Goat Worship - II 

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■ 90年代におけるChris Moyenの影響

 前回はなぜ山羊が悪魔的象徴とされるようになったかについて記載したのち、VenomBathoryのジャケットアートワークにも山羊が登場しているところまで話した。今回は恐らくこのブログに来るような酔狂な方なら1枚は手元にあると思われるChris Moyenのアートワークについてまず言及する。

 Chris Moyenは90年代初頭より主にデス/ブラックメタルバンドのアートワークを作成しており、テーマはすべてサタニズムである。そのため当然のごとくバフォメットが描かれたアートワークが散見される。1991年のBeheritDeath Yellのスプリット、Incantationの1st EPやGoatlordの1stフル、1993年のArchgoatの1st EP、1995年のImpricationのコンピレーションあたりはバフォメットの描かれた彼の初期作では有名なものであろう。またいずれも現在でも語り継がれている作品ばかりであり、これらは全て"Goat Metal"を印象付ける重要なものになっている。

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 個人的にもこれらの作品やバンドが自分の「Goatジャケ買い」の要因になったのは間違いないし、またいずれもノルウェイジャンブラックメタルとは本質的にモノが異なる1st-wave Black Metalから派生した作品群であることも特筆すべきことであろう。すなわちブラックメタルとデスメタルの境界が曖昧な時代の産物であるということだ。Imprecationのコンピこそ既にノルウェイジャンブラックメタルが覇権を握っていた時期だが、Imprecation自体、Incantationのフォロワーであったことから、いわゆるデスメタルの範疇の中にある地獄系デスメタルであった。

 現在のChris Moyenの作品にもバフォメット/ゴートは多用されており、変わらず"Goat Metal"のイメージ作りに大きな影響を与えている。


■ 様々なGoat Metalの形 - バンド名編 その1

 Chris Moyenによる"Goat Metal"の視覚的に植えつけだけでなく、様々な"Goat"要素の取り込みがある。まずはバンド名について見ていこう。

goatlorddemo.jpg まずは既に名前の出ているArchgoat、Goatlordはレジェンド的な存在であるが、前者は既にコラムで取り扱ったので後者について簡単に触れておくと1985年にアメリカで結成されたバンドで、いわゆるのちのブラックメタルとは全くルーツの異なる性質を持つバンドであり、スラッシュメタルの要素をあまり感じないドゥーミーで邪悪なデスメタルである。音としては現在のウォーブラックメタルとも類似点をいくつか感じる。なお、かのDarkthroneも1996年にGoatlordというタイトルのアルバムをリリースしているが、直接の関係はない。

 1987年にリリースされたデモ"Sodomize the Goat"はタイトルも相当ヒドいが、ごらんのとおり、とんでもなくスカムで冒涜的なジャケットになっている。これは本当にヒドい。あまりにもひどくて近年、再発されたりしている。もちろんテープで。

goatpenisdemo.jpg またブラジルのGoatPenisも前身バンドから考えると1988年に結成された"Goat Metal"のレジェンドであるが、彼らの1stデモ"htaeD no tabbaS"のジャケットもまた最高にスカムである。握るな、おい。またタイトルも逆さ文字を使っていたり。

 さすがに自分もこのカセットテープは持っていないが後に出たコンピ盤で聞くことができるのだけど、このころの彼らのサウンドは非常にオンボロかつ怪しげなデス/ブラックメタルであり、現在の軍事オタク系ソリッドウォーブラックメタルをやっている彼らのサウンドは全く想像できない。

 またBeheritのメンバーの別プロジェクト、Goatvulvaもこのころにある意味大暴れしていて、彼らのグラインドナイズなブラックメタルにさらにポルノノイズなどを混ぜた完全自由型スカムサウンドをやっていた。3thデモが"Baphometal"というタイトルで、これぞまさにという感じである。Beheritほどではないがアンダーグラウンドのごく一部では非常に支持の厚いバンドで、様々なバンドが影響を受けて曲名からバンド名を拝借したりしている。また近年ごく一部で話題になったデンマークのGoatfagoもまたGoatvulvaの直系チルドレンであり、こちらもまた脳みそをかき回すブラッケンドノイズをやっている。

goatsemen.jpg スカムといえばやはりこのバンド、ペルーのGoat Semen。セルフタイトルを銘打った2ndデモは写真に示す通り、これまたヒドい。しかしこのバンド、大好きである。

 実際、このコラムの着想を得たのはこのバンドの新譜が本日リリースになったからであり、我慢できずにBandcampでpre-prderしてしまったのだが、まだDLできないのでウズウズしているのである…というと話が反れたが、バンドの結成は2000年なのだが、新譜はなんと1stフルアルバムなのである。15年もの歳月だ。このバンドとの個人的な出会いは同郷のAnal Vomitとのスプリットで、度胆を抜かれるくらいカッコよかったのだが、そこからフルアルバムを待つこと10年だったわけで、非常にうれしいリリースなわけだ。というわけで皆さんもぜひチェックしてほしい。

 このバンドは当初から今に至るまでベスチャルなブラック/デスで貫き通していて、ウォーブラックともかなり近いというかほぼウォーブラックといってもよいようなサウンドを出している。フルアルバムを出していないのにライブ盤を出したりしているところも面白い。


