、フィンランドのバンドが呼びやすくなりますし、国内バンドさんの方も楽しかったらまた出たいと思ってくれるかもしれない。お客さんも楽しかったらまた来てくれるかもしれないし、とにかく次へ繋げたいです。今回は海外からもSatanic Warmasterを見に来るという猛者も数人いるそうなので、日本のバンドさんには是非ともがんばってほしい!

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フライヤー(クリックで拡大)




―さて、少し大石さん自身への質問をさせてください。今までのお話をまとめると、大石さんのレーベル運営は全て「日本のブラックメタルシーンのサポート」に帰結しています。そのモチベーションである日本のブラックメタルシーンへの愛着について 大石さん自身のバックグラウンドを教えてください。

 たしかきっかけはCataplexyのEPだったはずです。ふと日本にもブラックメタルバンドがいるのかな、と思って探していたら某バンドが引っ掛かりましたが、全然好みじゃなかった。しかし、さらに掘り下げると、CataplexyやFuneral Elegy(現Hakuja)などを見つけて、聴いて、まだ1リスナーであるときにコンタクトをとったり、ライヴに行ったりしていました。正直、当初はそんなに国内のメタルシーンに良い印象はありませんでしたが、ブラックメタルやデスメタルに関しては日本人のセンスはずば抜けているとこの頃から思っていました。

 ZDRを始める頃には既に国産バンドが好きでしたが、国産バンドのサポートを思うようになったのは、レーベルを開始して2年くらい経ってからでしょうか。好きな国産バンドがあまりにも注目されていなかったり、「日本人がやるメタルは偽者」なんて言ってる人にも会ったりで、とても複雑な思いでした。個人的な感想ではありますが、多方面で絶賛されてる”海外”のバンドより、日本のバンドをヨーロッパ方面で産地偽造してアピールしたらサウンドだけでは負けないと思っています。


―私の意見としては外国人は日本産というものに異国情緒を求めがちだと思います。国産バンドが国産バンドであることを明らかにしつつ、世界的に認められるためにはそのような異国情緒を汲みこむ必要があるかもしれないと思います。それが良いことかどうかは別にして。

 そうですね。実際、凶音やMortes SaltantesはUGなら海外で大好評です。個人的にはInfernal Necromancyの国産ならではのメロディーを紡ぐサウンドはもっと評価されてほしいところですが「わかる人にはわかるけど、外人にはわかんないだろうなぁ」と思います。

 でも、こういうバンド達にインスパイアされて出てくる後続バンドが、後に「日本らしさ」を作っていくかもしれません。「○○のパクリだー」「オリジナリティーがー」とかグダグダいう人も居ますが、自分の持っている音楽のボキャブラリーを掘って曲を作れば、日本人らしさが自然に出てくるとおもいます。正直、何がきっかけで有名になるかわからないのがこのシーンです。手っ取り早いのは海外にツアー行ってライヴすることですが、自分らしさをもっていればいいかなと思います。


―ちなみに海外に日本のバンドをプロモーションしていくにあたって、例えば今すでに使われているBandcampの更なる有効利用としてDL販売などは考えてらっしゃいますでしょうか?過去の音源でもデジタルDLできるようになれば海外へのアピールにもなるかもしれません。

 Bandcampのリリースは悩みつつも未だ結論は出ていないです。私はコレクターで現物ないと気がすまないパターンなので今はまだ考えられないなぁ…と思っていますが、今後検討していこうとは思います。電子書籍なんかも、会社が潰れて再DLできませんとかありましたが、こっちもあったりするんでしょうか…不安です。

―逆にアナログリリースに対するお考えは?

 正直、今すぐにでもやりたいです。ただ、膨大な資金がかかりますし、そのわりにはディストロのLPの売れなさや、輸出入のコストなどを考えるとなかなか難しいですね。テープも当時は主流にしていこうと思っていましたが、Ampulhetaのデモテープを出したときに「プレイヤーがないので買わなくていいや」みたいな声を聞いたり、実際売切れるまで時間がかかりました。その後は、テープでリリースする意味があるのかちょっと考えてしまってなかなか次へ行くことができません。

―大石さんご自身はブラックメタルやそのシーンに対してとてもリベラルな精神をお持ちだと思いますが、よく言及される「精神性」、「神秘性」、「哲学性」のような抽象的な側面に対してはどのように考えてらっしゃいますか?

 正直よくわからないです。ブラックメタルを好きになったのもサウンドが好みだっただけで「教会燃やしてすげー!人殺ししてすげー!」で聞いたことはありません。神秘性=話題づくりじゃないかなと最近は思っています。もちろんその観点は、現在に至ってそれを実行する事に対して、哲学が無いものだと思っています。過去から一貫してシーンに出てこない、顔を出さないバンドやアーティストさんには哲学を感じますし、敬意を持っています。そのように哲学的なものは好きです。歌詞なども良いですね。そんなにじっくり歌詞翻訳とかしたことないですが…。また、私個人としては「Anti religion」ですが、音楽性については特にどうも思いません。黄色人種死ねブラックだったらさすがにサポートしたくないですが。

―実際、日本のブラックメタルシーンについてどう思われていますか。成熟されてきたのでしょうか。

 多分、まだ成熟していないと思います。レーベルだけでなくバンドが少ないですし、そもそもお客さんも絶対数では非常に少ない部類です。ディストロも出てきては消え、出てきては消えとしていますね。ディストロをやるにしてもお客さんの絶対数が少ない中、客の取り合いになるのは目に見えているので、ハードコアシーンみたいに「やってやるぜ!」って馬鹿な事を考えて始めるのは私くらいでしょう。

