Prologue : Risingfall (2016) 

日本は東京のへヴィメタルバンド、Risingfallのデモ音源を紹介。
CD-Rの自主製作でリリースされ、2017年にはBandcampでも公開された。

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 SNSなどでこのバンド名を見かけたのはそこそこ前のことだったような気もするが、この音源が公式にはデビュー音源なはず。Dues新宿で行われたウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック発刊記念イベントにこのバンドのVo.が遊びにいらしたときに御厚意でいただきました(多謝)。あの後もいろいろ公私共々忙しく、ようやくこの場で感想を記すに至り大変遅くなりました。とはいえ、それとこれとは別とばかりに率直な気持ちを述べよう。

 3曲入りのデモはどれも顔付きが異なる仕上がりで今後の方向性を占ううえでデモらしいデモだと言えよう。#01 "Livin' On The Edge"はシケシケのNWOBHMの雰囲気を帯びつつも展開するのはドイツのScannerの1stアルバム辺りを思い出させるB級パワーメタルでなかなかカッコよし。ヴォーカルのハイトーンはまだまだ安定しないところもあるが、それより安易なスタイルに逃げない潔さも好感。#02 "Kill By Wheels”は3曲中、最もスラッシュメタルの要素を感じさせる刻みが入りつつ、ダミ声のスタイルで攻め立てる。バンドの表現力の多彩さ(特に作曲)を感じさせる一方で、このスタイルだとあまりこのバンドの強みにあたる陰陽のコントラストがついておらずボヤけた印象を持った。#03 "Epilogue"は一転クサメロ全開の日本語歌詞がグッとくる昔ながらのジャパメタという感じのスタイル。昔の「鹿鳴館メタル 」みたいな感じ。

 「俺たちのスタイルはこれだ!こんなこともできるぜ!」というまさにデモとしての矜持を全うした音源であり、これからの活躍に期待が持てるものであった…と書いていたら、こんなライブ情報が飛び込んできた。

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 凄いメンツ…なんてこったい。彼らはまさに今階段を一歩一歩着実に上っている…!いつかビックネームになってくれたらこのデモ音源を手に「俺はこの時から確信していた」と自慢しちゃおう。

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タグ: Risingfall  Scanner  Japan  2016 
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Blackground : Kalterit (2016) 

フィンランドのブラックメタルバンド、Kalteritのミニアルバムを紹介。
日本のDeathrash Armageddonよりリリースされた。

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 フィンランドのトレンドスローター軍団ことSadokistに在籍するSadist Stalker氏により独りブラックメタルバンドである。何せ「90年代こそが本当のリアルであり、現在のカセットテープやらアナログレコードにも唾を吐いて、CD媒体をサポートすべき」だと言っている連中だから、独りバンドでもさぞかし…と思って聞いてみるとこれが面白い。

 Sadokistでも展開されているブラック・スピードメタル成分も感じられるが、それよりスラッシュメタルの影響下にありながら邪悪さが飛びぬけて演出面においてもオドロオドロしさが光り、シンセサイザーの使い方も懐かしく、単調なトレモロリフによって強引に推し進められるスラッシーなナンバーは90年代前半のブラックメタルを忠実に再現していると言えよう。特にフィンランドのブラックメタルらしさといえばUrnあたりが思い浮かぶスタイル。

 急にメロディックなリフが挟まったり、イーヴィルなハードコアにも近い楽曲もあったりするなど、とにかくあの頃のサウンドを詰め込んだミニアルバムで、イントロを含めないと4曲20分弱程度の収録時間であるものの、90年代リスペクト全開さが様々なカラーで現れていて素晴らしい。

 どうしても80年代のエクストリームメタルというものがオールドスクールと評されがちではあるが、既に90年代も20年以上前のことであり、今後ますます90年代をリスペクトした若手バンドも地下で増えてきそうだと感じさせる。