■ 終わりに

 今回は"Goat Metal"のイメージをジャケットから植えつけたChris Moyenについて言及し、ジャケットと想起されるサウンドを一致させた功績について述べた。そのようにイメージづけられた"Goat Metal"について、まずはバンド名から主張しているバンドを列挙して紹介した。

 次回はその続きとして有名どころからちょっとマイナーどころまで様々に紹介していくとともに、他にバンド名以外についても歌詞テーマに採用しているバンドや、もしくはレーベルなんかも紹介していきたいと考えている。

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Heavenly Vulva (Christ's Last Rites) : Archgoat (2011) 

フィンランドのブラックメタルレジェンド、ArchgoatのEP盤を紹介。
フランスのDebemur Morti Productionsよりリリースされた。

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まだ3rdアルバムがAmazonさんから届かない…。

閑話休題、これは2ndアルバム後に出したミニアルバムで、
作品的にもほぼ同様の路線の音を出している。

強いて言えば2ndと比べると若干音の重さを和らげていて、
楽曲の外形にコントラストつけているので初心者にも聞きやすい内容だといえる。
Satanic WarmasterのWerwolf氏が一部参加しているからかもしれない。

デスメタル的な楽曲ディテールにより近づいた印象もあり、
今までで一番整合性ある音かもしれない。
とはいえ凶悪、邪悪、神秘的であることに何の揺らぎもない。

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The Light-Devouring Darkness : Archgoat (2009) 

フィンランドのブラックメタルレジェンド、Archgoatの2ndアルバムを紹介。
Blasphemous Underground ProductionsMoribund Recordsによる共同リリース。
現在の所属レーベルであるDebemur Morti ProductionsからもLP再発された。


Light-Devouring DarknessLight-Devouring Darkness
(2009/04/21)
Archgoat

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3rdアルバムのリリースまであと1週間と少しになりましたが準備はお済ですか!?

というわけで説明不要のレジェンドの2ndアルバムで、
1stに比べるとリーチャルで重い作風になっているが、
すべてArchgoatの範疇、1989年以来なにも変わっていない。

アルバムのコンセプトは「ロウで黒き光による滅亡の予言」で、
グラインドの強いミニマリズムさが"白き光"を浸食していくような印象を持たせる。
そして全く編集なしのサウンドプロダクションで神秘性を醸し出していて、
本当にすごいバンドは小細工なしに空気が作り出せるのだと圧倒される。

これぞトゥルーなブラックメタルであろう。

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Carelian Satanist Madness : Satanic Warmaster (2005) 

フィンランドのブラックメタルバンド、Satanic Warmasterの3rdアルバムを紹介。
ドイツのNo Colours Recordsよりリリースされ、その後も複数回リイシューされている。

satanicwarmaster3.jpg

このブログでもたびたび申し上げている通りフィンランドのトゥルーなブラックとは、
BeheritArchgoatのようなレジェンドバンドの繰り出す音であり、
Hornaを端に発する第二世代フィンランドブラックのそれとは異なると思っているゆえ、
私はこのバンドをどうしても穿った見方で見てしまう。

それでもここまでのビッグネームの来日に対して見向きもしないわけにもいかず、
改めてこのバンドについて見直す時期が来たと思ったのだ。
(この項を書いているとき、既に公演1日目が終わっている)

さてこの3rdアルバムは世間的にも名盤と捉えられているであろう一枚だが、
聴いてみるとやはりDarkthroneの4thアルバムあたりの影響を感じるし、
またその他ノルウェイジャンブラックのメロディックな面を踏襲していると思う。
但しそれらが全て違和感なく取り込まれていることに大きな才能を感じるし、
彼がミュージシャンとしての才覚を持っていることの証左であろう。

歌詞やジャケット、ブックレットなど彼の作品にはナチをモチーフにしている事も多い一方で、
インタビューでは再三、NSBMではないと主張しているが、
恐らく個人的な見解としては彼は何らかの演出にナチを使っているだけだと思われる。
つまり彼にとってはテーマは自分のやりたい音楽の副産物にすぎないのではないか。

こんな風に書くと「トゥルーではないエセブラックメタルだ!」と言いたいのかということになるが、
そういうつもりでもなくてブラックメタル"ミュージシャン"としての一つのスタンスであろう。
そういう意味ではライブパフォーマンスなどは逆にとても楽しみであり、
さてはて私は明後日11/2の大阪公演に行く予定である。

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Whore Of Bethlehem : Archgoat (2006) 

フィンランドのロウブラックメタルレジェンド、Archgoatの1stアルバムを紹介。
フィンランドのHammer of Hate Recordsよりリリースされた。

archgoat6

1989年結成もブラックメタルのコマーシャル化を嫌って1993年に解散した伝説的バンドの、
2004年再結成後、初の1stアルバムがこの作品であり、
もうそのくだりだけで奇跡的な作品であることが窺い知れるだろう。

彼らの活動などは以前、コラムにまとめてるのでそちらを参考にされたし。
その作品群の中でも最もグラインドのスピード成分が色濃く出た、
かなり"速い"曲が揃っているのが特徴である。

