May The Hammer Smash The Cross : Thor's Hammer (2000) 

ポーランドのNSBMバンド、Thor's Hammerの2ndアルバムを紹介。
ドイツのAncestral Researchよりリリースされ、イギリスのSupernal Musicから再発された。

thorshammer2

GravelandCapricornusによる独りNSBMプロジェクトで、
このアルバムではギターにBoleslawなる人物が参加している。
また友情出演?でGravelandのRob Darkenがイントロを製作している。

音質、演奏ともにロウなサウンドで、陰鬱でミドルテンポも多いが激しさが見え隠れするプリブラ。
歌詞を観ればいかにもNSBMチックな文言が並んでいたり、
最後にはAbsurdGates of Heavenをカバーしていたり、
いかにもなのだが、音自体はポーランドのプリブラらしい内容と言える。

個人的にはGraveland、Fullmoon、Ohtarあたりの最重要ポーリッシュブラックバンドに比べると、
内容としては一つ格が落ちるような気もするのが、
ポーランドのプリミティブブラック人脈筋を追っていくと避けられないバンドだろう。

Encyclopaedia Metallum - Thor's Hammer
タグ: Thor's_Hammer  Absurd  Graveland  Fullmoon  Ohtar  Poland  1996-2000 
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Suicidal Emotions : Abyssic Hate (2000) 

オーストラリアのデプレッシブブラックメタルバンド、Abyssic Hateの1stアルバムを紹介。
ドイツのNo Colours Recordsよりリリースされた。

abyssic_hate

バンド名はDarkthroneのIn the Shadow of the Horns(2nd収録)から引用しており、
また当初はAbsurdをカバーしたりするなど
アーリアン思想傾倒のプリミティブブラックをプレイしたが、
このアルバムでは自殺系ブラックと言われるようなデプレブラックになっている。

当初から自傷的な歌詞テーマ、ジャケットのデモも出していたが、
このアルバムでサウンドともに完全にデプレブラックになった。
この頃はまだシーンにおけるデプレブラックの存在感は薄く、
プリミティブ時代から知っている人からしたら賛否両論出た作品だった。

今聞いてみると自殺系ブラックのパイオニアの一つとして、
この時期周辺にShiningやらForgotten Tombやらも
似たようなアルバムを出していることを考えると、
後のシーンを作り上げた"芽"のようなアルバムに聞こえてくる。

Encyclopaedia Metallum - Abyssic Hate
タグ:   Abyssic_Hate  Darkthrone  Absurd  Shining  Forgotten_Tomb  1996-2000  Australia 
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Sturmangriff : Command (2004) 

ブラジルのNSBMバンド、Commandの1stアルバムを紹介。
ギリシャのTotenkopf Propagandaよりlim.1000でリリースされた。

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NSBMコンピ盤 "The Night and the Fog II"にも1曲提供しており、
以前、NSBMのコラムでも紹介し、Absurdタイプとした作品。
現にこのアルバムにはAbsurdのカバーもおさめられている。

とにかくナチ関係の演説やら機関銃音やらそれ系のSEが多用されており、
メロディラインもメタリックなOi!パンクというような解りやすさがあり、
総じてナチスオタクっぽい雰囲気で溢れているカルトなブラックメタルになっている。

また1999年にSouthern Productionsからリリースされたデモ音源も収録されているが、
そちらは更に音質がズタボロのプリミティブなカルトブラック。
音楽的に聞くべきところがあるというより、
むしろ作品全体に介在する危険思想を体感するためのものという位置づけの作品。

Encyclopaedia Metallum - Command
タグ: Command  Absurd  NSBM  Brazil  2001-2005 
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Heidentum / Night Of The Werwolf : Wolfnacht (2008) 

ギリシャのNSBMバンド、Wolfnachtのコンピレーションを紹介。
ドイツのChristhunt Productionsよりリリースされた。

wolfnacht_comp

1st"Heidentum"と同年リリースの2nd"Night of the Werwolf"のコンピ。
どちらも手に入りにくいアルバムなので嬉しいコンピ盤。
今ではNSBMの重鎮なので資料的価値も大きい。

1stは彼らのルーツと思われるDarkthroneGravelandのようなプリブラに、
The Shadow Order人脈筋らしいギリシャNSBMを絡めたような、
楽曲によって様々なバンドの影響を折々感じる作風になっている。

2ndはだいぶ攻撃的になっていてWolfnachtらしいアグレッシブな姿勢が出てきている。
3rdアルバム以降の作風にだいぶ近づいたという印象なのと、
Absurdのカバーでお約束の"Eternal Winter"をプレイしており、
ああいうパンク的な楽曲も今後の布石になった。

