Evil "2nd demo" のリマスタリングver. 

以前、当ブログでインタビューさせていただいたEvil
2nd demoをリマスタリングしてYoutubeに公開したそうです。



インタビューでも
ちょっとやりすぎた(音をチープにしすぎた)かな、と反省していて(笑)、出来ることならリマスタリングしたいですね。
と仰っていたので、まさに有言実行ですね。

もちろんリマスタリングの方もやりすぎることなく、
曲の雰囲気はそのままにクオリティが底上げできているように感じました。
是非視聴してみてください。
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Interview with Ryo from Evil 


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 今回は日本のブラック/スラッシュメタルバンド、EvilのリーダーであるRyo氏にインタビューさせていただいた。Evilはメンバー全員が平成生まれの若手ブラックスラッシュメタルバンドだが、若さを感じさせないツボを押さえたオールドスクールなサウンドで多くの人の心を捉えている。それではさっそくご覧いただこう。



―Evilについて自己紹介してください。

 2011年、都内でGt/Vo-Ryo、Gt-Masaharu、Ba-Kengo、Dr-Mizukiの四人で結成し、翌2012年に13曲入りの1st demoを無料配布。2013年に14曲入りの2nd demoを自主制作でリリース、昨年はLurking FearとのSplitをObliteration Recordsからリリースしました。

 メンバーは中学の同級生で、もう十年目の付き合いになります。大学に入学した2011年春にMasaharuにスラッシュメタルバンドをやらないかと誘われて、結成しました。最初期はMetallicaの1st路線のスラッシュメタルをやろうかって話で、全部クリーントーンで歌っていたのですが、ある日スタジオでダミ声を出してから今のような路線に変わったと記憶してます。

 ちなみに一番最初に出来た曲は”断食”で、その次に”八つ裂き刑”、”火炙り”だったと思います。

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―ストレートなバンド名ですが、何か由来などはありますか。

 特に理由はありませんが、バンド名を決めるときに自分が「Evilはどうか?」と言ったところ、覚えやすくていいね、って感じで決まった覚えがあります。

 当時は同じ名前のバンドがいるってことは全く考えていなかったですね…。後々、あー調べたらたくさんいるじゃん…みたいな。本当に何も考えていなかったです。

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―まず2012年の"1st Demo"について振り返っていただけますか。

 内容は、Evilの音源の中で一番熱い出来だと今でも思っています。前半のライブトラックは初めてライブハウスでライブした時のもので、後半のものはスタジオでドラムを録音し、その後ギターやボーカルを家で重ねました。今では後半の曲は”卒塔婆の剣”くらいしかやらないですね。

―内容の素晴らしさもさることながら、無料配布の潔さに驚きました。

 まずはバンド名を広めることが第一優先事項だと考えていたので、あのように大量の曲を入れて無料配布にしました。

 今って何か付加価値がないと手に取ってもらえないじゃないですか…。それに無名のバンドのデモをお金出して買おうなんて、自分なら思いません。だからあのような形にしました。

―続いて"2nd demo"の方ですが、なぜあれをデモで出したのでしょうか。ボリュームといい、作りといい、もはやフルレングスとして出してもよかったのでは?1000枚プレスもほとんど捌けてしまったようで凄い勢いですね。

 フルレングスで出すほどバンドとして完成していませんし、デモとして発表すれば、後で曲の変更も加えられると思ってデモとしてリリースしました。

 プレスにしたのは、高級感を出すため、ですかね。内容はチープですが…。ちょっとやりすぎた(音をチープにしすぎた)かな、と反省していて(笑)、出来ることならリマスタリングしたいですね。

 1st demoも2nd demoも「曲がある程度できたから作ろう」と衝動的に作ったものなので、音も曲もかなり初期衝動にあふれていると感じます…。ちなみに2nd demoはBathoryの1stの音を意識して作りました。Bathoryの1stのギターの音が最高に好きなんですよね。ラジオから出たような音で、聴いていてとても心地よいです。そのような音を目指しました。

―"2nd demo"のジャケットにはSodomのオマージュがあったり、Lurking Fearとのスプリットでは実際にカバーもプレイしていましたが、やはりSodomなどのオールドスクールスラッシュ/プレブラックメタルの影響が大きいのでしょうか。

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 そうですね、まあ、自分が初期Sodom大好きなのもありまして…あのジャケットを作りました。

 オールドスクールスラッシュ大好きです。初期衝動に塗れている音って、何度聴いても新鮮にかっこいいなって思えるんですよね。例えばSarcofagoとかは聴くたびに「あ、こここうやって弾いてたんだ!こういうめちゃくちゃな展開もあるのか…!!」と新鮮な感動を覚えます。そういった未完成なものに自分は強く惹かれるんですよ。

―強いて言えば"1st demo"の方は若干、ジャパコア的な雰囲気もあり、"2nd demo"の方はむしろSabbat(Jap)の影響も感じましたがいかがでしょう。バンドのバックグラウンドなどがあれば詳しく教えてください。

 ジャパコアの影響はほとんど受けていないですね。当時は狂ったように初期Sodomを聴いてましたし。(まぁ今も毎日のように聴いていますが…笑)

 あくまで自分たちのルーツは初期Sodom、初期Bathory、初期Sepultura、Sarcofago、Hellhammerです。日本語詞がジャパコアの影響感じさせるのでしょうか。

―ちなみに1st demoや2nd demoに対する海外からの反響はありましたでしょうか?

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 1st demoはちらほら海外からの反響はありました。テープでリリースしたいってレーベルもありましたが、話はまとまっておらず、出すのかは不明です。出来ればレコードで出したいところですが…。

 2nd demoはほとんど日本での流通しかしていないので、あまり反響はありませんでしたね。しかし、日本に観光に来たタイ人が偶然タワーレコードで2nd demoを購入して気に入ってくれて、メールを頂きました。その繋がりで、1st demoと2nd demoのカップリングテープのリリースをすることにもなりましたね。
(編注:タイのレーベル、Witchhammer Prod.よりlim.50でリリースされた。既にレーベルソールドアウト済。)

 最近海外に50枚ほど流したので、反響があるといいのですが…!

