United Aryan Evil : Fullmoon (1995) 

ポーランドのブラックメタルバンド、Fullmoonのデモを紹介。
GravelandのRob Darkenの運営してたIsengard Distribution(後のEastclan)よりカセットでリリースされ、後にBlutreinheit ProductionsからCD/LPリリースされた。
また昨年にはAncient Order Productionsからカセットでリマスター再発された。

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ポーランドのブラックメタルサークル、The Temple of Fullmoonを象徴する1枚で、
また、このバンドのオフィシャルな作品はこのデモのみである。
1曲目のインストはRob Darkenがコンポーズしていてやっぱり女性の叫び声が。

まさにポーランドの街をハーケンクロイツ旗を掲げながら練り歩いていたときのもので、
サウンドの根底に流れるどことなく悲しげなケルト音楽のリフを基調に、
誇りと憎しみ、そしてどことなく感じる憂いがあわさったプリブラになっている。

後のOhtarにもつながるメロウかつミサントロピックな奏では、
ポーランドアンダーグラウンドの一つの基本にもなったし、
またプリミティブブラックメタルのクラシックな一枚として今も語り継ぐ作品だろう。

Encyclopaedia Metallum - Fullmoon
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【column】 Polish Black Metal Scene - II 

【前回】 Polish Black Metal Scene - I

■ The Temple of Fullmoon

 ブラックメタルのことに興味がある方であれば恐らく一度は耳にするであろう"The Temple of Fullmoon"とは、これはノルウェーの悪名名高き"Inner Circle"に触発されて、ポーランドで90年代初頭に結成されたサークルである。"Inner Circle"に触発されただけに、彼らは2nd-wave Black Metalであるノルウェイジャンブラックの流れを汲んだブラックメタルをやるようになり、そのサタニズム信奉においてはトレンディー音楽と目されたデスメタルを"偽物"だとして完全否定し、憎しみの対象とした。それが先述したPandemoniumなどのバンドである。

 "The Temple of Fullmoon"に属していたバンドの特徴としてはノルウェイジャンブラックの影響を大きく受けつつも、

 1. ケルト音楽由来のフォーキッシュなメロディが含まれる
 2. 政治的な主張(NS)とリンクしている
 3. バンド間でメンバーの重複が多い

といった特徴がみられ、それらのうち1.は現在のポーリッシュブラックメタルシーンの作品にも受け継がれている。

 また諸外国のブラックメタルマニアにおいてはノルウェイジャンブラックが90年代初頭のうちに没落していった中で、その情報のなさからその活動が神秘的に映ったようだ。そのため "the Next Norway" とも称されたという。実際、"Temple of Fullmoon" そのものに関する文献は昨今、ウェブ上でもあまり見ることができない。それはまずフランスのLLNで見られたような、彼ら自身が発行した身内向けのZineすらなかったためだと思われる。またポーランド人は英語が公用語ではないことも理由の一つであろう。サークルのメンバーとしては、記載がある限り、Mysteries、Inferum、Fullmoon、Graveland、Veles、Legionといったバンドだと思われる。

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メンバー全員で撮影した写真。ハーケンクロイツを掲げている。


 また、当時はフランスのLLNのメンバーとも交流があったようだ(LLNのコラム参照)。面白いのはLLNの舞台もカトリック教会の力が強い地域だったことである。ただしこのポーランドという地域ではその影響力が段違いに大きかった。LLNは教会を焼かなかったのに対して、ポーランドではそれが起きたのはその点も加味する必要がある。このあたりはGravelandのDarkenがインタビューで答えている内容が興味深い。

with Darken (Graveland)

西欧とは違いポーランドは熱狂なカトリック国で、教会の政治的影響力は生活にまで及んでいる。ポーランドのブラックメタルアンダーグラウンドにおいて見られる強烈なキリスト教への嫌悪はそのカトリック社会への嫌気から来ている。教会は我々を捻じ曲げ、精神を犯してくる。それは家族を通じて辿りつくのだ。これはとても難しい問題だよ。