作品としての完成度は以降のアルバムに譲るが、
Wolfnachtの軌跡を辿るには必ず聞くべき作品だろう。

Encyclopaedia Metallum - Wolfnacht

【追記】
2ndアルバムの"Night Of The Werewolf"が今年、LP再発される(た?)ようです。
現在所属のEvil Risingから。
タグ: Wolfnacht  NSBM  Absurd  Halgadom  Greece  2006-2010 
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Weltmacht Over Niedergang : Totenburg (2000) 

ドイツのNSBMバンド、Totenburgの1stアルバムを紹介。
Fog of the Apocalypseよりlmd.200でリリースされたのち、2011年にHammerbund Tonschmiedeで再発された。
再発盤は5曲、ボーナストラックが追加されていて、うち1曲はAbsurdのカバー。

totenburg-weltmacht-oder-niedergang Cover

持っているのが再発盤なのでそちらの方のインプレッションになる。

バンド名はヒトラーが戦勝後に立てるはずだった兵士の慰霊モニュメント名から。
ドイツのNSBMとしては比較的、直接的な表現を使って思想を表現している。

このアルバムではAbsurdBurzumのカバーが収録されており、
両方の思想から色濃く影響されたのだと思うが、
だからといって聞いてみるとそれらのサウンドからはあまり影響を受けていない。

良くも悪くもかなり地味というかフラットな展開の楽曲ばかりで、
カバーもそれらのバンドを想起させず彼らの領域で展開。
逆にこの精神的なフラットさがNS思想と絡み合って妙な迫真感を出しているのが特徴。
こういう精神世界に興味があれば聞く価値はあるだろう。

Encyclopaedia Metallum - Totenburg
タグ: Totenburg  Germany  Absurd  Burzum  NSBM  1996-2000 
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【column】 NSBMとは一体何か? - III 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - II
http://staymetal.blog8.fc2.com/blog-entry-538.html

■ 続き

 前回のコラムでは音楽とネオナチ思想のリンクについてOi!PunkやRACといったジャンルから述べ、その系譜として生まれた異形にしてNSBMのパイオニアとされるAbsurdについて紹介した。今回は純プリミティブブラックメタルの界隈におけるネオナチ思想の発芽について述べ、現在の近年のNSBMの潮流についてまとめる。また、それらとペイガンメタルの違いについても言及する。

■ ブラックメタルにおけるNS的思考の導入

 Absurdの結成は1992年だが、その以前から従来のブラックメタルにおいてもネオナチ思想は散見されている。例えばBurzumのVarg Vikernesはネオナチ思想を持っていたとされる。1992年のファンジンのインタビュー記事では彼はとあるネオナチ組織について言及しており、また彼自身も他のものではあるが組織に参加していたという記述がある。彼の作品自体には直接思想を反映したものこそなかったが、ご存知の通り、当時はインナーサークルを中心にあたかも競技のように犯罪行為が相次いでおり、その中でネオナチ思想表現も邪悪なものとして導入されていった節がある。

darkthrone.jpg 例えば有名どころで言えば、Darkthroneの"Transylvanian Hunger"はVargが歌詞を5~8曲目まで書いているが、そのライナーノートには”True Norwegian Black Metal and Norsk Arisk Black Metal (Norwegian Aryan Black Metal)”という記載がある。しかも御覧の通り、Vargが作詞したことをかなり強調して表記してあるのがお分かりになるだろう。なお、この表記は後に取り外され、また次の作品でナチバンドでも政治的なバンドでもないことを表明している。また、Mardukの"Panzer Division Marduk"においてはジャケットにWWIIのドイツ軍の戦車を使用しており、これもNS思想ではないかという指摘があったが、バンド側はWWIIのテーマに則っただけで政治的なものではないと否定している。これら著名なバンドですら、このような事例が存在する。

 Campo_de_Exterminio.jpgちなみにこのような話はもっと昔から存在し、1987年にリリースされたブラジルのHolocaustoのCampo de Exterminioのジャケットやインナーにはヒットラーのコラージュなどナチス関連のものが多く使われており、彼らもまたネオナチの疑いがかけられた。勿論、彼らはすぐ否定したのだが、このようにサタニズムなどの邪悪性に取って代わるものとしてネオナチ的要素を組み込むことはAbsurd以前からなされていた。これらの事象は邪悪の表現として記号的に用いただけだから取り下げたのか、ネオナチ思想をアピールすることが今後の活動に障害になると判断して否定したのか、どちらなのかはバンドによって様々だろう。しかしVargがそうであったように、本気のネオナチ思想を持つ者も存在するのは確かであり、ネオナチ思想はブラックメタルの一部に侵食していった。この流れに順ずるNSBMはいわゆるプリミティブなブラックメタルスタイルや古くからのブラッケンスラッシュに歌詞やジャケットなどでネオナチ的エッセンスを組み込んだ作風になっている。