 レーベルが増えるとしても、小さいレーベルについてはありだと思いますが、どっかでやめてしまうくらいならやらないでほしいと思います。リリースした音源の権利を持ったまま潰れて音源が再発できず、バンドが改名したり、やめていったり、ディストリビューション力がなく、在庫に埃を被せているだけのパターンも散見されます。たかがCD、LP1枚ですが、最後まできちっと面倒を見ることができる人がやるべきだと私は考えます。そんなことをやっているレーベルがカルト的な雰囲気や希少さでレア価値を生むのが最近どうも歯がゆいです。

― 一方でアンダーグラウンドである以上、やはりリスナー側のサポートも大事だと思いますが。

 レーベルの立場として「サポート頼む!サポート頼む!」と連呼するのは嫌いで、「CD買ってクレー」とは言ったこともないです。ただ個人的に望むのは「良かったら、気に入ったらお金使ってね」ってことで、それが結果としてサポートにつながります。過剰なサポート意識はうれしい反面、リスナーの負担にもなりますし、ボランティアみたいで、こちらとしても心苦しいところもあります。 すごく、すごくうれしいのですけどね!

 だから、「良かったら、気に入ったら買う、ライヴに行く」ってだけで、少し気を使ってくれるだけで、本当にサポートになっています。少し心がけてくれれば全員サポーターです。身内です。内輪のり結構じゃないですか。こういう点に気づいてくれるか否かでかなりシーンも変わってきます。海外のシーンとか行くと「俺ライブに行ってるしサポーターだぜ!ファンだぜ!」ってアピールする連中がたくさん居ます。UGシーンはメジャーと比べてアーティストさんとの距離も近いし、Satanic Warmasterの来日ライヴも恐らくメンバーもライヴハウスの中をうろうろしてますし、みなさんガンガン来てください。

―長いインタビューになりましたが、丁寧に回答くださりありがとうございました。

 こちらこそありがとうございました。若輩レーベルがえらそうなこと、キレイごと並べてすみませんでした。うちのような若輩レーベルが生き残るには、シーンに密接に関わって、信頼などを得られないとダメだとおもって必死でやっている毎日です。

 もともとは欲の塊みたいなものでしたが、シーンを盛り上げたいというか「日本のバンドかっこいいよ」って言うのを知ってほしいと切に願っていますし、またブラックメタルリスナーの人口はそこまで少なくないはずなので、深くまで入ってきてくれるリスナーが増えるといいなーと思っています。ブラックメタル好きという方に何人も会ってきましたが、「一番マイナーでDark Funeralかな」なんて言われたりしたこともありますが、ちょっとでも入り口なんかを広げたりできればいいなと思います。

 それではZero Dimensional Records、ZDRもしくはゼロ次元、今後ともよろしくお願いいたします。

Link to:
Zero Dimensional Records
Zero Dimensional Records Online Shop
Black Sacrifice
黒屋 -KUROYA-



(注釈)
※1 1960年代から1970年代初頭にかけて活動していた前衛パフォーマンスアート集団。
※2 ギリシャのブラックメタルバンド、The Shadow Orderの名曲タイトルから引用されたEnd Of Journeyというブラックメタルファンジン。ネットによる有志集団で執筆されており、私もvol.2で参加した。Vol.4が目下製作中とのことで、そこにNightのインタビューも掲載されるとのこと。
※3 Amputated Vein Recordsとの共同経営。なので黒屋にはブルータルデスメタルの品ぞろえも強い。
※4 Black Sacrifice Vol.5としてCelestiaの東名阪ツアーが行われたが、フライトチケットなどの出費が著しく、大石氏に多大なリスクを負わせてしまった事件。あのときのツアーTシャツ、私はちゃんと買いました。



 以上、ZDRの大石氏へのインタビューである。興味深い話も多く、この手のインタビュー記事の中ではかなり分量の多いものになったが、本文からもうかがえる通り、レーベルの設立時のエピソードから今に至るまで、ポーズをとることのない純粋な姿勢が垣間見れるとともに、日本のUGシーンへの真摯な想いとサポートへの責任感を強く感じさせるものであった。

 我々1リスナーは飽きたら聴くのを辞めればいいというノーリスクの立場ではあるが、このように人生を賭けてサポートを行っている人がいるからこそ(ZDRだけでなく)、素晴らしい作品が我々の元に届くし、またライブを堪能することができることについて無視してはいけないということを改めて感じている。

 そのために我々ができることというのは大石氏も仰っているように「少し心がけること」であり、それによってUGシーンに対する距離感がより身近なものになるということも必要なのではなかろうか。サポートをするということ自体はとても敷居の低いものなのだから。

 なお、万が一でもInsanity Of Slaughterのメンバーさんや関係者の方がこのインタビュー記事に気付いたとしたら、是非ともZDRまでコンタクトして頂きたく思います。宜しくお願いいたします。

 また、今回のようなインタビューは継続して行っていく予定で、今後は国内外のバンドにもインタビューの御依頼をオファーしていくつもりです。逆オファーも承っておりますので、今回のインタビューをお読みいただいて興味がわいたバンドさんは是非是非、お声がけいただきたく思います。御覧の通り、零細ブログですので宣伝効果とは無縁のものですが、真摯に対応させていただきます。
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