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タグ: Kalterit  Sadokist  Urn  FInland  2016 
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Sacrilegious Fornication Masscare... Filthy Desekrators! : V/A (2016) 

日本のブラックメタル・ヤクザ、Abigailと韓国のウォー・ブラックメタルバンド、Nocturnal Damnationのスプリット盤を紹介。
ポーランドのPutrid Cultからlim.500でリリースされた。

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 拙著掲載のインタビューにてNocturnal Damnationのメンバーからリリースすると公言されていたスプリット盤で、双方2曲提供の4曲入りとなっている。夏にリリースされた5thアルバムに対してこのスプリット盤は10月末にリリースされたわけだが、何やら凄いらしいと小耳に挟みつつも国内になかなか入ってこなかったために私自身は今年になってようやく手に入れて目をひん剥いた。

 Abigailサイドの1曲目が今までの彼らの作品のどれよりもブルータルなメタルになっている。用いられているリフやブリッジなどは元々の彼らの路線であるが、ドラムの強烈さもあわせて全体の圧が凄い。ひたすら圧倒される。いわゆるウォー・ベスチャルにも肉薄しているようなカオスさも持ち合わせた傑作だ。2曲目の煽情的なブラック・スピードメタルもまた素晴らしい。何しろタイトルが"We are True Evil"である。これら2曲はスプリットにしか収録されないのだとしたらちょっと勿体ないのでは、と思わせるほど。

 Nocturnal Damnationサイドは彼の新境地とも思わせるオールドスクール・デスメタルを思わせるスタイルに踏み込んでいて、当初のBlasphemy~Conquerorの影響とは異なり、もっとスロウに磨り潰しにかかってくる。ヴォーカルスタイルもより重く低いグロウルに変わっているように感じる。そういえば彼はSadistic Intentの影響を受けていると言っていたが、まさにその辺りを突いてきている一方で、それをもっとへヴィにバスブーストで仕上げたという感じだろうか。

 とにかくAbigailサイドの素晴らしさが際立っている一方で、クラシックなサタニック・デスメタルを選択したNocturnal Damnationの方向性も含めて実に興味深いスプリットである。

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The Final Damnation : Abigail (2016) 

日本のブラックメタル・ヤクザ、Abigailの5thアルバムを紹介。
アメリカのNuclear War Now! Productionsよりリリースされた。

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 漆黒をバックにChris Moyen氏のアートワークという出で立ちでAbigailの新譜が発表されてビビッと来た人は多いだろう。ブラックメタルをプレイするAbigailが戻ってきたのではないかと。1stアルバム"Intercourse & Lust"以前のスタイルは、例えば以前紹介したDrakkar Productionsリリースの”The Early Black Years (1992-1995)”で聞くことができるが、2ndアルバム"Forever Street Metal Bitch"から近年までのイーヴルなスラッシュメタルをベースにしたメタルパンク路線より、その源流となるVenom、Bathory、Bulldozerあたりの1st waveブラックメタルスタイルであった。

 この5thアルバムはそのような原点回帰を図ったという話だったが、いやいや聞いてみるとそんなAbigailたるオリジナリティを捨て去るようなことはしていない。確かにルーツのブラックメタル・スタイルはリフやヴォーカルスタイル、ヘヴィネスさに顕著に現れている。しかしそこに2ndアルバム以降のらしさも失われていない。むしろ築き上げたものは健在である。その結果としてイーヴィルかつヘヴィでありながら軽快さ・煽情さも味わえるアルバムに仕上がっている。#06"No Pain! No Limit!"の日本語歌詞も実に熱い。

 また曲中の展開、アルバム全体のバリエーションなどなど国内外のマニアたちを感服させてきた絶妙なバランスはパワーアップしており、今年結成25周年を迎えたバンドとしての気焔を見せつけてくれた快作と言えよう。感服。

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タグ: Abigail  Japan  2016  個人的良盤 
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