―soundcloudにアップされた新曲の"死に晒せ"は完全にオッサンを殺害しにかかっている最高にオールドスクールな名曲ですね。

 ありがとうございます!あの曲、ちょっとBathoryのReaperっぽくないですか?
ギターを弾いてたらメインのリフが出来て、「あ、サビは死に晒せ!」にしよう、みたいな感じですぐ完成しました。個人的にもかなりよくできたと気に入っています。

視聴 → 死に晒せ by Eviljapan - SoundCloud

―日本語の歌詞であることのこだわりは?

 日本語で歌うバンドって意外と多いと思うのですが、自分たちみたいなBlack/Thrashを日本語で歌っているバンドって、今いないですよね。そこが個性的で面白いと思っています。いまのところ英語詞にする予定は無いです。

 サビで曲名を叫ぶってのはありがちですが、日本語でやったバンドっているんでしょうかね…?

―ハードコアなら沢山思いつきますが、メタルは日本語歌詞を使わないバンドがほとんどですね。

 そうですね、ハードコアならば結構聞きますね。自分たちに影響を受けて日本語歌詩のブラックスラッシュメタルバンドとか出てくれると嬉しいのですが…そういう存在になりたいです。

―歌詞といえば仏教の内容があったり、もしくはライブなどでも卒塔婆をモチーフにしたりしていますね。

 曲と曲名を作るのは主に自分(Ryo)で、歌詞はMasaharuにまかせているんですよね。自分が書いた曲もありますが。Masaharuが大学で仏教系の思想を学んでいたということもあって、仏教色が強くなりましたね。

 海外のブラックメタルはアンチクライストなら、じゃあ日本だったら仏教だろ!って気持ちもあります。そういう世界観も気に入っています。今までにはなかったんじゃないかなって思います。

―仏教観念を持ち込んだバンドといえばハードコアなら思いつきますが、このあたりのアプローチの仕方がジャパコアっぽさを想起させるのかもしれませんね。

 なるほど…そういったハードコアバンドは知らなかったです。意図せずにそういったジャパコア感が出たのですかね。

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―楽曲の作成はどのようにして行っていますか?

 主に自分(Ryo)が曲のプロトタイプを打ち込んで、曲名と一緒にMasaharuに伝えます。そしてMasaharuが歌詞を書いて、自分が歌いやすいように変える部分は変えて、スタジオで合わせて細かい所を詰めていきます。

―そろそろフルアルバムへの待望の声も大きくなってきましたが、どのような作品になりそうですか?

 そうですかね?もう若干飽きられている感はありますが…。

 これまでで一番いい音にしたいですね。いい音っていうのは決して音質がいいだけの音ではなくて、Slayerの1stとか、Whiplashの1stとか、ああいった分かりやすい音にしたいです。今までの作品はどれも音が気に入っていないので、今回はこだわりたいです。

 頭の中ではだいたいもう構成は固まっています。新曲も”死に晒せ”含めて4曲くらい入れようと考えています。

 Evilの作品のなかで最も邪悪で、世界中に衝撃が走るようなアルバムにしたいです。

―世界中に衝撃とは素晴らしい意気込みですね。世界となると単に国内流通のCDリリースだけでなくて、デジタルリリースか、もしくはアナログリリースも考えてらっしゃいますか?

 個人的にアナログリリースはとてもしたいのですが、なかなかレーベルが見つからないので、まずはCDでリリースします。そのあとアナログ再発…となるといいのですが!

―さて話は変わって先日のImpurity Japan Tourへの参加はいかがでしたか。

 関西初遠征でしたが、18切符で移動して、2泊で4000円の地獄の入口のようなホテルに泊まったりして、非常に楽しめました。

 Impurityも皆さんいい人たちで、一緒に食事した時はChakalのメンバーとは全員友達だとか、どんどん凄い話が出てきましたね…。Impurityのライブはもう最高でした。コグメロサウンドをこんなに近くで体験できるなんて、本当に幸せでした。興奮しすぎてあんまり覚えてません!笑

―はじめての大阪でのライブはいかがでしたか?

 まず東京と違って、大阪の人たちはライブが終わったらすぐ帰るな~、と思いました(笑)。ライブの方は、どうだったでしょうか、、、もう満身創痍で、全然お客さんの反応とか見ている余裕なかったです。


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―今回は自分の身の周りでもEvil目当てという人が多かったですよ。幕が開いて卒塔婆が並んでいた時の衝撃もすごかったですね。

 あの日は幕があって助かりました。普段はないライブハウスがほとんどなので、卒塔婆を一生懸命立てるメンバーの姿も見られてしまうという…笑

 あの日はオブリテのナルトシさんが立てるのを手伝ってくれたのもあって、いつもよりいいステージになりました。ナルトシさんには本当に感謝してます。

―またぜひ関西に来てくださいね。

 しばらくは忙しいですが、必ずまたいきたいです!

―話は変わって、定番の質問ですがAll-Time-Best 10アルバムを教えてください。

 今までこういった質問はされたこと無いので結構難しいですね…とりあえずぱっと思いつくのはこんな感じです。これらのアルバムは死ぬほど聴き込みました。まだまだ聴きこみが足りないですが…。

Sodom – Obsessed By Cruelty
Sarcofago – I.N.R.I.
Whiplash – Power And Pain
Slayer – Show No Mercy
Hellhammer – Demon Entrails
Bathory – Bathory
Black Sabbath – Paranoid
Metallica – Kill em All
Sepultura – Morbid Visions
Destruction – Sentence of Death

―さすが、すべてオールドスクールですね。逆に、最近注目している/好んでいるバンドなどはありますか?

