【column】 NSBMとは一体何か? - V 

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【column】 NSBMとは一体何か? - IV
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■ 続き

 前々回までにNSBMのバックグラウンドとシーンの形成について言及し、前回は箸休めとしてペイガニズムとペイガンブラックについて説明した。今回はNSBMの重要なバンドについてタイプ別や国別に紹介していくことにする。

■ Absurdタイプ

 Absurdフォロワーやそれに準ずるバンドとしては、ブラジルのCommand、ギリシャのGauntlet's Sword、スイスのEisenwinterといったバンドが思いつく。これらのバンドはAbsurdの影響を受けたであろう思想重視の音楽で、ある意味なんでもありの表現方法(ナチス関係のSEなどを挿入)で、もしくはOi!PunkやRACなどに大きな影響を受けたであろうサウンドになっている。


 Command (ブラジル/1996-2004??)

command1 Absurdから思想面「のみ」を抽出したようなバンドで、ある意味で最もAbsurdフォロワーらしいフォロワーと言えなくもない。唯一のフルレングスアルバム"Sturmangriff"では当然の如くAbsurdの"The Gates of Heaven"をカバーしており、他の曲もバリバリにナチ関係のSEを入れまくりで、どことなくナチスオタク的なところすら感じる。Absurdがコーヒー豆だとしたら、Commandはコーヒーである。しかしそのコーヒーは酷く苦い。音楽的に聞くべきところがあるというより、むしろ作品全体に介在する危険思想を体感するためのもので、ある意味パンクだ。なぜブラジルでNSBMかというと、南米はドイツ系移民が多いためであり、そのような移民の中でナチ運動が展開されていたこともあって、今の時代でも潜在的に根強いことが理由のようである。ちなみにCommandの関連バンドのEvilもこの手では有名だが、そちらはいわゆるプリミティブブラック。"Sturmangriff"はNSBMでは有名なTotenkopf Propagandaリリース。


 Gauntlet's Sword (ギリシャ/1997-)

gauntlets_sword1 RACの影響を強く感じ、ブラックメタルあるまじき明朗快活な音を出すバンドでなかなか面白い。しかもそこまで人気が無いからか一部のアルバムはかなりの安価で扱われていることも多く手に入りやすいため、『Absurdの次』という位置づけではこのバンドのアルバムから聞いてみるのも結構お勧めだと思う。一方でこの音楽性まで行くとむしろRACを掘り下げた方がいいという思いも少なからずあるが、あくまでブラックメタルという領域の中にあって、かつこういう自由闊達なバンドの存在は多様性を感じて面白く感じる。歌詞としては「アーリア人の血に"毒"が混ざってしまうことが恐ろしい」とか典型的な思考体系の様だ。後で紹介するThe Shadow OrderやDer Sturmerとも人脈的関係があったが、途中からPain氏独りになってしまった。彼があまりに自由すぎたのだろうか。


 Eisenwinter (スイス/1994-)

eisenwinter Absurdの1stをある意味超えているような、青春パンク丸出しのような旋律に「部屋に尋ねてくるネオナチの友達なんて要らない」「ただ古いDarkthroneでも聞いていたいんだ」「俺様をNSBMと呼べ!」なんて歌詞を叫んでおり、シニカルなのか単なるユーモアなのか言語圏などの問題で理解できない範疇であり、ジャケットもなんだかよく解らない。この辺りの自由でエキセントリックな表現には、逆に倒錯めいて歪んだ初期衝動を感じ、そこに妙な魅力を見出す人も多く、このジャンルにおいて人気は高い。結成自体は1994年と早めだが、フルレングスをリリースしたのは2007年で、今年には3rdアルバムを出すなどベテランバンドながら現在進行形のバンドだ。またドイツのHolocaustusとはスプリットを出したりライブのヘルプをしたり友好関係にあるが、Holocaustusのクオリティは低いので注意されたし。


 Aryan Blood (ドイツ/1998-)

AryanBlood 同郷のAbsurdの影響をひしひしと感じる。結成は1998年だが、地下潜伏期間が長くフルレングスは一枚も出しておらず、有名NSBMバンドとスプリットを多数リリース。先のEisenwinterともスプリットを出している。そしてようやく2010年にリリースされたコンピレーションはそれらの音源(1998年~2003年)から構成されており、Totenkopf Propagandaリリースということもあって広く知られるようになった。その中身としては前述Absurdの影響を感じると同時に、スプリット相手だったSatanic Warmasterにも近いようなメロウな旋律も導入されており、単なるAbsurdタイプという括りではなく、ハイブリットな方向性を示している。また、歌詞がナチス賛美とレイシズムの塊で出来ていて、どうやってドイツ国内で活動しているのか不思議になる。これは地下潜伏せざるを得ない。