彼ら自身も言っているがこのようなグラインドの要素のあるブラッケンデス/ウォーは、
一定のネガティブな反応があることは理解できるが、
同時にこのジャンルに足を踏み入れるなら"聞かねばならない"作品だろう。
私はこの物言いが嫌いだがそれでもそう言わざるを得ない。

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Muspellz Synir: Nåstrond (2008) 

スウェーデンのブラックメタルバンド、Nåstrondの4thアルバムを紹介。
フランスのDebemur Morti Productionsよりリリースされた。

Nastrond

1993年より一貫してArganas氏とKarl NE氏の二人で活動しているバンド。
以前の活動については私は未聴なのだがこのアルバムはなかなか素晴らしい。

神秘的でダークな雰囲気を醸し出しつつも、
リーチャルなミニマリズムで表現された冒涜性も兼ね揃えていて、
レーベルメイトのArchgoatっぽさも垣間見れるし、
更に言えば神秘的な雰囲気を得たVONと表現できよう。

しかし今あげた2バンドのどちらに近い作風というわけでもなく、
作風ではなく志向性が近いのではないかと思われる。
どちらにしてもそれらのバンド同様、真性のブラックなのは間違いない。

いわゆるスウェディッシュブラックとは異なる作風なので、
そのあたりは注意されたし(むしろ自分には○)

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Bestial Black Metal Filth : Anal Blasphemy (2009) 

フィンランドのロウブラックメタルバンド、Anal Blasphemyの1stアルバムを紹介。
フィンランドのHammer of Hate Recordsよりリリースされた。

Anal_Blasphemy1

先日のArchgoatのコラムでも記述した通り、
Archgoatの復帰後、1stアルバムをリリースしたHammer of Hate
オーナーであるMolestor Kadotusの独りロウ・ウォーブラック。

もちろん彼はArchgoatが好きすぎてたまらない感じで、
基本的にはArchgoat崇拝系の内容になっている。

とはいえ若干音は軽めにも感じてオールドスクールデス要素は抑えられて、
プリミティブなブラックとしての魅力も感じるほか、
どう考えてもエロ下ネタ大好きなのでブックレット等も楽しめる。

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【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - III 

■ 前回

 【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - II


■ 最近の活動

archgoat8 前回は1stアルバム "Whore of Bethlehem" のリリースと、翌年のBlack Witchryとのツアーについて紹介した。そして2009年には2ndアルバム "The Light-Devouring Darkness" がBlasphemous Undergrond Prod.とMoribund Rec.の共同でリリースされた。

 また珍しいところではカセットテープでIncoffin Prod.からリリースされた。これはタイのレーベルで、この年に1stアルバムもカセットテープでリイシューしている。これらのカセットテープはレア化している。最初はブートリリースなのかと思っていたが、ちゃんとライセンスとっているそうで、350本限定リリースで更に最初の100本はデザインが異なり、パッチもついている。このカセットはまだ現物で見たことがない。恐らく世界中のArchgoatマニアックたちが手に入れていることだろう。

―――"The Light-Devouring Darkness" はどんな作品ですか?

 このアルバムのコンセプトは「"時"が来ることの予言」で、その時とは「ロウで黒いエネルギーが貧弱で不安定な白き光を覆いつくして、ついには滅ぼす」ときのことだ。カバーワークはアルバムタイトルのシンプルな解釈になっている。

 このオブスキュアな闇の光を表している "The Light-Devouring Darknesss" は音楽的にArchgoatの初期音源のルーツまで辿っているんだ。音源自体はミニマリズムの概念のもと、破壊のために身包み剥がされて装飾のないものにまでなっており、言わば"ライブレコーディング"みたいなものなんだよ。スタジオサウンド抜きでロウかつヘヴィなサウンドを構成したからだ。これは伝統的なやり方なんだが、まさしくArchgoatの真のサウンドなんだ。コンピュータを使って音を弄るようなことはしない。どう聞いてもArchgoatそのものだし、同時に次のリリースへのマイルストーンとしても満足いくようにできたと思う。

―――1stアルバム "Whore of Bethlehem" と比べてどうですか?

 我々のリリースは全て一つ一つ自然な連続性を保有していて、マイナーチェンジはしているものの大きな逸脱はしていない。"Whore of Bethlehem" は我々の作品の中で最も速い作品ではあったが、いつも我々の音源は同じ核を持っていて、特徴の何点かはより強調して仕上げた。

―――評判はいかがですか?

 ダイハードなブラックメタルマニアは、我々のことを「ブラックメタルがトゥルーだった頃」からいつもいい評判をくれるし、レビューもとても好感触なものだ。しかし例えばメロディックブラックメタルなんかを好む人からは相変わらず良い評判を聞かないな。私にとってそういうレビューには何も意味がない。私はシーンがどのように変わっていくか、シーンのトレンドを跳ね返すような意見が出てくるかのみを観察しているんだ。"友"は"刺客"になり、"刺客"は"友"になる・・・こんなゲームには混ざりたくないのさ。我々の創造するArchgoatは不変のものなのだから。