 そうですね、最近聴いてよかったアルバムは

Ravencult - Morbid Blood
 ギリシャのブラックスラッシュメタルバンド。とにかく完成度が高く、このアルバムはしばらくの間一日中毎日聴いていたくらいハマりました。
ドタバタのブラックスラッシュかと思いきや、展開が非常に巧妙で、どの曲も外れがないです。とにかくドラムが最高です。ジャケットもChris Moyenが描いてて、これも最高です。是非ともアナログで購入していただきたい一枚ですね。

Diabolic Night - Sepultural Magic
 ドイツの一人ブラックスラッシュメタルバンドの1st EPです。これは若干ポンコツ感ありますが、声がとにかく好きです。曲の展開はどれもサビでブラストからスラッシュビートになる といったような、似たようなものばかりですが、ギターリフがかっこいいので全く問題ないです。デストラクションとソドムを彷彿とさせます。

 最近ハマったのはこの二枚くらいですね。声が良くないと好きになれないので、なかなかドハマりするバンドが見つかりません。

―今後の活動について教えてください。

 とりあえずしばらくは1stアルバム制作に力を注ぎたいと思っています。その後はどうなるかは分かりませんが、海外でライブを行いたいですね。まぁまずはアルバム制作ですね。期待にこたえられるよう頑張ります。

―ありがとうございました。1stアルバム、期待しております!



 以上、EvilのRyo氏のインタビューである。Impurityの関西公演を見に行った時の縁が巡り巡ってこのようなインタビューを行うことができた。お忙しい中の対応、真に感謝いたします。おかげで面白い話をお伺いすることができたのではなかろうか。

 インタビューを通して、私の感想だが、「そういえば自分が好きなバンドの音源も、そのバンドが『若手』のときの音源が多いなあ」ということに気付かされた。後々、レジェンドになっていたバンドももちろん『若手』という時代があって、その衝動を体現できているバンドに魅力を感じたものだ。

 その意味でEvilはそれをしっかり体現しているバンドであると思うし、今後、その『若手』という枠を取っ払ったときにどういった姿になっていくのかが非常に楽しみである。さらに言えば自分のような頭の中がオールドスクールなオッサンをいい意味で裏切っていって欲しいと思う。
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[Live] Impurity Japan Tour in Socore Factory (大阪) - 2015/03/28  

 昨年11月に日本のごく一部にて激震が発生した。何とあのImpurityが来日ツアーするというのだ!

 ライブレポート前に烏滸がましいがImpurityがいかにレジェンドであるか知らない方のために簡単にバンドの紹介をさせてもらいたい。



 Impurityはあのブラジルのコグメロレコードの"第二期生"に相当し(第一期生はSepultura、Mutilator、Sarcófago、Chakal、Holocaustoなど)、1988年に結成し、数枚のデモリリースの後に1stフルアルバムをコグメロよりリリースした。

 その後もトレンドにまったく左右されずに徹底的にブラジリアン1st wave BMを繰り出してきた。まさしく"不浄の洗礼"を世界各地に繰り返し行ってきたと言えよう。例えばあのBeheritとも親交があったとされており、まさしくこの界隈ではレジェンド的な存在であるが、こと日本では若干知名度が低かった。

 今回の来日ではそのような"不届きもの"に"不浄の洗礼"を浴びせるべく、遠い国、ブラジルより降臨したのである!!!

Impurity_Member.jpg 写真左はRam Priest氏(Vo.)。バンドの創始者であり、当初はほぼワンマンバンドであった。黒い司祭服に身を包んだカルトな風貌は"必見"である。まさにバンドのスタンスを物語る存在といえよう。

 写真右はRon Seth氏。1990年から加入し、当初はベーシストであったものの現在はギターを担当している。1stアルバムのアートワークを作ったり、さらにはSarcófagoのコンピ盤のアートワークも担当したことがある。今回のツアーにあわせてリリースされたImpurityと日本のSex Messiahのアートワークも担当したと小耳にはさんだ(未確認)。

 ドラムは昨年まではHolocaustoのRodrigo Führer氏がプレイしていたが脱退して、現在はGuilherme Cosse氏が加入している。そのためこの写真には出ていない。またベーシストも昨年脱退しており、現在はベースレスの3ピースで活動している。



 さて前置きはこのくらいにしてさっそく、当日のライブレポートを綴っていこう。

IMG_20150329_081843.jpg 開場と同時に入場し、まずはお目当ての一つであった上記スプリットを購入。ついでに持っていなかった2ndアルバム"Into the Ritual Chamber"も併せて購入。このアルバムは長らく廃盤になっていたが昨年ようやく再発されたのである。

 他にもImpurityはマーチャンを相当用意してきたようで充実した物販であったが、とにかくImpurityを最前列で見たいと思ったので最初から張り付いていようと必要最低限しか見なかった…が、後からかなり後悔したのは別の話。会場でお会いしたTwitterのフォロワーの方は1万円以上購入したと聞いた。またButcher ABC/はるまげ堂オーナーの関根さんも出店されていたが、ちょうど近くにいたときにSarcófagoの1stアルバムを知らない方の接客をされていて、思いのほかImpurity目当てじゃない人もいるのかと思った。

 とかく私は最前列をキープして開演をしばし待つ。不安だったのはいつもなら約束せずとも会場でお会いしそうな人が来ないこと。後から知ったのは当日は関西はハードコア/パンクのライブが目白押しだったそうで、完全に食い合いだったようだ。そのためかどうも開演前、人がいない。最前列キープと鼻息荒かった自分が赤面なくらい、前に人がいないのだ。先ほども含めてやはりImpurityを見たくてしょうがない人が少ないのかも…と残念に思った次第である。正直、今回は相当盛り上がると思っていたので予想外だった…。だからこそ今回はしっかりライブレポートを書かねばと思った次第なのである。