今日、ポーランドにおいても大きな都市においてはカトリック教会の役割は弱まっている。しかし小さい町にはまだ多くの若いブラックメタルミュージシャンたちとリスナーがいるよ。それは教会の役割がまだ大きいからだ。反キリスト教という考えはまだ生きているし、ポーランドでは根強いんだ。

若者が権力に抗うと言う行為は実に自然なことだが、ことポーランドにおいては家族から強く糾弾されることになる。家族は教会に強く依存しているのだからな。家族に多くのルールを強制される。例えば毎週日曜は教会に行くとかだ。それを守らなければ家族から精神的な迫害を受けることになるのさ。やがてその若者は圧力に屈し、教会にとって"善い"方向に引き戻されてしまう。これは私自身の経験から良く知っているのさ。家族は私を怨んだ。私はカトリック教会が欺瞞の塊であり、尊敬に足らないことをそこで理解したのだ。


 本コラムのPart.1ですでに書いた通り、ポーランドという国の成り立ちはカトリック信仰と密接であり、また歴史的過程を経て多民族国家でもある。そのような中でポーランドの若者はカトリック信仰への否定をしたときに、それに代わるアイデンティティがその混血が故に確固たるペイガニズムとして紡げなかったことが、このThe Temple of Fullmoonの存在理由に繋がっていると思われる。だからこそこのサークルの活動はアンチクライストとNS思想を根本とするのだ。これは以前のNSBMのコラムで書いた通り、ネオナチ活動においてそのすそ野を広げるためにスラブ系などの民族もアーリア民族に見做すようになってきたためであろう。

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 The Temple of Fullmoonの影響を受けて、サークル外においてもLord of Evil/War88、Gontyna Kry、Kataxu、Thunderboltといったバンドもシーンに登場してきた。いずれも先ほどのような特徴を持っており、ポーランドはNSBMの大きなシーンと目され始めた。トピックとしては元Gravelandのドラマー、CapricornusがドイツのNSBMバンドであるAbsurdのデモ"Thuringian Pagan Madness"をポーランドにてリリースしている。Absurdのメンバーが殺害した少年の墓をジャケットに使用し、ナチスのステイトメントをモチーフにして獄中で作成した曰くつきのデモであった。

 しかしながら、このようなサタニズムとNS思想のダブルスタンダードは歪を含有していた。やがてそれらの思想は徐々にかい離し始めた。

with Darken (Graveland)

初期のGravelandはサタニズムとペイガニズムを組み合わせていた。私はペイガニズムについて表現したかったから、区別するためにGravelandは一人でやることにしたのさ。

やっている音楽はNSBMではない。そう思われるのは私の持つ政治的姿勢によるものである。しかし私にとっては神秘主義と古代ペイガンがもっとも重要であり、政治的思想はプライオリティが低い。Gravelandはバンドであり、何より音楽であることが最も重要だ。NSBMとは違うと考えている。


with Paimon (Thunderbolt)

俺たちがポーリッシュブラックシーンに加わったころは、Graveland、Fullmoon、Infernum、Velesが唯一のシーンだった。93年のことだ。だからNSBMに同一視された。しかし98年頃にはそこから抜け出した。俺たちには全くそんなポリシーがないからだ。だって俺は個人主義を信奉しているし、宗教もポリシーもいらない。白人だろうが黒人だろうが何だろうが、すべての人間には同様に価値がない。

NSBMという存在理由はとても複雑な問題ではあるが、私個人としては数年前に人間や人種についての興味を失ったよ。時々、古代文明の書物に目を通したりはするけれどもね。俺の主張としては、ブラックメタルと社会問題を政治的にミックスしていることは間違えだったということさ。ポリシーっていうのは飼いならされた羊のように、人をコントロールするものだ。

もちろん俺はアンチクリスチャンだが、そのイデオロギーにキリスト教は一切関係がないし、スラヴィッシュとかそういう人種の類とも関係ない。俺を超える神などいないのさ。ブラックメタルにおけるペイガニズム、ヒーゼニズムの類はお間抜けだ。ブラックメタルは悪魔主義(個人主義のことだ)に限るべきだ。


 このようにしてThe Temple of Fullmoonは思想・信条の乖離から解散していったようであるが、中枢にいた人物たちは各々の信条を持ってバンドを各自続けていったし、その過程でThe Temple of FullmoonのChildrenと言えるバンドも現れてきた。