archgoat9 2010年にフランスのDebemur Morti Prod.からコンピレーション盤 "The Aeon Of The Angelslaying Darkness" がリリースされた。このコンピレーションには "Jesus Spawn"、"Angelcunt (Tales Of Desecration)"、"Whore Of Bethlehem"、"The Light-Devouring Darkness" の音源から引用されている他、"Hymns To Darkness" という1993年に録音されたままリリースされていないフルレングスLPの内容も収録されている。更に2005年のポーランドでのライブ、2009年のアメリカはヒューストンのライブ、そして地元ヘルシンキの2007年のライブ音源も収録されているので、今までのアルバムを持っている人でも買って損はない。ボックスセットでは2CD+2LPのものも出ている。

archgoat10 その後、2011年に最新EPである "Heavenly Vulva (Christ's Last Rites)" がDebemur Morti Prod.からリリース、これに際してDebemur Morti Prod.からは1stと2ndアルバムのLP盤も再発された。この "Heavenly Vulva (Christ's Last Rites)" は何とフィンランドのSatanic Tyrant Werwolf (Satanic Warmaster) がゲスト参加、どうやらプロデュース的なことをやったらしい。が、Archgoatの音源として1mmも変化していない、Archgoatでしかありえないサウンドに仕上がっている。Werwolfのインタビューを読んでみると、彼自身はBeheritと初期Impaled Nazareneと並んで、Archgoatをフィニッシュブラックレジェンドとして尊敬しているようで、どういう縁かは解らないが、プロデュースに関わることになったようである。(これは最近知ったので驚いた。私にはWerwolfの音源からはそのようなフィニッシュブラックの影響を感じていなかったからである!)

 他に同年、ギリシャのAltar of the Black Ramから "Angelcunt" のボックスセットがリリースされている。これは100個限定のリリースで、ポスター、ヴァイナルフレーム、バッチ、パッチ、ステッカーのマーチャンダイスが入っているようだ。なんとBOXはゴート革を使用している!さらに初回33コピーのみゴートスカルとボーンの一部が付いている(要るか!?)。

 今年2013年も複数フェスへの出演が決まっているなど今後のますますの活動、そして3rdアルバムのリリースが期待されるArchgoatについて、最後に彼らの不変なスタンスをまとめたインタビューを掲載して終わることにする。

Archgoat

―――Archgoatとして活動を始めたきっかけは何ですか?

 サタニックなメタルを通じて私の感情は炎のように燃え滾っていたし、また蛾のようにそこに引き込まれたとも言える。様々な偉大なメタルを通じて、更にその背後にある闇の門を開けた結果がArchgoatなのだ。

―――曲のタイトルはどうやってつけているのでしょう?

 歌詞を書く上でのアプローチに成熟とか軟化など有り得ない。Archgoatはサタニックブラックメタルオーケストラを作っているのであり、終わりまでそのラインからぶれることなく歩み続ける。我々のコンセプトには2つの異なる歌詞テーマがある。伝統的なサタニズムと、他の冒涜的なアプローチの2つだ。それらは我々の信念であるイデオロギーや経験、我々の人生から来ていて、その考えを反映させているんだ。その考えとは真の自然というものを明らかにしていくことを意味している。奴隷がマスクを外したかのような感覚だ。獣性という真の自然体がか弱き人物像から這い上がってきて、やがてオリジナルの自然に戻るということだよ。

―――誰がカバーアートのメインなんでしょうか。

 Archgoatは我々が全てプランして、了承したことのみ採用する。Chris Moyenは我々の作品を常に好んでくれているし、我々は彼にやってほしいこととして初めからとても細かく厳しいディテールリストを渡しているんだ。彼はそれに従って、作品が完成するまで何枚かスケッチを送ってくれるんだ。カバーアートのコンセプトは作品のテーマに沿って決まる。アートワークは本質的な部分だから、注意深く計画しなければならない。本当のブラックメタルの作品ならばな。

―――Archgoatにとってファンをどのように考えている?

 私のイデオロギーとして、自分の音楽について他人がどう考えているか、気にしないことにしている。しかし、自分の内に秘めた思いを暴露したいと考えているコンポーザーや、音楽の中に"ソウル"と呼ばれるようなものを込める類の人間にとっては、評判を聞きたがるんだろうな。私自身はコメントは聞いても、それによって何かを変えようとは思わない。Archgoatの音楽性は我々のイデオロギーの色付けであり、バンドの背後にある信念そのものだ。私はArchgoatとそのオカルトとサタニズムに全てを捧げている。私の人生の道なのさ。

―――ライブとは?

 ブラックメタルをプレイする感覚はまるでトランスしているかのようで、見たり聞いたりするものでもなく、五感全てで感じるものなのだ。最もポジティブな瞬間はやはりライブをやって、同じイデオロギーを共有できる仲間と出会うことだな。

―――他の何かから影響を受けるようなことはあるか?

 我々はフォロワーではなく創造者であり、トゥルーブラックメタルと理解されている今日希少なバンドの中の一つだ。現代のブラックメタルに散見されるプラスチック造型のイデオロギーは我々には決して到達できない。我々は信奉するのはサタニックデスカルトであり、申し訳ないがマントとマジシャンハットをまとってうろつく森などではない。それこそがイデオロギーだ。

―――あなた方の作風はBlasphemyに近いと思う。最近では言えばRevengeとかConquerorなどだ。それらのバンドとつながりはありますか?