NOM.jpg 例えばオーストラリアのSpear of Longinus(1993年結成)。バンド名はロンギヌスの槍―イエスのわき腹を突いた槍であり、ヒトラーがウィーンの博物館で「啓示」を受けたとされている曰くつきのものだ。1st demo "Nazi Occult Metal"というタイトルからしてまんまなのであるが、彼らは昔ながらのブラッケンスラッシュをプレイしている。他にフランスのKristallnacht(1996年結成)。改名前のFuneralも含めれば1994年から。こちらは既に当ブログ内で解説したが、やはりナチス関連のバンド名である。このバンドはメロウなスタイルのフランスらしいフレンチプリミティブブラックをプレイしているが、特にそのメロウさは格別で未だに語り草のバンドであり、日本のInfernal Necromancyもかなり影響を受けたと聞いている。また、Absurdのカバーをしていることも特筆すべきであろう。これらのバンドはいわば既存のプリミティブブラックメタルにNS思想を乗せたものだと言える。

branikald.jpg ロシアではやや独自な形でNSBMが広がっていった感がある。ロシアのNSBMといえば、のBlazeBirth Hall(:BBH)の代表バンド、Branikald(1993年結成)はImmortalなどのブリザードブラックとは異なった寒気の伴うブリザードブラックで、アトモスフェリックが同居した幽玄的なサウンドが特徴のNSBMである。NS思想としては関連バンドのForestやNitbergの方は直接的なNSBMの姿勢を発しているのだが、やはりBranikaldは外せない。彼らのサウンドはかなり「自然」を感じる訳だが、それは自分たちのルーツに回帰していく中で、例えばIldjarnUlverなどと同様に自然信仰のような動きとも呼応しているように感じる。この辺りのブラックメタルのテーマにおいて自然崇拝的な動きとして現在ではカスカディアンブラックメタルとして現存している気がするが、ここは推論も多分に含まれる。

 また、ポーランドのFullmoon(1993年結成)。こちらはポーランドのNSBMを語る上で特に欠かせないバンドで、こちらは上記のバンドのスタイルとは異なり、ネオナチ的エッセンスそのものではなくアーリア人の優越性を表現しているといった方が適切だろう。そのためなのか、民族風メロディを使用していたりする側面も有って、音質も兼ねあって凶悪なプリミティブブラックを展開していながら、どこかに勇壮さやメロウな印象を持つ作品に仕上がっている。ウクライナのNokturnal Mortum(1994年結成)はシンフォニックでアグレッシブなブラックに民族的な旋律を導入したことで独特なサウンドを作り出すことに成功したバンドだし、表現方法こそ異なっていても同じような志向性だと解る。これはコラムのIで記述した通り、アーリア人の拡大解釈に伴うスラブ人の優越性からくるものであり、このようなムーブメントにおいてはスラブ民族の民族調メロディを盛り込んだブラックメタルに仕上がっているケースが多い。ちなみにこの流れからあくまでNSBMとしての側面を引っ張るバンドと、ペイガニズムを強調してNSBMから一線を引くバンドに分かれていくが、それはペイガンメタルを説明する際に語ろう。

■ おわりに

 以上、このようにエッセンスとして何らかしらのネオナチ思想を持ち込むことで、NSBMと言われていったバンドも多く、このことからNSBM自体が音楽性を定義するものではない比較的自由な表現方法になっていったと言える。またそんな中でAbsurdは当時、最も異端にして自由な表現を用いていたとも言え、それもまた彼らがNSBMの顔となっていった理由の一つでもあるだろう。

 故にこのジャンルの創出においては以下の通りである

 ・ Absurdタイプ(何でもアリ、RACやOi!Punkの影響を受けている)
 ・ 従来のブラックメタルを踏襲している
 ・ 民族優越性を強調した民族調ブラックメタル
 ・ ルーツ崇拝の末に自然回帰型

