Goat Worship - III 

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■ 様々なGoat Metalの形 - バンド名編 その2

 前回はGoatlord、GoatPenis Goat SemenといずれもGoat界隈においては王道バンドを紹介したが、引き続きバンド名にGoatを冠するバンドを紹介していこう。

 オランダのFuneral Goatはex-Sauronのメンバーによって構成されていて、音楽性はArchgoatに近いロウブラックメタルだが、曲調を落とすとHellhammerっぽさも出てくるのが特徴。歌詞を見てみるとほとんどが単語の羅列でしかなく、ひたすら天に唾棄するだけの音楽だ。"Goat Metal"好きには残念なことに昨年改名してIbex Angel Orderとなった。オカルティズムにフィーチャーしたブラックメタルらしく、新作も完成しつつあるようだ。

 ブラジルのMighty Goat Obscenityは白塗りならぬ赤塗りのペイントを施していることが特徴のバンド。サウンド自体にオリジナリティは全くないが粗暴で南米らしい演奏と北欧ブラックの合わせ技のようなスタイル。とりあえず見た目ありきでかっこいい。

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 チリのGoatoimputiryは完全に初期BeheritフォロワーなサウンドでGoat WorshipというよりかはBeherit Worshipという感じである。ボーカルスタイルなど含めてトレースに近いのだが、それも含めて楽しく聞ける。昨年、新EPを出したがカセットテープでチリの地元アングラレーベルからリリースされており、さすがに手が出なかった。

 カナダのGoatwarは正直、相当にヒドいブラックメタルで、様々なプリミティブブラックの死線を潜り抜けてきた人でも「こいつはヒドイ!」と唸らせるパワーを持った強力なバンドで、活動も完全オブスキュアなバンドである。1996年に結成して二枚フルレングスを出しているが、いつの間にか解散していた。しかし昨年、オーストラリアのTotenwerkというレーベルから突然"Untitled"と題したテープがlim.23 (!?)でリリースされたが新作なのか至って謎である…。

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 他にデンマークのSadogoat、ロシアのBlack Goatあたりは比較的この界隈では有名なバンドだが、私が聞いていないため今回は取り上げていない。

goat11.jpg 未聴といえば最近出てきたGoatバンドで注目しているのはGöät Dëströyër 666というオーストラリアのバンドだ。何しろバンドメンバーの名前が、Goatzilla、Ghoatst、Goatlord、Goatkuというステージネームらしい(笑)。昨年結成の新しいバンドで、今までに二枚のデモをデジタルのみでリリースしてるが、なかなか良いGoat Soundを持っているし、何しろBandcampでNYPなので気になる人は一枚フリーでDLしてみてはいかがだろうか。もし気に入ったら二枚目はお金を落としてあげてほしい。

 なお、Goatといえば有名なGoatmoonGoatwhoreなどもいるが今回はあえて割愛させてもらった。


■ 様々なGoat Metalの形 - アルバムタイトル編

 アルバムタイトルで最もこのテーマにあっているのはNunslaughterの2ndアルバム"Goat"だ。ブラックメタルにも親和性の高いサタニックデスメタルをプレイしている非常にストレートなタイトルで、1987年以来とてつもない量の音源を出している中でもGoat Metalを嗜好する人ならぜひ手に入れておきたい。また1stアルバム"Hell's Unholy Fire"のジャケットも一家に一枚と言っておこう。

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 Goat界隈に多大なる影響を与えてリスペクトを受けているのは先のArchgoatBeherit、そしてもう一つがフィンランドブラックのレジェンドであるImpaled Nazareneだ。初期作品に"Goat Perversion"と"Sadogoat"というEP盤をリリースしており、後に同名バンドが出てくるに至った。また1st、2ndアルバムにもたくさんのGoat関係の曲名、歌詞が残っている。基本的にImpaled Nazareneは非常に下品な表現をわざと使っていることが多く徹底的に冒涜の限りを尽くそうとしている関係で"Sado-Goat"という単語を用いていたようだ。

 さて毛色を変えて次はアメリカのGrand Belial's Keyのデモ"Goat of a Thousand Young"だ。音楽性は今まで紹介したGoat Metalとはかなり異なり、Mercyful Fateの影響を大いに受けつつ独自に完成させたサウンドである。このデモの収録曲もかなりユニーク。その後の1stアルバムに比べてサウンドのヘロヘロ感があるのも初期デモらしく面白い。

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 近年出たアルバムの中でGoat MetalらしいアルバムといえばNecroholocaustの"Holocaustic Goat Metal"やNihil Dominationの"Sado Perverser Goat Insulter"あたりだろうか。両バンドとも歌詞テーマにGoat Worshipを掲げており、最近のGoat Metalシーンの中では最重要バンドと言って過言ではないだろう。