 Revengeは聞いたことが無いが、Conquerorはいいバンドだ。音はBlasphemyに近い。音楽的にはArchgoatとは異なるように思うが、共通点は確かにあると思う。両方ともグラインドコアのスピードを持ったブラックメタルをプレイしていて、歌詞も同じメッセージ性を含んでいるように感じる。それらの主な影響はやはりBlasphemyだろう。

―――ではあなた方の音楽的な影響はなんでしょうか?Blasphemyと同じようにBathoryとかPossessedとか?

 影響をしているものは無いが、勿論Celtic Frost、Possessed、Sarcofago、Venom、Slayerなどは聞きながら育った。また、Blasphemyの"Gods of War"やBeheritの初期音源は私にとって同時期に活動していたものとして特別な作品だ。他にAutopsy、Carcassや初期Deathもここに上げておくべきだろう。

―――Angelslayer と Ritual Butcher は兄弟だが難しくないのか?

 俺たちはいつも同じ興味を共有していた。HellhammerやPossessedの歌詞とか、若かった時はサタニズムと呼んでいた哲学などだ。この哲学を二人で学び始めたんだ。兄弟とやるのは他の人とやるのに比べて難しいとは思わないな。


思想・哲学

―――あなたの人生にインスパイアしてくるものとは何だい?

 私は何の変哲もないものからそうではないものまで、様々なインスピレーションを描いている。野心もまた私の性格の強い部分だ。限界に近づきたいと思う気持ちとそれを更に超えていきたいという気持ちだ。哲学とか技術的なイシューからを学ぶことに対する欲望もある。

―――あなたは肉体的死後の世界の可能性を信じている?

 科学者としてはエネルギー保存が物理の根源的な法則だと思っている。つまり消えたり生まれたりするのではなく、形を変えるだけだということだ。

―――この世界は破滅に向かっているように思う・・世界規模で起こっている悪化だ。堕落が人類の魂に深く染み渡っている。未来への希望があるか教えて欲しい。

 人間の真の自然とは猿が二足歩行しはじめたときから不変だ。そのベーシックな要求や欲求も変わらず、その欲求の優先順位のみが時代と共に変わってきた。今日、人間のヒエラルキーのニーズはとてつもなく簡単に満たされることが示されている。それは彼らが自分のステータスである栄光とかそういった個人的欲求によって容易に駆り立てられるということだ。この手の欲求とは現代人の物理的欲求と同じくらい容易に達成しうるようになったんだ。そしてその欲求は日に日に堕落していく。自分の未来に関しては全く不安に思っていないよ。

―――宇宙についての考えは?広大でミステリアスで暗闇に何があるのだろうか。進化を信じる?

 堕落をやめたもの、進化し続ける種に食べられたもの全ての進化を信じている。人間は今日もっとも進化した。基本的に私はサタニズムとダーウィニズムは両方とも限界に到達し、さらにそれを超えていけるという点において同様に信じている。宇宙は地政学的には未開の地であり、私も思うところはあれど、それは事実ではない。

―――多くの人々はアルマゲドンの可能性についてあまり気を払っていない。無思考でいるんだ。そういう人間をどう思う?

 よく言われることとして「知識は痛みを増加させる」ということがある。ソファにふんぞりかえってメロドラマを見ることは、重い哲学的回答について頭を悩ますよりずっと簡単なことだ。現代人は容易く可能ものしか体験しようとしないのさ。そしてそれはその人間のライフサイクルに反映している。わたしはそういう愚かさ、平凡さを嫌うし、自ら遠ざけている。無価値の海に深く深く沈んでいくようにソファにふんぞりかえっている奴らからな。

―――あなたの宗教に対する考えは?死後について何か考えはある?

 はじめに言っておくと、宗教とは集団に向けられたもので、個人には向けられたものではない。そういった中で"解"に辿り着く訳がなく、あまりに愚かでバカげている。個人の枠組みにおいては…そうだな、モラルとイシューを与えることで明快な思考を得るということだけだろう。宗教とは常に弱く無価値で徒党を作ってしまうような人間をターゲットにしているものだ。弱く不安定な人間は非論理的な思考に容易に陥るのさ。


フィンランドシーン

―――初期フィニッシュブラックシーンを振り返ってみると?

 今より凄く小さくてもっと自分の生涯をささげていたな。しかし私はバンドの在籍している国について深く考えたことなどない。BeheritやImpaled Nazareneとは国が一緒なだけで他に何もない。ArchgoatはArchgoatなのだ。但しスカンディナビアブラックメタルは大概好まない。彼らのほとんどは自分自身をロックスターにしたいというメンタリティでやっているからだ。フィンランドは墓の盗掘や教会への放火なども無かった。ノルウェーやスウェーデンのシーンはそういう"サタニック"な活動で有名になったのさ。

―――私はあなたがBeheritのNHと長い付き合いだと知っているが、彼とコンタクトがとれる?

 我々は90年初頭はそうだったが、Archgoatを一度やめて以来、連絡を取ってないし、彼のことは噂でしか聞かない。噂も確固とした事実ではない。彼はブラックメタルシーンの最もオリジナルな人物だったが、残念ながらメタルをやめてしまった。しかし彼は常に一匹狼だったから、突然ブラックメタルシーンからいなくなってしまっても何の不思議もなかったな(2005年当時)

―――フィンランドのブラックメタルシーンに意見は?

