【column】 NSBMとは一体何か? - VI 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - V
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■ 続き

 前回に引き続き、NSBMの重要と思われるバンドを紹介していく。今回は従来のプリミティブブラックメタルを踏襲した作風のバンドを国別に紹介する。前回同様、このジャンルを知らない人向けなので、詳しい方向けの記事ではない。

■ ドイツ

 ドイツは法律による抑止力もあいまって、表立ってNS思想を公表するバンドは少なく感じる。また"Absurdの生まれた国"だけあって、従来のプリブラを踏襲した作風のNSBMは思ったより少ない。

 Totenburg (1998-)

totenburg2 バンド名はヒトラーが戦勝後に立てるはずだった兵士の慰霊モニュメント名から引用されている。1stアルバム"Weltmacht Oder Niedergang"でBurzumとAbsurdの両方のカバーを行っているが、そのどちらに似ているわけでもなく、淡々と曲が進行していくコールドブラックをプレイしている。その分だけ彼らの思想に単なる熱病的なものではない重みを感じ、必ずしも激することが初期衝動ではないことを示している。


 Bilskirnir (1996-)

Bilskirnir このバンドもTotenburgと同様にBurzumのカバーをしており、こちらはかなりBurzumのサウンドに影響されたようなサウンドになっており、その後はディプレッシブブラックメタルに作風を推移させていった。全体的に地味な作風のため聞く人を選ぶ。ブラジルのEvilにもゲスト参加したことがあるとか(未聴)。近年、Darker than Black Records(Absurdの元メンバーが運営)に移籍し、1stアルバムなども再発されて手に入れやすくなった。

 Faagrim (2009-)

 最近のバンドとしてこのバンドも取り上げておく。彼ら自身はポリティカルな姿勢ではないことを表明しており、どちらかというとルーツと誇りがテーマであるペイガンブラックなようだ。スタイルはプリミティブかつメロウなスタイルで同郷のNargarothやOdalといったブラックにも近く、その手のバンドが好きならお勧めだ。

 他にそこそこ有名どころでいえばWehrhammerなども上げられるが、筆者が未聴なため今回はリストアップしなかった。その他にはBlutkultや5:45あたりも比較的有名だが、同様にリストアップしていない。
 
■ ポーランド

 重鎮Gravelandについてはペイガニズムの項で既に触れたが、先述したFullmoonと共にポーランドブラックに大きな基盤を形成しており、従来のブラックメタルスタイルのNSBMバンドが非常に多い国である。この国のNSBMシーンは人脈が入り混じっており、どのバンドも何らかの相互関係を持っている狭い世界である。そのために双方の音楽性による影響も大きく、それらを辿っていくのも面白い。

 Ohtar (1996-2012)

ohtar FullmoonのDiathyrronが在籍していたバンドで、従来のプリミティブなブラックメタルスタイルと、そのFullmoonを更に深化させたようなメロウなスタイルをドラマチックに扱うことで強烈な音源を残した。彼らの音源はデモ~1stが強烈過ぎて、2nd以降の作品の印象は薄い。逆に言えば特に1stアルバム"When I Cut the Throat"は必聴盤である。まさにFullmoonの深化といって過言ではない。歌詞はミサントロピックな内容が多く、憤りよりも絶望を感じるような内容だが、ときおりにじみ出るNS思想に危うさをヒシヒシと感じる。今年に入ってOhtar自体は解散してしまったのだが、新しく"Boudlessness"というプロジェクトバンドを結成したとのことで、今後の活躍も期待される。また、Fukkmoon人脈としては他にDark Fury、Tho's Hammer、SelbstmordといったバンドもまたNSBMとしてカテゴライズされるので、Ohtarが気に入った人はそちらの方も掘ってみるのも面白い。但しOhtarのようなレベルを求めるのは厳しい。特にDark Furyはミサントロピックなサウンドすぎてかなり人を選ぶ。

 Infernum (1992-2005)