 次回のコラムではこれらのジャンルに対して、今回あげた以外のバンドやそのアルバムについても触れていきながら、NSBMの抑えておくべき名作を紹介していく。多分、ペイガニズムについて触れられるのはその次のコラムになると思われる。
タグ: column  Darkthrone  Murduk  Holocausto  Kristallnacht  Fullmoon  Nokturna_  Mortum  Absurd  NSBM 
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【column】 NSBMとは一体何か? - II 

■ 前回

【column】 NSBMとは一体何か? - I
http://staymetal.blog8.fc2.com/blog-entry-524.html

■ 続き

 前回のコラムではネオナチに関する説明と、何故その影響がヨーロッパ中に波及していったか言及した。今回のコラムからようやく音楽に纏わる話に移る。まずはネオナチ思想、もしくはアーリア人至上主義的思想がどのように音楽とリンクしていったのかを簡単に触れて、その後にNSBMの興りについて説明していくことにする。

 ちなみに、今回言及する70年代後半からのパンク/ロックと白人至上主義(レイシズム)の結びつきについてなど当時の知識についてはかなり浅く、訂正されうる箇所も多いと思うので、何か気付かれましたらコメント乃至ツイッターなどで連絡いただけたら助かります。

■ プロパガンダと音楽の関係

 プロパガンダと音楽の密接な関係はご存知の通りであろう。例えば軍歌、革命歌などもそれに当たる。特にナチスドイツはラジオを爆発的に国民に普及させることで、演説などと共に音楽を定常的に国民に聞かせて、国民の高揚と共に繰り返しの歌詞による洗脳活動を行った。戦後はラジオ、テレビ、更にインターネットなどメディアの進化と普及に伴い、国主導でなく民衆からも新たなムーブメントが出てきている。その場合、明確な意図があって自発的な活動を行うのではなく、受動的であった人が発信するようになったとも取れる。昨今、ネット界隈を賑わしているネトウヨなる人たちも明確なプロパガンダを行っているのではなく、本人たちも気付かないうちに参加しているようにも見受けられる。いずれにしても我々はそのようなプロパガンダと常に密接するようになったと言っても良いのではないか。

 閑話休題、1970年代にイギリスで発祥したとされるOi!Punkはパンクロックのサブジャンルで、主に労働階級層から支持されていた。そのため、発祥当時には労働者の怒りなど社会的抑圧からの反発による内容をテーマにしたものが多く、右翼的思想に直接与するものではなかった。
しかし一説によると1982年に勃発したフォークランド紛争がイギリス国民の右翼的思想を扇情したこともあり、Oi!Punkの持つ直接的なメッセージに右翼的な内容が反映されだした。直接的なメッセージを持ち、音楽的にも高揚感が得られることから、プロパガンダの側面も否めない。その観点からネオナチやスキンズに支持されたこともあり、いつしかOi!Punkは右翼思想を持つ音楽として見られるようになった。そのため実際のところ、右翼思想を伴わないOi!Punkも存在することは併記しておく。

 またRock Against Communism(RAC)も1970年代後半に出現したロックのサブジャンルである。こちらは1976年に起こったRock Against Racismというレイシズムを否定する音楽運動に対するアンチテーゼであり、アンチコミュニズムをテーマにするというよりレイシズム、ネオナチをテーマにしたロックであった。そのため、こちらは初期からかなりネオナチ思想、もしくはその組織と縁の深いジャンルでもあり、音楽性を定義するジャンルというより思想との結びつきが強いジャンルである。

 これらのジャンルの隆盛から、元来パンク/ロックが持っているシンプルなメッセージ性と音楽性、それに高揚感というものとプロパガンダの関係性を見出すことができる。一方で、恐らく該当バンドにおいて彼らが深く思想を伝播しようと考えるものは少ないように感じる。海外に在住していた人から聞いた話だが「皆、人種差別には敏感だけど、アルコールが入るとまるで"本性"が出たかのようにレイシストになる人がいる」らしく、我々にはなかなか理解できない話かもしれないが、予想以上に白人至上主義の根は深い。つまり彼らとしてはプロパガンダという意識もなく"当然"、世界観を取り入れたのではないだろうか。もしくは抑圧からの解放を目的に、反社会的行動としてそのような非人道的ともとれる発想をロックに取り入れていったとも考えられる。

 その辺りの事情はバンドによって様々であろうが、このような素地がこれから話すNSBMの創成に関わってくる。

■ NSBMの興り

 ここまで来てようやく本コラムの主題となるNSBMの話にたどり着く。NSBMというジャンルを定義付けたのはドイツのAbsurdだとされているのは有名な話だ。実際、プリミティブブラックメタルにおいてネオナチ思想を導入したものはAbsurd以前から存在していたわけだが、上記、Oi!PunkやRACの系譜としてこのバンドを第一に挙げざるを得ない。