 今日、90年代のシーンに回帰することはとても難しい。現代のフィンランドのブラックメタルは全く違うものになった。まるでノルウェイジャンの平均的なブラックメタルだよ。オリジナリティなんてない。そしてそのシーンは沢山の奴らが群れていやがる。イデオロギーと確かな手法を持ったアンダーグラウンドでタイトだったコミュニティは、いまやアベレージメタルに置き換わってしまったんだ。イデオロギーもオリジナリティもないやつだよ。アンダーグラウンドはオーバーグラウンドになってしまい、ブラックメタルの持つ古き価値は忘れ去られ、なくなってしまい、集団のものになって個人主義を考える余地を失ってしまった。もちろんその群れから抜け出している人もいるし、そんな人とは是非コンタクトを取っていきたいと考えている。もっとも、ブラックメタルを死に追いやったのはDimmu BorgirやCradle of Filthだ。プラスチックブラックメタルとコマーシャリティを混ぜたやつだよ。あいつらは大衆をブラックメタルシーンに容易に入ってこさせた。狼の群れに羊を混入させたようなものだ。


音楽・ブラックメタル

―――あなたの意味するブラックメタルとは何だい?

 音楽を作曲するということは強くイデオロギーに関係しているということをいつも感じていたし、だからこそロウなブラックメタル以外のものを作曲しようなんて思えなかった。ゆえにまずは哲学の探求から入り、その後に音楽を作曲することになる。ブラックメタルはより哲学的で、他のどんな音楽より、音楽性に裏付けられたイデオロギーそのものを体現しているのだ。サタニズムやオカルティズムといったものをね。音楽とは道そのものなんだよ。私がまだ子供だった頃、VenomやHellhammerの歌詞を読み、何を歌っているのか深くその意味を知りたかったなんてことがある。今日もなお、その道を歩んでいるのだ。

―――世界の音楽シーンの方向性についてどう思う?個人的に私としてはどのバンドの価値も失われていっていると思う。人々も戦うことを無関心だ。しかも不幸なことにこれらの人々が利益をシェアしている・・・これについてはどう思う?

 今日、多くのレコード会社があって、価値のないバンドが沢山在れば、多くの価値のないリリースがされて、ブラックメタルとしての本当の必要性が欠乏してしまっている。私はそのような新しいリリースをほとんど聞かない。そこには新しいアイディアやオリジナル性といったものが皆無だからだ。まあ単なる古いバンドの模造品だよ。自分自身の道を切り開くより、誰かの背後を歩く方がずっと簡単だからな。

―――NSイデオロギーなどのバンドについて個人的な意見は?

 ブラックメタルは自分の哲学の観点を表現する方法だと思っているし、政治的な観点を広める道具ではないと思う。サタニズムは"個人宗教(one-man-religion)"であるし、Archgoatの支柱である。そこに宗教や政治はいっさい混入されないし、哲学を政治的イデオロギーが覆い尽くすのは矮小なものがすることだ。

―――Darkthroneのようなバンドについてどう思うか?昔は否定的に捉えていたが?

 あの頃は沢山のデスメタルバンドが急にブラックメタルに転向してきた。彼らもその一つだと思っていた時期もある。しかしそれは間違えていた。私は今、Darkthroneに対して尊敬の念を抱いている。ブラックメタルシーンに大きな仕事をしてきた彼らを。今となってはあれはフィンランドとノルウェーの口げんかだったし、それを反映した発言に過ぎない。

―――20年来のブラックメタルシーンの重要人物として今日のブラックメタルについての考えを聞かせてください。

 (最重要人物だなんて)笑わせてくれるなよ。ありがとう。私にとってブラックメタルとは自分自身の宣伝などではなく、本当の闇を広めるためのものなんだ。80年代末~90年代初頭において比較していくとブラックメタルというものは本当に大きく変わっていった。今日に至っては、とてつもなく多くのバンド、レーベル、ディストロ、プロモーターが存在している。それはトゥルーであり続けること、つまりアンダーグラウンドにあり続けることを難しくしているんだ。私もこのような現代的な傾向を好ましく思っていない。ブラックメタルはコマーシャリティとは無縁であるべきなんだよ。



■ 引用

 今回の記事は

 ・ Arcana Noctis(04/09)
 ・ the Cross Of Black Steel magazine Issue # 2

などから引用した。凡そ年代は2005年~2009年のインタビュー記事で、他に出典不明の記事も一部引用してある。
タグ: column  Archgoat  Satanic_Warmaster 
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【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - I 

■ はじめに

 散々、このブログでも思いの丈をぶちまけている様に、私はBeheritをこよなく好むし、そのため90年代中盤から起きたフィンランドのブラックメタルの言わば"ノルウェイジャン化"について、音楽としては一定の理解は持ちつつ、現在ああいったものがフィニッシュブラックとして代表的になっていることについては甚だ遺憾である。

 何がフィニッシュブラックメタルのオリジナリティーかといえば、それはBeheritであり、初期Impaled Nazareneであり、そして今回取り上げるArchgoatであろうが、Impaled Nazareneはある時期から路線を変えてしまったし、BeheritとArchgoatは挙って90年代中盤に姿を消してしまった。これはノルウェーとフィンランドとの間で起きた抗争 - Dark Warと無縁ではないことが明らかになっているが、これはブラックメタル史におけるもっとも大きい損失であったと思っている。