■ おわりに

 Part.1ではポーランドという国の説明とポーリッシュブラックメタルの成り立ちを紹介し、Part.2ではこの国のブラックメタルにおける中枢とも言うべき、The Temple of Fullmoonについて紹介することで、なぜこの国のブラックメタルにおいてサタニズムとNS思想がクロスオーバーしたかについて、インタビューにおけるコメントなどを挟みつつ説明した。本当はもっとこのサークル自体について、様々な記事を取り上げることも考えたが今回はあえて割愛した。

 次回はThe Temple of Fullmoon外の90年代初頭のポーリッシュブラックメタルシーンについて紹介し、続いて90年代後半から現在にかけてのポーリッシュブラックメタルシーンの状況、最近の活躍しているバンドについて紹介していく。

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Spectre Of Hate : Selbstmord (2002) 

ポーランドのブラックメタル/NSBMバンド、Selbstmordの1stアルバムを紹介。
ポーランドのOld Legend Productionsよりテープ/CDでリリースされた。

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OhtarのDiathyrronとNecroのもう一つのプロジェクトで、
特にこのアルバムではGravelandのRob Darkenがサウンドミックスを手掛けており、
ポーリッシュブラックの豪華どころが揃った作品である。

Ohtarに比べてメロウさを撤廃した非常に攻撃的でブルータルな作品。
バンド名はドイツ語で"自殺"を意味するがその手の印象は一切受けない。
バンドの持つテーマも考えると"血""歴史"の衰退(自殺)への憤りを表わしているのでは。

Darkenのミックスもかなり気合が入っているようで、
サウンドプロダクションもこの手のジャンルにしては音がしっかり分離して聞こえる。
ブルータルブラックが好きならお勧めの一枚。

ちなみに同名バンドがヴェトナムにいるらしく気になる。

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When I Cut the Throat : Ohtar (2003) 

ポーランドのブラックメタルバンド、Ohtarの1stアルバムを紹介。
アメリカのSupreme Artよりリリースされ、後にポーランドのOld Legend Productionsから再発された。再発盤では2000年のデモ"Wolfschanze"も収録されている。
今回、紹介するのはこの再発盤の方です。

ohtar1 ohtar1_2

FullmoonDiathyrronSelbstmordNecroによるバンドで、
いわばポーランドのアンダーグラウンドの重鎮のコンビ。

Fullmoonのスタイルを更に深化させたようなメロウなブラックメタルで、
非常に優れたメロディラインとプリミティブブラックの粗暴さが、
ガッツリ四の字で戦っている形でバランスをとった傑作である。

リフ一つとってみれば甘いと感じるほどのメロウなリフに関しても、
楽曲1つ、アルバム1枚で取りあげてみると決して"甘口"ではないのが特徴。
このバランス感覚の良さが素晴らしい。

NSBMにおいての名盤として取り上げられるのも納得の1枚。
デモ音源の方も素晴らしいので是非、再発盤をお勧めする。

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May The Hammer Smash The Cross : Thor's Hammer (2000) 

ポーランドのNSBMバンド、Thor's Hammerの2ndアルバムを紹介。
ドイツのAncestral Researchよりリリースされ、イギリスのSupernal Musicから再発された。

thorshammer2

GravelandCapricornusによる独りNSBMプロジェクトで、
このアルバムではギターにBoleslawなる人物が参加している。
また友情出演?でGravelandのRob Darkenがイントロを製作している。

音質、演奏ともにロウなサウンドで、陰鬱でミドルテンポも多いが激しさが見え隠れするプリブラ。
歌詞を観ればいかにもNSBMチックな文言が並んでいたり、
最後にはAbsurdGates of Heavenをカバーしていたり、
いかにもなのだが、音自体はポーランドのプリブラらしい内容と言える。

個人的にはGraveland、Fullmoon、Ohtarあたりの最重要ポーリッシュブラックバンドに比べると、
内容としては一つ格が落ちるような気もするのが、
ポーランドのプリミティブブラック人脈筋を追っていくと避けられないバンドだろう。