 Necroholocaustはカナダらしい突進力のあるブラッケンデス/ウォーブラック。最新作をLPとデジタルでリリースしておりCDリリースがないのが残念だが、このアルバムではデンマークのSadogoatの曲をカバーしているなどニヤリとすること請け合いの作品。

 Nihil Dominationはエクアドル産のかなりグラインド色の強いブラッケンデスメタルで、日本のDeathrash Armageddonから国内盤がリリースされているのでご存知の方も多かろう。しかし今回のコラムを書くうえで最近の動向を再確認したらいつの間にか解散していた…。2013年にGoatbaphometという、これまた我々をくすぐるバンドとスプリットをリリースしたのが最後であった。ちなみにGoatbaphomet自体はNihil Dominationのサイドプロジェクトで印象としてはもう少しウォーブラック色が強くなった感じである。いずれにしても彼らの活動の再開を切に願う。

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■ 終わりに

 今回は前回に引き続きバンド名やアルバムタイトルなどで"Goat"を使っているものについて紹介してみた。有名なものから比較的マイナーなものまで取り上げてみた。何かしら琴線に引っかかるものがあればぜひチェックしてみてほしい。

 次回は今回紹介したもの以外で曲のテーマにGoatを採用しているバンドなどを紹介して、では"Goat Metal"とは何か、まとめることで本稿の終わりとしたい。遅筆ですがよろしくお願いします。

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コラムを締める前にGoat Worship特集と題して単独で音源を取り上げる記事を複数本あげます。
タグ:   Column  Funeral_Goat  Goatoimputiry  Goatwar  Nunslaughter  Impaled_Nazarene  Grand_Belial's_Key  Necroholocaust  Nihil_Domination 
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Mocking the Philanthropist : Grand Belial's Key (1997) 

アメリカのブラックメタル/NSBMバンド、Grand Belial's Keyの1stアルバムを紹介。
ベルギーのWood-Nymphよりリリースされた後、数度の再発を経て、
最近はDrakkarから再発されたものが良く出回っている。

Mocking PhilanthropisMocking Philanthropis
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「全く北欧ブラックメタルと縁もゆかりもないブラックメタル」とバンドが言う通り、
安易なトレモロリフなど使わずに実直なメタルらしいリフを使って、
それでいて非常に邪悪なヴォーカルを軸にあくまでブラックメタルを貫いている。

90年代初頭からアメリカで活動していたバンドとして、
そのプライドがサウンドにあらわれているオリジナリティある作品だ。
正直、日本でももっと評価されてしかるべき音源だと思うのだが。

彼らはNSBMにジャンル分けされることもあるのだが、
いわゆるアンチシオニズムを掲げているバンドであり、
一見ふざけたアルバムジャケットにもその意思が含まれているのだろう。

Encyclopaedia Metallum - Grand Belial's Key
タグ: Grand_Belial's_Key  USA  1996-2000  個人的良盤 
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1990 - 1994 the First Three Demos : Arghoslent (2008) 

アメリカのデスメタルバンド、Arghoslentのコンピ盤を紹介。
フランスのDrakkar Productionsよりリリースされた。

arghoslent_c

以前、NSBMコラムでも触れたGrand Belial's Keyのメンバーがやっている、
思想的にはかなり右寄りのデスメタルバンドの初期音源集で、
具体的には1991~1993年のデモのコンピレーションである。

GBKでもそうなのだが彼らの音源はド直球なメタルリフを入れているのに、
何とも言えない邪悪というか悪意というか、
人を寄せ付けない危険なオーラが漂っているのが特徴。
かつGBKよりデスメタルらしい曲進行である。

音源の質としては後の1stアルバムに劣るが、
既に彼らの輪郭はしっかり形成されていたことを知る上でも、
資料的な価値も含めてファンなら手に入れるべきコンピだろう。

Encyclopaedia Metallum - Arghoslent
タグ: Arghoslent  Grand_Belial's_Key  USA  2006-2010 
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【column】 NSBMとは一体何か? - VII 【完】 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - VI
http://staymetal.blog8.fc2.com/blog-entry-577.html

■ 続き

 前回に引き続き、従来のプリミティブブラックメタルを踏襲した作風であるバンドをバンドを国別に紹介していく。今回は特徴的なシーンを形成しているロシア、フィンランド、ウクライナ、もしくは北米や南米にも目を向けていき、本稿を締めることにする。