 以前、Beheritのインタビュー記事を交えたコラムを書いたが、今回はArchgoatについて紹介していこうと思う。特にArchgoat復帰後の活動は活発的であり、リリースしている音源もトゥルーフィニッシュブラックと冠するに充分な、いわばArchgoatはArchgoatのまま不変であることから、今後もブラックメタルシーンの最重要バンドだと位置づけるべきだろうし、敬意を込めてインタビュー記事などバンドの実の声を中心にArchgoatについて紹介していきたいと思う。

archgoat_logo


■ 結成(1989年)

archgoat1
 ArchgoatはフィンランドのTurkuで、1989年にギタリストのRitual ButchererとベースヴォーカルのLord Angelslayerの二人の実兄弟によって結成されたブラックメタルバンドである。そしてドラマーのBlood Desecratorを加えた3ピースのバンドとして始動した。

 バンド名は彼らのサタニズム思想に伴って、Archangel(大天使)の正反対の名前にするべく、サタンの象徴であるGoatと合わせて名づけられた造語である。名付け親はAngelslayerであった。

 結成後しばらくは曲作りの試行錯誤を繰り返し、距離のとり方やアプローチの仕方などを模索していた。彼らは曲のことをhyms(: 聖歌)と呼んでおり、特に1曲目を製作するに試行錯誤を繰り返した末にそれを"Death & Necromancy"と名付けて、その後の楽曲のスタイルであるロウでプリミティブなブラックデスメタルを確立させた。

―――Archgoatのような音楽を始めた理由は何ですか?

 我々は自分たちで聞きたいものを作りたかったし、その過程でバンドの基盤となるイデオロギーを確立させたのさ。80年代終わりにはブラックメタルのバンドなんてほとんどいなかったし、だから俺たちはフィニッシュブラックというものを作り出したんだ。

―――影響を受けたバンドは?

 Carcass、Possessed、Celtic Frost、Sarcofago, Bathory, Slayer, Venomといったバンドからはインスピレーションを受けた。それらのバンドは自分たちのオリジナルをプレイしている。勿論、我々も彼らのコピーをしているわけではない。


archgoat2 そして1991年に1stデモ"Jesus Spawn"を発表した。このデモはブランクテープ+1ドルを郵送すると録音するというという非常にプリミティブな音源の配布方法だった。示している画像はその"Jesus Spawn"のものであるが、確かに前述の記載が見られる(画像クリックで拡大)。このような配布方法であっても非常に高い評判を得ることができたため、1992年にアメリカのレーベルであるNecropolis Rec.と契約することができたのである。

 なお、1993年には地元で行ったライブの音源 "Penis Perversor" を1stデモと同様の方法で配布している。メンバーはこの音質を「未だかつてなくラフで音量すら定まらないものだったが、逆に目的にはあっていた」と振り返っている。ちなみにこの音源のEncyclopaedia Metallumのレビューが現在1件だけついているが、「俺はこのバンドが大好きなんだが、このライブデモは全く持ってダメだ。Archgoatのファンは90年初期の音源の方が好きだと思うし、それが収録されているんだけどレコーディング状態が超ヤバい。まじでノイズの公害だよ。他の音源は是非聞いてほしいけど、このデモだけは避けるべきだ!」と書いてある(意訳)。まさにバンドの目的に合っていたという感想だろう。

■ 解散(1994年)

archgoat3 Necropolis Rec.と契約して初のオフィシャルな音源は、1993年リリースの "Angelcunt" である。収録されている5つのトラックはバンド活動を始めた1989年に書いたもので、Archgoatのルーツそのものであると言っても良い音源である。

 この音源の3曲目に収録されている "Death and Necromancy" 、これは彼らがその後の方向性を確立したとされる記念すべき"聖歌"であった。他にもこのMLPに収録されている楽曲はいずれもArchgoatの礎になったものばかりで、驚くべきはこの作品を1989年には製作していたということである。同ジャンルのレジェンドであるBlasphemyはデビューデモ "Blood upon the Altar" を1989年にリリースしており、全く同じ時期である。BeheritがBlasphemyの影響を公言しているのに対して、Archgoatは恐らくBlasphemyと同じようにゼロからロウブラックを作り出したということは特筆すべきことであろう。

 ブラックメタルシーンとそれを取り巻く全てのものは、より高みを目指そうと進化しているのではなく、変化しようとバイブレーションしているだけだ。しかし我々は活動内外問わずArchgoatとともに常に歩み、そして如何なることが起きようとも変化することなく、ルーツに対して忠実になることを決めた。ゆえに "Angelcunt" の楽曲は常にライブのセットリストに入るだろう。


 このMLPも好評を博したことから、彼らはすぐにフルレングスの制作に取り掛かり、レコーディングも終えていた。しかしそれを発表することなく、なんと1994年にバンドは解散してしまったのである。また、遅れて1999年にはNecropolis Rec.からBeheritとのスプリットがリリースされたが、それも "Angelcunt" の音源が収録されていただけのものであった。

 後にインタビューにて当時のことを以下の通り振り返っている。

―――Beheritとのスプリットは1995年リリースだったのに何故、新曲ではなかったのでしょう?