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【column】 NSBMとは一体何か? - III 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - II
http://staymetal.blog8.fc2.com/blog-entry-538.html

■ 続き

 前回のコラムでは音楽とネオナチ思想のリンクについてOi!PunkやRACといったジャンルから述べ、その系譜として生まれた異形にしてNSBMのパイオニアとされるAbsurdについて紹介した。今回は純プリミティブブラックメタルの界隈におけるネオナチ思想の発芽について述べ、現在の近年のNSBMの潮流についてまとめる。また、それらとペイガンメタルの違いについても言及する。

■ ブラックメタルにおけるNS的思考の導入

 Absurdの結成は1992年だが、その以前から従来のブラックメタルにおいてもネオナチ思想は散見されている。例えばBurzumのVarg Vikernesはネオナチ思想を持っていたとされる。1992年のファンジンのインタビュー記事では彼はとあるネオナチ組織について言及しており、また彼自身も他のものではあるが組織に参加していたという記述がある。彼の作品自体には直接思想を反映したものこそなかったが、ご存知の通り、当時はインナーサークルを中心にあたかも競技のように犯罪行為が相次いでおり、その中でネオナチ思想表現も邪悪なものとして導入されていった節がある。

darkthrone.jpg 例えば有名どころで言えば、Darkthroneの"Transylvanian Hunger"はVargが歌詞を5~8曲目まで書いているが、そのライナーノートには”True Norwegian Black Metal and Norsk Arisk Black Metal (Norwegian Aryan Black Metal)”という記載がある。しかも御覧の通り、Vargが作詞したことをかなり強調して表記してあるのがお分かりになるだろう。なお、この表記は後に取り外され、また次の作品でナチバンドでも政治的なバンドでもないことを表明している。また、Mardukの"Panzer Division Marduk"においてはジャケットにWWIIのドイツ軍の戦車を使用しており、これもNS思想ではないかという指摘があったが、バンド側はWWIIのテーマに則っただけで政治的なものではないと否定している。これら著名なバンドですら、このような事例が存在する。

 Campo_de_Exterminio.jpgちなみにこのような話はもっと昔から存在し、1987年にリリースされたブラジルのHolocaustoのCampo de Exterminioのジャケットやインナーにはヒットラーのコラージュなどナチス関連のものが多く使われており、彼らもまたネオナチの疑いがかけられた。勿論、彼らはすぐ否定したのだが、このようにサタニズムなどの邪悪性に取って代わるものとしてネオナチ的要素を組み込むことはAbsurd以前からなされていた。これらの事象は邪悪の表現として記号的に用いただけだから取り下げたのか、ネオナチ思想をアピールすることが今後の活動に障害になると判断して否定したのか、どちらなのかはバンドによって様々だろう。しかしVargがそうであったように、本気のネオナチ思想を持つ者も存在するのは確かであり、ネオナチ思想はブラックメタルの一部に侵食していった。この流れに順ずるNSBMはいわゆるプリミティブなブラックメタルスタイルや古くからのブラッケンスラッシュに歌詞やジャケットなどでネオナチ的エッセンスを組み込んだ作風になっている。

NOM.jpg 例えばオーストラリアのSpear of Longinus(1993年結成)。バンド名はロンギヌスの槍―イエスのわき腹を突いた槍であり、ヒトラーがウィーンの博物館で「啓示」を受けたとされている曰くつきのものだ。1st demo "Nazi Occult Metal"というタイトルからしてまんまなのであるが、彼らは昔ながらのブラッケンスラッシュをプレイしている。他にフランスのKristallnacht(1996年結成)。改名前のFuneralも含めれば1994年から。こちらは既に当ブログ内で解説したが、やはりナチス関連のバンド名である。このバンドはメロウなスタイルのフランスらしいフレンチプリミティブブラックをプレイしているが、特にそのメロウさは格別で未だに語り草のバンドであり、日本のInfernal Necromancyもかなり影響を受けたと聞いている。また、Absurdのカバーをしていることも特筆すべきであろう。これらのバンドはいわば既存のプリミティブブラックメタルにNS思想を乗せたものだと言える。