■ ロシア

BBH ロシアのNSBMシーンを語るなら外せないのがBlazeBirth Hall(:BBH)である。BBHとはロシアのNSBMバンドの組織のことであり、前述したBranikald(1993-??)のKaldrad氏を中心に1994年に発足された。広大なロシアの中で、ブラックメタルはおろか、メタル自体のシーンも形成されていないような地方で発足したためか、その中で独自進化を遂げてCDリリースも行っていた。

 Kaldrad氏はBranikald以外のBBH所属バンドにも参加するなど大きな影響をもっており、BBH系列のとかく荒涼感のあるブリザードサウンド―すぐにBBHだとわかるほどの特徴のあるサウンドを各バンドにもたらした。自然主義的な印象も持っている曲調で、音からNS思想を感じることはない。但しメンバーの写真などを見ればわかるとおり、思想的にかなりNS寄りで、過激な行動にも及んでいた様である。現にKaldrad氏は2001年に不法武器所持(ネオナチの活動に使用していたようである)で投獄されている。

 Forest (1994-??)
 Raven Dark (1994-??)
 Nitberg (1999-)

Nitberg 上記3バンドはBranikald以外のBBH所属バンドの中でもよく知られているバンドであり、またメンバーがかなり重複している。Forestは中でも最もBranikaldに近い作風で、まさにBBHサウンドを体現しているバンドだろう。Raven DarkはForestに一時期参加していたUlv氏のバンドでKaldrad氏もゲスト参加していたが、BBHを語るならUlv氏の存在も無視できないが、残念ながら2005年に亡くなっている。NitbergはBBHの中で最もNS思想が露骨なバンドであり、むしろAbsurdタイプの項で紹介すべき自由闊達なブラックメタルである。何しろKaldrad氏がまるでAbsurd丸出しなボーカルスタイルなのだ。しかしそこはKaldrad氏だけあって、BBHサウンドとAbsurdタイプの融合が図られている。そのようなスタイルはThe Night and the Fog part IIに収録されている曲を聞いてもよく解る。しかし2010年にリリースされた2ndアルバムは路線をプリミティブブラックメタルに変更しており、聞く人を驚かせた。こちらは高品質なブラックメタルで、この項においてはむしろ2ndを推すべきだろう。それからNitbergのメンバーの在籍するWalknutはアトモスフェリックなブラックメタルであり、BBHサウンドも灰汁が無い程度に感じさせるサウンドで、BBH初心者には最適な音源である。

 M8l8th (2003-)

m8l8th_photo BBHと密接な関係を持つレーベルがStellar Winter Recordsである。このロシアのブラックメタルレーベルはBranikaldを含むBBH関連の音源を含め、他にもロシアのNSBMを多数リリースしているのだが、その中でもこのバンドは言及せざるを得ない。Molothというバンド名のoをわざわざ8に変えており、どう見てもネオナチシンパで危険なバンドであるが、なんとライブ盤まで出ている。考えるだけで恐ろしいライブだっただろう。彼らのサウンドはBBH系列とは異なり、まさしくプリミティブブラックメタルだ。Burzumのカバーをしているあたりも伺える。但しヴォーカルスタイルが少々アクの強さを感じるため、苦手な人もいるかもしれない。現在はポルトガルのFrenteuropa Recordsと契約しており、そちらのレーベルではまだ私も知らないNSBMバンドも所属しているようで今後注目していきたい。

 他にロシアのシーンにおいてはNa Rasputje (1997-)も有名だが、こちらは一枚しか音源を持っておらず、申し訳ないがあまり知識が無いので割愛させていただく。こちらもロシアらしいNSBMである。


■ ウクライナ

 地理的、文化的にもロシアのNSBMの影響を強く受けつつ、更に西欧のシーンとも交流があったことが伺える。このジャンルでは最も有名なバンドの一つ、Nocturnal Mortumを中心に人脈が広がっている。

 Hate Forest (1995-2004)

hateforest 既に紹介したNocturnal Mortumと並んでウクライナのシーンにおいて双璧をなしているバンドであり、「Aryan True Black Metal」と自称していた。彼らはアルバムによってその印象を変えてくるバンドであるが、その中で"Sorrow"や"Purity"は名盤として名高く、手法は違えどBBH系列のサウンドとも近い志向性を感じるし、かつ従来のプリミティブブラックメタルも兼ね合わせた荒涼かつ荘厳でありながら展開力のあるブラックメタルに仕上がっており、この手のスタイルにおける最重要バンドの一つである。解散後、Blood of Kinguというバンドを結成したが、こちらは更にルーツをインド、チベットの方に掘り起こしており、楽曲もそちらの影響を受けている。