 Absurdは1992年に結成。当時、彼らは中学~高校生のティーンネイジャーで、Oi!PunkやRACの影響を強く受けていた。更にDanzig、Mercyful FateのようなHR/HMも好んで聞いていたという。結成後、4年間で複数のデモ音源をリリースした後、1stアルバム"Facta Luquuntur"を発表。この内容を聞けばわかる通り、Oi PunkやRACのような音楽性を非常に大きく反映しており、そこにHR/HMの旋律を持ち込んだものになっている。もっとも単純にOi!Punkとメタルの歩み寄りを図った音楽は今までにもあった。最近、筆者が大いにハマッているThe BloodというOi!Punkバンドのサウンドもそのようなサウンドのように感じる。

 それではAbsurdの何がジャンルを定義付けるのに至ったかといえば、やはりネオナチ思想に裏付けられたドス黒い初期衝動であろう。これは従来の右翼思想的音楽ともブラックメタルとも異なる異様なカルトさから感じ取ることが出来る。歌詞自体に直接、ネオナチ思想を表現するものはないように感じるのだが、楽曲のタイトルに"Werwolf"とつけるなどナチス関連の単語が散見されるなど、主張をカルトな形で神秘的に露出している。これはOi!Punkの持つ直接的なメッセージ性から反するし、音楽性から取ってみても高揚感ではなくカルトとしか言いようがない怪しさを持っている。これはメタルを足し合わせたから、とも思えない。それより、彼らが行った融合というものはただ単なる"足し算"ではなく、合成による化学変化だったと考えている。計算内だったのか、それとも本人たちも意図しない奇跡的なバランスで生み出されたものなのか、そこは全く解らないが、完成されたものは最も神秘的な形で邪悪な初期衝動のみが醸し出される形になって現れ、それを我々はカルトなサウンドとして受け取ることになったのだろう。

、なお、彼らのデモ音源のライナーには「ある日、世界はヒトラーが正しかったと知ることになるだろう」と記述されており、明確な意思表示も見受けられる。そして驚くべきことは、これらの活動をドイツで行っていたことである。ドイツ国内ではナチス賞賛を罰する「反ナチス法」が存在するためだ。逆に言えば、これから言及するNSBMバンドの多くがドイツ国外のバンドであることも一つにその法律のためだとも思われる。そしてAbsurdがこのようなアピールをドイツ国内で行っていたことに、文字通りの若さゆえの"アウトロー"的な意図を垣間見れる。また、1stアルバムリリース前にメンバーは私怨で殺人を犯し、その被害者の墓を先ほど言及したデモ音源のジャケットにしてしまったという辺りにもそのようなものが感じ取れる。彼らは当然懲役刑にあったわけだが、仮出所時に作成した"Asgardsrei"はインナーといい挿入されているSEといい、どうしようもないくらいヒトラー賛美を行っており、そのチープなポンコツパンクメタルと共に強烈な印象を残している。このEPのリリースに当局も動き(何しろ違法行為である)、仮出所は取りやめられ、そのままオリジナルメンバーでのAbsurdは解散した。今でもAbsurdはオリジナルメンバーなきまま活動を継続しているが、内容としてはペイガンメタル然した内容になっている。またオリジナルメンバーのHendrik MöbusはDarker than Black Recordsのオーナーであり、このレーベルからはAbsurdの他に様々なNSBMをリリースすることになるが、それはまた別の話。

 以上、Absurdについてまとめると、彼らが行った活動は決して政治的思想に基づく信念に沿って行われたというより、Oi!PunkやRACなどの影響を強く受けて育ったティーンネイジャーがメタル的なエッセンスを施して奇跡的なバランスを形成し、それによってカルトさを創出するに至った。それはアンダーグラウンドで騒がれていたプリミティブブラックメタルの根底にあったサタニズム的邪悪さとは全く異なるカルトさであり、異形のものとして一部で神格化されていった。そのため音楽性とは別のファクターでブラックメタルにカテゴライズされていった。いわばブラックメタルという秩序の破壊と、極端な話「何でも有り」というNSブラックメタルというジャンルの創成である。そのため現在、NSBMというジャンルはその音楽性を単一なものとして語れなくなっているのである。