branikald.jpg ロシアではやや独自な形でNSBMが広がっていった感がある。ロシアのNSBMといえば、のBlazeBirth Hall(:BBH)の代表バンド、Branikald(1993年結成)はImmortalなどのブリザードブラックとは異なった寒気の伴うブリザードブラックで、アトモスフェリックが同居した幽玄的なサウンドが特徴のNSBMである。NS思想としては関連バンドのForestやNitbergの方は直接的なNSBMの姿勢を発しているのだが、やはりBranikaldは外せない。彼らのサウンドはかなり「自然」を感じる訳だが、それは自分たちのルーツに回帰していく中で、例えばIldjarnUlverなどと同様に自然信仰のような動きとも呼応しているように感じる。この辺りのブラックメタルのテーマにおいて自然崇拝的な動きとして現在ではカスカディアンブラックメタルとして現存している気がするが、ここは推論も多分に含まれる。

 また、ポーランドのFullmoon(1993年結成)。こちらはポーランドのNSBMを語る上で特に欠かせないバンドで、こちらは上記のバンドのスタイルとは異なり、ネオナチ的エッセンスそのものではなくアーリア人の優越性を表現しているといった方が適切だろう。そのためなのか、民族風メロディを使用していたりする側面も有って、音質も兼ねあって凶悪なプリミティブブラックを展開していながら、どこかに勇壮さやメロウな印象を持つ作品に仕上がっている。ウクライナのNokturnal Mortum(1994年結成)はシンフォニックでアグレッシブなブラックに民族的な旋律を導入したことで独特なサウンドを作り出すことに成功したバンドだし、表現方法こそ異なっていても同じような志向性だと解る。これはコラムのIで記述した通り、アーリア人の拡大解釈に伴うスラブ人の優越性からくるものであり、このようなムーブメントにおいてはスラブ民族の民族調メロディを盛り込んだブラックメタルに仕上がっているケースが多い。ちなみにこの流れからあくまでNSBMとしての側面を引っ張るバンドと、ペイガニズムを強調してNSBMから一線を引くバンドに分かれていくが、それはペイガンメタルを説明する際に語ろう。

■ おわりに

 以上、このようにエッセンスとして何らかしらのネオナチ思想を持ち込むことで、NSBMと言われていったバンドも多く、このことからNSBM自体が音楽性を定義するものではない比較的自由な表現方法になっていったと言える。またそんな中でAbsurdは当時、最も異端にして自由な表現を用いていたとも言え、それもまた彼らがNSBMの顔となっていった理由の一つでもあるだろう。

 故にこのジャンルの創出においては以下の通りである

 ・ Absurdタイプ(何でもアリ、RACやOi!Punkの影響を受けている)
 ・ 従来のブラックメタルを踏襲している
 ・ 民族優越性を強調した民族調ブラックメタル
 ・ ルーツ崇拝の末に自然回帰型

 次回のコラムではこれらのジャンルに対して、今回あげた以外のバンドやそのアルバムについても触れていきながら、NSBMの抑えておくべき名作を紹介していく。多分、ペイガニズムについて触れられるのはその次のコラムになると思われる。
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The Night And The Fog : V/A (1999) 

16のNSBMバンドによる伝説のコンピレーションアルバムを紹介。
アメリカのDungeons Of Darknessがリリースしたが、このリリース年度にオーナーが自殺、
そのためこのアルバムは再販もなく希少価値が非常に高い。

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現在では相当ネームバリューの高まったNSBMの面々が参加したコンピ。
アルバム名は「夜と霧」作戦からとっており、
まさしくNSBMを体現するかのような、この作品自体が「狼煙」のように感じる。

参加バンドの豪華さと収録曲のプリミティブさ、
そして何より作品全体から沸き立つ危険思想が
邪悪で真っ黒にアルバムを染め上げている。

自分はレイシズムを決して賛同する気はないが、
このコンピレーションアルバムはブラックメタル史上において
非常に重要なものであることはわかる。

このアルバムは非常に手に入りづらいが(私も借りました)
参加バンドによっては初期音源集に収録されている楽曲もあるので、
難しい場合はそちらからお求めになるのがいいだろう。
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