Taur_Nu_Fuin 今度はGravelandの分家的な存在であるバンド。ほとんど当時のメンバーが被っていてサイドプロジェクト的な感じだったが、1st"...Taur-Nu-Fuin..."がGravelandには持たざるメランコリックかつダークでありながら芯の強さを感じるメロディを持つプリミティブブラックメタルの名盤に仕上がっており、かつその溢れるNS思想からポーランド政府当局からも目を付けられていた内容である。このとき既にメンバーのKarcharothは精神疾患を患っており、いわば"常識的な右翼思想"を持つDarkenと確執が発生して、バンドとしては空中分解してしまった。その後、Karcharothは2002年に同名バンドを結成して、当時は2つの"Infernum"が存在していた。しかし彼の病状は治らないまま、2004年にワルシャワのタワーから飛び降り自殺してしまっている。そちらのInfernumは今でも活動しているはずだが、オリジナルのものではないので注意する必要がある。その後、オリジナルメンバーのDarkenとCapricornusは彼の追悼のために正式なInfernum名義で2nd"Farewell"をリリースした。因みにCapricornusは先述したTho's Hammerのメンバーでもあり、更にCapricorusとしてもNSBMをプレイしていたが、彼は重度の薬物依存症を患っており、2005年に現役ドラマーとしてのキャリアから降りている。

 Thunderbolt (1993-2007??) / Kataxu (1994-)

thunderbolt_kataxu ポーランドのNSBMとしてはArkona (1993-)が有名であるのだが、Arkonaに関してはバンド側は「ペイガンブラックであり、一切の政治的主張を持たない」と表明している。しかし関連バンドであるVeles (1994-)、Thunderbolt (1993-2007?)はそれぞれNSBMにジャンル分けされており、特にThunderboltはKataxu (1994-)と共にリリースしたスプリット"Black Clouds Over Dark Majesty / Roots Thunder"がNSBMにおける超重要名盤として位置づけられている、元々は両方のバンドのデモ音源を1枚のスプリットにしただけのものなのだが、どちらの音源もドラマチックな展開とプリミティブブラックらしい展開が程よく混ざり合い、一気に感情的になれる素晴らしい作品である。Thunderboltはその後、ファストブラックへと重きを置き、そのデモ音源以上の作品は残せなかった。また、Kataxuの関連バンドであるGontyna KryもNSBMとして評価の高いバンドでこちらも要チェック。

■ ギリシャ

 ギリシャのNSBMとなれば何はともあれLegion of Doom(1990-)だろう。初期音源はオーソドックスなプリミティブブラックだったが、その後思想の発露と共に音楽性も劇的に変化していて唯一無比の存在となった。このバンドに関しては今回のファンジンで詳しく触れられているので割愛するが、関連バンドとしてStutthofやAcherontasもチェックすることをお勧めする。但し双方ともNSBMでは無い。

 The Shadow Order (1998-)

The_Shadow_Order そのLoDにもゲスト参加したAithirが在籍しているのがこのバンドである。NSBMという枠組を超えてブラックメタル史上においても重要な名曲"End of Journey"を残しただけでも素晴らしい。メロウな旋律から曲の展開に至るまで、一つの究極を示した名曲だ。この曲が収録されている1st"Raise the Banners"はCD-Rでリリースされたが、その後にAutistiartili Recordsからジャケット変更、2曲追加されてCD盤で再発されている。しかしその後にNykta Recordsに移籍してリリースした2ndアルバム"Untold"がどうしてまたあんな作風になってしまったのだろうか、非常に残念だ。まだ活動はしているようなので、是非ともまた名曲を作り出してほしい。

 Der Sturmer (1998-)

Der_Strumer The Shadow Orderの関連バンドであるが、思想面においてはよりNS色の強いバンドだ。バンド名は英語名で"The Striker"。これは大戦中のドイツに実際に存在した反ユダヤ新聞の名称であり、かなり強烈な主張を行っていることがわかる。歌詞も非常に直接的なもので、Totenkopf Propagandaから昨年リリースされた3rdアルバムでもそのスタイルは全く変わることが無い。というのもバンドメンバーは全員Golden Dawnというギリシャの極右政治組織に所属している。Golden Dawnといえばギリシャのベテランブラックメタルバンド、Naer Mataronのメンバーも所属していたと思うが、最近の世界不況の中心であるギリシャでは民衆の支持を集め始めているとか。