 さて当日のメンツを考えると、1発目は若手のEvilだと思っていたのだが、まさかのSex Messiah!正直、呆気にとられたが、「会場に遅れてしまった人には酷な順番だ」と思ったのは一瞬のことで、すぐに我を忘れてはしゃぎ回った。昨年のBlack Sacrifice Vol. 011でもそういえばトップバッターだったなあと。

 1st wave BMを基調にした日本では比較的珍しいスタイルであったこと、今までアナログリリースばかりだったこと、そして人脈筋がハードコアパンク寄りであったことなどから、国内のブラックメタルのメイン層では必ずしも知られているわけではなかったバンドであったが、現在の編成になってメタル人脈筋が太くなり、また待望のバイオグラフィCDも昨年リリースされたことで一気に国内指折りのBMバンドになった感があるが、顔ぶれを見ればそれも当然といったところか。

 ライブで見るのはこれで3回目だが、昨年のバイオグラフィCDとの対比をすると地獄系デスメタル的アプローチは幾分減退してもう少し直情的なハードコア寄りのサウンドになっている。恐らく宇田川氏のパフォーマンスそのものがそうさせるのではないかと思う。そして、その分だけライブでは頸椎へのダメージが著しい!前回の時もそうだったが、トップバッターでここまでダメージを受けると、普段は一児の父としてライブ参加は控えている身としては本当に首が持たない(笑)。逆に言えばそれだけ素晴らしいパフォーマンスだったということだ。

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 さてSex Messiahの幕が下り、一息。そこで気づくのは開演前もそうであったが、つなぎの会場BGMが最高も最高であった。とにかくBeheritをたくさん流してくれていたと思う。"Nocturnal Evil"と"The Gate of Nanna"がよくかかっていたように感じた。アー, セイタン!! アー, ルシファー!! 実際、ライブ会場のBGM選曲でBeheritなどのロウブラックを流すことは少ないように感じるため、何というかそれだけで「今日は自分の為のライブだ」と勘違いしてしまう。そのような特別な空間をもたらしてくれる体験こそ、ライブの良さであろう。

 閑話休題、二バンド目はFramtid。おお、Evilはメイン前なのか!と思いつつ、すぐにクラストの波に感情が埋もれてしまった。これまたBlack Sacrifice Vol. 011において出演予定だったがトラブルによってキャンセルだったこともあり、今回見れたことはメタルサイドの人間としては非常にありがたい限りである。D-Beatクラストは非常にメタルとの親和性も高く、日本が世界に誇るクラストバンドを生で見れて良かった。

 突進力、アグレッションという点においてはこの日もっとも強く感じたし、メタル野郎を薙ぎ倒してやろうとするクラスティーのプライドも感じた。しかし、その勢いに身を任せた結果、またもや頸椎にダメージが色濃く入り、いよいよ痛みが伴ってきた。

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 3バンド目はようやく日本の若手ブラッケンドスラッシュメタルバンドのホープ、Evil。幕が引かれてすぐ目に入ったのは卒塔婆である。何というライブ演出!

 関東からの襲来で夜行バスで来たとか聞いたのだが、そんな疲れも感じさせず、昔ながらのブラッケンスラッシュ、それも初期Sodomのようなオドロオドロしさと、それを裏付ける演奏のノリが非常に心地良い、また前2つバンドとはそのサウンドの性質の違いから非常に癒された(笑)。おかげで頸椎のダメージは幾分回復させることができた。

 無論、彼らのサウンドが激しくなかったというのではない。自分にとって初期Sodom的なアプローチはまるで"ホーム"なのである。そのようなサウンドを若手と呼ばれている彼らが体現していることを非常にうれしく思う。また関根さんがここぞとばかりに舞台袖や客最前列で彼らの写真を撮っている姿を見て、彼らへの期待を強く感じたものである。ぜひ、また大阪の地に踏み入れてほしい。例えば来年のTTFとかいかがであろうか…関西のベテランスラッシャー達をギャフンと言わせてもらえないだろうか。

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 3バンドのプレイを経て、心なしか会場のボルテージも変わってきた感じがする。ある意味、3バンドとも全くタイプが異なっていたし、各々にアイデンティティがあり、さらに言えば高みを目指す志向性においてのみ同じであったような気がする。そのようなバイブレーションした雰囲気に会場が揺り動かされたのではなかろうか。

 そして次に出てくるメインアクトはその3バンドのいずれも持ちえていないものを携えてくる。それは長年の活動に裏付けられた強固なブラックメタルに対する信念/執念と、そしてそのカルト的なカリスマ性である。まだ彼らの姿は見えていないのに、確実に会場を浸食していく。恐らくそれは未知なるものへの畏敬の念であっただろう…。


 そしてついに幕は上がった!!