■ おわりに

 以上、長くなってしまったので今回はここまでにしておく。今回は音楽とネオナチ思想のリンクについて立ち返って述べ、その系譜として生まれた異形にしてNSBMのパイオニアとされるAbsurdについて紹介した。次回はプリミティブブラックメタル界隈におけるネオナチ思想の発芽についても述べ、NSBMの中にもAbsurdを標榜する「何でも有り」派と、あくまでプリミティブブラックから派生した「プリブラ・NSBM」派と、それら両方の影響を受けたバンドについて紹介していく。また以前から書いている通り、ペイガンメタルについても言及したい。
タグ: column    Oi!Punk  RAC  The_Blood  Absurd  NSBM 
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Blooddrenched Memorial 1994 - 2002 : Kristallnacht (2006) 

フランスのプリミティブブラック/NSBMバンド、Kristallnachtのコンピ盤を紹介。
フィンランドのGrievantee Productionsからリリースされた。

kristallnacht_c.jpg

先日紹介したThe Night and the Fogに参加しており、
バンド名は「水晶の夜」の引用などまさしくNSBMバンドである。
クリナハと略されて呼ばれておりこの手のジャンルではかなり有名なバンド。

前身バンドのFuneralの活動も含めた1994-2002年にリリースされた音源のコンピで、
バンドが製作した全21曲が網羅されている(確か)。
そのため音質もどれもプリミティブだがバラバラな出来になっている。

メロウでプリミティブなブラックメタルというと今では多くのバンドがいるものの、
こんな初期からこういうスタイルを体現しているバンドはいなかったし、
活動のUGさも含めて、その界隈では相当なインパクトを与えたサウンドだろう。
当時、このバンドのような音源を作りたいと動いていた国産ブラックもいたとのこと。

時代の空気感も含めて味わうことで非常に貴重な価値を感じる一枚。
また彼らもAbsurdのカバーをしており、Absurdの(悪)影響って凄いと感じる。
ちなみに一部の曲のみヴォーカルスタイルがドナルドダック状態になるのも注目。

Encyclopaedia Metallum - Kristallnacht
タグ: Kristallnacht  Absurd  France  2006-2010 
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The Night And The Fog part II : V/A (2003) 

引き続き、15のNSBM/Neo Folkバンドによるコンピレーションアルバムを紹介。
一応、続編ということになったが、こちらはギリシャのTotenkopf Propagandaからリリース。
こちらは激しく出回っているので比較的容易に手に入れることができる。

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ジャケットは真っ黒になったものの、リリース元が変わったこともあるにせよ、
前作と比べて邪悪さは大幅に減退しているような気がする。
その代わりにNeo Folk的なアプローチなど民謡的なメロディを使うバンドが増えた。

こちらもシーンを代表するバンドが多く参加しており、
そういう意味では十分価値のあるアルバムといえるが、
CommandHolocaustusといった問題バンドも参加していたり、
アルバムリリースの経緯や内容などを考えると前作に劣るのは否めない。

とはいえ前作が凄過ぎただけともいえるので、
Nokturnal Mortum、Absurdなどの有名バンドも参加しているし、
この手のジャンルが気になるようなら手に取るに十分なアルバムだろう。
タグ: Temnozor  Der_Sturmer  Nokturnal_Mortum  Absurd  Command  Holocaustus  Eisenwinter  2001-2005 
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The Night And The Fog : V/A (1999) 

16のNSBMバンドによる伝説のコンピレーションアルバムを紹介。
アメリカのDungeons Of Darknessがリリースしたが、このリリース年度にオーナーが自殺、
そのためこのアルバムは再販もなく希少価値が非常に高い。

n_f.jpg

現在では相当ネームバリューの高まったNSBMの面々が参加したコンピ。
アルバム名は「夜と霧」作戦からとっており、
まさしくNSBMを体現するかのような、この作品自体が「狼煙」のように感じる。

参加バンドの豪華さと収録曲のプリミティブさ、
そして何より作品全体から沸き立つ危険思想が
邪悪で真っ黒にアルバムを染め上げている。

自分はレイシズムを決して賛同する気はないが、
このコンピレーションアルバムはブラックメタル史上において
非常に重要なものであることはわかる。

このアルバムは非常に手に入りづらいが(私も借りました)
参加バンドによっては初期音源集に収録されている楽曲もあるので、
難しい場合はそちらからお求めになるのがいいだろう。
タグ: Kristallnacht  Bekhira  Thor's_Hammer  Thunderbolt  Fullmoon  Absurd  Graveland  Gontyna_Kry  個人的名盤  1996-2000 
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