 他にはAbsurdタイプで言及したGauntlet's SwordとWolfnachtを含めてシーンとしてはかなり骨太なものになっている。これに関してはやはり国の内情に因ると思われ、このジャンルに関しては今後も注目が必須である。

■ フランス

 既に触れたKristallnachtの関連バンドとしてはDesolation Triumphalis、Seigneur Voland、Osculum Infame、Blessed in Sinなどが挙げられるがいずれもNSBMではない。但しKristallnachtが好きならば聞いてみるべきバンドたちだ。このようにフランスではどうもNSBMシーンに向かない土壌なようだ。恐らくフランス人の気質が影響しているのではないだろうか。

 Bekhira (1995-)

bekhira_demo そんな中でこのバンドはあのThe Night and the Fogにも参加しており、作風としてもポーランドNSBMに近いサウンドを発している。最近はデモ音源がやはりDarker than Black Recordsから再発されるなど、今でも評価の高いバンドである。但しNSコンピに参加した割にどの音源についてもあまりそのような思想が現れることも無く、更に1stアルバムにはシークレットトラックとしてIron Maidenのカバーを収録したり、なかなかお茶目なバンドだったりするのかもしれない。

■ まとめ

 従来のプリミティブブラックスタイルのNSBMについて国別に紹介してきたが少々長くなってきたので、一度この辺りで切ることにして、次回はロシア、フィンランド、南米、北米のNSBMバンドについても紹介していく。
タグ: Totenburg  Bilskirnir  Faagrim  Ohtar  Infernum  Thunderbolt  Kataxu  The_Shadow_Order  Der_Sturmer  Bekhira 
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The Night And The Fog : V/A (1999) 

16のNSBMバンドによる伝説のコンピレーションアルバムを紹介。
アメリカのDungeons Of Darknessがリリースしたが、このリリース年度にオーナーが自殺、
そのためこのアルバムは再販もなく希少価値が非常に高い。

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現在では相当ネームバリューの高まったNSBMの面々が参加したコンピ。
アルバム名は「夜と霧」作戦からとっており、
まさしくNSBMを体現するかのような、この作品自体が「狼煙」のように感じる。

参加バンドの豪華さと収録曲のプリミティブさ、
そして何より作品全体から沸き立つ危険思想が
邪悪で真っ黒にアルバムを染め上げている。

自分はレイシズムを決して賛同する気はないが、
このコンピレーションアルバムはブラックメタル史上において
非常に重要なものであることはわかる。

このアルバムは非常に手に入りづらいが(私も借りました)
参加バンドによっては初期音源集に収録されている楽曲もあるので、
難しい場合はそちらからお求めになるのがいいだろう。
タグ: Kristallnacht  Bekhira  Thor's_Hammer  Thunderbolt  Fullmoon  Absurd  Graveland  Gontyna_Kry  個人的名盤  1996-2000 
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L'Elu du mal : Bekhira (2005) 

フランスのブラックメタルバンド、Bekhiraの1stアルバムを紹介。

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ブックレットに No contact No interview No thanks と記載があるように、
完全地下潜伏型ブラックメタルバンドなのだが、
クオリティが高すぎて、ここ日本でも評判の良さを耳にするバンド。

ノイジーなギター、リズム崩壊寸前のドラムに、凶悪なヴォーカルと、
まさにアンダーグラウンドでロウでプリミティブなブラックメタルなのだが、
メロディックブラックメタルに限りなく近いメロウなメロディが襲いかかってくる。
しかしプリミティブさを失っていないバランス感覚が見事!
こういうバランス感覚の素晴らしさは昨今のフレンチブラックの魅力かも?

ちなみに1曲目を巻き戻すと、Iron Maiden "Prowler"のカヴァーが隠しトラックで入っている。
こんなことをやっちゃう辺り、実は結構おちゃめな人たちだったりするのだろうか。

Encyclopaedia Metallum - Bekhira
タグ: Bekhira  France  Iron_Maiden  2001-2005 
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