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 やはりRam Priest氏は司祭服を身にまとっている!しかし写真で見るより、実物を見てしまうと「ホンモノ感」が半端ない。正直、今まで写真で見る限りは半ばネタっぽく扱われてもしょうがないという風に思えていた姿だったが、いざ目の前に、文字通り自分は最前列で彼の真正面にいたわけで、まるで洗脳された信者であるかのようにその御姿に圧倒されてしまったのだ。これは"不浄なる洗礼"なのか、と。

 しかしその後に耳に飛び込んできたのはRon Seth氏の日本語によるMCであった。

 みなさん とおいところから いらしゃってくださり ありがとうございます。
 わたしたち ばんどIMPはブラジルメタリカを だいひょうとして
 ミナス・ジェライスしゅう  べロ・オリゾンテし から まいりました。
 みなさまがたに おんがくで わたしたちの
 メッセジを おくりたいと おもっています。ここに いることが ほんとうに こうえいで
 かんしゃの きもちが いいあらわせません。
 ばんざいにほん  ばんざいみなさん。
 (原文ママ)


 何ということか!感動で打ち震えた…。こんなブラックメタルバンドの来日がいまだかつてあったであろうか!いやない!(反語) 彼らは90年代~00年代にブラジル国内ではほぼ無視されたシーンにいながらも信念をもって音楽を続けてきて、そして今では数百人、いや、数千人を前にしてプレイして熱狂を浴びるレジェンドなのである。

 最前列にいた自分は後方にどれだけ人がいたかはそこまで確認していないが、たぶんこの日の集客は正直、良くなかった。個人的に外タレのライブに来て内心不安に思うのは集客である。少なかったらわざわざこんな辺境の地に来てもらったのに、と申し訳なく思う。しかもそれが有名なバンドだったらなおさらである。

 しかしその日本語MCは自分のそのような不安な心を吹き飛ばしてくれた。全身全霊でこのライブを楽しもう、Hail Satan!!を唱え続けようと心を塗り替えることができた。本当にこの一瞬が今でも思い出すだけで感動で打ち震える!たぶん今までImpurityをよく知らなかった人たちも、この瞬間で心を根こそぎ奪われたことであろう。

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 彼らの醸し出すカルト的カリスマ性は本当に目の前で味わってみないと分からないと思う。サウンド的にはSarcófagoSamaelを足して二で割った…的な解説はできるであろうが、サウンドだけで語るのは片手落ちである。魔術などオカルティズムをベースにしたサタニズムが前提にあり、それを体現するためのサウンドなのであり、目的と手段が明確なのがImpurityなのである。

 とてつもなく速く何をやっているか全くわからないほどノイズまみれのパートもあれば、スロー/ミドルテンポで半ば鈍重に邪悪な瘴気をまき散らしていく様は本当にすごい。もはや何もかも圧倒されてしまって記憶が飛んでいるところもあるが、うっすら残っている記憶としてはセットリストまで計算が尽くされていて、序盤はとんでもなく飛ばしながら、徐々にスローミドルテンポを出していくことで、ライブ全体の空気を淀ませていく。一曲一曲ではなくてライブパフォーマンス全てが連続的にメッセージ性、ストーリー性をもって構築されている…これだ!これこそが本物のブラックメタルだ!

 1曲だけすぐれているとかそういうものではない。存在が邪悪であり、存在がブラックメタルである…彼らの存在こそがブラックメタルをブラックメタルたらしめているのだ。

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 夢中で拳を振り上げ続けた自分に、まさかRam Priest氏は手を差し伸べ、固く握手をしてくれた。

 自分は救われたのだ。
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The Hammer Of Antichristian Detonation : V/A (2012) 

チェコのDetonator666、ブラジルのHammergoat、イタリアのTundraによる3wayスプリット盤を紹介。
ブラジルのHammer of Damnationよりリリースされた。

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Hammergoat目当てで購入した3wayで購入時点では他2バンドは未聴。

Detonator666はチェコブラックらしいどことなく無機質な狂気が光るブラック。
かなりハーシュノイズきかせていてガビガビなところがまたそれを煽っている。
Maniac Butcherのギターも在籍している。

Hammergoatは安心の爆走ウォー/プリブラ。
1stフルよりさらに血管ぶち切れ系になっていて、
Evilが落ち着いてきているのでこっちで発散している?
おまけにドイツのPoisonのカバーというのもグッとくる。

Tundraはイタリアブラックらしくないような気がする、
がちゃがちゃ系のプリブラをやっていて、
Vonの"Watain"のカバーが素晴らしい。

聴く人は選ぶであろうが個人的には良スプリット。

Encyclopaedia Metallum - Detonator666
Encyclopaedia Metallum - Hammergoat
Encyclopaedia Metallum - Tundra
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Pure Black Evil : Evil (2011) 

ブラジルのNSBM/プリミティブブラックメタルバンド、Evilのコンピ盤を紹介。
ブラジルのHammer of Damnationよりlim.1000でリリースされた。

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このコンピは比較的近年リリースされた音源からのコンピで、
一部のみ未リリース音源も収録されており、
近年の彼らのサウンドを聴くにはちょうど良いことになっている。

イントロで随分音が良いが、その後続く音源は音質も方向性もまちまち。
志向性としてはよりペイガンブラックの方面にかじを切ったと言えるだろうが、
初期音源から比べるとだいぶ「まとも」な音に仕上がっているのではないか。
そして結構メランコリックで純粋にかっこいいと思えるものが揃っている。
(相変わらずリズムがずれるけど)

Moon Bloodのトリビュート盤に収録されていたカバーも入っていて、
結構気合入っていてカッコいいし、
もう少しアルバム編集の上で全ての音源の音質も統一すれば二重丸だったのだが。
まあそのバラバラ感もまたEvilっぽいと言えるのではなかろうか。

Encyclopaedia Metallum - Evil
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Chaos To Unleash A New Age : V/A (2006) 

ブラジルのNSBMバンド、Evil / Thallium / S.A.R.の3wayスプリット盤を紹介。
ブラジルのGates to Valhalla Recordsよりカセットでリリースされ、CD盤はアルゼンチンのDark Hidden Productionsよりリリースされた。

Chaos_To_Unleash_A_New_Age

Evil以外のバンドは全く知らないが全てブラジル勢のスプリット。

イントロ含めて3曲提供のEvilは初期よりBranikaldっぽさがかなり増しているが、
若干東欧ペイガンメタルっぽいメランコリックなリフを混ぜているのが特徴で、
このアルバムを手に取る人にならもっと長く聞いてみたいと思わせるのに十分。