 Wolfnacht (ギリシャ/1998-)

wolfnacht 通称ウルナハ。初期作品はAbsurdの影響を大きく感じるパンキッシュなブラックメタル(ドイツ国歌を挿入するなど共通点も多い)だった。1stデモではヒトラーの顔写真をジャケットにしていたり、2002年にリリースされた1st "Night of the Werewolf"では、もはや通過儀礼的にAbsurdの"Eternal Winter"をカバーしている。しかし作品リリースと共に、後述するギリシャのNSBMムーブメントの流れも踏んで、メロウな要素が増えていった。例えば3rd "Toten fur W.O.T.A.N."(W.O.T.A.N.とは "Will of the Aryan Nation"の略語)と5th "Zeit der Cherusker"を聞き比べると解りやすい変化を窺うことが出来る。一方でヴォーカルにも大きな特徴が有り、聞けばWolfnachtとすぐ分かる。活動にしてもアルバムを定期的にリリースし、いまやNSBMというジャンルを包括するに至った、NSBMシーンを代表するバンドの一つだと思われる。初期作品をリリースしていたのはスペインのNSBM・ペイガンレーベルのBattlefield(closed)から。


 88 (ブルガリア/2006-)

88c 今までデモやスプリットのみのリリースでかなり神秘性が高まっており、ようやく2010年にリリースされたコンピレーション"Ultimate Aryan Warfront"で日の目を見た。このバンドもやはりハイブリットなタイプで、いわゆる何でもアリなAbsurdタイプと、同郷のAryan Artに代表されたブルガリアンBMの融合が図られているように感じるが、他のハイブリットなスタイルのバンドと比べてその融合が中途半端なせいか楽曲のクオリティは落ちる。しかしその際立った思想面と初期衝動には特筆すべきものがある。ちなみにネオナチ界隈でよく目にする「88」とは、アルファベットの8番目が「H」で「HH」がHail Hitlerの略語だからである。"88"をバンド名の一部とするバンドもいるが、ここまでストレートなバンド名に彼らのアティチュードが垣間見れるというものだ。


 その他、RACやOi!Punkなど

TheBlood Sokyra PerunaはNocturnal Mortumの元メンバーが在籍していたバンドであり、比較的なじみの深いバンドであろうが、サウンドはもはやRACそのものであり、Absurdタイプ云々というものではないが、その手のものと親和性は高く、メタルよりのRACという意味でこのバンドも面白いだろう。またGravelandとスプリットを出したHonorもRACバンドであり、Absurdタイプを追うならばOi!PunkやRACにシフトしてみるのも面白い。例えば私が好きな海外のOi!Punkバンドを一つ挙げておくと(というにはほとんどバンドを知らないのだが)、イギリスのThe Bloodは素晴らしい。メタリックなリフも織り交ぜながら、楽曲もシンプルで覚えやすいのに、同時に曲展開も面白くて非常にかっこいい。決して完成度の高さではなく演奏もうまくなく、ヴォーカルもヘタウマな感じで、やっぱりAbsurd好きにもおすすめしたいバンドだ。近年、再発もされていて見つけやすいだろう。

雷矢 また、日本のOi!Punk、スキンズ、RACシーンは実に強力なバンドが揃っている。例えば今でも比較的手に入りやすい雷矢の音源は素晴らしいスキンズパンクであり、AbsurdのようなNSBMが好きならお勧めだろう。このような音楽性において歌詞が母国語であるということは大きいアドバンテージであるのだ。筆者自身、日本のOi!シーンはまだまだ勉強不足なのだが、思想面による拡販のされなさによって日の目を見ることは無いシーンでもあり、未聴の強烈な音源が無数に存在しているようでワクワクしている。日本のアンダーグラウンドシーンは本当に凄く、本当に深い。

■ まとめ

 今回はAbsurdフォロワーだと個人的に判断したバンドを紹介した。恐らくNSBMというジャンルにおいて一つの主流を決めるとしたら今回のようなバンドたちの音楽性を指すのだと思う。つまり自由なブラックメタルだということだ。一方で従来のプリミティブブラックメタルの流れを汲むNSBMバンドも多数存在する。次回はそれらのバンドのうち代表的なバンドを今回と同様に紹介していきたい。
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