 我々はNecropolis Rec.にフルレングスLPのリリースを提案して、既にスタジオレコーディングも済んでいたんだ。しかし "Angelcunt" のロイヤリティをレーベル(Necropolis Rec.)からリップオフされた。だからもう一緒に仕事をしたくないと判断して、その新曲は使わなかった。あいつらはブラックメタルのためじゃなくて、金のためにレーベルをやっていたんだ。他にも90年代には中小規模のレーベルが契約を望んできたが、それらとは契約しなかった。

 あとNecropolisとはBarathrumとのスプリットリリースの話もあったんだが、NecropolisサイドがBarathrumの音源を聞いてリリースしたくなくなったとかで、代わりにBeheritになったのさ。そのカバーアートは我々サイドからは一切口出ししていないし、そのスプリットのリリース経緯は実に気に食わなかったよ。

―――どうして解散したんですか?

 1993年から1994年にかけて、ブラックメタル自体がコマーシャリズムに侵されてアンダーグラウンドからオーバーグラウンド化していくのを目の当たりにしていた。我々はそんな間口が広くて誰でも出入りが可能なブラックメタルシーンにうんざりしたのさ。真のサタニックデスカルトの精神はメロディック、メランコリック、ポリティカル、宗教とかそんなものに取って代わられるようになってしまっていた。我々はそのようなシーンの一部にいようなんて思わなかった。

 更には金や個人的な栄光のためにブラックメタルをプレイしはじめたメタルクソ野郎どもが跋扈し、我々を攻撃しだしたのさ。我々はそういうアホどもにArchgoatについて言及すらして欲しくなかったし、最も最善な決断が「Archgoatを抹殺(解散)する」ことだったんだ。だから1994年に活動をやめたのさ。そのときシーンはすでにクソみたいなコピーバンドで埋め尽くされていたよ。


 恐らくここで言う「攻撃」とはフィンランドとノルウェーの間で起きた "Dark War" によるものだと思われる。以前のコラムでも書いたとおり、Beheritはこの頃、様々な脅迫を受けていたし、またフランスのVlad Tepesのメンバーは逆にフィンランドのブラックメタルバンドに脅迫状などを送っていた。

 様々なインタビューを見る限り、Archgoatのメンバーは聡明であり(どうやら物理学を専攻していたっぽいところもある)、ブラックメタルとしてのバンドの位置づけや活動指針なども明確であったが故、ブラックメタルシーンに寄り添うことなく孤高の道を歩んでいたから、そのようなバンド同士のイザコザに巻き込まれるなどして、シーンが形骸化していったことに失望してバンドを解散することを決めたようだ。またBeheritもほぼ同時期にブラックメタルとして活動を止めている。

 その結果、シーンはDarkthroneやBurzumといったノルウェイジャンブラックの未曾有のコピーバンドで満ち溢れ、フィニッシュブラックは息絶えた。今、このような状態を振り返ると、ブラックメタルシーンとしては大きい損失だった。それはフィニッシュブラックという1シーンが死んでしまったということより、むしろ「群れることなく個々が各々存立する」という個人主義精神の損失、そしてブラックメタルという音楽が、精神的なものから「音楽形態」として成立するようになってしまったという事態に対してである。

 勿論、ブラックメタルという音楽が崇高なものであったかというとそうではないだろう。むしろ、いかに青い思想であっても「どうしてそういう音楽をプレイするか」という"目的と哲学"を持っているバンドが形成していたシーンがあった。しかし「音楽とスタイルをコピーする」バンドが満ち溢れるようになった状態をArchgoatは "オーバーグラウンド化" したと表現しており、その状態に失望したのだろう。

■ 終わりに

 前回、前々回のシリーズはNSBMとLLNという、実際自分が前から触れているものというよりかは、自分の中でまだまだ不鮮明なものを理解するために書いたもので、かなり手探りなものであったが、今回は久しぶりに自分の好きなものを推す形でコラムを執筆できることはとても楽しく思う。

 続いて次回は解散後、Archgoatのメンバーがどうしていたか、また再結成後の活動などに触れていきながらArchgoatというブラックメタルレジェンドの本当の姿に近づいていく。

[続] → 【column】 Hail Finnish Black Metal Legend - Archgoat - II
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Messe Des Morts / Angelcunt : Beherit / Archgoat (1999) 

フィンランドのカルトブラックメタルレジェンド、BeheritArchgoatのEPのスプリットを紹介。
Necropolis Recordsよりリリースされたのち、ISO666 Releasesからリイシューされた。

Beherit_split.jpg

以前、Beheritのコラムでも紹介したスプリットで、
フィンランドの第一世代ブラックの終わりを告げた音源である。

両バンドとも解散の直前に作ったEPのスプリットであり、
どちらも当時の非常にプリミティブでベスチャルなブラックメタルを展開。
今さら何を言うこともない素晴らしすぎるスプリットだ。
両バンドが活動を再開していまもなおアルバムを出していることが感無量。

今考えるととんでもないレジェンド同士の組み合わせのスプリットで、
非常に貴重なものであるからしてリイシューもされている。

Encyclopaedia Metallum - Beherit
Encyclopaedia Metallum - Archgoat
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