 Hate Forestの関連バンドとしてはDrudkh、Astrofaes、Khorsが比較的有名だが、これらはペイガンブラックになっている。また人脈を辿っていくとDub Bukもまた取り上げるべきバンドだが、こちらもペイガニズムをテーマにしている。一方でDub Bukの関連としてUngernは完全にNSBMだが、こちらは楽曲があまり面白みが無く、特に紹介はしない。他にはNocturnal Mortumの関連バンドとしてAryan Terrorism、FinistがNSをテーマにしているが、未聴なので割愛する。


■ フィンランド

 フィンランドという土地柄は他の地域と比べてルーツ的、文化的に独立していて異色なところがある。そのためNS思想に必然性が無いためか、明確なNSBMシーンはないように感じる。但しところどころモチーフ的にNS思想を飾っているバンドは幾つかある。

 Satanic Warmaster(1998-)

SW ブラックメタルシーンにおいてもビッグネームとなったが、NSBMと区分けされることがある。確かに関連単語をメンバー名に利用したりするなど、記号的にNS思想をモチーフとしていることもあるが、あまり強いNS思想は感じない。また近年は特にそのようなモチーフ自体露にしておらず、恐らく活動に支障があるためではなかろうかと推測している。また別プロジェクトのThe True Werwolfでは作風もロウアンダーグラウンドだが、こっちの方で思想を発露している節がある。

 またGoatmoon(2002-)もフィンランドプリミティブブラックらしい作風で、こちらもあまりNS色は感じず、カルトプリミティブブラックである。また若干知名度は落ちるものの、Nekrokrist SS(2000-)もその系統でフィンランドらしいプリミティブブラックだが、バンド名からも伺える通り、思想は他のバンドよりはNS寄りかもしれない。このバンドは既に紹介したドイツのFaagrimと今年スプリットを出している。

■ 北米

 北米という地域は人種の坩堝だけあって、逆に白人と有色人種との歪みも根強く残っている。また移民が多く、自国の歴史というものがほとんど無いのも特徴だ。その結果なのか、少なからずNSBMシーンが存在している。

 Grand Belial's Key (1992-)

gbk_photo 日本ではそこまで話題に上がらないバンドだが、アメリカのNSBMの中では最も有名なバンドだと思われる。アルバムアートを見るととかくアンチキリストで、キリストなどに落書きしまくっているが、バンド自体は「アンチセミティズム」を掲げている。これはいわば「反ユダヤ主義」であり、その思想がNSBMと被っている。「アンチセミティズム」に関してはこのコラムの範疇を超えているので割愛するが、「ヒトラー万歳」のような歌詞は無いように感じ、レイシズムの塊のような作品を残している。。サウンドとしてもかなりカルトなブラックメタルだ。またメンバーのもう一つのバンド、Arghoslent(1990-)も非常に強烈な歌詞を残している。

 Pantheon (1993-)

Pantheon アメリカの有名なNSBMバンドの中ではもっとも露骨な思想表現をしている。サウンドこそペイガンブラックチックな内容だが、いかんせん歌詞が「我々こそがアーリアン民族の未来である!なぜならば我々は選ばれた民だから!」と咆えて、堂々たるプロパガンダを振りまいており、それがサウンドにも滲み出ているのかいかがわしい雰囲気に満ちている。また、このバンドは今回のコラムで取り上げた様々なNSBMバンドともスプリットを数々リリースしているなど非常に精力的に活動しているのが特徴である。しかし同名バンドが多数存在するので注意が必要だ。また彼らは最近、ポーランドのStrong Survive Recordsから音源をリリースしているが、このレーベルは結構なメンツが揃っており、このジャンルを掘り下げるならチェックが必要なレーベルだ。

 Birkenau (1995-??)

Birkenau アウシュビッツ強制収容所の名前を冠したNSBMバンドで唯一のデモ音源の写真もその収容所の写真が用いられている。Burzum直系の非常に不安になるような歪なサウンドが特徴だったが、後にI Shalt Becomeに改名してサウンドも変遷していき、「単なる」ディプレッシブブラックメタルになっていった。I Shalt Become自体はNS思想はないように感じるが、音源としてみるならば初期作品のほうがブラックメタルとしては出来が良いように感じる。

 他にGrom(1999-??)もNSBMに括られている。私は1枚アルバムを持っているだけだが、フォーキッシュなリフと強烈なヴォーカルスタイルに溢れんばかりのAryanスピリットが末恐ろしい音源だ。他にカナダのGeimhreがNSBMとされているがあまり特筆すべき内容ではない。むしろスプリット相手のShadeの音源として名前が挙がることが多い。