4曲提供のS.A.R.はRAC混じりの典型的なNSBMサウンドで、
でもAbsurdみたいな妙に耳を引くサウンドというわけでもなく、
イギリスのネオナチ系RACバンドのBrutal Attackのカバーをやっているが、
カバーの出来も含めて4曲全て残念に聞こえる。

同じく4曲提供のThalliumS.A.R.の後でイントロから期待させてくれるが、
その後から始まる楽曲がまたいただけない…というかドラムなんじゃこりゃ。
曲は悪くないだけにこれならドラムマシン使ってほしいなあ。
このバンドはNSBMコンピのThe Night and the Fog IIでも曲出してるけどそっちは幾分マシ。

という訳でEvilの実質2曲のためのスプリットで良ければ手に入れても良いのでは。

Encyclopaedia Metallum - Evil
Encyclopaedia Metallum - S.A.R.
Encyclopaedia Metallum - Thallium
タグ: Evil  S.A.R.  Thallium  Brazil  2006-2010 
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Pagan Fury : Evil (2004) 

ブラジルのNSBM/プリミティブブラックメタルバンド、Evilの初期音源集を紹介。
ロシアのHexenhammer RecordsStellar Winter Recordsのサブレーベル)よりリリースされた。

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バンド結成の1994年から1996年まで3年間にリリースされたデモ音源のコンピ。
とかく音源をリリースしているこのバンドの最初期のサウンドを聴くことができる。

バンドメンバーは当時、The Pagan Frontにも所属していた生粋のNSBMバンドで、
この頃の彼らはIldjarnBranikaldの間くらいのミニマルさを持っているが、
更にポーランドのVelesなどのブラックメタル勢の"地味さ"も抽出して配合されているのが特徴。

人によってはこの音源はポンコツ度合いの愛敬を通り越してダメだと言う人もいるが、
私も繰り返し繰り返し聞こうとも思わないけれどもたまに聴くととても良い。
この尋常じゃない初期衝動のにじみ出てくる"危うさ"は他ではなかなか聞けるものではない。


Encyclopaedia Metallum - Evil
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Regeneration Through Depopulation : Hammergoat (2010) 

ブラジルのウォーブラックメタルバンド、Hammergoatの1stアルバムを紹介。
メンバーがオーナーのHammer of Damnationよりリリースされた。

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ブラジルのEvil、Ravendark's Monarchal Canticleのメンバーで結成したバンド。
それらと比べるとかなりデスメタルよりのベスチャルなゴートサウンドを披露。
いわゆる音質も演奏もヴォーカルもベスチャルで汚らしい感じ。

Blasphemyリスペクトなドカドカウォーブラックに、
戦争を想起させるサイレンSEなどもよく調和されているし、
同時に近年のEvilに近いペイガンブラックも織り交ぜたりして、
ウォーブラック初心者にもやさしい内容ではなかろうか。

最後にSarcófagoのThe Black Vomitをカバーしていて、
ああ、ブラジリアンブラックとしてとても真っ当な終わり方で
とても素晴らしいアルバムである。

Encyclopaedia Metallum - Hammergoat
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【column】 NSBMとは一体何か? - VII 【完】 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - VI
http://staymetal.blog8.fc2.com/blog-entry-577.html

■ 続き

 前回に引き続き、従来のプリミティブブラックメタルを踏襲した作風であるバンドをバンドを国別に紹介していく。今回は特徴的なシーンを形成しているロシア、フィンランド、ウクライナ、もしくは北米や南米にも目を向けていき、本稿を締めることにする。

■ ロシア

BBH ロシアのNSBMシーンを語るなら外せないのがBlazeBirth Hall(:BBH)である。BBHとはロシアのNSBMバンドの組織のことであり、前述したBranikald(1993-??)のKaldrad氏を中心に1994年に発足された。広大なロシアの中で、ブラックメタルはおろか、メタル自体のシーンも形成されていないような地方で発足したためか、その中で独自進化を遂げてCDリリースも行っていた。

 Kaldrad氏はBranikald以外のBBH所属バンドにも参加するなど大きな影響をもっており、BBH系列のとかく荒涼感のあるブリザードサウンド―すぐにBBHだとわかるほどの特徴のあるサウンドを各バンドにもたらした。自然主義的な印象も持っている曲調で、音からNS思想を感じることはない。但しメンバーの写真などを見ればわかるとおり、思想的にかなりNS寄りで、過激な行動にも及んでいた様である。現にKaldrad氏は2001年に不法武器所持(ネオナチの活動に使用していたようである)で投獄されている。

 Forest (1994-??)
 Raven Dark (1994-??)
 Nitberg (1999-)

Nitberg 上記3バンドはBranikald以外のBBH所属バンドの中でもよく知られているバンドであり、またメンバーがかなり重複している。Forestは中でも最もBranikaldに近い作風で、まさにBBHサウンドを体現しているバンドだろう。Raven DarkはForestに一時期参加していたUlv氏のバンドでKaldrad氏もゲスト参加していたが、BBHを語るならUlv氏の存在も無視できないが、残念ながら2005年に亡くなっている。NitbergはBBHの中で最もNS思想が露骨なバンドであり、むしろAbsurdタイプの項で紹介すべき自由闊達なブラックメタルである。何しろKaldrad氏がまるでAbsurd丸出しなボーカルスタイルなのだ。しかしそこはKaldrad氏だけあって、BBHサウンドとAbsurdタイプの融合が図られている。そのようなスタイルはThe Night and the Fog part IIに収録されている曲を聞いてもよく解る。しかし2010年にリリースされた2ndアルバムは路線をプリミティブブラックメタルに変更しており、聞く人を驚かせた。こちらは高品質なブラックメタルで、この項においてはむしろ2ndを推すべきだろう。それからNitbergのメンバーの在籍するWalknutはアトモスフェリックなブラックメタルであり、BBHサウンドも灰汁が無い程度に感じさせるサウンドで、BBH初心者には最適な音源である。

 M8l8th (2003-)

m8l8th_photo BBHと密接な関係を持つレーベルがStellar Winter Recordsである。このロシアのブラックメタルレーベルはBranikaldを含むBBH関連の音源を含め、他にもロシアのNSBMを多数リリースしているのだが、その中でもこのバンドは言及せざるを得ない。Molothというバンド名のoをわざわざ8に変えており、どう見てもネオナチシンパで危険なバンドであるが、なんとライブ盤まで出ている。考えるだけで恐ろしいライブだっただろう。彼らのサウンドはBBH系列とは異なり、まさしくプリミティブブラックメタルだ。Burzumのカバーをしているあたりも伺える。但しヴォーカルスタイルが少々アクの強さを感じるため、苦手な人もいるかもしれない。現在はポルトガルのFrenteuropa Recordsと契約しており、そちらのレーベルではまだ私も知らないNSBMバンドも所属しているようで今後注目していきたい。

 他にロシアのシーンにおいてはNa Rasputje (1997-)も有名だが、こちらは一枚しか音源を持っておらず、申し訳ないがあまり知識が無いので割愛させていただく。こちらもロシアらしいNSBMである。


■ ウクライナ

 地理的、文化的にもロシアのNSBMの影響を強く受けつつ、更に西欧のシーンとも交流があったことが伺える。このジャンルでは最も有名なバンドの一つ、Nocturnal Mortumを中心に人脈が広がっている。

 Hate Forest (1995-2004)

hateforest 既に紹介したNocturnal Mortumと並んでウクライナのシーンにおいて双璧をなしているバンドであり、「Aryan True Black Metal」と自称していた。彼らはアルバムによってその印象を変えてくるバンドであるが、その中で"Sorrow"や"Purity"は名盤として名高く、手法は違えどBBH系列のサウンドとも近い志向性を感じるし、かつ従来のプリミティブブラックメタルも兼ね合わせた荒涼かつ荘厳でありながら展開力のあるブラックメタルに仕上がっており、この手のスタイルにおける最重要バンドの一つである。解散後、Blood of Kinguというバンドを結成したが、こちらは更にルーツをインド、チベットの方に掘り起こしており、楽曲もそちらの影響を受けている。

 Hate Forestの関連バンドとしてはDrudkh、Astrofaes、Khorsが比較的有名だが、これらはペイガンブラックになっている。また人脈を辿っていくとDub Bukもまた取り上げるべきバンドだが、こちらもペイガニズムをテーマにしている。一方でDub Bukの関連としてUngernは完全にNSBMだが、こちらは楽曲があまり面白みが無く、特に紹介はしない。他にはNocturnal Mortumの関連バンドとしてAryan Terrorism、FinistがNSをテーマにしているが、未聴なので割愛する。


■ フィンランド

 フィンランドという土地柄は他の地域と比べてルーツ的、文化的に独立していて異色なところがある。そのためNS思想に必然性が無いためか、明確なNSBMシーンはないように感じる。但しところどころモチーフ的にNS思想を飾っているバンドは幾つかある。

 Satanic Warmaster(1998-)

SW ブラックメタルシーンにおいてもビッグネームとなったが、NSBMと区分けされることがある。確かに関連単語をメンバー名に利用したりするなど、記号的にNS思想をモチーフとしていることもあるが、あまり強いNS思想は感じない。また近年は特にそのようなモチーフ自体露にしておらず、恐らく活動に支障があるためではなかろうかと推測している。また別プロジェクトのThe True Werwolfでは作風もロウアンダーグラウンドだが、こっちの方で思想を発露している節がある。

 またGoatmoon(2002-)もフィンランドプリミティブブラックらしい作風で、こちらもあまりNS色は感じず、カルトプリミティブブラックである。また若干知名度は落ちるものの、Nekrokrist SS(2000-)もその系統でフィンランドらしいプリミティブブラックだが、バンド名からも伺える通り、思想は他のバンドよりはNS寄りかもしれない。このバンドは既に紹介したドイツのFaagrimと今年スプリットを出している。

■ 北米

 北米という地域は人種の坩堝だけあって、逆に白人と有色人種との歪みも根強く残っている。また移民が多く、自国の歴史というものがほとんど無いのも特徴だ。その結果なのか、少なからずNSBMシーンが存在している。

 Grand Belial's Key (1992-)

gbk_photo 日本ではそこまで話題に上がらないバンドだが、アメリカのNSBMの中では最も有名なバンドだと思われる。アルバムアートを見るととかくアンチキリストで、キリストなどに落書きしまくっているが、バンド自体は「アンチセミティズム」を掲げている。これはいわば「反ユダヤ主義」であり、その思想がNSBMと被っている。「アンチセミティズム」に関してはこのコラムの範疇を超えているので割愛するが、「ヒトラー万歳」のような歌詞は無いように感じ、レイシズムの塊のような作品を残している。。サウンドとしてもかなりカルトなブラックメタルだ。またメンバーのもう一つのバンド、Arghoslent(1990-)も非常に強烈な歌詞を残している。

 Pantheon (1993-)

Pantheon アメリカの有名なNSBMバンドの中ではもっとも露骨な思想表現をしている。サウンドこそペイガンブラックチックな内容だが、いかんせん歌詞が「我々こそがアーリアン民族の未来である!なぜならば我々は選ばれた民だから!」と咆えて、堂々たるプロパガンダを振りまいており、それがサウンドにも滲み出ているのかいかがわしい雰囲気に満ちている。また、このバンドは今回のコラムで取り上げた様々なNSBMバンドともスプリットを数々リリースしているなど非常に精力的に活動しているのが特徴である。しかし同名バンドが多数存在するので注意が必要だ。また彼らは最近、ポーランドのStrong Survive Recordsから音源をリリースしているが、このレーベルは結構なメンツが揃っており、このジャンルを掘り下げるならチェックが必要なレーベルだ。

 Birkenau (1995-??)