■ 南米

 南米はその土地柄か、非常にカルトなバンドが複数存在する一方で、Commandでも触れたとおり、ナチスドイツとの縁でNSBMシーンも存在している。

 Evil (1994-)

 The Pagan Frontにも所属していたバンドで生粋のNSBMバンドだが、作風自体はまさにプリミティブブラック。しかしかなりポンコツ気味なのと、ヴォーカルスタイルもかなり強烈でまさしくEvil。結構地味な作風なのに、明らかに「異質」感が漂っているのは思想の賜物なのかそうでないのか不明だし、あまり歌詞も目を通したことがないのだが、とかく凶暴。相当人を選びそうな楽曲だが、バンドの歴史も長くかなりの音源リリースをしており、どんなものか知る意味ではコンピレーション盤を買うと良いのではなかろうか。

 Seges Findere (1999-)

 こちらは激しく南米らしいNSBMで、昔からのコグメロサウンド譲りのベスチャルで粗暴なブラックメタルを引き継ぎつつ、それをNS思想のプロパガンダとして爆散させている。このバンドもかなり様々なNSBMバンドとスプリットを出していて、88などともリリースしている。

 他にアルゼンチンのFurorなどが存在するが、それよりこの南米という土地柄、とんでもないアンダーグラウンドが広がっており、Seges Flindereなどもそうだが、治安の悪いウォーブラックとNSBMの邂逅なんかも進んでいそうな雰囲気で興味深いが、何しろオーダーしづらいお国柄なだけに未知数な領域だ。


■ まとめ

 3回にわたってNSBMの重要だと思われるバンドを紹介してきた。しかし今回紹介したものは私が実際に聞いたもののみであり、他にも取り上げるべき重要なバンドが存在するだろう。また、バックグラウンドのこともあり、完全地下潜伏で活動しているバンドも数多く存在すると思われる。そのようなバンドにこそ、このジャンルの魅力を感じる人もいると思うが、そこまでいくと扱っているレーベル自体もかなりのもので、我々黄色人種ではオーダーすることすら叶わない可能性もあり、私としても守備範囲外である。そんな範囲内で紹介させていただいたので、まだまだ"序の口"の部分しか紹介できていないことを改めて申し上げておく。


■ NSBMとは一体何か?

 私はNSBMについて完全にプリブラの範囲内として音から入り、そのバックグラウンドが何たるか知らないまま徐々にその裾野を広げていった。そんな中、やはりAbsurdを聞いた時に明らかに「他と違う」カルトな雰囲気を感じ取り、それがNSBMだと理解した。しかしその後、実は自分が単なるプリブラだとしか思っていなかった音源もまたNSBMの範疇にあることを知り、改めて「NSBMとはい一体何か?」という疑問が生まれた。そしてそれを紐解くために調べ物を行いまとめていったものがこのコラムでああった。

 ではその疑問は晴れたのかというと、ここまでまとめておきながら、やはり音楽として定義するのは困難なものであることがわかった。Darken氏も言及していたように、言わば右翼思想が信念であるとすれば、NSBMを取り巻く極右思想はサタニズムの置換にすぎないように感じる。いわば新しい「邪悪」な表現のための代替品であった。その表現のために使われる音楽的表現が様々であったということであろう。 

 しかしそういう信念とは別にして、そのような表現を持ち出して作られた音楽にはパンク的な初期衝動を感じるものが非常に多く、言わば青いが故の魅力を大いに感じるところでもある。また一つにサタニズムとは異なり、あくまで人が人として「邪悪」であるという状態は、通俗的な表現だが「お化けよりも通り魔の方が怖い」感覚になる。そのような「危険」さというものも間違いなく魅力の一つになっていると考えられる。

 更に彼らが活動を通じてペイガニズムへの思想推移が散見され、欧州の思考体系も非常に興味深く感じる。他のブラックメタルのサブジャンルに比べてかなりデリケートな部分が大きく、何せ国によっては法律で禁止されるような話であるからして、個人的には頭を空っぽにして楽しむものというより、やはりバックグラウンドやバンドのアティチュードを音源を通じて何かを感じ取ることにより、更にこのジャンルを聞くことの意味が出てくると思われる。いや、むしろブラックメタル全体を見渡しても、浅く広くただ聞くだけの態度ではすぐ飽きるジャンルではないだろうか。単にこのジャンルを消費物のように聞きあさったところで何が残ろうか。過激な表現の数々はそれを如実に反映してくれているのではなかろうか。

 もう一度、自問する。NSBMとは一体何か?

 それはブラックメタルそのものであり、奥地であり、僻地である。

【column】 NSBMとは一体何か? - I
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