Birkenau アウシュビッツ強制収容所の名前を冠したNSBMバンドで唯一のデモ音源の写真もその収容所の写真が用いられている。Burzum直系の非常に不安になるような歪なサウンドが特徴だったが、後にI Shalt Becomeに改名してサウンドも変遷していき、「単なる」ディプレッシブブラックメタルになっていった。I Shalt Become自体はNS思想はないように感じるが、音源としてみるならば初期作品のほうがブラックメタルとしては出来が良いように感じる。

 他にGrom(1999-??)もNSBMに括られている。私は1枚アルバムを持っているだけだが、フォーキッシュなリフと強烈なヴォーカルスタイルに溢れんばかりのAryanスピリットが末恐ろしい音源だ。他にカナダのGeimhreがNSBMとされているがあまり特筆すべき内容ではない。むしろスプリット相手のShadeの音源として名前が挙がることが多い。


■ 南米

 南米はその土地柄か、非常にカルトなバンドが複数存在する一方で、Commandでも触れたとおり、ナチスドイツとの縁でNSBMシーンも存在している。

 Evil (1994-)

 The Pagan Frontにも所属していたバンドで生粋のNSBMバンドだが、作風自体はまさにプリミティブブラック。しかしかなりポンコツ気味なのと、ヴォーカルスタイルもかなり強烈でまさしくEvil。結構地味な作風なのに、明らかに「異質」感が漂っているのは思想の賜物なのかそうでないのか不明だし、あまり歌詞も目を通したことがないのだが、とかく凶暴。相当人を選びそうな楽曲だが、バンドの歴史も長くかなりの音源リリースをしており、どんなものか知る意味ではコンピレーション盤を買うと良いのではなかろうか。

 Seges Findere (1999-)

 こちらは激しく南米らしいNSBMで、昔からのコグメロサウンド譲りのベスチャルで粗暴なブラックメタルを引き継ぎつつ、それをNS思想のプロパガンダとして爆散させている。このバンドもかなり様々なNSBMバンドとスプリットを出していて、88などともリリースしている。

 他にアルゼンチンのFurorなどが存在するが、それよりこの南米という土地柄、とんでもないアンダーグラウンドが広がっており、Seges Flindereなどもそうだが、治安の悪いウォーブラックとNSBMの邂逅なんかも進んでいそうな雰囲気で興味深いが、何しろオーダーしづらいお国柄なだけに未知数な領域だ。


■ まとめ

 3回にわたってNSBMの重要だと思われるバンドを紹介してきた。しかし今回紹介したものは私が実際に聞いたもののみであり、他にも取り上げるべき重要なバンドが存在するだろう。また、バックグラウンドのこともあり、完全地下潜伏で活動しているバンドも数多く存在すると思われる。そのようなバンドにこそ、このジャンルの魅力を感じる人もいると思うが、そこまでいくと扱っているレーベル自体もかなりのもので、我々黄色人種ではオーダーすることすら叶わない可能性もあり、私としても守備範囲外である。そんな範囲内で紹介させていただいたので、まだまだ"序の口"の部分しか紹介できていないことを改めて申し上げておく。


■ NSBMとは一体何か?

 私はNSBMについて完全にプリブラの範囲内として音から入り、そのバックグラウンドが何たるか知らないまま徐々にその裾野を広げていった。そんな中、やはりAbsurdを聞いた時に明らかに「他と違う」カルトな雰囲気を感じ取り、それがNSBMだと理解した。しかしその後、実は自分が単なるプリブラだとしか思っていなかった音源もまたNSBMの範疇にあることを知り、改めて「NSBMとはい一体何か?」という疑問が生まれた。そしてそれを紐解くために調べ物を行いまとめていったものがこのコラムでああった。

 ではその疑問は晴れたのかというと、ここまでまとめておきながら、やはり音楽として定義するのは困難なものであることがわかった。Darken氏も言及していたように、言わば右翼思想が信念であるとすれば、NSBMを取り巻く極右思想はサタニズムの置換にすぎないように感じる。いわば新しい「邪悪」な表現のための代替品であった。その表現のために使われる音楽的表現が様々であったということであろう。 

 しかしそういう信念とは別にして、そのような表現を持ち出して作られた音楽にはパンク的な初期衝動を感じるものが非常に多く、言わば青いが故の魅力を大いに感じるところでもある。また一つにサタニズムとは異なり、あくまで人が人として「邪悪」であるという状態は、通俗的な表現だが「お化けよりも通り魔の方が怖い」感覚になる。そのような「危険」さというものも間違いなく魅力の一つになっていると考えられる。

 更に彼らが活動を通じてペイガニズムへの思想推移が散見され、欧州の思考体系も非常に興味深く感じる。他のブラックメタルのサブジャンルに比べてかなりデリケートな部分が大きく、何せ国によっては法律で禁止されるような話であるからして、個人的には頭を空っぽにして楽しむものというより、やはりバックグラウンドやバンドのアティチュードを音源を通じて何かを感じ取ることにより、更にこのジャンルを聞くことの意味が出てくると思われる。いや、むしろブラックメタル全体を見渡しても、浅く広くただ聞くだけの態度ではすぐ飽きるジャンルではないだろうか。単にこのジャンルを消費物のように聞きあさったところで何が残ろうか。過激な表現の数々はそれを如実に反映してくれているのではなかろうか。

 もう一度、自問する。NSBMとは一体何か?

 それはブラックメタルそのものであり、奥地であり、僻地である。

【column】 NSBMとは一体何か? - I
http://staymetal.blog8.fc2.com/blog-entry-524.html 
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